• もっと見る
イスラム世界との結びつきを通じて、多様性を許容する社会の構築についてともに考えるサイトです。

« 次第に明らかになってきたバグダーディISIS指導者殺害作戦の全貌 | Main | 米中央軍司令官によるバグダーディISIS殺害作戦ブリーフィング(ほぼ100%の精度で遺体をバグダーディ本人と判定したDNA鑑定) »

検索
検索語句
<< 2024年03月 >>
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            
最新記事
最新コメント
タグクラウド
カテゴリアーカイブ
月別アーカイブ
プロフィール

中東イスラム世界社会統合研究会さんの画像
日別アーカイブ
https://blog.canpan.info/meis/index1_0.rdf
https://blog.canpan.info/meis/index2_0.xml
シリアを巡る軍事・政治両面での新たな展開の中で、孤立感を深めるシリアのクルド人[2019年10月30日(Wed)]
10月29日ロシア国防相は、去る10月22日プーチン大統領がエルドアン・トルコ大統領との2時間にわたるテタテ会談を含む6時間協議で合意した覚書に基づき、クルド人武装勢力がシリア北部の国境地帯からの撤退を完了したと発表。こうした中で、米国はシリア東部の石油地帯の支配を強化しており、ロシアは、米国の立場を非合法で、「傲慢」であると非難した。一方、政治プロセスも動き出しており、10月30日、150名で構成される新憲法起草のための委員会の初会合が開催される。委員会は、50名がアサド政権側、50名が反体制側、その他50名が両陣営が指名した市民社会代表で構成され、クルド人反主流派も参加しているが、ISIS掃討に貢献したクルド人民防衛隊(YPG)とその政治組織クルド民主統一党(PYD)の代表の参加については、トルコがPKK同根のテロリストを見なして参加に強硬に反対し、ロシアも事実上その主張を覆せないため、実現できない状況にある。シリア北部での「安全地帯」の設置で、自治統治機構立ち上げの見通しを失いつつあるクルド人は、シリアの将来を協議する憲法委員会のプロセスからも排除され、ISIS掃討作戦参加により11000名の犠牲を払ったにもかかわらず、米国の支援を失い、政治的にも軍事的にも孤立感を深めつつある。

1. クルド人民防衛隊(YPG)のシリア北部国境地帯からの撤退期限修了
●10月29日午後3時(GMT)にトルコ・ロシアが覚書を交わして設定した150時間のトルコ・シリア国境から30km以南の地域へのYPG戦闘員と重火器の撤退期限が切れた。それに先立ち、ショイグ・ロシア国防相は、「安全回廊が設定される地域からの武装勢力の撤退は、予定より早く完了した。」と述べ、YPG戦闘員が既に対象区域外に退去したと言明した。ロシア軍が支援するアサド政権軍幹部は、トルコ国境沿いに84か所の監視ポストを設けたと発表。今後、トルコ軍が実質的に支配するラス・アルアインとタル・アブヤドの帯状地帯をのぞいて、ユーフラテス川東方イラク国境までのトルコ国境から南方10kmまでの帯状地帯をロシアとトルコが共同でパトロールすることになる。

2.ロシアは、米政府のシリアの石油資源を防衛するとの立場を「傲慢」であると非難
●10月30日からジュネーブで開催されるシリア憲法制定委員会の初会合に出席するため、現地を訪問中のロシアのラヴロフ外相は、イランのザリーフ外相、トルコのチャブシュオール外相とともに記者会見に臨み、米軍がシリアの油田を防衛するために現地に駐留するのは、施設を誰から守るのか不明で、傲慢であると非難し、石油資源は、シリア人により保護されるべきであるとの見方を表明した。米国は、ISISの脅威からシリアの油田地帯を守るとしているが、アサド政権やロシア軍にも近づかせないとしており、米国がISISへの勝利を宣言し、ISISの指導者を殺害し、さらに、トランプ大統領がクルドとトルコに二重の保険をかけてISIS被拘束者の監視を万全にしていると説明する中で、シリアの石油資源の防衛を行う根拠と正当性が問われている。

3.憲法委員会初会合にあたってのペダーセン国連シリア担当特使記者会見要旨(10月28日)
(憲法委員会初会合の意義)
第一に、憲法委員会を設立するための合意は、TORと手順の核心的規則とともに、シリア政府と反体制派間の最初の政治的合意であること。
第二に、国連安保理決議2254で示されている政治プロセスにおける対話の相手として、相手方を明確に受け入れていること。
第三に、委員会は政府と反体制派と彼らが指名した者たちが直接膝を突き合わせて対話し、交渉することにコミットしていること。
第四に、市民社会の声を発信し、彼らの意見が聴取される場を、政府と反体制派がともに設定すること。
(ペダーセン補足)
●この委員会にはクルド人が参加しているが、シリア民主軍(SDF)の代表者がいないことはそのとおりである。
●憲法委員会の活動は「国連憲章、関連する安全保障理事会決議、シリアの主権、統一、独立、領土保全、およびプロセスがシリア主導で運用されるという重点原則の枠組みの中で作業が行われる。これらの原則には、新しい憲法に基づく決議2254で想定されている国連監視下での選挙の実施と、決議2254を履行するためのより広範な政治プロセスの必要性も含まれている。
●憲法委員会は、国連が促進するジュネーブプロセスの文脈の中で、シリアでの政治的解決と安全保障理事会決議2254の実施に貢献する憲法改正の準備と草案作成を義務付けられている。これは政府と反体制派の間で合意されている。
●可能な場合はコンセンサスによって決定され、それ以外の場合は75%の過半数によって決定される。これはどのひとつのブロックだけでは、結果を押し付けることができないことを意味し、それは中間グループと対立する両者の溝を乗り越えるインセンティブを生み出すことを期待している。
(参考)安保理決議2254(2015 年 12 月 18 日、安保理第 7588 回会合にて採択)
(第4項)国外離散者の構成員を含む、全てのシリア人が参加した、18 か月以 内に開催される、そして管理を納得させることのために、また透明性と説明責任の国際的な最高基準のために国際連合の監督の下で運営されることになっている新しい憲法に基づいた自由で公正な選挙に対する安保理の支持
(安保理決議2254日本語訳)https://www.unic.or.jp/files/s_res_2254.pdf
(ANF通信記事)https://anfenglishmobile.com/news/pedersen-main-criterion-of-constitution-is-integrity-of-syria-38855

Posted by 八木 at 11:26 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

この記事のURL

https://blog.canpan.info/meis/archive/264

トラックバック

※トラックバックの受付は終了しました

 
コメントする
コメント