• もっと見る
イスラム世界との結びつきを通じて、多様性を許容する社会の構築についてともに考えるサイトです。

« ロシア製S-400の調達で試されるエルドアン・トルコ大統領の米・ロシア両首脳との関係 | Main | 新イラク・クルディスタン大統領選出で引き継がれるバルザーニ支配 »

検索
検索語句
<< 2024年04月 >>
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30        
最新記事
最新コメント
タグクラウド
カテゴリアーカイブ
月別アーカイブ
プロフィール

中東イスラム世界社会統合研究会さんの画像
日別アーカイブ
https://blog.canpan.info/meis/index1_0.rdf
https://blog.canpan.info/meis/index2_0.xml
シリアにおけるアサド政府軍による化学兵器使用の主張に対する疑問[2019年05月27日(Mon)]
シリア北西部反体制派拠点のイドリブで、5月19日、アサド政権が化学兵器を使用したとの主張がなされ、これに対して、4月にナウアート(前)報道官の後任として国務省報道官に就任したモーガン・オルタガス氏は、情報収集中としながらも、アサド政権が過去にも化学兵器を使用したことは、国連関係機関の調査でも明らかであるとして、シリアのアサド政権ならびにそれを支えるロシアに改めて警告を発した(下記参考1)。昨年(2018年)4月7日、ダマスカス近郊のドューマで、シリア軍が反体制派住民に化学兵器を使用したとして、同年4月14日米、仏、英は100発以上のミサイルでシリア国内の化学兵器関連施設とみられるインフラ攻撃を実施した(下記参考2)。昨年4月の化学兵器使用疑惑について、OPCWは、誰が使用したかについてはマンデート外としたうえで、現地で塩素ガスが使用されたことはほぼ明らかであるとの報告書を作成し、アサド政権による化学兵器使用を国際社会に印象づけた。これに対して、アサド政権やロシアは、化学兵器使用疑惑は、アサド政権を陥れるために反体制派が、ねつ造したものであると主張し、反論した。当時、軍事的に圧倒的に有利な立場にあったアサド政権が、国際社会からの非難や外国からの軍事介入を受ける可能性がある化学兵器を使用し、しかもサリンなどとは異なり殺傷力の低い塩素ガスをあえて選択する動機は存在するのか疑問が投げかけられてきた。もし、アサド政権側が本当に使用したとすれば、アサド政権内に外国の軍事介入を呼び込み、政権打倒を期待する体制離反者がいたとしか合理的説明ができない。今回の5月19日の疑惑についても同様である。こうした中、OPCWが非公表として、技術専門家の間だけでコメントを求めていたドューマ事件で調査チームが破壊された家屋内で観察した2つの塩素ガス・シリンダーについての報告書(Engineering Assessment of Two Cylinders Observed at the Douma Incident-Executive Summary)がリークされた。それは、2つの塩素ガス・シリンダーが軍事用ヘリコプター等空中から落とされ家屋を突き破ったものとは考えられず何者かによって、その場に置かれたものである可能性が極めて高いと位置づけており、それは、アサド政権軍が空からの攻撃で使用した可能性が低いことを間接的に物語っている。米・仏・英は既に軍事攻撃を、OPCWの報告が出る前に有無を言わさず実行しており、アサド政権がこの件については、「実はシロ」であったと言い換えることはありえないが、ある重大な事態については、誰の利益になり、誰の不利益になるかという背景を考えさせられる事案であることは間違いない。
1.モーガン米国務省報道官声明 5月21日
●米国はシリア北西部でのアサド政権による化学兵器の新たな使用の兆候を含む軍事作戦を注意深く監視し続けている。
●残念ながら、我々はアサド政権が2019年5月19日の朝のシリア北西部での塩素攻撃を含む化学兵器の使用を再開しているかもしれないという兆候を見守り続けている。この出来事に関する情報を収集中であるが、アサド政権が化学兵器を使用すれば、合衆国と我々の同盟国は迅速かつ適切に対応するであろうとの警告を繰り返す。
●5月19日のシリア北西部での攻撃疑惑はアサド政権による暴力的なキャンペーンの一部であり、拡大されたイドリブ地域の数百万人の市民を守ってきた停戦に違反している。この新たなシリア政権による攻撃は、シリアの他の地域で暴力から逃れて避難してきた多数のシリア人を含むその地域のコミュニティを標的とし、既知であるはずの医療施設、学校、住居、および国内避難民キャンプを破壊した。シリア北西部のコミュニティに対する政権の攻撃は終わらせなければならない。米国は、2018年9月にトランプ大統領によって最初に発出された、イドリブの緊張緩和地帯への攻撃は、この地域を不安定に陥れる無謀なエスカレーションであるとの警告を繰り返す。
●ホワイトヘルメットなどに対するロシアによる最近の申し立ては、アサド政権とロシアが、アサド政権自身が行っている化学兵器攻撃を他の者のせいにするためのシナリオを創るという継続的なごまかしのキャンペーンの一環である。同様に、2018年11月24日、アサド政権とロシアはアレッポ近郊で化学兵器攻撃をねつ造し、反対勢力のせいにしようとした。時折、ロシアとアサド政権は、アサド政権自身の野蛮な化学兵器攻撃の前に、口実としてこれらの誤った主張を行ってきた。
●しかし、事実は明らかである。アサド政権自身がシリアで行われたほぼすべての検証済み化学兵器攻撃を実施してきた - 国連が幾たびも到達した結論である。化学兵器禁止条約機関(OPCW)-UN共同調査メカニズムは、アサド政権による化学兵器の使用を繰り返し検証し報告している。アサド政権の恐るべき化学兵器攻撃に対する責任は否定できない。

2.昨年4月の米・仏・英によるシリア国内化学兵器関連施設への攻撃
●米国時間2018年4月13日夜、トランプ米大統領は、シリアの独裁者アサド大統領の化学兵器能力に関連する目標に対して、米軍に精密攻撃を命じたと述べた。この命令をうけて、米国東海岸標準時13日21時(シリア時間14日午前4時前)に、米軍、英軍、仏軍による、空と海からのシリア国内の標的に対するミサイル攻撃が実施された。攻撃後、米国時間4月13日マティス国防長官、ダンフォード統合参謀本部議長と英、仏の軍関係者が共同で記者会見に臨み、仏、英、米はシリアの化学兵器関連施設に対して、シリアの化学兵器関連インフラを破壊するために断固とした行動をとり、第一目標として、シリア科学研究センターSSCR、第二目標としてホムス近郊の化学兵器貯蔵庫(サリン、およびその先駆物質貯蔵)、第三目標として、第二目標近郊の化学兵器設備とその指令センターに攻撃を行ったことを明らかにした。追加の国防総省報道官ほかのブリーフィングでは、今回の作戦は、@「正確、圧倒的、効果的」という3つの言葉で表現される、A今回攻撃に使用されたミサイルは計105発。第一目標のSSRCには、76発(うち、57発はトマホーク・ミサイル、19発は、空対地スタンドオフ・ミサイルJASSを使用)。第二目標のホムス近郊のヒム・シンシャール化学兵器貯蔵施設には、22発(うち、9発の米国のトマホーク・ミサイル、8発はストーム・シャドウ・ミサイル、3発は艦艇からの巡航ミサイル、2発がスコット地上攻撃巡航ミサイルを使用)。第三目標の第二目標近郊にある装備貯蔵施設には、7発のスコット・ミサイルが使用された、ことを明らかにした。

Posted by 八木 at 11:29 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

この記事のURL

https://blog.canpan.info/meis/archive/118

トラックバック

※トラックバックの受付は終了しました

 
コメントする
コメント