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社会デザイン学会で承認された中東イスラム世界社会統合研究会が運営する団体ブログです。
中東イスラム世界社会統合研究会公式サイト http://meis.or.jp
社会デザイン学会研究会案内 http://www.socialdesign-academy.org/study/study_application.htm
日本とイスラム世界とのネットワーク強化を目的として、以下の項目で記事を発信していきたいと考えています。
日本とイスラム世界との出会い:日本人や日本がどのようなきっかけでイスラム世界への扉を開いていったかを紹介します。
イスラム世界で今注目されている人物:イスラム教徒であるか否かを問わず、イスラム世界で注目されている人物を紹介していきます。
イスラムへの偏見をなくすための特色のある活動:イスラムフォビア(Islamophobia)と呼ばれるイスラム教への偏見、イスラム教徒排斥、イスラム教徒警戒の動きが非イスラム世界で高まっています。これらの偏見や排斥をなくすための世界の各地で行われている特色のある活動を紹介していきます。
中東イスラム世界に関心を抱くあなたへの助言:さまざまな分野で中東・イスラム世界に関心を抱き、これから現実に接点を持っていこうと考えておられるあなたへのアドバイスを掲載します。

情報共有:当研究会のテーマに関連したイベント、活動、寄稿などの情報を提供しています。

新着情報:中東イスラム世界社会統合研究会公式サイトの「中東イスラム世界への扉」に、現地駐在の本田圭さんから投稿のあった2020年11月の「UAE、ある日の砂漠」と題する紀行文を掲載しました。UAEの砂漠がとても魅力的なので、ぜひ一度アクセスしてみてください。
http://meis.or.jp/products/door2me/OnceUponATimeInUAEDesert01.php




米下院パレスチナ系イスラム教徒ラシーダ・トレイブ議員に対する問責決議案採択[2023年11月09日(Thu)]
「私は現在米国下院で議員を務めている唯一のパレスチナ系米国人であり、私の視点が今ここでこれまで以上に必要とされています。 私は沈黙させられませんし、誰にも私の言葉を歪曲させません。私はデトロイト出身で、そこではたとえ声が震えても、権力者に対して真実を話すことを学びました。」これは、2016年11月の中間選挙で米下院議員として当選し、20年11月の選挙でも再選された民主党所属のパレスチナ系イスラム教徒女性議員ラシーダ・トレイブ氏の発言である。決議案の採決に先立ち、トレイブ氏は下院評議会で涙ながらに「こんなことを言わなければならないことが信じられない。パレスチナ人民を見捨てることはできない。我々も他のすべての民族と同じ人間だ。パレスチナ人は自由と尊厳を持って生きる権利がある」と述べた。

11月7日の夜、米国下院はガザに関するジョー・バイデン大統領とイスラエルの政策を非難したトレイブ下院議員を非難する問責決議案を承認した。共和党代表のリッチ・マコーミック氏は、反イスラエルの立場を理由にトレイブ氏を非難する問責決議案を評議会総会に提出した。評議会は234人の議員が決議案に賛成(うち22名の民主党議員が賛成)し、188人の議員が反対(うち4名の共和党議員が「言論の自由」擁護の立場から反対)し、4人の議員が投票を棄権し、賛成多数で承認された。決議案は、トレイブ氏が「10月7日以来虚偽の情報を広め、イスラエル国家の消滅を要求している」と非難している。
(参考)トレイブ議員がパレスチナ人の「川から海へ」のスローガンを擁護したことが問責の一つの理由になっている。かつて、イスラエルを認めない立場の勢力は、イスラエル人を海に追いやるという主張を行ってきたことがある。トレイブ議員の11月4日のX投稿では、「川から海へは、死、破壊、憎しみではなく、自由、人権、平和的共存を求める熱望の呼びかけです。 私の仕事と擁護は常に、信仰や民族に関係なく、すべての人々の正義と尊厳を中心にしています。」と趣旨を説明している。

11月3日、トレイブ氏は「X」プラットフォーム上で亡くなったパレスチナ人の子供の写真を公開し、「バイデン大統領はパレスチナ人民に対する大量虐殺を支持している。米国民はこれを忘れないだろう。バイデン大統領、今すぐ停戦を支持するか、2024年(米大統領選挙)で我々を「当てにしないか」のどちらかだ」と付け加えた。

下院評議会では、同僚でソマリア難民出身のイスラム教徒女性議員であるイルハン・オマル氏は同僚を支持し、「あなたがたはラシーダ・トレイブ氏を攻撃しているが、共和党下院議員マックス・ミラー氏はテレビに出演して「我々はガザを駐車場にし、パレスチナ人を絶滅させる」と言った。それにもかかわらず誰も彼を非難しなかった、と擁護した。

(コメント)ラシーダ・トレイブ議員は、イルハン・オマル議員とともに2016年秋の中間選挙で初当選した民主党議員である。パレスチナ系、ソマリア出身の女性イスラム教徒議員ということもあり、両名は、米国政治界において少数派の意見を発信・擁護する議員として注目されてきた。米国内では、10月7日のハマスによるイスラエル人他への襲撃で1400名以上が犠牲になったとして、イスラエルの自衛権を擁護しハマスを殲滅・解体させようとするイスラエル軍の軍事作戦を支持する声がある一方で、11月8日現在のガザ保健省の発表で、ガザでのパレスチナ人10,569(うち、子ども4,324 )、西岸でもパレスチナ人死者164人が犠牲になったと伝えられており、即時停戦、あるいは人道的休戦を求める声があがっていた。こうした中、パレスチナ系下院議員であるラシーダ・トレイブ氏が、イスラエルの自衛権を理由に、多数のガザ市民が巻き込まれることがわかっていながらイスラエル軍の進軍を止めようとしないバイデン政権に批判の声をあげたことは不思議ではない。バイデン政権も、国内・国際世論の休戦を求める声に押されて3日間の一時休戦を、イスラエル側に呼びかけているとされる。現在ガザの北部地区は、イスラエル軍に包囲され、ハマスが築いてきたとされる地下トンネルなどインフラが次々に破壊されているとされる。軍事的には、圧倒的に有利なイスラエル軍は、ハマスのインフラと戦闘員に大打撃を与えることは確実である。しかし、集団懲罰を受けた形で、家族を失い、居場所を失った多くのパレスチナ人の、世界から見捨てられたとの怒りと絶望感は、今後何世代にもわたって続くと思われる。イスラエルと米国ならびに国際社会は、ハマス戦闘員から解放されたガザ北部をどうするつもりなのか。エジプトが国境を封鎖したままでガザ南部に追いやられたパレスチナ人の今後はどうなるのかアラブ世界は、いままでのように「パレスチナの大義」を理由に、パレスチナ人の自国受け入れと国籍付与を拒否し続けるのか、ウクライナ支援で手厚い対応をみせた国際社会は、一時的であれウクライナ人同様にパレスチナ人を受け入れる用意があるのか、ハマスを批判し、イスラエルや欧米に低姿勢を続けるアッバース議長率いるパレスチナ暫定自治政府のガザ支配をパレスチナ人は支持するのか、人口の2割のパレスチナ系アラブ人を抱えるイスラエルは、真の自国の安全保障実現をどう確保しようとしているのか、現在の戦闘が休戦に至ったとしても、その後の地域の平和と安定を実現するためのシナリオを世界の指導者は真剣に検討しているのか、あるいは、アフガニスタンのように、国際社会は斬状に目をつぶり、混乱を放置する途を選ぶのか、国際社会は今こそ対立を煽るのではなく、一致点を見出すべく取り組むべきで、そこには、G7だけでなく、グローバル・サウスとよばれている国々の関与も重要になり、混乱を一刻も早く収めてほしいと願うばかりである。
https://www.businessinsider.com/which-democrats-voted-for-rashida-tlaib-censure-israel-palestine-2023-11
https://www.aljazeera.com/news/longform/2023/10/9/israel-hamas-war-in-maps-and-charts-live-tracker
https://arabi21.com/story/1550511/%D8%B1%D8%B4%D9%8A%D8%AF%D8%A9-%D8%B7%D9%84%D9%8A%D8%A8-%D8%AA%D8%A8%D9%83%D9%8A-%D9%81%D9%8A-%D8%A7%D9%84%D9%83%D9%88%D9%86%D8%BA%D8%B1%D8%B3-%D8%A3%D8%AB%D9%86%D8%A7%D8%A1-%D9%83%D9%84%D9%85%D8%A9-%D8%B9%D9%86-%D9%81%D9%84%D8%B3%D8%B7%D9%8A%D9%86-%D9%87%D9%83%D8%B0%D8%A7-%D8%AF%D8%B9%D9%85%D8%AA%D9%87%D8%A7-%D8%A5%D9%84%D9%87%D8%A7%D9%86-%D8%B9%D9%85%D8%B1-%D8%B4%D8%A7%D9%87%D8%AF
https://www.zerohedge.com/political/tlaib-censured-house-saying-biden-supports-genocide-gaza

Posted by 八木 at 10:40 | イスラム世界で今注目されている人物 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

ハマス・イスラエル戦争勃発後初めてのナスラッラー・ヒズボラ書記長の発言の真意[2023年11月04日(Sat)]
イスラエル軍のガザ本格侵攻をうけて、2023年11月3日、これまで沈黙を保ってきたレバノンのヒズボラのトップであるナスラッラー書記長がテレビ演説でガザ情勢について、はじめて見解を表明した。ヒズボラとイスラエル軍との交戦は散発的には続いているが、ヒズボラが本格的に参戦すれば、イスラエルは二正面作戦を強いられることになりナスラッラー書記長の発言の真意が注目されている。

ナスラッラー・ヒズボラ書記長発言骨子(2023年11月3日)
@ ハマスの10月7日の「アル・アクサ洪水」作戦は100%パレスチナ人によって決定され、その実行は100%パレスチナ人によって行われ、その組織は誰に対しても パレスチナの派閥や抵抗運動に対してさえ、それを隠していた。
A イラン・イスラム共和国は一貫してこれらの抵抗勢力を支援しており、イランの指導部はその決意を揺るがすことはなかったが、彼ら(ハマス側)に対していかなる圧力も勧告も加えたことはなく、同指導者に何も求めなかった。決定の真の主は、抵抗組織指導部と、その戦士たちである。
B (ハマスの)絶対的な秘密主義が10月7日のアル・アクサ・ストーム作戦の成功を確実なものにした
C ハマスが10月7日の攻撃計画を隠蔽したことを我々は気にしていない
D ハマスがイスラエル占領軍に対して奇襲攻撃を開始した翌日の10月8日にレバノン抵抗運動(ヒズボラのこと)がイスラエルとの戦いに参戦した。これまでにヒズボラ戦闘員57人が殉教した。
E 我々は、現在この聖戦に関わっている強くて勇敢なイラクとイエメンのひとびとに敬意を表さなければならない(注:シリア、イラクに駐留している米軍への散発的な攻撃を指す)。
F ガザ侵攻は米国による侵攻であるため、米国はガザ侵攻を止めることができる。米国に対して言う。地域的な戦争を防ぐにはガザ侵攻を直ちに止めなければならない
G イスラエルとレバノンの国境地帯での戦線が「本格的な戦争」に突入する可能性については、それは起こり得ることであり、敵はその可能性をあらゆる考慮に入れなければならない。

(参考1)ヒズボラの強みと脆弱性
1.強み
@レバノンに根付いた組織であること
A過去に対立したキリスト勢力にもパイプを有すること(ヒズボラはアウン前大統領との協力してきた
Bイスラエルに抵抗するレジスタンス組織として、国内で存在を認められ、アラブイニシアティブでレバノン内戦後、各民兵組織が武装解除されたが、国内で唯一武装解除を免れてきたこと
Cイランからの財政・武器支援を受け、シリアからもロジスティック面で支援を得てきたこと。2013年4月頃からシリア内戦に本格的に介入し、アサド政権存続に貢献した。

2.脆弱性
@ 米国のイラン経済制裁の影響で、イランからヒズボラへの財政支援が減少しているとみられること、
Aシリア内戦に関与し、多数のヒズボラ戦闘員が犠牲になったこと
B最重要事項は、イランに諮る必要があり、最終的な意思決定権を有していないとみられること。そのつなぎ役としてのIRGCコッズ部隊のソレイマニ司令官が、2020年1月米軍のドローン攻撃で殺害され、指示・調整機能が弱体化している可能性があること
Cかつては、イスラエルへの抵抗活動のシンボルとして、アラブ世界からも一定の評価を受けていたが、2016年3月にはサウジ他湾岸アラブ諸国がヒズボラをテロ組織に指定したこと
D米国は、ヒズボラをテロ組織に指定し、ヒズボラ関係機関・団体・個人に制裁を科しており、レバノンの金融機関がその影響を受けていること
E2020年8月4日のベイルート港穀物倉庫大爆発やコロナ禍といった惨状にもかかわらず、欧米の制裁で、復興が進んでおらず、ヒズボラはその責任の一端を負わされていること

(2)シューラ評議会とイランの関係
シューラ評議会、または諮問評議会は、ヒズボラの国家レベルでの最高かつ中央の意思決定機関。 ナイム・カーセム副書記長によれば、組織的には、「戦略目標ピラミッドの最上位にあり、全体的なビジョンとポリシーを描き、党の機能の一般的な戦略を監督し、政治的決定を下す責任がある」。 全会一致または多数決により行われたその決定は、最終的であり、党員を宗教的に拘束する。
シューラ評議会は、イランの最高指導者の権威にのみ従属しており、イランの最高指導者を、ワリー・アル・ファキーフと見なし、議論が行き詰まった場合、問題は最高指導者に照会される。理論的には、ヒズボラの書記長は、 評議会の「対等なメンバーのひとり」であるが、ハッサン・ナスラッラーの指導の下で、イランの最高指導者の権威の下で評議会の事実上の長となった。
• シューラ評議会メンバー
• 議長: ハッサン・ナスラッラー(Hassan Nasrallah)書記長
• 評議会メンバー: Sheikh Naim Qassem (副書記長), Sheikh Mohammad Yazbek (司法評議会議長), sayyed Ibrahim Amin al-Sayyed (政治評議会議長), sayyed Hashem Saffieddine (執行評議会議長), Hussein al-Khalil (Secretary General’s political aide), Mohammad Raad (議会活動評議会議長で、抵抗ブロック忠誠委員長.

(コメント)2006年以来、イスラエルとの本格交戦を控えてきたヒズボラが、仮に対イスラエル戦争に本格参戦すると、イスラエルは、南のガザ(ハマス、イスラム聖戦)と北のレバノン(ヒズボラ)の二正面作戦を強いられることになる。今回のナスラッラー書記長の発言の真意は、どこにあるのだろうか。そもそも、10月7日にハマスの越境作戦が開始され、それに対して、イスラエルがハマス掃討作戦を開始し、ヒズボラは、ナスラッラー書記長によれば、10月8日に参戦した。しかし、ナスラッラー書記長がガザ情勢について語るのは、11月3日になってはじめてである。ヒズボラは、比較的慎重に対応してきたようにみえる。また、今回の書記長の発言をみても、今次ハマスの作戦は100%ハマスの決定であり、ハマスの作戦を知ったのは、開始後で自分たちは相談にあずかっていなかった、また、ヒズボラがその権威に従属するイランの最高指導部も関与していなかったことを、あえて強調している。これは、イランがハマスの作戦に事前に関与していたことを打ち消すためであることに加え、北から散発的な圧力をイスラエル側に加えることはあっても、ヒズボラが矢面にたって、イスラエルとの交戦状態に入ることはない、イランもそれを望んでいない米国は、イスラエルをたきつけるのではなく、イスラエルに停戦を働きかけ、パレスチナ人を救うべきであるというメッセージを米国ならびに国際社会に発しているとみるのが妥当であろう。
https://www.tasnimnews.com/en/news/2023/11/03/2982724/al-aqsa-storm-operation-100-percent-palestinian-says-hezbollah-chief

Posted by 八木 at 15:00 | イスラム世界で今注目されている人物 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

ロシアのCTBT批准離脱[2023年11月03日(Fri)]
2023年11月2日、ロシアのプーチン大統領は、ロシアの核実験の再開への道を開く法律に署名し、発効させた。これは、世界のすべての核実験と核爆発の禁止を目指す1996年に成立した画期的な条約である包括的核実験禁止条約(CTBT)のロシアの批准を解除するためのものである。この条約は、潜在的核能力を有する44か国が批准してはじめて発効することになっている。この条約の発効には、まさに大国間、あるいは、地域のライバル関係にある国同士の安全保障への懸念が影響しており、米国と中国、インドとパキスタン、中東のイスラエル、エジプト、イラン、そして核実験を繰り返してきた北朝鮮が批准することが求められている。ロシアと米国は1996年にこの条約に署名し、ロシアは2000年に批准したものの、米国は批准せず、それを法律として成文化するという段階に踏み切っておらず、臨界前核実験を時々実施していることが確認されている。
 CTBTは、未だ発効していないものの、世界各地に張り巡らせられた監視網はすでに約8割が稼働している。ウィーンに本部のある準国連機関であるCTBTO(CTBT機関)関連の世界の核実験の監視網は、地震波、微気圧振動、放射性核種の観測所が最終的に321か所設置されることになっている。放射性核種観測所は、80か所設置されることになっており、日本でも高崎と沖縄の2か所運用されている。高崎では、2013年2月の北朝鮮起源とみられる放射性キセノン133(133Xe)を2か月弱後に観測することに成功した。CTBT放射性核種観測網による福島原発事故排出の放射性キセノン観測において、事故後12日間で、Xeは世界を一周したことが確認されている。キセノン133は原子力発電所や核兵器における核分裂反応をする核燃料であるウラン235やプルトニウム239の核分裂の際の主要な生成物で、半減期は5.248日であり、核実験や原発事故等で測定の主要な対象になっている放射性核種である。2013年2月に起きたロシアのチェリャビンスク州に落下した隕石の衝撃波は、CTBTOの国際監視制度(IMS)によれば、関連の世界中の微気圧振動観測所20か所で観測され、衝撃波は地球を回って2回観測され、この隕石の衝撃は、460キロトンの火薬の爆発に相当したとのこと。
(参考)1945年以降現在までに確認された核実験の数:2056回(アルジャジーラによる)
@米国 1030回 Aソ連・ロシア:715回 B仏210回 C英45回 D中国45回
E北朝鮮 6回 Fインド3回 Gパキスタン2回 (イスラエルは不明)

(コメント)世界一の核弾頭を有するロシアのCTBT批准離脱は、未だ批准していない米国に対抗するものであるが、大国間、あるいは地域ライバル国間の綱引きでCTBTが発効しない中、世界に核の脅威がまたひとつ増えたことを意味する。さらに、最近のガザ情勢の悪化は、中東地域の核保有国とみられるイスラエルと核能力を高めようとするイランとの緊張をさらに拡大する懸念がある。

Posted by 八木 at 15:52 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

MKO創始者で現NCRI議長の夫マスウード・ラジャヴィ死亡の報道 [2023年10月31日(Tue)]
このブログでは、去る8月7日「驚きのアルバニア当局によるイランの反体制組織ムジャヒディーン・ハルクMKO」の活動制限」と題して、アルバニア当局によるムジャヒディーン・ハルク組織(MKO、あるいはMEK)のリーダーで、イラン国民抵抗評議会(NCRI)マルヤム・ラジャヴィ暫定議長のアルバニア政府による入国禁止措置などを投稿した。https://blog.canpan.info/meis/archive/534
これに関連して、2023年10月29日、イランのタスニム通信は、長らく表舞台に姿を現さなかったマルヤムの夫でMKOの創始者でもあるマスウード・ラジャヴィ(1948年生まれ)が3年前に病気で、米国の保護監視下で死亡していたと報じた。
イランのタスニム通信は、ムジャヒディーン・ハルク組織(MKO)の首謀者が3年前に心臓発作で死亡した経緯について新たな詳細を入手したとの記事を発信した。主要点は次のとおりである。
1.ある治安関係者はタスニム通信に対し、MKOの元代表マスウード・ラジャヴィ氏(マルヤムNCRI議長の夫)が、闘病と心臓発作を経て3年前に死亡したと語った。2003年の米軍のイラク侵攻後、ラジャヴィ氏は米軍の作戦中に足と顔に重傷を負い、そのため亡くなるまで公の場から姿を消した。ラジャヴィ氏はイラクからヨルダンに逃れ、そこで糖尿病と高血圧を発症したと伝えられている。 身元の追跡特定を避けるため、医療センターで治療を受けることができなかったとされる。
2.その後、ラジャヴィ元代表の健康状態が悪化し、視力を失い、片足を切断された。2010年代初頭、イラク民衆勢力からMKOに対する圧力が高まり、イランがテロ組織とみなすイラクのアシュラフ・キャンプへの攻撃を開始したため、MKO部隊はイラクから海外に逃走するためにあらゆる努力を払った。 しかし、その後拠点となったアルバニアへの移動には、米国と英国が指定したテロ組織のリストから除外する必要があった。 MKOをブラックリストから除外するために米国が提示した条件の1つは、マスウード・ラジャヴィ元代表が会合やイベントに姿を現さないことだった。 米国は彼の写真さえも公開しないよう求めていた。
MKOメンバーに対する米国の計画の1つは、彼らをアジア、アフリカ、欧州の数カ国に定住させることであったが、イラクでのMKO部隊の状況が非常に危機的となったことをうけて、MKO指導者らはイラクから欧州への集団移動の条件を受け入れた。
3.消息筋によると、マスウード・ラジャヴィ氏は死亡するまで米国の警護下で不特定の場所に保護されていたという。 イラン生まれでファゼル博士という別名で活動する内科医アッバース・シャケリ氏は、米国に移送される前にマスウード・ラジャヴィ元代表の治療を担当していた。シャケリ氏は1986年にイランからイラクに逃れ、MKOに加わったが、現在はジアディン・アブドルラザギという偽名でパスポートを持ちフランスに居住している。シャケリ氏とは別に、ラジャヴィ氏のマッサージ師やボディーガードなど、他の多くの内部関係者が2021年以降、欧州の多くの国に移動している。この情報筋は、マスウード・ラジャヴィの名で時折発表される声明は、MKOメンバーらに対して彼のいわゆる救世主としての性格を復活させることを目的としており、死亡した元代表の古い写真がMKO声明とともに表示されるのはそのためである、と結論づけた。
4.MKOメンバーはイラクで長年を過ごし、イラクの元独裁者サッダーム・フセインの庇護を受け、武装した。 彼らは1980年から1988年のイラク・イラン戦争ではサッダーム側に味方し、サッダーム政権崩壊後誕生したシーア派政権により、居場所を失い、2012年に米国がMKOのテロ組織指定を解除し、翌年アルバニアに移動し、アシュラフ3キャンプを拠点に活動していた。
https://www.tasnimnews.com/en/news/2023/10/29/2980064/details-emerge-in-death-of-mko-ringleader-massoud-rajavi

(参考)マスウード・ラジャヴィ氏とは如何なる人物か(アルジャジーラ報道)
1948年生まれの、1979年のイランイスラム革命につながる運動に取り組んだ人物の一人だった。政治学の学位を取得して卒業した彼は、当時モハマド・レザー・シャー・パフラヴィーに反対する左翼グループであったMEKに参加した。彼はグループのリーダーとして浮上したため、シャーの治世下で何年も刑務所に収監されたが、イラン革命成功後、他の政治犯らとともに釈放された。しかし、最高指導者の権限の範囲などを巡って、誕生したばかりの共和国指導者ホメイニ師と仲違いするまで、そう時間はかからなかった。大統領選挙や議会選挙でも落選したラジャヴィ氏は、新イスラム共和国の指導者らと不仲で弾劾されたイラン初代大統領バニー・サドル氏とともに1981年にイランからパリに亡命した。両者は力を合わせ、MEKの統括組織としてイラン抵抗国家評議会を設立し、イラン体制に代わるものとして主張した。 しかし、ラジャヴィ大統領がイラン革命政権に対してより暴力的なアプローチを望んでいたため、両者は意見が一致しなかった。ホメイニ師の新秩序に対抗するために、MEKはすでに爆撃を含む一連の攻撃を開始しており、イランでは多くの民間人が死亡した。彼らは多くの暗殺を組織し、その中で最も注目を集めたのが、イラン第2代大統領ムハンマド・アリー・ラジャイと当時の首相ムハンマド・ジャバド・バホナールを殺害したものである。 彼らは現最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイさえ殺害しようとしたとされる。
https://www.aljazeera.com/news/2023/10/30/former-mek-leader-massoud-rajavi-died-under-us-guard-says-iran-media
(コメント)マルヤム・ラジャヴィ現NCRI代表の夫でMKO(MEK)の創始者マスウード・ラジャヴィ元代表がなぜ表舞台に20年にわたって姿を現さないのか不思議に思う人も多かったのではないかと思われる。マルヤム・ラジャヴィ現NCRI代表は、毎年パリで開催されてきたイラン解放イベント(フリーイラン)の大集会では、欧米、イスラエルなど現在のハメネイ・イラン政権に反発する政治家や企業家など多数を集めイランの革命体制の終焉・打倒を訴えていた。とりわけ、トランプ政権をささえていたペンス元副大統領(次回大統領選挙共和党内レースから離脱)やジュリアーニ弁護士、ボルトン元大統領補佐官など著名人多数が、集会に出席して、気勢をあげていた。その中で、創始者マスウードが登場することは決してなかった
今回のタスニム通信の報道通りであれば、マスウードは長らく病気を患い、また、かつてサッダーム・フセインと協力関係にあったことにもかんがみ、米国治安当局から、表舞台には出ることは許さないという条件で、マルヤム以下のMKOメンバーの活動を認めてきたことが判明した。2023年6月に、アルバニア治安当局は、ティアラ近郊のアシュラフ3キャンプを急襲し、仏に逃れたマルヤム代表の再入国も禁止し、アシュラフ3キャンプは、アルバニア当局の厳しい規制下に置かれたとされる。MKOメンバーのカナダ移動計画も持ち上がっているとのことだが、順調には進んでいない模様。MKOは、イラン革命体制が、イラン国民からの支持を受けていないことを示す有力なカードとして扱われてきた側面があるが、イラン現政権からみれば、民間人や政府要人17000人を殺害した「テロ組織」であり、イランの現体制を支持していない国民からも必ずしも、MKOは歓迎されているわけではない。米国やフランスは、MKOメンバーをどこに移動させ、どのように支援していくのか、その方向性ははっきりしていない。但し、仮にトランプ政権が復活することになれば、改めてMKOに追い風が吹くことはありえないことではない。

Posted by 八木 at 12:00 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

中東情勢の緊迫化で存在感を増すカタール[2023年10月24日(Tue)]
カタールは、アラビア半島のアラビア湾(ペルシャ湾)側に突き出た半島国家で、人口は外国人を含めて300万人に満たず、うちカタール国籍者は10%強しかいないとみられている。その国の政治的、経済的影響力が今注目されている。とりわけ、今回のハマスの人質となった米国人親子2名の解放のほか、イスラエル人女性高齢者2名の解放も報じられた。さらに、現在、外国籍との二重国籍者50名程度の解放の話が進んでいるとも報じられている。なぜ、カタールは、このような仲介活動を行うことができるのであろうか。
1. カタールの政治力
カタールは、サーニー家が支配する首長制国家で、現在の元首は、シェイク・タミーム・ビン・ハマド・アールサーニー首長である。2013年6月25日に父親のハマド前首長から元首の座を引き継ぎ、現年齢43歳においても世界で最も若い君主であるといわれる。このカタールの政治力を引き出しているのは、長年培ってきたイスラム主義勢力とのネットワークと石油・天然ガスを背景にした財政力である。カタールには、米中央軍の基地である約1万人の兵員を抱えるウデイド空軍基地が存在する。親米国家でありながら、イスラム過激組織指導者、あるいは過激な行動を容認する精神的指導者であるとされる人物も国内に受け入れてきた。その代表的人物は、エジプト出身のユースフ・アルカラダーウィ師である。同師は、ムスリム同胞団の精神的指導者で、イスラム主義者に強い影響力を有していたが、2022年9月26日カタールのドーハで死去した(アラブ紙が報じた同師の主なファトワ下記1のとおり)。現在、イスラエルと戦闘状態に入っているハマスの最高指導者イスマイール・ハニーヤ政治局員もカタールに事務所を構える。10月7日のハマスの襲撃後のイスラエル軍によるガザ完全包囲の中で、なぜ、ハニーヤ指導者が、ガザを抜け出て、カタールでイラン外相等と会談できたのか不思議に思った人も多いと思われるが、ハニーヤはカタール政府に2013年以来客人として迎入れられており、ガザにいたわけではない。すなわち、ハマスに直接影響力を行使できるのが、カタール政府といえる。もちろん、ガザの現場では、ハマスの軍事部門アル・カッサーム旅団を率いるムハンマド・ディーフ司令官や、ハマスと連携するイスラム聖戦(イスラミック・ジハード)も存在し、政治部門と軍事部門は立場が完全に一致するとはいえないものの、それでもカタールからの要請をハマスは無視することはできない
カタールは、テロ組織を支援しているとの理由で、2017年6月5日から隣国サウジアラビア、UAE、バーレーン、エジプトから外交関係を打ち切られ、陸海空の封鎖を受けてきたが、この間、トルコなどの支援も受けて、この危機を乗り越えることができた。トルコもカタールと並んで同胞団にパイプをもつ国であり、アラブ4か国のカタール封鎖時には、いち早くトルコ軍部隊を派遣して、軍事的緊張拡大を抑制した。ハマスは、エジプトで、ムバラク政権を崩壊させたムスリム同胞団とは思想的に近い関係にある「イスラム抵抗運動」と呼ばれるイスラム主義組織であり、カタールは、ハマスや同胞団も支援しているとして、アラブ4か国にテロ支援国家呼ばわりされ、このような組織との関係を断つこと、アルジャジーラなどカタールが資金提供しているメディアを閉鎖することなどを要求したが、2021年1月上旬アラブ4か国は、見返りを得ることなくカタール封鎖を解くことになった。さらにカタールは、アフガニスタンのタリバーンと米国トランプ政権との和平交渉の場を提供してきた。トランプ政権による和平合意を引き継いだバイデン政権は、2021年8月アフガニスタンから完全撤退した。アフガニスタンからは多くの避難民が国外に逃れた。女性の就労や教育などの人権問題が悪化し、経済的にも新たな援助が入らず、疲弊している。2021年8月の親米アフガン政権崩壊後、世界中のどの国もタリバーン政権下のイスラム国家を承認していないが、2023年9月現在、15か国が大使館をカブールで開いているとされ、西側の多くの国々は、カタールで、必要に応じて、タリバーン政権側と接触しているとされる。

(参考1)アル・カラダーウィー師の物議を醸したファトワ
2003〜2005年:イスラエルおよびユダヤ人に対するジハードを呼びかけるファトワを複数回発した。その中で、パレスチナに住むユダヤ人成人は全員「占領者、戦闘員」であり、戦争の正当な標的であるとした。
2004年:イラクに駐留する米軍に対する反乱を正当化し、戦う者の殺害を容認した。
2010年:自爆テロは本当の意味での自殺ではなく、作戦を実行した結果としての事故的な死であり、聖戦における名誉ある犠牲であり殉教であると見なされると主張した。
(参考2)米国とタリバーンとの和平交渉を仲介したカタール
2020年2月29日 米国トランプ政権とタリバーンは、カタールのドーハでアフガニスタンに「平和をもたらすための合意」に署名。 米国とNATOの同盟国は、武装勢力が合意を支持した場合、14か月以内(2021年4月末まで)にすべての軍隊を撤退させることになった。トランプ政権からアフガン合意を引き継いだバイデン政権は、米軍は、同時多発テロからちょうど20年後の2021年9月11日までにアフガニスタンから撤退する予定を表明。その後、ガーニ政権支配地を次々に奪還したタリバーン部隊は 2021年8月15日、カブールに侵攻、支配し、欧米軍は8月末までに完全撤退。

2. カタールの経済力
カタールは液化天然ガス(LNG)の輸出量で、カタールは米国、豪州とトップを争っており、2022年のBPほかの統計では、カタールが1位を僅差でライバルを退けたとされる。カタールには、ガス輸出国フォーラムの事務局も置かれている。ロシアやイランもメンバー国である。カタールはノースフィールドガス田拡張プロジェクトを実施中。なお、カタールは産油国でもあるが、OPECからは脱退している。
(1)North Field拡張プロジェクトは同国北東部のRas Laffanに位置し、ノースフィールド東(North Field East:以下、NFE)プロジェクトと呼ばれる第1段階の拡張計画では4基のLNGトレイン(トレイン1〜4)が建設され、ノースフィールド南(North Field South:以下、NFS)プロジェクトと呼ばれる第2段階の拡張計画では2基のLNGトレイン(トレイン5・6)を建設するプロジェクトであり、同国のLNG生産能力を現在の年産7,700万トンから2027年に1.26億トンにまで引き上げる計画
(2)欧米は、カタールのノース・フィールド拡張プロジェクトに協力
• 第一段階(目標年2025年)ノース・フィールド東ガス田の開発(事業費:約288億ドル、LNG生産能力1.1億トン)右矢印1カタール・エナジーは、2022年6月トタルエナジーズ(仏)、エニ(イタリア)、コノコフィリップス(米)、エクソンモービル(米)、シェル(英)の5社とパートナーシップ合意を発表
@エクソン:6.25%、Aトタル:6.25%、Bシェル:6.25%、Cエニ:3.125%、Dコノコ:3.125%、Eカタール・エナジー75%
• 第二段階(目標年2027年)ノース・フィールド南ガス田の開発(事業費約150億ドル、LNG生産能力1.26億トン)右矢印12022年9月以降、トタルエナジーズ(仏)、シェル(英)、コノコフィリップス(米)が契約に調印。
@トタル:9.375%、Aシェル:9.375%、Bコノコ(6.25%)、Cカタール・エナジー(75%)


(参考)日本とカタールとのLNG取引
カタールは、長年LNGを長期契約の基づき日本に供給してきた。
カタールは、2021年末でLNG供給の長期契約を打ち切った日本に替わり、中国との間で27年間のLNG長期供給契約締結(2022年11月21日)した。年間400万トン、26年開始見込み。ロシアのウクライナ侵攻をうけて、最大の発電事業者のJERAは、2022年12月27日、オマーンとの間で10年程度の長期契約を結び、2025年以降、年間で235万トンのLNGを新たに輸入することで基本合意した。JERAは23年10月には、UAEとの間で2年間80万トンの供給契約を結んだ。カタールは日本との関係解消を望んでいるわけではなく、2022年の安倍元総理国葬にはタミーム首長が出席し、昭恵夫人に弔意を表明し、2023年7月18日には、サウジ、UAEに次いで、カタールを訪問した岸田総理は、日・カタール首脳会談で、日本側は、両国間のLNG協力の重要性を強調した。

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注目のインド・中東・欧州新経済回廊構想の打ち上げ[2023年09月11日(Mon)]
2023年9月9日、ニューデリーでのG20首脳会議の機会に、米国、インド、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、EUの首脳は、インド・中東・欧州新経済回廊構想実現に向けての覚書に署名した。
@ インドからUAE、サウジアラビア、ヨルダン、イスラエルを経由して欧州までの鉄道路線と港湾接続を統合し、スムーズかつ迅速な物流を実現する。
Aエネルギーインフラを開発し、グリーン水素の製造とすべてのパートナーへの輸送を可能にする。
Bこの地域を接続する新しい海底ケーブルを設置し、電気通信とデータ転送を強化する。

(解説)G20サミットには、中国の習近平国家主席、プーチン大統領は出席せず、期待された米中トップ会談は実現しなかった。具体的な成果が懸念される中、議長役のモディ首相は、9月9日の初日に、ウクライナ侵攻を行ったロシアを直接名指し批判せず、当初難航が予想されたG20首脳宣言をまとめて発出することに成功した。今回のG20には正式メンバー国以外に多数の国の首脳が招かれたが、その中のひとりは、UAEのムハンマド・ビン・ザーイド大統領である。正式メンバーであるサウジアラビアの代表は、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子(首相)であった。首脳会議の機会を利用して、中東の2首脳にバイデン米大統領、モディ首相、EUのフォンデアライエン委員長が加わり、インド・中東・欧州新経済回廊構想実現に向けての覚書が署名された。先の2023年8月のBRICS首脳会議では、サウジ、UAE、エジプト、イラン、エチオピア、アルゼンチンの6か国に加盟正式招待が発出され、2024年1月に、11か国に拡大の予定となっており、7月に開催された上海協力機構(SCO)にはイランが正式メンバーとなり、さらに、サウジ、カタール、エジプトが対話パートナー国となり、欧米とは一線を画し、中国が影響力を有するブロックが中東の主要国を取り込むことになり、G7・EUブロックとの間で世界秩序の二極化が進むのではないかとみられていた。
こうした中で、今回のインドから中東を経由して欧州を結ぶ新経済回廊構想の打ち上げは、グローバルサウス台頭における米国のメッセージであり、@拡大BRICSやSCOは、G7・EUブロックと対立するものではないとのインドや中東産油国の立場、A欧米やインドによる中国の一帯一路構想とは別の経済回廊構築を進める意向を反映したものと考えられる。この関連で、イタリアのメローニ首相は中国代表の首相に一帯一路構想参加辞退を伝えたといわれる。欧州にとっては、14億人の人口を抱えるインドとの物流の大幅向上が可能になり、中東の産油国UAEやサウジにとっては、イスラエルを巻き込んだ地域開発を加速することになる。とくにサウジは、イスラエルにも近い地域でNEOMという新未来都市、物流拠点、娯楽スポーツ施設の建設を開始しており、イスラエルとの関係正常化、ハイテク分野での協力推進を後押しするとみられる。なお、イスラエルは、今回の署名には加わっていないが、新経済回廊構想は、米、イスラエル、UAE、インド、EU間で話し合われてきたとされ、鉄道の発着点がハイファ港になること、また、グリーン水素をはじめとする新エネルギーの輸送や電気通信・データ送信のための海底ケーブルがイスラエルと欧州を結んで設置される計画であることから、イスラエルにとっての利益は大きく、既にイスラエルは実質的な計画の推進者となっている。カショギ殺害事件で冷却化したMBS・バイデン関係は、昨年7月のバイデン大統領のサウジ訪問でもぎくしゃくしていたが、今回のニューデリーでMBSとバイデン大統領は、モディ首相を交えて満面の笑みを浮かべていたのが印象的であった。ただし、サウジアラビアは、ロシアとも協力してOPECプラス枠内で原油の減産調整を継続し、ガソリン価格は高騰を続けており、サウジは、欧米寄りに再び舵を切ったというより、自国にとって利益のある国々とは、欧米の価値観にかかわらず、協力を続けるということである。なお、この計画実現で影響が出るとみられるのは、スエズ運河通行収入が減少するエジプトであるが、サウジは、地域開発にエジプトも巻き込む形で、違う形でエジプトも恩恵を受けることができるよう配慮するとみられる。
https://www.ndtv.com/india-news/g20-summit-in-delhi-the-significance-of-europe-mid-east-india-trade-corridor-plan-explained-4375429
https://www.opindia.com/2023/09/pm-modi-joe-biden-india-eu-gulf-rail-shipping-corridor/amp/

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拡大BRICSの世界経済に与えるインパクト[2023年08月26日(Sat)]
2024年1月に発足する拡大BRICS11か国の各種指標と世界シェアは次のとおり。
GDP、人口、商品輸出では、現BRICS5か国と比べて伸びは少ないが、石油関連では大きく伸びる。すなわち、石油輸出国と消費国を結びつける枠組みが誕生するというのが拡大BRICSの最大の特徴である。
@総人口は36億人(世界人口の46%)で G7の人口の4倍以上。追加6か国のうち、1億人を超えるのは、エチオピア (1 億 2,650 万人) とエジプト (1 億 1,270 万人)。(World Population Review公表数字)
A面積は4,850万平方キロメートルで36%をカバーし、G7の2倍。(tass 報道)
B2023年のGDP予測では合計がわずかに増加して30.8兆ドルとなり、世界シェアの29.3%となる見込み(現5か国のGDPは27 兆 6000 億ドルで世界全体の 26.3% に相当)。一方、購買力平価(PPP)で見たGDPは 65兆ドルで世界シェア37.3%、G7は29.9%(IMF23年予想。購買力平価GDPはtass 報道)
C石油埋蔵量は世界の44.35%。 G7諸国(米国、英国、ドイツ、イタリア、カナダ、フランス、日本)3.9%(tass 報道)
D石油生産に占める BRICS の世界シェアは 拡大後20.4% から 43.1% に増加(Energy Institute Statistical Review of World Energy統計)
E穀物について、2021年の統計で小麦総収穫量は世界全体の49%(G7諸国では19.1%)。米収穫量は55%(G7諸国は2.6%)(tass 報道)
Fアルミニウム生産量79%(G7:1.3%)とパラジウム生産量77%(G7:6.9%)ハイテク用重要金属の世界生産シェアの点でも有利になるとみられる。(tass 報道)
G世界の鉱工業生産総額の38.3%を占める(G7は30.5%)。但し、輸出シェアの点ではG7が依然として有利であり、その輸出シェアは28.8%。(拡大BRICSは23.4%)(tass 報道)
H商品輸出に占める世界シェアは 20.2% から 25.1% に増加(WTO統計)。
https://www.visualcapitalist.com/visualizing-the-brics-expansion-in-4-charts/
https://tass.com/economy/1664817/amp

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OPECプラスを彷彿させるBRICSプラスの誕生[2023年08月25日(Fri)]
8月22日から24日まで、南アフリカのヨハネスブルグで開催されたBRICSサミットが、24日、首脳宣言を発出して閉幕した。事前に関心を持たれていたBRICSメンバー国の拡大については、アルゼンチン、サウジアラビア、UAE、エジプト、エチオピア、イランの6か国に正式招待が発せられ、2024年1月から正式メンバーになることが決定した。また、BRICS共通通貨については、新通貨の決定の発表はなかったものの、「現地通貨、決済手段及びプラットフォームの問題を検討し、次回サミットまでに我々に報告する」よう求め、BRICSメンバー間の貿易・金融決済の新たな仕組みを検討することとなった。また、新開発銀行(NDB)については、ジルマ・ルセフ元ブラジル大統領を総裁に選定し、新興国による新興国向けの融資を強化していくこととなった。また、NDBの新メンバーにエジプト、UAE、バングラデシュの3か国が加わったことが発表された。
(参考1)BRICSヨハネスブルグ会合首脳宣言の中での注目項目
44項. 私たちは、迅速で、安価で、透明で、安全で包括的な決済システムの広範な利点を認識している。BRICS 諸国における国境を越えた決済に関する G20 ロードマップのさまざまな要素のマッピングについて、BRICS決済タスクフォース(BPTF) のレポートを期待している。国境をまたぐ決済システムの相互リンクを含む決済インフラに関するBRICS諸国による経験の共有を歓迎する。私たちは、これによりBRICS間の協力がさらに強化されると信じている。そしてBRICSメンバー間ならびに他の発展途上国との貿易や投資の流れを促進するための決済インフラに関する更なる対話を奨励する。
我々は、BRICSメンバー間ならびに他の貿易パートナーとの間で、国際貿易や金融取引において現地通貨の使用を促進することの重要性を強調する。我々は、BRICS間のコルレスバンキングネットワークの強化ならびに現地通貨での決済を可能にすることを奨励する。
45項. 我々は、必要に応じて財務大臣及び/又は中央銀行総裁に対し、現地通貨、決済手段及びプラットフォームの問題を検討し、次回サミットまでに我々に報告するよう任務を与える。
46項. 我々は、加盟国のインフラと持続可能な開発の促進における 新開発銀行(NDB)の重要な役割を認識する。 我々は、元ブラジル大統領ジルマ・ルセフ女史が新開発銀行(NDB)総裁に就任したことを祝福し、彼女がNDBの任務を効果的に達成するためのNDBの強化に貢献すると確信している。 私たちは、NDBが2022年から2026年の一般戦略の実現に向けて、持続可能な開発、メンバー拡大の着実なプロセス、コーポレート・ガバナンスと運営効率の改善に向けて最も効果的な資金調達ソリューションを提供し、維持することを期待している。 私たちは、バングラデシュ、エジプト、アラブ首長国連邦(UAE)という 3 つの新しい NDB メンバーを歓迎する。 我々は、NDB が知識共有プロセスにおいて積極的な役割を果たし、そのガバナンス・メカニズムに従い、国の優先事項と開発目標を考慮して、運営政策に加盟国のベストプラクティスをもたらすことを奨励する。 私たちは、NDB が新興諸国によって新興諸国 のために設立された機関としての独特の地位を備えていることから、グローバルな多国間開発銀行 ファミリーの重要なメンバーであると考えている。
91項.我々は、アルゼンチン共和国、エジプト・アラブ共和国、エチオピア連邦民主共和国、イラン・イスラム共和国、サウジアラビア王国及びアラブ首長国連邦を、2024年1月1日からBRICSの正式加盟国として招待することを決定した。
94項. ブラジル、インド、中国、南アフリカは、ロシアが2024年にBRICS議長国に就任し、ロシアのカザン市で第16回BRICS首脳会議が開催されることを全面的に支持する。
(参考2)NDBとは:JETROによれば、NDBは、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国のいわゆるBRICS諸国によって、BRICS諸国やその他の新興国のインフラや持続可能な開発プロジェクトに融資を行う目的で、2015年に設立された。本部は中国・上海市に所在する。総裁は、創設メンバーのBRICS諸国から選出され、任期は5年。現在の加盟国は、BRICSの5カ国に加えて、バングラデシュ、エジプト、アラブ首長国連邦(UAE)が新たに加わった。2022年12月時点の融資承認総額は328億ドルで、うちブラジル向けが50億ドルを超える。承認されたプロジェクト数は96件。
(解説)今回のBRICSメンバーシップ拡大は、事前の予想を超えた6か国で、それぞれ国際的、地域的に影響力を有する国々が選定された。まず、サウジ、UAEはいずれも中東の大産油国である。イランは米国の制裁下にあるものの、石油・天然ガスを有する資源大国であり、BRICSの発展の潜在力を有する国である。一方、エジプトは、かつての影響力はないものの、アラブ連盟本部をホストするアラブ世界の取りまとめ国で、アラブ諸国最大の人口を有する国である。エチオピアは、AUの本部をホストするアフリカの中心的国家のひとつである。アルゼンチンは、中南米で、ブラジル、メキシコに次ぐ経済力を有する国で、BRICS拡大の第一段階として、これらの国々が選ばれたことに違和感はない。BRICSの中でも、欧米の経済・金融支配に反発するロシアや中国にイランが加わった一方、G7や欧米に対立することを望まないインドや南アにアルゼンチンが加わることで、BRICSが既存の世界秩序と折り合いをつけるのか、あるいは競合する方向性を強めるのか、現時点ははっきりしない。しかし、拡大BRICSが世界のエネルギー資源国と巨大エネルギー消費国をカバーすることで、その影響力、存在感が増すことは疑いがない。いわば、OPECプラスを彷彿とさせるBRICSプラスの誕生ともいえる。今回は、メンバー諸国間の新たな決済手段としてのBRICS新通貨の発表には至らなかったが、産油国がBRICSに加わることで、メンバー間の特にエネルギー取引における自国通貨使用が拡大すると予想され、さらにオイルマネーが投入されることで新興国自身が新興国を支援するNDBの資金力、融資力が増すことは間違いなく、新興国が訴えてきたIMFなど国際金融機関内での先進国優位の決定権の見直しが進まなければ、独自にNDBを通じた影響力を行使していくことになると思われる。
https://www.thepresidency.gov.za/content/xv-brics-summit-johannesburg-ii-declaration-24-august-2023

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孤立感を深めるロシアのプーチン大統領[2023年08月24日(Thu)]
8月23日午後6時11分(GMT15時11分)オンライン追跡機関Flightradar24は、ロシアの民間軍事会社ワグネルの創始者で代表のプリゴジン氏搭乗の自家用航空機エンブラエル・レガシー600(飛行機番号RA-02795)がレーダーから機影が消滅したことを確認した。

ソーシャルメディアに投稿されたビデオクリップには、プライベートジェットとみられる飛行機が地上に落下する様子が映っていた。

民間航空機関によれば、レガシー 600 は 2002 年に就航を開始し、2020 年に生産が終了するまで 300 機近くが生産された。その間、レガシー600が関係した事故は2006年9月29日にブラジルから米国に向かう途中で同国の国内線として運航されていたボーイング737とエンブラエル・レガシー600がブラジル内陸部で空中衝突を起こしたゴル航空1907便墜落事故(Gol Transportes Aéreos Flight 1907)1件のみとされる。その事故で、エンブラエル機は墜落を免れたが、ボーイング737型機は左翼を大きく損傷し機体制御を失ったまま空中分解して墜落、乗員乗客154名全員が死亡した。レガシー600の機体は損傷したが、パイロットは着陸し、死傷者は出なかった。

このケースはあくまで、空中衝突であり、レガシー600は技術的問題が少なかったことがわかる。プリゴジン氏一行は当然、搭乗前に、綿密に機体チェックを行っていたと考えられ、ここで浮上するのは、レガシー600が撃墜されたのではないかという疑惑である。

モスクワからサンクトペテルブルクに向かって飛行中であったレガシー600機は北西部トベリ州で墜落し、搭乗機には、プリゴジン氏に加えて、元ロシア特殊部隊オペレーターで民間軍事会社の共同創設者とされるドミトリー・ウトキン氏も搭乗し、米国がワグネル副長官とみているワレリー・チェカロフ氏も搭乗していた。他の乗客はセルゲイ・プロプースチン、エフゲニー・マカリアン、アレクサンダー・トットミン、ニコライ・マトゥエフの4名で、乗組員3名と合わせて10名が犠牲になったとみられる。

ワグネル系のSNS「グレーゾーン」は、プリゴジン「暗殺」は壊滅的な結果をもたらすだろう。命令発出者は軍の雰囲気や士気を全く理解していない。これは全ての者への教訓である。 最後まで行きつくことになるであろう、と指摘し、ロシア軍の対空防御システムが飛行機を撃墜したことを示唆した。 同報告によると、近くの住民らは墜落前に「特徴的な防空射撃が2度行われた」と聞いたという。 「これは、ビデオの1つにある上空での反転の痕跡によって確認されている」と付け加えた。 SNSテレグラムのマッシュ報道によると、地元住民は衝突前に2回大きな衝撃音を聞いたとされる。他にも、航空機搭乗前に、高級ワインを入れた箱が送られ、その中に爆薬が仕掛けられたという憶測である。バイデン大統領は、事実関係は承知していないとしていながらも、この出来事は「驚き」ではないとコメントした。すなわち、墜落を巡る状況は、プリゴジン氏とワグネルの幹部が一緒に移動する機会を狙って、政権上層部の指示で、搭乗機が撃墜された、すなわち、プリゴジン氏とその幹部が、6月の軍事クーデターの試みの代償を払って、形を整えて粛清されたとみられることである。因みに、8月18日付で、ワグネルと関係が深いとみられていた国軍副司令官で航空宇宙軍司令官のスロビキン大将が解任されている。
プリゴジン氏搭乗機が墜落した8月23日には、クリミア半島西側の村に設置されていたロシア軍が誇るS-400対空防衛システムが、同日午前10時にウクライナ軍によって破壊炎上する画像も広く流された。クリミア半島はもはや安全ではなく、戦場になるというメッセージである。8月23日、ブリンケン国務長官は、ビデオメッセージで、「クリミアは、ウクライナの領土であり、米国はロシアの違法な併合を認めず、クリミアを含む全ての領土への支配回復を支援する」と述べた。

ウクライナ戦線には、米国製戦闘機F-16の投入も決定しており、米国の外交トップがクリミア半島も戦場となるお墨付きを与えたことで、プーチン大統領は、今後の戦場での被害拡大に備える必要が出てくる一方で、かつての強力な友軍を「おそらく」自らの手で粛清するという事態に陥り、内憂外患の様相を呈しはじめている。プーチン大統領の権威失墜を象徴するかのように、8月20日、ロシアの月への無人探査機スプートニクは月面に衝突しミッションは失敗したが、インドの無人探査機「チャンドラヤーン3号」は8月23日、月の南極地点への着陸に成功し、モディ首相の威信を高めた。8月22日、ヨハネスブルグで開始されたBRICSサミットでビデオメッセージを送ったプーチン大統領は、事前に録画したが映像を送り、17分のスピーチは、生の声ではなく、吹き替えであったとされる。クレムリンのウェブサイトからは、生の声が聴けるものの、何回もせき込む様子が確認され、非常に不安定な精神状態・健康状態にあったのではないかと想像される。

ただ、ロシアのトップが孤立感を深めることが世界の安全につながるかといえば、おそらくそうではなく、緊急事態を避けるためのプーチン大統領と直接話し合える外国の指導者の存在はますます重要になってきている。
https://www.rt.com/russia/581735-prigozhin-plane-crash-facts/
https://www.trtworld.com/europe/russias-prigozhin-is-dead-in-plane-crash-wagner-group-confirms-14624886
https://www.newsweek.com/video-huge-explosion-crimea-ukraine-targets-russia-missiles-1821837

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本日開催のBRICS首脳会議での議論の注目点 [2023年08月22日(Tue)]
世界の目は今、南アフリカの首都ヨハネスブルグに向けられている。第15回BRICS首脳会議は8月22日から24日まで同地で開催される。BRICSはブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの頭文字である。正式メンバー5か国の首脳のうち、国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が発出されているロシアのプーチン大統領を除いて、4か国首脳は対面で参加し、ロシアはラブロフ外相を派遣し、プーチン大統領はオンラインで参加が予定されている。南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領から69カ国の首脳がサミットに招待されており、イランのライシ大統領は既に南アに向け出発したとされる。

BRICSには、40カ国以上が加盟に関心を示し、うち、23カ国が正式に申請書を提出したとされる。23か国には、アラブ8か国アルジェリア、バーレーン、エジプト、クウェート、モロッコ、パレスチナ、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)が含まれ、さらに、バングラデシュ、イラン、カザフスタン、ナイジェリア、セネガル、エチオピア、ベラルーシ、ボリビア、アルゼンチン、ベネズエラ、ベトナム、キューバ、ホンジュラス、インドネシア、タイが含まれている。サウジアラビアやUAE、イランをはじめとして、エネルギー資源国が多数含まれていることがわかる。

現在のロシアを除くBRICSメンバー国は、欧米の対ロシア制裁には参加していない。加盟を正式に申請したとされる国々にも対ロシア制裁に加わっている国は見当たらない。こうした中、南アで開催されるサミットの注目点を挙げれば次のとおり。
@メンバー国拡大の可能性右矢印1一部の国々の参加が承認されるのではないかとの観測が出ている。新たにブロックに参加する可能性が高いのは、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、アルゼンチンの3カ国との見方が出ている。
ABRICS新通貨発行右矢印1ブロック内では、ロシアが欧米の金融制裁を受けている関係で、石油やガス取引をドルやユーロでなく自国通貨で行うケースが増えているとされる。米国がドルを金融制裁の武器として使用していることから、ロシアだけでなく、メンバー国外のイランやベネズエラなど制裁下にある国々も、拡大BRICSで使用できる通貨ができれば、より貿易の幅が広がると期待している。
BBRICS新開発銀行右矢印1BRICS加盟国は、欧米が事実上支配する世銀やIMFではなく、BRICSとして独自に開発銀行を立ち上げ、途上国、新興国を積極的に支援していく必要性を認識し始めている。但し、それには、資金力が必要であり、そのためにも、サウジやUAEといった主要な産油国をBRICSのメンバーとして受け入れるのではないかとの観測が出ている。

(解説)国際社会において、いわゆるグローバル・サウスの存在感が増している。5月のG7広島サミットでも、招待国として、オーストラリア、ブラジル、コモロ〔アフリカ連合(AU)議長国〕、クック諸島〔[太平洋諸島フォーラム(PIF)議長国〕、インド(G20議長国)、インドネシア(ASEAN議長国)、韓国、ベトナムが参加し、グローバル・サウスをG7陣営に如何に取り込むかが重要なアプローチのひとつであった。2023年5月に開催された上海協力機構(SCO)外相会談の最重要議題の一つは、加盟国間取引の脱ドル化であった。インドとロシアはすでに貿易関係において自国の通貨を使用し始めている。 ウクライナ危機を受けた西側の対ロシア制裁をうけて、ロシア政府は米ドルとユーロへの依存を減らすために貿易決済に各国通貨を利用することに熱心である。 国際システムにおける脱ドル化プロセスの加速については、中国も貿易における自国通貨「元」の使用を働きかけている。 SCO での議論には、自国通貨の使用を拡大したいという地域大国の意図も反映されていた。2023年7月4日、オンライン形式で開催された上海協力機構(SCO)首脳会議には、ロシア同様米国の金融制裁を科されているイランが9番目のメンバー国として正式に承認された。首脳会議で発出されたニューデリー宣言には、「加盟国は、関心のある加盟国間で自国通貨による貿易決済の比率の段階的な拡大に向けたロードマップの実施に賛成した。」と記載されている。ロシアのウクライナ侵攻開始後、ロシアの値引きされた原油のインドへの輸出量が大幅に拡大しているものの、ロシアは、インド・ルピーを手に入れても、それで購入できる産品は限られており、BRICS共通通貨のようなより使い勝手のよい、使用範囲が限定されない通貨に関心を有していると思われ、一方、中国は、「元」取引が拡大する中で、BRICS共通通貨にこだわる理由は少ないと思われる。但し、BRICS各国ならびに加盟に関心を持つ国々の中では、取引の脱ドル化の方向性を支持する国が多いと思われ、その点でも、BRICS拡大会合の議論が注目される。さらに、BRICSにサウジアラビアやUAEあるいはG20のメンバー国であるアルゼンチンを正式メンバーあるいは準メンバーに迎入れるのか否かも注目される。SCOもBRICSも他の枠組みと対立あるいは競合するものではないとの建前ではあるものの、欧米主導の国際枠組みへの挑戦であることは疑いなく、欧米は、BRICS内でも特に関係が良好なインドなどと密接に連絡を取り合い、BRICSが中国やロシアの意向を反映しすぎないよう牽制するものとみられる。
https://watcher.guru/news/8-arab-countries-request-to-join-brics-alliance#google_vignette
https://timesofindia.indiatimes.com/business/india-business/brics-economies-catching-up-with-combined-gdp-of-g7-countries-piyush-goyal/articleshow/102917384.cms?from=mdr
https://newseu.cgtn.com/news/2023-08-20/2023-BRICS-Summit-The-Agenda-1mnl4xlQb8k/index.html

Posted by 八木 at 11:51 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

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