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イスラム世界との結びつきを通じて、多様性を許容する社会の構築についてともに考えるサイトです。
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社会デザイン学会で承認された中東イスラム世界社会統合研究会が運営する団体ブログです。
中東イスラム世界社会統合研究会公式サイト http://meis.or.jp
社会デザイン学会研究会案内 http://www.socialdesign-academy.org/study/study_application.htm
日本とイスラム世界とのネットワーク強化を目的として、以下の項目で記事を発信していきたいと考えています。
日本とイスラム世界との出会い:日本人や日本がどのようなきっかけでイスラム世界への扉を開いていったかを紹介します。
イスラム世界で今注目されている人物:イスラム教徒であるか否かを問わず、イスラム世界で注目されている人物を紹介していきます。
イスラムへの偏見をなくすための特色のある活動:イスラムフォビア(Islamophobia)と呼ばれるイスラム教への偏見、イスラム教徒排斥、イスラム教徒警戒の動きが非イスラム世界で高まっています。これらの偏見や排斥をなくすための世界の各地で行われている特色のある活動を紹介していきます。
中東イスラム世界に関心を抱くあなたへの助言:さまざまな分野で中東・イスラム世界に関心を抱き、これから現実に接点を持っていこうと考えておられるあなたへのアドバイスを掲載します。

情報共有:当研究会のテーマに関連したイベント、活動、寄稿などの情報を提供しています。

新着情報



モディ首相出席のイスラム教モスク跡地でのヒンドゥー教寺院起工式[2020年08月06日(Thu)]
8月5日、インドのモディ首相は、1992年に破壊されていたインド北部のアヨーディヤのバブリ・モスク跡地にでのラーマ寺院の起工式に出席し、ヒンドゥー教の宗教的な歌詞を唱えながら寺院の建設の開始を象徴する9つの石のブロックに祈りを捧げた完成までに3年半かかると見込まれている。式典には、現下のコロナウィルス感染拡大の最中、175名の聖者、司祭、ヒンドゥー教徒およびイスラム教徒のコミュニティ代表のみが式典に招待された。さまざまなヒンズー教の寺院やシーク教の神社から送られた2,000個の土鍋に入れられたインドの川からの水が現場に注がれた。寺院の幅は約72メートル(235フィート)、長さ91.5メートル(300フィート)、高さ49メートル(161フィート)で、5つのドームがあり、総面積は約7,804平方メートル(84,000平方フィート)である。式典は、約3,000人の治安部隊員が主要道路をバリケードで囲み、すべての商店やビジネスが閉鎖されている中で実施された。
(コメント)
モディ首相率いるインド人民党(BJP)が選挙マニフェストで長い間、カシミールの係争中の地域ジャム・カシミール州の自治を剥奪し、ムガール時代のモスクがかつて建っていた場所にヒンドゥー教のラーマ寺院を建設することを公約していたため、モディ首相にとっては、公約を実施したということになる。
今回のヒンドゥー教寺院起工式は、昨年11月にインドの最高裁判所がウッタル・プラデシュ州の係争中の土地にヒンドゥー教寺院を建設することを認めた判決に従ったもので、多くのヒンズー教徒は、彼らの神ラーマがその場所で生まれたと信じており、イスラム教の皇帝バブールがその寺院の上にモスクを建てたと主張している。
バブリ・モスクは、1992年12月にヒンドゥー教徒の暴徒によって破壊され、ヒンドゥー教徒とイスラム教徒による大規模な暴力が起こり、約2,000人、主にイスラム教徒が死亡した。最高裁判所の評決により、破壊されたモスクの場所にヒンドゥー寺院を建てることになった。コロナ感染拡大とイスラム教徒との衝突を避けるために大規模な治安部隊が投入されていなければ、この歴史的な事態を目撃するために何百万人ものヒンドゥー教徒がアヨーディヤに参集した可能性がある。
注目すべきは、画期的な式典に招待された人々に、最高裁判所の訴訟で主なイスラム教徒の訴訟者となったイクバル・アンサリが含まれていることであり、同人は、現在はアヨーディヤでのヒンドゥー教寺院の建設を支持している。最高裁は、昨年11月、近くのサイトに新しいモスクを建設するために、イスラム教徒に2ヘクタール(5エーカー)の土地を与えるように命じている。イスラム側の指導者が旧バブリ・モスクの跡地にヒンドゥー教寺院の建設を認めたことで、ヒンドゥー教徒、イスラム教徒の緊張緩和につながるのか予断を許さない。
なお、7月には、トルコのエルドアン大統領がアヤソフィアのモスク化を実行しており、このタイミングでのモディ首相のヒンドゥー教寺院建設開始は、エルドアン大統領を意識した自身の支持基盤にアピールする行為と考えられる。
https://www.aljazeera.com/news/2020/08/indian-pm-modi-lays-foundation-ram-temple-razed-mosque-site-200805090217486.html


(これまでの経緯)
•2019年11月9日、インドの最高裁判所は5名の判事の一致した判断として、1992年にヒンドゥー教の暴徒が破壊したインド北部のアヨーディヤで460年前に建設されたバブリ・モスクの跡地2.77エーカーを、条件に応じてヒンズー教寺院建設を監督する信託団体に引き渡す必要があると裁決を下した。一方で、アヨーディヤの別の土地5エーカーをイスラム教徒グループに引き渡すと裁決した。

1992年のヒンドゥー教徒暴徒によるバブリ・モスクの破壊は、1947年のインド独立以来、この国が経験した最も激しい宗教的暴動を引き起こした。イスラム教徒は中世時代のモスクで何世紀も祈りを捧げ、一方、ヒンドゥー教徒は自分たちの神ラーマ(宇宙、世界の維持、平安を司る神ヴィシュヌ神の化身。叙事詩「ラーマーヤナ」の主人公)が以前モスクが存在していた場所で誕生したと信じている。

下記の経緯からわかるように、歴代インド政府、司法当局は、この問題を宗教間対立、憎悪を引き起こしかねない事案として、慎重に対応してきた。しかし、モディ首相率いるインド人民党(BJP)は、「ヒンドゥー至上主義」を掲げ、インドを母国としないイスラム教やキリスト教などの少数宗派への宗教的抑圧を強化してきた(仏教はインドで誕生した宗教として、保護されている)。モディ政権は、8月に国内で唯一イスラム教徒が多数を占める北部ジャム・カシミール州の自治権を剥奪し、10月31日、西部の「ジャム・カシミール」と東部の「ラダック」に2分割し、それぞれを中央政府の直轄地とし、中央政府による統治を強めている。今後、政府は、最高裁判所の判決を実行する形で、アヨーディヤのモスク跡にヒンドゥー寺院建設に着手し、さらに、現在各宗派ごとに認められている宗教儀式に関する統一民法典の制定を目指すとみられている。

インドの最高裁判所は、今回、ヒンドゥー教徒過激派によるモスク破壊行為を違法と判断しつつ、インドの多数派であるヒンドゥー教徒のラーマ信仰の想いを、イスラム教徒が中世以来現実に維持してきたモスクの所有権の上に位置づけたことになる。聖地エルサレムをみればわかるとおり、ユダヤ教徒にとっての聖地ソロモン王の神殿の一部であった嘆きの壁のうえに、ムスリムにとっての聖地岩のドームとアルアクサ・モスクの併存は、イスラエル支配の下、常に緊張状態にあり、高裁での同じ敷地内の2/3をヒンドゥー教徒側が、1/3をムスリム側が管理するという案を覆し、敷地全体をヒンドゥー教徒側に与え、ムスリム側には、別の土地を与えるという最高裁が下した解決策は、現場での衝突を避けるための知恵であるとの見方もできないではないが、結局のところ、多数派ヒンドゥー教徒の声を重視したものであり、現在のBJPの「ヒンドゥー至上主義」の流れからは、イスラム教徒の反発は避けられそうにない。
(経緯)
1528年 バブリ・モスクは、最初のムガール帝国君主であるバーブルの支配下に建設。
1949年12月23日 ヒンズー教の神ラーマの偶像がモスクの内部に置かれ、政府はバブリ・モスクを「係争中の財産」と宣言し、その門は閉鎖された。それ以来、モスクではイスラム教徒は祈ることが出来なくなった。
1950-61年 ヒンドゥー教徒側は、施設内で儀式を行う権利を求め、一方、イスラム教徒側からは、施設の所有の確認を求めるイスラム教徒のグループまで、4つの民事訴訟が裁判所に提起された。
1984年 ヒンドゥー教寺院の建設を先導するために、ヒンドゥー教徒グループによって委員会が設置された。
1990年 右翼のインド人民党(BJP)のリーダーであるLKアドヴァニは、モスクに替わってラーナ寺院を建設する全国的なキャンペーンを主導した。
1992年12月6日 ヒンドゥー教徒の暴徒は、モスクをがれきに変えた。全国で暴動が発生し、約2,000人が死亡した(犠牲者の多くはモスリムとされる)。
1992年12月16日 モスクの解体から10日後、中央政府は事件を調査するためにリベルハン委員会を設置した。
2003年 考古学者は、サイトにヒンズー教の寺院が存在していたのか判断するために、裁判所主導の調査を開始。調査によると、モスクの下に神殿が見つかったとされるが、多くの考古学者とイスラム教徒はこの発見に異議を唱えている。
2009年6月 リベルハン委員会は報告書を提出し、Advaniを含むBJPの上級指導者がモスク破壊の裁判を受ける必要があると指摘。
2010年9月 アラハバード高等裁判所の3人の裁判官は、争点となった場所はヒンズー教徒とイスラム教徒の間で共有されるべきであると判決を下した。裁判所は、2.77エーカー(1.12ヘクタール)の敷地の3分の2がヒンズー教徒グループ(Nirmohi Akhara派とRamlalla Virajman)に属し、残りはイスラム教徒グループ(スンニ中央ワクフ委員会、UP)に属するとの判断を示した。
2011年5月 インドの最高裁判所は、ヒンドゥー教徒とイスラム教徒のグループによる控訴後、高等裁判所の判決を一時停止した。
2017年3月 インドの最高裁長官・司法長官は、ヒンズー教徒とイスラム教徒の間の法廷外の解決を提案。
2017年4月19日 最高裁判所は、モスク破壊事件で、与党党首のAdvani他14名に対する陰謀罪を復活させた。
2017年12月5日 最高裁判所は、係争中の13件の控訴のヒアリング開始。
2018年9月27日 最高裁判所は、この事件を5人の裁判官による憲法裁判に付託することを拒否。 10月29日に新しく構成された3人の裁判官の法廷で審理されるケースとみなした。
2019年1月25日 インド最高裁判所長官(CJI)のゴゴイ長官は、5人の裁判官のベンチを設置し、前任者による3人の裁判官の法廷を設置するという以前の命令を覆えした。新しいベンチには、ゴゴイ裁判長ほか4名の判事で構成された。
2019年3月8日 最高裁判所は、元最高裁判所判事を長とする調停委員会を設置し、法廷外の和解を促した。
2019年8月2日 調停が失敗に終わった。
2019年10月16日 最高裁判所は審理を終了。 5人の裁判官の法廷が判決を準備。
2019年11月9日 最高裁判所は、条件に基づき、ヒンズー教寺院の建設を監督するために、土地を信託に引き渡さなければならないとの判決を下した。アヨーディヤの別の土地がイスラム教徒グループに引き渡されるとあわせ、裁決した。
https://blog.canpan.info/meis/monthly/201911/1

Posted by 八木 at 10:23 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

ベイルートの港付近での大規模爆発[2020年08月05日(Wed)]
1.レバノン当局は、首都ベイルートの港での大規模な爆発で少なくとも73人が死亡し、約3,700人が負傷したと語った。
8月4日の爆発は都市全体に衝撃波を送り、首都の郊外でさえ広範囲にわたる被害を引き起こした。ベイルート港に停泊中のイタリア商船も被害を受けた。
レバノンの内務大臣ムハンマド・ファハミは、爆発は明らかに港の倉庫に保管されていた硝酸アンモニウムが原因であると述べた(2750トンもの硝酸アンモニウムが倉庫に保管されていた趣き)。
2.レバノン大統領ミシェル・アウンは爆発の後に国の高等防衛評議会を招集した。会議後以下が発表された。
@調査委員会は、5日以内に誰が爆発の責任者であったかを明らかにするよう命じられた。
A被害者の家族には補償が支払われる。
B 輸入路は、レバノン北部のトリポリ港に(臨時に)設定される。
3. イスラエルとヒズボラは、それぞれ爆発には無関係であるとの声明を発出した。
https://youtu.be/oKFupx9x0-k?t=8
https://www.aljazeera.com/news/2020/08/huge-explosion-rocks-lebanon-capital-beirut-live-updates-200804163620414.html
https://www.aljazeera.com/indepth/inpictures/pictures-lebanon-capital-beirut-shaken-massive-explosion-200804162150133.html

Posted by 八木 at 07:53 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

リビアで、シリア人同士が暫定政権側、ハフタル将軍側に分かれて戦う背景[2020年08月04日(Tue)]
シリアの内戦で体制派、反体制派に分かれて戦ってきた武装勢力は、今やリビアにおいて西部のシラージュ暫定政権を支援するトルコ側と東部のハフタル将軍側を支援するロシア・UAE・エジプトを中心とするグループ側に分かれて、リビア内戦に参戦している。それに関するトルコ紙の報道内容を紹介する。
(参考) トルコのディリー・サバーハ記事主要点
https://www.dailysabah.com/politics/syrian-regime-sends-more-arms-fighters-to-haftar-libyan-army-says/news
●8月2日、リビア軍は、ロシアの貨物機がハリーファ・ハフタル将軍に忠実な軍隊に新しい軍事輸送を行ったと主張した。アナドル通信によれば、軍のシルテ・ジャフラ共同作戦部隊のスポークスマンに話として、イリューシンタイプの輸送機は8月1日弾薬を運ぶ5便をシルテとジュフラ県に運航させ、さらに2便はリビアで2番目に大きな都市であり、ハフタル軍の中心基地であるベンガジへシリアのアサド政権側に忠実な兵士を輸送したと語った。

●2019年4月以降、ハフタル軍はリビアの首都トリポリとリビア北西部の他の地域を攻撃し、民間人を含む1,000人以上の死者が発生した。ハフタル軍は、アラブ首長国連邦(UAE)、エジプト、ロシアの支援を受けており、国連公認の暫定政府は、トルコに支えられている。

●国際的に承認されたリビア政府軍は最近、ハフタル軍の攻勢に対して重要な勝利を収め、ハフタル部隊をトリポリと戦略都市であるタルフーナから駆逐した。

●ハフタル軍がトリポリに向けて進軍を開始して以来、外国の傭兵と武器がリビア国内に持ち込まれ、中でも、ロシアとUAEが最大の支援者となった。 7月24日、アフリカのための米軍司令部(AFRICOM)は、ロシアを「ワグナーグループに物資や設備を提供することにより、リビアで(和平に)役立たない行動をとっている」と非難し、傭兵組織ワーグナーがトリポリとその周辺の民間地域に地雷と即席爆発装置を敷設したという証拠写真を明らかにした。

(参考)ワグナーグループがシリア人を雇っているとの参考記事
https://www.reuters.com/article/us-libya-security-syria-russia-exclusive/exclusive-russian-hiring-of-syrians-to-fight-in-libya-accelerated-in-may-idUSKBN23E06H

(コメント)
UAEは、リビアで、東部を拠点とするハフタル将軍側を公然と支援しており、一方、トルコは、首都トリポリを拠点に国際的に承認されたシラージュ暫定政権を支援している。2019年12月にはリビア暫定政権・トルコは軍事協力のための覚書に署名している。トルコは、トルコがシリア国内で実効支配するシリア反体制派民兵をリビアに送り込んでいるとみられている。一方、UAEはシリアのアサド政権に働きかけ、アサド政権近い民兵をリビアに送り込んでいるとみられ、これにロシアの傭兵ワグナーグループが加わり、エジプトも軍隊の派遣を躊躇わないとしており、リビアの紛争は、@シラージュ暫定政権+トルコ、Aハフタル将軍率いるリビア国民軍(LNA)+UAE+エジプト+ロシア+(サウジ)+(仏)、といった外国勢力が複雑に絡み合う代理戦争的様相を呈している。

UAEはサウジと並んで、米国にとって中東におけるもっとも強固と目される同盟国のひとつであるが、意外にもアサド政権に接近している。UAEは、アサド政権と公の関係を断っていたアラブ諸国の中で最も早く2018年12月にダマスカスに大使館を復帰させ、シリアのアラブ連盟加盟凍結も解除するよう求めている。この背景には、UAEの実質的支配者であるムハンマド・ビン・ザーイド・アブダビ皇太子のトルコ政府、とりわけエルドアン大統領への反発ムバダラ基金を通じてリビアに長年食い込んできたリビアでの権益維持への並々ならぬ意欲を反映したものと考えられる。

ダマスカスには、2020年3月、ハフタル将軍側のリビア大使館が開設されている。アサド大統領は、UAEやエジプトとの協力を通じて、アラブ世界への復帰を果たしたいとの願望を有している。

Posted by 八木 at 11:43 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

UAEバラカ原発の稼働開始[2020年08月03日(Mon)]
8月1日、アラブ首長国連邦(UAE)は、バラカ原子力発電所の運転を開始したと発表した。韓国電力公社(KEPCO)とともに発電所を建設、運営しているエミレーツ原子力エネルギー公社(ENEC)は、プレスリリースで、子会社のNawah Energy Companyが、アブダビのアル・ダフラ地域にあるバラカ原子力発電所の1号機の始動に成功したと発表した。原子炉1号機には、3月に燃料棒を装填されており、1号機の核燃料の分裂が「臨界」を達成し、分裂によって生じたエネルギーで、熱を発生させ、生じた水蒸気で、タービンを回転させて発電が開始された。UAEは当初2017年の稼働開始の予定であったが、3年間遅れ、当初予算を数十億ドル超過しているとのこと。
今回の原発稼働で、アラブ世界では最初の、中東では、イランのブシェーリ原発に次いで二番目で、世界では33番目の原発が稼働することになった。フル稼働の暁には、5600MW、国内の電力供給の1/4を賄うことになるとみられている。中東では、トルコとエジプトがロシア製原発の導入計画を進めている。
UAEは、使用済み核燃料の再処理を行わないことで、米国と合意しており、核開発の意図はないと考えられる。一方で、下記URLのアルジャジーラ記事によれば、欧州の最近の原子炉では標準装備となっている@メルトダウンが発生した場合に原子炉の炉心が格納容器の建物に侵入するのを文字通り阻止する「コアキャッチャー」がないこと、A原子炉がミサイルまたは戦闘機の攻撃を受け破損した際に生じる放射性物質の放出を防ぐために、格納容器の建物にいわゆる「ジェネレーションIII多層防御」の補強を欠いているとして安全性に疑問を呈する研究者の見方を掲載している。さらに、湾岸諸国は、ペルシャ湾をはさんで、密集しており、多くの国々が、海水淡水化に頼っており、ペルシャ湾の海洋汚染あるいは、放射性物質の大気中への拡散で、周辺国に被害が出ても、現在、責任の所在を明らかにし、補償を行う取り決めがないため、湾岸諸国が集団的に原子力事故責任条約を発展させることが非常に重要であるとの指摘がある。

(参考)UAE原発の経緯
1.当初計画
●UAEは世界有数の石油輸出国だが、2020年に4万メガワットと予想される電力需要を賄うため、原子力発電所の建設を計画した。
●発想は、石油資源は輸出に回して外貨を稼ぎ、国内の電力を含むエネルギー需要は、石油以外の手段で賄う。
●総額400億ドル規模の大型事業で、2017年にアラブ湾岸地域初となる1号機の稼動を計画している。2020年までに1400メガワットの原子炉4機の完成を目指した。
2.激しい受注競争
(1)入札参加者
@韓国連合:韓国電力公社(KEPCO)、現代建設、サムスンC&T、斗山重工業など
A仏連合:仏電力公社(EDF)、アレバなど
B日米連合:日立、ゼネラル・エレクトリック(GE)、エクセロン
(2)結果
2009年12月、アラブ首長国連邦(UAE)の原子力発電所建設をめぐる受注競争で、韓国企業連合が契約を獲得した。原子炉4機の建設・運営を請け負う。
• 安値攻勢:韓国は新興国の原発需要への対応に躍起、輸出実績づくりで安値受注。
• 韓国の提案は、新型加圧水型軽水炉「APR1400」。一方、日米連合は、時代遅れともいわれる沸騰水型軽水炉。
• 60年の運転保証:韓国電力が原発運転中の技術トラブル、事故などを含め運転保証を60年間適用する
• 稼働率:韓国は原発設備稼働率90%をアピール、日本は安全検査がらみで65%にとどまっていた。
• 大統領の陣頭指揮:今回のUAE原発をめぐって経済界出身(現代建設社長)の李明博韓国大統領が陣頭指揮で取組み、大統領は、最終段階の開札段階で直接アブダビに乗り込んだ。
(ENECプレスリリース)
https://www.enec.gov.ae/news/latest-news/safe-start-up-of-unit-1-of-barakah-nuclear-energy-plant-successfully-achieved/
(アルジャジーラ記事)
https://www.aljazeera.com/news/2020/08/uae-starts-operations-arab-world-nuclear-power-plant-200801101118964.html

Posted by 八木 at 15:01 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

サウジでの大巡礼開始[2020年07月31日(Fri)]
サウジアラビアで7月29日、イスラム教の聖地メッカへの大巡礼ハッジが始まった。巡礼中の新型コロナ・ウイルス感染拡大を防ぐため、例年に比べ規模を大幅に縮小し開始された。 ハッジはイスラム教徒にとっての宗教的義務である5行の一つで、心身の健康なイスラム教徒は一生に少なくとも一度は行わなければならないとされている。例年200万人以上が各国から参加するが、ことしはコロナ・ウィルス感染拡大のため、サウジ政府は、国内のイスラム教徒1000人に限って、巡礼を認めたとされる。サウジでの新型コロナ感染者数は、7月30日の段階で、世界で14番目で、中東では2番目に多い274,219名、死者2,842名に達している。
https://youtu.be/w8QJZNtSsuU
https://youtu.be/69TbUbNGGr8
(主な大巡礼の行事行程)
@メッカ聖域入域:男性はイフラームという聖域入域の際、2つの縫製のないイフラーム用の衣装を身にまとい、女性もゆとりのある衣装で体を覆い、ミカート(Miqat)というゲートから入場する。
A その後、メッカのグランドモスク内にあるカアバ神殿の周りを反時計回りに7回回る(タワーフと呼ぶ)。その後、サファとマルワという2つの丘を7往復する(サアイと呼ぶ)。
B メッカから行程8kmのテント村のあるミナ(Mina)に向けて出発する。
C ミナから夜明け前に出発し、約14.4km先の預言者ムハンマドが最後の説教を行ったとされるアラファト山で祈りを捧げ、1日過ごす。イスラム教徒の多くは、断食する。
D 日没後、移動を開始し、約9km先の岩山の荒野「ムズダリファ」で平地を探して一泊する。その際、翌日に備えて小石を拾う。
E 夜明け前に出発し、ミナで悪魔に見立てたジャマラートと呼ぶ3本の石の柱に小石を投げる(圧死事故等が多発したため、現在は柱の前は構造物が5層になって、交通整理されるようになっている)。巡礼者は、悪魔に石を投げて追い払う。
F神がアブラハムに息子イサックを犠牲にささげよと命じ、それに従おうとしたアブラハムに、神は天使を遣わして、それを停止させ、息子にかわって羊をささげることを許した逸話にちなんで、巡礼者は、羊やヤギなど動物を犠牲にして、神にささげる
G 男性は髪の毛を剃り、イフラームの衣装を脱ぎ捨てる。
H カーバ神殿に戻り7回周回するとともに、タワーフとサアイの間を7回往来する。
I さらに、ミナに移動し、ジャマラートの柱に小石を投げる。
J 最後にカーバ神殿で、お別れのタワーフを行い、巡礼の行を終了する。
 因みに、巡礼参加者の多数は、巡礼の機会に、もうひとつの聖地メディナを訪問する者も多いが、メディナ訪問は、巡礼の一行事には位置付けられていない。

Posted by 八木 at 09:17 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

シリア上空を飛行中のイランのマハン航空旅客機に対する戦闘機2機による進路妨害 [2020年07月24日(Fri)]
7月23日夜、テヘランからレバノンの首都ベイルートに向かい飛行中のイランのマハン航空の旅客機が、米軍機とみなれる戦闘機2機に進路を妨害され、急降下し、乗客数名が負傷し、航空機内部は一時パニック状態に陥ったと報じられた。関連映像は、次のYoutube、あるいはロシアトゥディ記事からアクセスすることができる。
https://youtu.be/HqjB1eE1JNc?t=29
https://www.rt.com/news/495672-israel-jet-iran-passenger-plane/?utm_source=browser&utm_medium=push_notifications&utm_campaign=push_notifications

(骨子)
●7月23日夜、ベイルートに向け、155名の乗客を乗せ飛行中のイランのマハン航空の旅客機がシリア上空を飛行中、2機の戦闘機が急接近し進路を妨害されたため、急降下し、乗客数名が負傷した。
●イラン外務省アッバース・ムサーヴィ報道官は、7月23日、テヘランからベイルート行きの飛行機に何が起こったかを理解するための調査が進行中であり、イランは、シリアのマハン飛行機に関連する事件の調査が終了した後、必要な政治的および法的措置を取ると述べた。
●ムサーヴィ報道官は、イランのラヴァンチ国連大使はアントニオ・グテーレス国連事務総長に対して、航空機がテヘランに戻る途中で何かが起こった場合には米国が責任を負うことになると電話で警告したことを明らかにした。この警告は、米国の利益代表を務める駐テヘラン・スイス大使にも伝達された。
●当初、マハン航空機を妨害しようとしたのは、イスラエル戦闘機であるとの報道があったが、マハン航空のパイロットは、必要な安全距離を保つよう2機の戦闘機のパイロットに呼び掛けた際、先方からは米国人であるとの反応があったとされる。
●情報によると、米軍戦闘機によるイラン航空機の進路阻止は、シリア、イラク、ヨルダンの国境をつなぐ三角地帯であるシリア領内のアルタナフ地域上空付近で発生し、タナフには米軍の駐屯地が存在する。
●ベイルートのアルジャジーラ事務所によれば、マハン航空機は現地時間午後9時30分にベイルート空港に着陸し、負傷した乗客に応急処置が行われた後、飛行機は11:30にテヘランに向け出発した。
●米国、イスラエルは以前、マハン航空が、イランに関連する武装組織に武器を輸送していたとして非難した経緯がある。

Posted by 八木 at 11:06 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

イラン政府による韓国政府へのイラン凍結資金一部解除に向けての働きかけ [2020年07月16日(Thu)]
7月14日、ザリーフ・イラン外相は、国会議員との会談で、米国の制裁圧力のために送金されていないイランの凍結資金の解除を関係国に繰り返し求めており、オマーンや中国など一部の国々は、これらの凍結された資金の返還に対して積極的に行動したが、韓国はこの点に関して重要な行動をとっていない、韓国政府は主に米国の制裁のためにイランに支払うべきお金を送金する際に「特定の問題」があると主張しているとコメント。

イラン当局は、イラン側が基本財の購入にブロックされた資金を使用できるように、韓国側に65億ドルから90億ドルの凍結解除を求め、イラン・韓国商工会議所筋によれば、先週、韓国側がイラン資金の一部凍結解除に合意し、韓国側は、イランが医薬品や医療機器の購入のために資金の一部を使用することを許可することに同意したとされる。

イランの外交筋は、現在各国とブロックされた資金の返還について交渉しており、他方では(如何なる法的措置かに言及することなく、資金の返還のため)適切な法的措置がとられている,と発言した。
https://www.presstv.com/Detail/2020/07/14/629621/Iran-Zarif-blocked-funds-Oman-China-South-Korea

(コメント)イランと貿易取引する国の企業は、米国の制裁を避けるためには輸入代金を米ドルならびに米国の影響下にある銀行間の送金通信システムSWIFTが関与しない形で、送金・決済する必要がある。そのためには、モノとモノとのバーター貿易や、自国通貨やソフト通貨(アフリカなど途上国の通貨)を使用して決済するか、あるいは、欧州3か国が2019年1月に立ち上げた「貿易取引支援機関(Instrument for Supporting Trade Exchanges:INSTEX)」のような仕組みを使用する必要がある。今回韓国が、どれくらいの規模で、いかなる形で、イラン資金凍結を解除したのか不明であるが、イランの凍結資金の一部を使用して、医薬品・医療機器を購入することを承認したと思われ、INSTEXを利用したわけではないが、それに近い形で使用を認めたものと思われる。
(参考)INSTEXについて
JCPOAの当事者である英・独・仏欧州3国は、2019年1月末にイランとの貿易継続のための特別目的事業体INSTEXの立ち上げを宣言した。コロナウイルス感染がイランで拡大する中、2020年3月31日、欧州3国は、INSTEXを通じた初のイランとの取引を実施し、医薬品を供給した。
• 2019年1月31日に欧州3国外相がINSTEX創設を発表して以来、実に1年2か月ぶりに同メカニズムを通じた初の欧州とイランの取引実施が確認された。そもそもINSTEX創設段階から、欧州外相は、イランの生命線である原油取引には言及しておらず、また、イランが輸入する物資も、医薬品や医療機器、農産物分野に焦点をあてるとしており、極力米国を刺激しないよう配慮しており、その後の、米国のイラン制裁強化を受けて、実際のINSTEXを通じた取引は実現していなかった。
• このメカニズムの下では、米国の金融制裁の対象となっているイラン中銀やその他の銀行を介して送金が行われることはなく、欧州側に設置される貿易取引支援機関が、欧州企業との間で資金のやりとりを管理し、外貨が直接イラン側に届けられることがない仕組みになっており、例えば、@イランがピスタチオを欧州に輸出する、A欧州の企業はINSTEX指定の欧州銀行に代金を支払う、Bその代金の範囲内で、欧州の企業が医薬品をイランに輸出する、C当該欧州企業は、INSTEX指定の欧州銀行から代金を受け取る、などの流れになるものと予想されてきた。
• 今回欧州がコロナ感染拡大阻止に取り組むイランに医薬品を供給し、その見返りにイランが欧州に何を輸出したのかは判明していない。この取引において、ドルはもちろんのこと、ユーロをはじめとする外貨は一切、イラン側にはもたらされない。欧州は、イランにおけるコロナウイルス感染拡大を受けて、このタイミングであれば、人道的見地からイラン国民に必要な医薬品をイランに輸出しても米国からクレームがつくことはないと判断したと考えられる。

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中東諸国におけるコロナウイルス感染拡大(1か月半前との比較)[2020年07月09日(Thu)]
コロナウイルス感染者数について、7月9日時点で、5月中旬以降の変化について、気づきの点は次のとおり。世界全体10位のイランは5月初旬以来第二波が押し寄せ、6月以来高止まり状態。世界全体14位のサウジは6月以降第一波を上回る第二波が押し寄せ、高止まり状態。同15位のトルコは4月中旬の第一波を越える波は押し寄せていないが、それでも、毎日千人を超える感染者数を記録。27位のイラクは5月末以降感染者数が急増。直近一日の感染者増は、2741名増で、イランを上回った。一時期、感染を抑制したかに思えたオマーン、イスラエルも再び感染者数が増えている。イエメンは報告数を見る限り極端に増えているわけではないが、着実に増加している。ヨルダンは、比較的、うまく抑えている。シリアは感染者数が伸びていないが、これは検査数の問題が影響しているとみられる。全体として、コロナ感染者を抑えきれず、むしろ、拡大の傾向がうかがわれる

(中東諸国の感染者数)2020年7月9日11:00GMT現在(カッコ内の数値がふたつあるのは、7月9日の増加数+8日の増加数)
イラン 感染者数 250458 (+2079+2691) 死者12805(+221+153)
サウジ 感染者数 220144(+3036) 死者2059(+42)
トルコ 感染者数 208938(+1041) 死者5282(+22)
カタール感染者数 101553      死者138
エジプト感染者数 78304(+1025)   死者3564(+75)
イラク 感染者数 67442(+2741)  死者2779(+94)
UAE  感染者数53045        死者327
クウェート感染者52007        死者379
オマーン感染者 51725(+1518+1210) 死者236(+3+9)
イスラエル感染者33947(+390+1335)  死者346(+2+2)
バーレーン感染者30931        死者101
アルジェリア感染者17348       死者978
モロッコ 感染者14949        死者242
スーダン 感染者10084        死者636
パレスチナ感染者5220        死者22
レバノン 感染者1946        死者36
イエメン 感染者1318        死者351
リビア  感染者1268        死者36
チュニジア感染者1221        死者50
ヨルダン 感染者1169        死者10
シリア  感染者372         死者14
https://www.worldometers.info/coronavirus/#countries

Posted by 八木 at 21:06 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

サウジ人ジャーナリスト・カショーギ殺害欠席裁判開始と英国による制裁発動[2020年07月07日(Tue)]
2020年7月3日、イスタンブールの裁判所で、2018年10月2日にサウジのイスタンブール領事館で殺害されたるサウジ人ジャーナリスト・ジャマール・カショーギ(Jamal Khashoggi)の殺害に関与した疑いで起訴された20人のサウジ人容疑者の欠席裁判が開始された。
(これまでの経緯)https://blog.canpan.info/meis/archive/385
(サウジでの一審判決)https://blog.canpan.info/meis/archive/288
1. トルコでの欠席裁判の開始
 7月3日、イスタンブール第11刑事裁判所は本件に関する最初のヒアリングを開始した。最初のヒアリングは、イスタンブール検察庁が作成した117ページに及ぶ起訴状の朗読から始まった。起訴状は、サウジアラビア情報局の元副長官であったアハマド・アル・アシーリ、および王宮府元顧問であったサウード・カハタニの両名を「恐ろしい意図による計画的殺人を扇動した」と糾弾した。他の18人は「おぞましい意図と拷問」で殺害を行ったとして告発されている。
●トルコ司法当局は、殺害犯はジャマールを窒息させて死体を切り裂いた後、遺体を焼却することで死体を処分しようとした可能性があると推察している。
●起訴状によれば地元の技術者で、総領事館で働いていたデミール氏は、カショーギが近くの領事館に入った後、総領事公邸に呼ばれた、そこには5〜6人がいた…彼らは私にタンドール[オーブン]に火を入れるよう求めた。パニックのような雰囲気があった、総領事の庭のオーブンに加えて、肉の串焼きと小さなバーベキューを見た、オーブンの周りの大理石のスラブは、まるで化学薬品で掃除されたかのように色が変わっていたと証言した。起訴状によれば、領事の運転手は、総領事は生のケバブを地元のレストランから購入するように命じた、と証言。起訴状によると、デミール氏は、窓を覆った車が到着したときにガレージの扉の開閉を手伝うことを申し出たが、庭をすぐに出るように命じられた。(注:トルコの検察は、ケバブの購入は、ジャマールの遺体焼却をごまかすための偽装工作とみている)
TRT動画 https://youtu.be/UvHIGRNu8XA
https://www.aljazeera.com/amp/news/2020/07/khashoggi-trial-consulate-worker-told-light-oven-200703180203828.html

2.カショーギ氏のアラブ・ジャーナリスト育成奨学金構想
●ワシントン・ポストのコラムニストでサウジの著名なジャーナリストであったジャマールはトルコと米国で若いアラブ人ジャーナリスト育成のための奨学金を設立する計画を表明していた。彼はそのようなイニシアチブに投資する勇敢なアラブ人のビジネスパーソンがまだいると信じていた。彼はサウジ王国の多くの当局者が3カ国でそのような共同奨学金プログラムを作成する彼の計画を承認するとさえ信じていた。彼は、サルマン国王が海外の若いジャーナリストを教育することのメリットを認めるだろうと強く主張していた。彼がひとつ間違っていたのは、もはや国を(実質的に)運営していたのは、古い王ではなく、彼の野心的な息子であるムハンマド・ビン・サルマン皇太子(MBS)であり、皇太子はずっと前にジャマールの死の判決に署名していたということであった。
https://www.dailysabah.com/opinion/columns/a-lit-oven-for-khashoggi
3.サウジの裁判のその後
●サウジ国内では、起訴された11名のうち、第一審で5名が死刑、3名が有期刑、3名が証拠不十分で無罪の判決を受けていたが、5月22日のラマダン月のライラ・トル・カダル(定めの夜)にジャマールの息子が、死刑判決を受けたものを許すとの声明を発出し、刑の執行猶予が決定されたため、全員が解放されているとのこと。ちなみに、カハタニ元王宮府顧問は、サウジの裁判プロセスで起訴さえされていない。
https://www.cnn.ph/world/2020/5/23/Jamal-Khashoggi-sons-pardon-father-killer.html
4.英国政府の制裁発動
●7月6日、英国は、人権侵害者を処罰する新しい英国の権限の下で、ロシア、サウジアラビア、ミャンマー、北朝鮮からの数十の個人や組織に経済制裁を科した。ドミニク・ラーブ外相は、制裁は「近年の悪名高い人権侵害」の背後にいる人々を標的とし、血塗られた資金洗浄を止めることを目的としたと述べた。英国外務省によると、英国の最初の制裁は、セルゲイマグニツキー弁護士の虐待と死に関与したとされるロシア人25名と、ジャーナリストのジャマール・カショーギの殺害に関与したサウジアラビア国民20名を対象とする。サウジ名のリストには、サウジアラビアの元王室顧問であったサウード・カハタニと、元情報諜報局の責任者であったアハマド・アルアッシーリ将軍が含まれる。
https://www.aljazeera.com/ajimpact/uk-sanctions-saudis-russians-magnitsky-powers-200706165359282.html

(コメント)5月22日のラマダン月の終わりのライラ・トル・カダル(定めの夜)にジャマールの息子たちは、父親を殺した者を赦免したことを発表した。サウジの法律によると、殺人事件の被害者の息子からの赦免は法的執行猶予としての効果を発揮する。昨年12月、サウジの一審の判決で、サウジ人5人の政府職員に死刑が宣告された。被害者の家族が赦免を認めた場合、加害者の家族は、カショーギの家族に、流された血の代償として賠償金を支払う責任がある。彼らが支払いをする余裕がない場合、国家は加害者の家族の代わりにすでに家族に支給された国家の見舞金に加えて支払うことができるとされる。昨年、殺害の補償として家族が数百万ドルの現金と資産を受け取ったと報じられたが、息子たちは、彼らがサウジ政府から血の代償としてのお金を和解のために受け取ったことを否定した。事件後本件を調査した国連の特別報告者であるアグネス・カラマールは、家族の赦免について、「サウジアラビアは、ジャマール・カショーギの事件に正義をもたらさないことを繰り返し証明してきた。これは、サウジの免責パズルの最後のピースであり、世界中の聴衆の前で演じられる正義のパロディの最後の行為である。殺人者は自由に歩きまわることなる。 」とコメントした。家族でさえ許しているとして本件を過去のものにしたいサウジ指導部と、それを欠席裁判の形で許さないトルコ政府、あくまで、MBS指導部を擁護するトランプ政権と、殺人事件を起こしておきながら何事もなかったかのように暗殺団全員が自由になるのだけは許容できないとする英国政府の対応から、「正義」の判断は、それぞれがおかれた立場の違い、思惑の違いからかくも変化するものなのか思い知らされる気がする。

Posted by 八木 at 14:08 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

サウジアラビアのVAT(付加価値税)引き上げ[2020年07月01日(Wed)]
サウジアラビアでは、本日7月1日からVAT(付加価値税)の税率を現在の5%から15%に引き上げる。オイルマネーで潤ってきた大産油国サウジも、最近の原油価格下落や新型コロナウイルスの感染拡大で、財政収入が打撃を受けており、VATの引き上げも苦しい台所事情を反映したものに間違いない。サウジは、2018年1月1日に、商品とサービスに初めて5%のVATを導入した。対象は、ガソリン、ディーゼル、食品、衣類、公共料金、タバコ、ソフトドリンク、ホテル宿泊施設など、ほとんどの商品とサービスを対象としている。サウジは、7月28日頃開始予定のイスラム教徒にとっての宗教的義務5行のひとつである大巡礼(ハッジ)の海外からの巡礼参加を取りやめ、国内滞在者のみに人数を限定して実施する旨発表した(昨年は全体で2百数十人参加)。巡礼月の特定時期以外にメッカを巡礼する年間8百万人規模のウムラも中止されており、サウジは、財政維持の緊急対応を迫られている。IMFが6月に発表したGDP成長見通しでは、サウジは、2020年マイナス6.8%の成長が見込まれている。VAT引き上げ前に、サウジ国内の消費者は、食料品や必需品購入のため、ショッピングセンターや市場に殺到したとのこと。
関連報道https://www.aljazeera.com/ajimpact/pre-tax-spree-saudis-pack-shops-buy-gold-cars-vat-hike-200630135912379.html

Posted by 八木 at 08:57 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

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