日本は衰退の道を歩んでいるか。 [2021年06月11日(Fri)]
データ
イギリス・ロイター2021・6・11 <資源価格上昇と富の流出> 2番目の要因は、米国や中国での景気回復を背景にした世界的な資源価格の上昇だ。 主要な商品で構成されているCRB商品指数は今年1月初めから現在まで約25%も上昇している。 国内資源の乏しい日本にとって、資源価格の高騰は「富の流出」となり、海外の為替プレーヤーにとっては円売り材料と映る。 また、小麦や食用油、輸入牛肉・豚肉などの食料品価格の上昇は、消費者の「財布のひも」を堅くさせ、個人消費を圧迫する要因にもなる。これは、次に指摘する日本経済全体の足を引っ張る大きな要因にもなる。 <景気後退のサイン> 3番目が長引く緊急事態宣言の発令の「副反応」とも言える日本経済の下方屈折リスクだ。 8日に発表された2021年1─3月期の国内総生産(GDP)の2次速報は、1次速報から上方修正されたもののマイナス3.9%だった。 4─6月期は緊急事態宣言による対面型ビジネスの不振が予想され、かなり多くのシンクタンクがマイナス成長を予想している。 仮にマイナスが確定すれば2期連続となり、欧米流の思考アプローチを駆使する海外勢は、「景気後退」と判断するだろう。 足元では海外勢による「日本経済の停滞イメージ」は、かなり浸透してきているように見える。 <政治の弱点> 4つ目の要因は、迅速な景気対策を打つことができない日本の政治を取り巻く環境への「失望」がある。 菅義偉首相はワクチン接種を最優先の政策課題に掲げ、失速の兆しが見える日本経済をサポートするための経済対策の作成指示を出していない。 与党関係者の一部には、大型の経済対策を求める声があるものの、東京五輪・パラリンピック後のどこかのタイミングで衆院を解散し、補正予算の編成は衆院選後の10月後半か11月というのが与党内の「相場観」になっているらしい。 海外勢の中には「遅過ぎる」との声が出ており、「衆院選で円買い・株買い」という観測は広がりを見せていない。 <逃避通貨からの転落> このように見てくると、日本の政治・経済体制が持っている活力がじわじわとむしばまれ、リスクオフ時に買う「避難通貨」の地位から、すでに滑り落ちている可能性があると言わざるを得ない。 「衰退する日本」を映しているのが、足元での円安と見るべきだろう。 ただ、すぐに円が暴落することもないと指摘しておきたい。 なぜなら、2020年末の対外純資産額は356兆円と30年連続で世界一の規模を誇っているからだ。この「アンカー」が存在している限り、投機筋の円売りによる大幅な切り下げの現実性は低いだろう。 だからと言って、ゆっくりと進む国力低下を放置していいということにはならない。今秋とみられる衆院選で「日本経済復活への処方せん」が論争点の1つになることを望みたい。 以上はロイターの見解ではないと断わっている。ことに注目しよう。 |