焦点:米国インフレは「一過性」か、見逃せない構造変化の潮流 [2021年05月14日(Fri)]
[東京 14日 ロイター] - 米国のインフレ率が4月に急伸し金融市場で波紋が広がった。 米連邦準備理事会(FRB)は、新型コロナ禍で経済が停滞した昨年の反動に過ぎず想定内とし、インフレは「一過性」との立場を貫く。 しかし、米中対立による輸入物価高や、サイバーテロに象徴される地政学リスクの高まり、米国の財政金融拡張政策によるドルのばらまきなど、構造的な変化を見落としているとの見方もある。 5月14日、米国のインフレ率が4月に急伸し金融市場で波紋が広がった。 <財価格を押し上げる変化> 4月の消費者物価指数(CPI)では、総合指数が前月比0.8%上昇(前年比4.2%上昇)。コア指数(除く食品・エネルギー)は前月比0.9%上昇と、1982年以来の大幅な伸びを記録した。 「過去4カ月の米CPIの伸びは総合指数で2.1%と、年率換算で6%超えの水準に達しており、昨年コロナ禍の低水準との対比で上げ幅が拡大する『ベース効果』では説明しきれない勢いを見せている」とグローバルエコノミストの斎藤満氏は指摘する。 トランプ前米政権が壊した世界的なサプライチェーン、半導体等でのボトルネック(供給制約)の発生、サイバーテロにみられる地政学的なリスクの高まり等の環境変化を考えれば、インフレが一過性では済まないことに、市場も薄々気付いているのではないか、と同氏は言う。 市場参加者のインフレ期待(予想)を表す指標であるブレーク・イーブン・インフレ率(BEI) は今週、5年債で269ベーシスポイント(bp)と約10年2カ月ぶり、10年債で257bpと約8年2カ月ぶりの高水準を記録し、長期的なインフレ高進の可能性を否定するFRBとは対照的な動きをみせている。 4月の米CPIの内訳では、サービス価格が前年比2.5%の上昇にとどまる一方で、財価格が同4.5%と上昇が顕著だ。 |