北極海航路―中国は日本より先に北極に到達できるのか? [2021年03月01日(Mon)]
軍事的にみると北極圏を艦船が通過するということは、ロシアの国防上重大な危機を背負いうことになる。
それは北極圏における長大な海岸線をどう守備するかという問題である。ロシアの背中が無防備になるということはロシアにとって好ましいことではない。 また軍備を長大な国境線上に張り付けることはコスト面から難しい。資源開発に取り掛かればその防衛上の問題が生じるであろう。ロシアは海軍を強化しなければならないことになる。 データ ロシア・スプートニク2021年02月24日 18:25 筆者 : タチヤナ フロニ 世界は北極圏を未来の「新たな中東」と位置付けるようになってきている。 北極圏と中東には多くの共通点がある。石炭をはじめとする膨大なエネルギー資源があり、そして氷海のスエズ運河になりうる北極海航路があるからである。 政治学者で作家の佐藤優氏は、最近発表した論文の中で、「エネルギーの地軸」が中東ベースからロシアベースに移行する可能性があると指摘している。 そうなれば、北極圏はロシアと日本の利益が合致する地政学的な意義を持つ重要な場所となる。 「スプートニク」は、この地球温暖化の時代に、ロシアと日本の関係における「気候」を変化させることができるのか、またそれに影響を与えるのはどのような要素なのか考察してみた。 しかしここで重要なのは、急激に「温暖化する」国際舞台で、中国がどのような役割を果たそうとしているのかということである。 北極圏の資源のほとんどはロシア領海の海底地下に眠っている。さらに砕氷船の保有数でもロシアはトップに位置している。 しかし、歴史学博士で国際関係および日本研究の専門家であるドミトリー・ストレリツォフ氏は、北極海航路に関する世界の期待は誇張されすぎていると指摘する。 「北極海航路は素晴らしい展望を持つものですが、それはまだ遠い未来のことです。 つまり北極海航路がスエズ運河を経由する南回り航路に代わるものになるには、まだ相当な時間が必要です。加えて、日本は北極海航路が持つ複数の障壁を考慮しています。 何より、地球温暖化とロシアの砕氷船の威力を考慮しても、北極海航路は季節によって使えない時期があるということです。 もう1つの障壁はベーリング海峡です。日本はこの海峡は浅いため、船舶のトン数が制限されると考えています。 さらにもう1つの障壁は、北極海航路はロシアの統制下にあるため、砕氷船の併走、水先案内人、非常事態に備えた装備などで、ロシアに大きく依存することになるという点です。 つまり、北極海航路において独自の規則を設けるロシアが、欧米諸国からの制裁などによって、日本にとってはハイリスクな国であるということです」。 そこで日本は北極海航路にそれほど重点をおいておらず、ロシアによる北極圏のガス田開発プロジェクト「アークティック(北極)LNG2」への投資にも慎重な姿勢を見せており、北極海航路も南回り航路の代替となる可能性があるものとは捉えていないとストレリツォフ氏は指摘する。 一方ロシアは、上述のような制限が、近い将来、北極海航路を確立するためのグローバルな計画の障壁になるとは考えていないようである。 ロシアは原子力砕氷船を保有する世界で唯一の国であることから、北極海航路を、季節に依存するものとは考えていない。 原子力砕氷船は、1年を通して氷に覆われた海上を航行することができる。トン数も障壁にはなりえない。 というのも、ベーリング海峡の航路の最浅部は36メートルだが、スエズ運河の深さがわずか20メートルであることはまったく問題になっていないからである。 北極海航路はアジアとヨーロッパを最短でつなぐルートであり、輸送期間を数週間短縮し、船舶の燃料費も節約することができるものである。 たとえば、ワシントンポスト紙は、サイトsearchoutes.comのデータを引用し、ユージナヤを出航した船がスエズ運河を通ってドイツに到着するのは34日かかるが、北極海航路だと23日まで短縮できるとし、北極海航路の持つ意義を強調している。 |