
読書のすすめー日本劣化論 笠井潔 白井聡
日本の保守はいかに劣化しているか。
この日本劣化論は最新の書籍で2014年7月10日が第1刷発行である。 笠井潔氏は1848年生まれの小説家、評論家である。 最近の著作では“8・15と3・11“。
白井聡氏は1977年生まれの早大政経卒で現在文化学園大学助教であり 昨年初版の“永続敗戦論”が現在16刷発行で“今”読まれている本である。
巻頭の要約から引用すると
日本は破滅に向かっている。反知性主義は大衆のみならず、 政治家にも蔓延し自分勝手な妄想に浸り、歴史を都合よく 塗りかえろうと必死である。一方、それを批判するリベラルは “戦後”に落とし前をつけることができず、壊滅的な状況が続いている。
なぜ日本は思考停止に陥ってしまったのか? なぜ“負け”を認めることが 出来なかったのか?“天皇とアメリカ”、“保守の劣化”、 “新たな日中戦争”、“左右の沈没”など臆することなく徹底討論。
目次
1、 日本の保守はいかに劣化しているかーアメリカにも嫌われつつある?
2、 日本の砦 アメリカと天皇―日本の劣化をくい止める天皇。
3、 アジアで孤立する日本―日本と中国は軍事衝突するのか。
4、 右と左がどちらも軟弱になる理由―左派衰退はマルクス主義のせい?
5、 反知性主義の源流―89年という転換点、先行き不透明な子供の国
6、 独立という思想へー普天間移転が強引な背景とは、 21世紀に世界のルールはあるのか
書評は、みなさんが読まれて、考えて、自分自身で出してもらいたい。
下記に一部抜粋した。
白井聡 “(敗戦後の)当時の日本女性にしてみれば、日本の男はいつも 威張りくさっているくせに、戦争はからきし駄目で、徹底抗戦もしない。 GIに比べて体格も悪い。となればアメリカの男の方がいいということ になりますよね。
これに関して思いだすのは、石原裕次郎がスターになった経緯です。 兄である石原慎太郎が原作や脚本を手掛けた初期の作品で、 裕次郎はいわばアメリカっぽい男として登場します。 とは言ってももちろんアメリカ人ではなくて、あくまで偽物なんだけど。
“太陽の季節”や“狂った果実”というのは基本的に、 そのアメリカっぽい日本人男が、アメリカ人に奪われていた 日本女性を奪還するという物語なんですよ。言ってみれば、 アメリカに骨の髄まで完敗したという話です。
日本男子の自己回復がアメリカもどきになることによって なされるわけですから。
日本の保守派ナショナリストたちの矮小性の根源というのは、 ここにあるのではないかと思うんです。“p84
右派が劣化し、左派が壊滅してしまった理由などの考察も鋭いものがある。 現政権への有力な対抗する勢力がなくなっていることも 日本の危機的な状況の一つであろう。
中国との軍事衝突の可能性や、朝鮮半島がそれに連動する動きになるだろうことなど 、そして原発の存在が、それが攻撃された時、日本の致命的なアキレス腱ー破滅ー になるだろうということが、わからない、考えない幼稚性の指摘など。 そしてアメリカの動きなどの分析、予測は考えさせられる。
