コラム:東京五輪に忍び寄る新型肺炎、日本経済への影響を読む=熊野英生氏 [2020年01月30日(Thu)]
東京五輪ーオリンピックまでに間に合うか。新型肺炎の長期化を防ぐには、ワクチンの開発が早期に実現するかどうかにかかっている。
そこでもたつくと、東京五輪に大きく影響するであろう。日本の感染状況によっても外国からの訪日客に大きく響くことになる。 データ ロイター2020・1.30 熊野英生 第一生命経済研究所 首席エコノミスト [東京 27日] - 新型肺炎(新型コロナウイルス)の影響が甚大になってきた。中国政府は1月24日から国内の団体旅行を、27日からは海外への団体旅行も中止するよう命じた。 1月24日(大晦日)から1月30日までの予定だった春節に伴う中国の休日は、中国国営中央テレビ(CCTV)によると、2月2日まで延長された。 その前後の40日間に、中国人は延べ30億人も大移動するとみられていた。団体旅行を制限したことの影響は大きい。 訪日する中国人のうち、団体旅行客は2019年に26.7%を占めていた。団体旅行以外の個人旅行客にも中止・変更の影響は出るだろう。 2020年に予想されるインバウンド需要は、全体で約5兆円(2019年4兆8113億円)とみられる。 その中で中国(除く香港)の需要は約4割の約2.0兆円(2019年1兆7718億円)を占める。 年間で計算すると、中国のインバウンドが半減するとすれば、実質国内総生産(GDP)で0.2%ポイントの押し下げになる。 もっとも、数カ月で鎮静化すれば、インパクトはその何分の1かに小さくなるだろう。 最も心配されるのは、新型肺炎の悪影響が長期化して、東京五輪・パラリンピックに響いてくることである。期間中は中国からも大挙して観光客が来ることが期待される。 2019年の中国からの訪日客数は959万人で、1人当たり21万円を支出した。それが増加するのではなく、何割も減少することになると、日本の消費産業に対する打撃は相当に大きい。 現時点で筆者は、東京五輪までには新型肺炎の騒ぎが鎮静化して、悪影響はそれほど拡大しないことをメインシナリオにしているが、事態はまだ流動的である。 |