経済制裁という北風で、北朝鮮外套を脱ぐ(核開発放棄)という方向に持っていけるかどうか。外交交渉で決着をつけるということならば、太陽による暖風ということも必要となろう。
北朝鮮は、トランプ氏が来年再選して大統領にとどまるか、民主党政権になって軍事強圧路線に転換するか見極めをせねばならないと計算しているであろう。
北朝鮮はカルタゴやリビアのような惨状にならないためには何をすべきか知恵を絞っている。
ロイター通信の報道は、的を得ているという評価をしてよいであろう。
データ
Reuters 2019.7.5
[ソウル 4日 ロイター] - トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が6月30日に板門店で電撃会談したことを受け、朝鮮半島の非核化を巡る米朝の実務者協議が今月中に再開する見通しになった。
ただ北朝鮮側は足元で、米国主導の制裁を非難する主張を強めており、協議の道のりの険しさが浮き彫りになっている。
ワシントン発の複数の報道からは、トランプ政権が北朝鮮の核開発を少なくとも部分的に放棄させる形での合意を、前向きに模索する可能性がうかがえる。
しかし米政府が制裁を緩和する態勢を整えない限り、実務者協議が進展する公算は乏しい、というのが専門家の見方だ。
北朝鮮にとって一番の市場である中国向けの輸出は、昨年90%近く減少したことが、中国政府のデータで確認できる。
また韓国開発研究院(KDI)は今週のリポートで、北朝鮮が制裁のために経済危機に突入する過程にあると指摘した。
インターナショナル・クライシス・グループの朝鮮半島専門家クリストファー・グリーン氏は「北朝鮮は(米国の)言葉ではなく行動(制裁緩和)を望んでいる。
(その半面)米国が気持ちの上でその準備があるかどうかは分からない」と両国の温度差を説明する。
トランプ氏と正恩氏の会談直後、ポンペオ米国務長官は記者団に、北朝鮮外務省の担当者との交渉が「7月中」に行われそうだと語った。
その後ポンペオ氏は、国連安全保障理事会の決議に基づいた制裁は、協議を進める間も実施し続ける必要があると米国は考えていると強調した。
物別れに終わった2月の米朝首脳会談の前には、米政府は制裁を継続しながらも、人道支援拡大や連絡事務所開設といった措置を講じる可能性が高いというムードを演出していた。
ところが結局、寧辺の核施設を廃棄するのと引き換えに制裁を広範囲にわたって解除してほしいという北朝鮮の提案を、米国は拒否したのだ。
それ以降北朝鮮は制裁撤廃要求を強める一方なので、米国がそこまで踏み込まない何らかの申し出をしても、北朝鮮は歓迎こそすれ、核・ミサイル開発の放棄を納得させる力はないとみられる。