真実の価値は [2016年04月14日(Thu)]
◆ホセ・ムヒカ氏の言葉から役所と政治を考える ある人に会って、10年ぶりくらいに宮本政於氏(元官僚・医系技官)の著書『お役所の掟』を読みました。典型的な役人(組織、人間)批判が滑稽に書かれていますが、内部の経験者が書いているあたり、表現以上に本質をえぐるようで説得力がもの凄く強い。のらりくらりの国会答弁作成、前例徹底踏襲主義、右へならえ主義、みんなと違う事をするといじめに遭う、男性はよくて女性はだめという規則、「遅れず・休まず・仕事せず」のお役所気質…等々、今ではどこの先進国でも通用しないようなことが書かれています。国家公務員(キャリア)の話ですが、都道府県や地方自治体の役人の行動原理や心理にも、クオリティを下げてどこか模倣されている部分があるような気がしています(この10年でどこが変わり、どこが変わっていないかを各行政関係者と飲みながら考察したいと密かに思っています)。 市民のためという大義名分の裏で、結局は国民の税金を使って私腹を肥やしているだけと取られても仕方ない役人の実態が鋭く描かれています。 ◆本音の価値は 稼ぐため、家族を養うため、生きるため…「これはおかしい」と分かっていても本音を言わず、自分と他人を騙し騙しその仕事を遂行して現役時代を全うし、余生の安定を得る。そんな人が溢れているようです。後ろめたい気持ちがあるのだとしたら、仕事を誇れません。それを続けるのは、なんとも人間らしくない(その対価なのでしょうか)。 最も貧しい国の大統領としてスピーチが知られたホセ・ムヒカ氏(愛称:ペペ)。彼は大統領でありながら本音を語り続けました。確かに、どの職業にも多少は‘本音と建前’があると思います。しかし、政治家が本音で語り、議論し合えなくては言論の府とは言えません。本音を隠して影でうまくやったもんが勝ち、という世の中に対しての警鐘に、若者の方が先に呼応しているようです。 最近ふと考えたのですが、人間の死に際には走馬灯が走ると言います。例えば人生80年くらい生きて、病院か自宅のベッドで死ぬ時に「ああ、もっと○○しておけばよかったなあ」と後悔する事があるかもしれません。その「○○」には誰々と話しておけばよかったなあとか、良書を読んでおけばよかったなあとか…人や物事の普遍的な本質に迫るものだと思います。決して、もっとスマホをいじっておけば…にはならないと思うのです。 その「○○」の1つに、「本音を語っておけばよかったなあ」というのがランクインするのではないかと思うのです。更には生きているうちに「本音で行動しておけばよかったなあ」と人間の生命が叫ぶのではないでしょうか。闇雲に稼ぐことを覚えた人間のエゴに対し、ペペと宮本氏の指摘には根底で通じるところがあると思いました。 私は本音を言うのは比較的得意だと自負しています(一方で建前はホント苦手です)が、それで起こる程度の軋轢なら、本気で生きている人たちにとっては、大した問題ではないと思っています。 役人でも政治家でも、死ぬまで欺瞞を抱えて生きている人をみたら、できれば死ぬ前の時間がある程度あるうちにそっと解きほぐしたいと思いました。それが、社会の為になるのだと思います。 そのうち幼い子どもまで‘本音と建前遣い’のエキスパートになったら、この国は終わっちゃうよ!というえもいわれぬ危惧を原動力に行動します。
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Posted by
山中 啓之
at 12:34 |
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