「絡まる」。
「絡まる」という言葉は、単純なものが複雑化したときに使われている。
一本の糸や紐が、どうした訳かあっちへ行きこっちへ行き、「絡まる」。
複雑化するものは、なにも目に見えるものだけではない。
言葉が絡まる、関係が絡まる、想いが絡まる…。
思うようにコトが運ばれないときにも「絡まる」は使われる。
マグリットの絵を見ていると、自分自身が「絡まっている」ことに気づかされる。
カタチのないモヤモヤしたものを抱えていたり、
目の前の現状だけがすべてだと勘違いしてしまったり、
理想と現実のズレに違和感を感じていたり、
本当は単純明解なことなのに、自分自身で複雑にしてしまっているんだなあと思い知らされる。
なぜなら、マグリットの作品が強力すぎるからなのだ。
太刀打ち出来ないほどの大きな存在の前に立つと、すごく素直になれるように
マグリットの絵を前にするとリセットされるような気持ちになれるのだ。
絡み合ったた紐が、それぞれ元の状態に戻るような、そんな力がマグリットにはある。
白い布で覆われた一組の恋人。
いったい二人はどんな表情で、どんな風に互いを想い合っているのか。
もしかしたら恋人だと思っていたけれども布を剥がすと別人だったということもあり得るかもしらない。
妙な高まりを覚える作品である。
《恋人たち》1928年 油彩/カンヴァス 54×73.4cm ニューヨーク近代美術館
無表情のおじ様(紳士)が規則的に空を舞う。
ある時代のスタンダードな衣装を身に纏い、静かに浮遊する。
私はこの作品を初めて見たとき、雨のように空から降ってきているのかと思った。
じっと浮かび続ける紳士たちは、不気味ささえ覚えてしまう。
《ゴルコンダ》1953年 油彩/カンヴァス 80×100.3cm メニル・コレクション
たくさん展示されてあった中で、私が一番素敵だと思った作品がこちら。
このあり得ないイメージは、多くの人に支持されている。
日中の爽やかな青空と、街灯の灯りが際立つ夜の街並み。
間近で見ると、もっと繊細で、絵の中に引き込まれてしまいそう。
《光の帝国 II》1950年 油彩/カンヴァス 78.8×99.1cm ニューヨーク近代美術館
たっぷり、130点以上の作品に触れることができ、
満足感と充足感に溢れる展示だった。
※画像はHPから引用しています。******************************************
マグリット展 | René Magritte
会 期:2015年3月25日(水)〜6月29日(月)
休館日:毎週火曜日 ※ただし5月5日(火)、5月26日(火)は開館。
開館時間:10:00〜18:00。金曜日は20:00まで。 ※入場は閉館の30分前まで。
会 場:国立新美術館 企画展示室2E
〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2
http://www.nact.jp/ルネ・マグリット(1898‐1967)
ベルギーの国民的画家であり、20世紀美術を代表する芸術家。
シュルレアリスムの巨匠として知られていますが、その枠にはとどまらず、
独自の芸術世界を作り上げる。
マグリットの作品は、言葉やイメージ、時間や重力といった、
私たちの思考や行動を規定する要素が何の説明もなく取り払われている。
詩的で神秘的、静謐な中にも不穏でセンセーショナルな部分が潜む
――イメージの魔術師が生み出す、不思議な“マグリット・ワールド”を生み出す。
※HPより引用しています。