大きな大きな鉄柱がありましたとさ。
その鉄柱には、四方八方に鉄線が張り巡らされ
いかにも険しそうな面持ちで、
ぶすっと直立不動に街を見下ろしていました。
無愛想な鉄柱につながった太い鉄線を辿ると、
同じような出で立ちの大きな鉄柱がありました。
まるで金太郎飴を切ったかのように同じカタチの鉄柱が
ずらりずらりと並んでいるのです。
同じ顔カタチをした鉄柱たちには密かな企みが在ったのです。
それは、太い鉄線を張り巡らして鉄柱王国をつくることでした。
山の天辺に立てられた鉄柱が支配者となり、
その地を治める長として君臨する計画でした。
天辺に立てられた鉄柱は、
雲よりも高いその大きさを誇らしげに
自慢しているかのようです。
孤高だけれども誇り高い長の風貌を為しています。
そんな無骨な鉄柱たちが恐れているのは
決して叶うことのない相手、ただ一人。
そう、日本のシンボル・富士山です。
富士山を目の前にすると、彼らはただの鉄柱になってしまいます。
いつか富士山を倒して、夢の鉄柱王国を作る計画を邁進しようとする鉄柱たちと
それを静かに阻止している富士山。
彼らの冷戦は終息する気配を見せません。
我々ニンゲンの知らぬところで、争いはいまも続いています。