9月例会報告
[2014年09月28日(Sun)]
9月例会は森井先生が記録・報告してくれました。
1 授業DVD視聴とリフレクション
牛久市立中根小学校4年国語「走れ」 加藤 寿恵先生
本校は学校全体で「読み描く」をテーマに,国語の文学作品の授業を進めている。その中で5月に実践した授業である。授業者の加藤先生は,子供たちの読みからスタートさせ,「どんなことを感じたか?」をペアーやグループで意見を交流しながら,深まりのある読みをさせたいという思いがあった。そんな中で,なるべく教師の言葉を減らし,子供たちの発言をもとに授業を進めようとしている姿が見られた。子供たちの聴き合う関係も育っている。子供たちから出た意見を全体に返したり,言葉に戻らせるために部分的に音読させるなど,子供たちの主体的な活動が印象的であった。
授業に対する石井順治先生のビデオコメントから
リフレクションの後,授業に対する石井順治先生のビデオコメントを視聴した。以下のような内容である。
良かったところ
・子供たちが素直でさわやかである。
・教師の取り組みが意欲的であった。文学作品の授業に挑戦している。
・全ての子供たちの学びを保障している。(グループ,ペアーなど多様な活動がある。)
・教師の表情が良い。(子供たちとの関係が良い。授業が終わった後で,「もっとやりたい。」という声が…)
気になること
・子供たちの挙手が少ない。「聴いてもらいたい。」という思いが少ないのでは…。また,ペアの後でも挙手の数が少ない。
・何となく授業者自身に苦しさを感じる授業であった。
子供たちが本当の意味での文学を読み味わうことの楽しさや良さをわかっていないように感じた。その原因をさぐると次のようなことが考えられる。
・「読み描く」ことが不足している。子供たちから出てきた抽象的な言葉が教師の切り返し発問で具現化されていない。
・ 状況が読めていない。登場人物がどのような状況であるのかきちんとわかっていない。
「読み描く」ためには,音読を繰り返し言葉の中から,状況をしっかりつかませることが必要である。「なぜ,そうなの?」と理由を問うと,答えは「〜だから。」というわけをさがす読みとなり,「読み描く」までには到達しない。グループ活動は子供たちが読みを深めるための手段であり,「どういうことについて考えるか?」明確な指示が必要である。その際に,考えさせたい文を音読させることも大切である。そうすれば,回数は少なくなり,グループ活動の時間も長くなる。
2 話題提供 齋藤 眞弓先生(石岡市立府中小学校)
齋藤先生から「今,求めらる道徳教育の充実」というテーマで話題を提供していだだいた。道徳が教科化として格上げされる中で,心のノート「私たちの道徳」も新しく改訂された。これは様々な教育活動の中で,効果的に使われるように駆使されたものである。道徳の授業はもとより,それぞれの教科の中で,何か諸問題が起きた時など生徒指導的な場面でも活用できる。書き込みもたくさんできるようになっている。子供たちの目にも数多くふれさせたい。
3 例会の感想 本橋和久 先生
話題提供として,齋藤眞弓先生が「今求められている道徳教育」についてお話されました。道徳教育については,15年ほど前にかつての勤務校で金井肇先生から直接ご指導いただいたことがありました。金井先生は「道徳的実践力」という文言をつくった方として知られていますが,人が生まれながらにしてもつ「生の心」と,あとから教育によって「育てられる心」を鏡餅に例えて説明してくださいました。齊藤先生のお話を伺っていて,その当時の道徳教育と現在文部科学省が進めようとしている道徳教育とでは,教師が創意工夫できる余地の大きさにおいてだいぶ変わってきているなという印象をもちました。次に牛久市立中根小学校の加藤先生の国語のDVDを視聴しました。昨年度までの教師からの発問を工夫するという方針から子どもの問いを課題にして授業をつくる方向に転換し,その先駆けとして行われた授業が4年国語「走れ」だということです。自分の読み方による音読が豊富なこと,ペアを取り入れてひとりぼっちをつくらないこと,グループになって多様性に触れる機会を多く与えていることなど,授業者の加藤先生が意図的に授業を進めていることがよくわかりました。問いに関しても,「読み描く」ことを目指し,苦しくても「なぜ,どうして,気持ちは?」という問い方をしないことに努めているというお話でした。私はひとつだけ気になることがありました。全体での共有場面で幾人かの特定の子どもたちが何度も発言していることです。その要因は何だろうと考えながら見ていました。このことについては,あとから見た石井順治先生のビデオレターで明らかになりました。加藤先生はなぜどうしてを問わないようにして物語そのものを読み描かせようとしているのですが,子どもたちの発言は「○○だからです。」という理由を語る言い方になっているというご指摘でした。物語を読み描かせること,そして子どもの問いから課題を見つけること,ということを教室で実現するのは容易ではありません。教師と子どもたちが日々の授業の中で時間をかけてつくり上げていくしかないと実感しました。加藤先生が先駆けとして挑戦された授業を拝見し,そのとても重要なことに改めて気付かされました。ありがとうございました。