
研究会が産声を挙げたのは、オリンピック前年の97年。
「水と緑の探検隊」というイベントで知り合った市民たちが立ち上げた。
「歩いてみたら、小諸の魅力に改めて気づいたんです。
子どももたくさん参加していましたが、彼らの視線が大人とは全然違う。
こういう目で、街を見たらどうなんだろう…ということで始まった」
(甘利副理事長)

研究会は、市当局と、ときには激烈なバトルを繰り広げながら、
街の魅力を市民たちに喧伝してきた。
「大正時代のお味噌屋さんを、市が買って駐車場にすると。
冗談じゃないって、もう、罵倒のし合い。
向こうは市民に対しては表面上は丁寧ですけど、
こちらは『ふざけるな』『頭ついてんのかお前には』とか。
いまは良好な関係ですが(笑)」(甘利副理事長)

研究会の努力が実り、
現在その場所は
「ほんまち町屋館」という
コミュニティースペースとして、市民に親しまれている。
小諸町並み研究会では、歴史的建造物を守ろうとする取り組みと並行して、
さまざまなイベントを開催している。
「城下町・忍者クイズラリー」もその一つ。

小諸育ちの子どもたちの多くは、
高校を卒業すると都会に出て行き、そのまま戻ってこないケースが多い。
「それでも、鮭が生まれた川に帰ってくるように、
子どもたちにもいつか戻ってきて欲しい。
そんな願いをこめて、小諸の古い町並みの良さを彼らの心に
焼き付けておこうという遠大な計画なんです」
(甘利副理事長)

普段は見られない歴史的建造物の内部をじっくり眺めたり、
しめ縄作りにチャレンジするなど、
楽しく遊びながら
小諸の文化に触れることができるこの催し。

毎年400から500名ほどの小学生が参加し、
「小諸の香り」を記憶の中に焼き付けていく。
「最近では、OBの高校生が運営を手伝ってくれるようになりました。
少しずつ、成果が上がってきているかな」
(甘利副理事長)

(取材日2009年11月2日 長野県小諸市 インタビュー・文章 本司有香)