江戸時代の建物は簡単に壊せる。でも二度と元に戻せないんです
島崎藤村
「千曲川のスケッチ」などで知られる城下町、信州・小諸。
北国街道を中心に点在する歴史的な建造物を守り、
地域おこしにつなげていこうと、
NPO「小諸町並み研究会」がユニークな取り組みを続けている。


江戸時代に建てられた歴史的建造物、北国街道・小諸宿の
旧脇本陣・粂屋。
ふだんは空家で、静まり返っているこの家に、時ならぬ喧騒が訪れた。
2009年11月3日、
NPO法人「小諸町並み研究会」主催の
「使って残したい伝統的建物の見学会」が開かれたのである。

この日公開されたのは、脇本陣を含め
四棟。
小諸の街中には、
江戸から戦前生まれの歴史的建造物が数多く残されているが、
オーナーの高齢化や代替わりで、その多くが
解体の危機に瀕している。


古い建物は
「壊すのはカンタンだけど、後から復元しようと思っても不可能」(甘利真澄副理事長)。
持ち主たちも、思い出の詰まった建物を壊すことに抵抗がある。

そこで、研究会では、オーナーサイドに対し
「店舗として活用しては」
と提案、見学会を開催したというわけだ。
地元放送局の取材なども入り、この日は結局百人余りの人々が、
江戸の息吹に触れることができた。

小諸藩一万五千石の
城下町であり、
北国街道の宿場としても栄えた小諸。
城址である
懐古園は有名だが、街中にも江戸以来の古い建物が散在する。
また
島崎藤村や
高浜虚子が滞在した町でもあり、
文学史跡も多く、文化の香り高い土地なのだ。

しかし、この小諸もまた、地方都市ならではの悩みを抱えている。
モータリゼーションの発達による
市街中心部の空洞化や、
若者たちの都会への流出。
また、当初ミニ規格で開通するはずだった北陸新幹線が、
長野五輪の実現によりフル規格となり、
その結果小諸を素通りすることになったのも、市民に大きなショックを与えた。
「でも、それを口実にしちゃダメなんです。
小諸が抱えているのは、典型的な地方都市の問題。
新幹線が来ないからさびれたわけではないですよ、と。
そこから、我々の活動が始まりました」と、
NPO法人・小諸町並み研究会の甘利真澄副理事長は語る。
<<後半へつづく>>