2021年7月17日(土)、宇都宮市男女共同参画推進センター「アコール」で開催された「女性自治会役員等意見交換会」の様子をまちぴあスタッフも拝聴させて頂きました。
宇都宮市内では現在787の単位自治会があります。その中で女性自治会長は33名。女性自治会長は自治会全体の4%ほどしかいません。地域内で意思決定が出来る立場にいる女性が課題を共有し、多角的な視点や対応などへのノウハウを持てるよう、女性だけの意見交換会が初めて企画されました。民間企業で行われているダイバーシティ推進について学ぶ講座と参加者同士の交流会が実施され、女性自治会長をはじめ、婦人会や各種部会長をされている女性役員20名が参加しました。
前半は講師に株式会社NTTドコモ栃木支店長の野沢千晶氏を迎え、「職場の中のダイバーシティ推進」をテーマとした講座が開催されました。野沢氏は宇都宮市出身で昨年よりNTTドコモ栃木支店長として宇都宮に戻ってきたそうですが、ドコモ東京支店勤務を得て、人事部ダイバーシティ推進室長としてダイバーシティ推進を実施してきた経歴から、ドコモの組織改革についてご説明頂きました。
ダイバーシティとは「多様性」を認め合うこと。ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)という形で考えられることも多く、集団において年齢、性別、人種、宗教、趣味嗜好などさまざまな属性、多種多様な人が互いの考え方の違いや個性を受け入れながら、ともに成長することです。経済産業省でも2017年から「ダイバーシティ2.0」を提唱しています。
なぜ、ダイバーシティ推進が重要となるのか。それは、少子高齢化など労働力人口の減少により、女性及びシニアの活用が必要とされているからです。現在、日本の人口は右肩下がりで労働生産人口は8割まで減少していると言われます。職場を働き盛りの男性ばかりで構成できない現状になっており、女性や高齢者、障がい者、外国人などの多様な人材の活用で労働力を補うためにも、「働き方改革」が求められているのです。
ドコモでは2006年にダイバーシティ推進室が発足、女性の働き方改革やLGBTへの理解等を行ってきましたが、なかなか難しいものがあったそうです。というのも、ドコモの親会社であるNTTは典型的な男性中心型の労働慣行で、当初の男女比は8:2、部長クラスの女性管理職は0.2%。
ライフイベントに左右されやすい女性のキャリア意識を継続させるために数々のセミナーを企画してきたが、身近な方の応援が一番効果があったそうで、上司・統括・人事部など部署を横断したサポートチームを形成する、上司に女性管理職を育てる意識を持ってもらうため、該当社員のキャリアアップ研修と同時進行で課長クラスへのフォローアップ研修を実施するなどの策を取ってきたそうです。
ダイバーシティ推進で求められているリーダー像も、従来型のカリスマ性を持った支配型リーダーから、支援型リーダー(サーバントリーダーシップ)や自分らしさを持ったリーダーシップ(オーセンティックリーダーシップ)に変化しているとのこと。先頭を切ってメンバーを引っ張っていく力強いリーダーから、メンバーを前面に出し、後ろから様子を見ながら調整するサポート役が望まれてきており、野沢氏も支援型リーダーの形式で「とことん聞く」「情報をオープンにする」「自分の弱みを見せる」の3点を大切にしてきたそうです。
「改革は場づくりから始めないとなかなか進まない」と栃木支店長となった昨年から、ハード面では壁が多かった栃木支店の内装工事に着手し、フリーアドレスオフィスに変更。ソフト面ではリモートおやつ会(サロン)の開催などを行っています。
ダイバーシティを阻害するものとしてみんながみんなカテゴライズされた意識や価値観に縛られる、無意識の偏見・偏った考え(アンコンシャスバイアス)があると言います。偏見を完全に払拭することはできないけど、認識はできる。気付くことが重要だと。私たちの価値観がそのまま引き継がれないよう、次の世代のためにも家庭において女性が過少評価しない教育が必要と野沢氏は述べました。
後半では5グループに分かれて意見交換会が開催されました。A:役員などの立場になったきっかけとB:自治会(所属する組織)の課題と解決方法について話し合われました。
役員になったきっかけとしては、育成会など自治会関連団体で活動している中での他薦という方が多い。または家族内(特に父親)が自治会長を長年されている関係で引き継ぐような形で自治会長になった方も相当数おられました。
女性が役員に就任したきっかけに関しては男性役員から特に多い質問だそうで、「自治会役員候補に良さそうな女性がいるけど、どのようにお願いしたらよいか分からない」という相談が多いため、今回のテーマに起用したと事務局から説明がありました。
自治会の課題については、住民の高齢化、役員の高齢化、自治会脱退問題、自治会未加入問題、地域内格差、中年男性の孤立化、空き家増加など、社会問題の縮図と思える話題が次々と上がりました。
特にどこの組織でも若い人が参加しない、若い人が役員にならないという課題を挙げていました。
若手の役員がいる自治会の方々からは、自治会のメリットをうまく伝わっていない、若い人が会長になると若い人が役員で入ってくるという実体験を踏まえ、資料を整理する・会計の閲覧・役員会の傍聴など「見える化」する、日曜日に会議を開催する(これは自治会で公民館等を所有しているか、公共施設を利用しているかで差異が生まれているようです)、LINEグループで若手と情報共有し、高齢の役員へ報告することで運営を円滑にしている事例も発表されていました。
自治会長15年以上のベテランの方々からは「問題はあるけれど、行動していると解決するから悩みはない」と頼もしい発言が。ベテランの方々が揃って口にされたのは「人の話をよく聞くこと」+「即決力」。問題が発生したら色々な方に話しかけ、話を吸い上げ、その場で即断する。講座の中でもあった、支援型リーダーシップを自然に取り入れてきたからの成果ではないでしょうか。
講師からは自治会等組織の運営について、負担を集中させない、すべてを細かくして負担を減らす、ある部門だけを担ってもらう、など業務を分散させることで新しい方が組織に入りやすくなること、また、ちょうど世代が変わっていく時代であり、若い人に新しいツールの先生役となってもらう、ツールを含めて若い世代に委ねるなど、若い人に決定権を持たせることでみんなを巻き込むアドバイスをしました。
「組織の中に異物が3割入ると全体が変化する」と言われているので、パイオニアである女性役員の方々に頑張っていただきたいとエールを送っていました。
数少ない女性役員ということで、並々ならぬご苦労をされた方もいらっしゃったようですが、女性ネットワークを上手に活用して新しい事業を始めたケースなどもたくさんお伺いしました。男性役員の集まりと比べて、「あなたの地区ではどうしているの?」と相手の情報を聞き出すのがお上手だなと感じました。
今まで希少だった、女性役員の方々が同じ立場の人と集うことで「共感」が多く発生したようでした。集う機会が増えると何か新しいことが生まれそうなワクワク感もありました。今後もこのような意見交換会が継続されることを期待します。
(記事投稿:鈴木)
【参考URL】
・NTTドコモHP−ダイバーシティ推進・
宇都宮市男女共同参画推進センター「アコール」Facebook