2019年6月19日〜20日の2日間に渡り、東京で全国NPO事務支援カンファレンス事務局主催の全国フォーラムが開催されました。1日目は生憎都合が付かず不参加でしたが、2日目、6月20日(木)にNPOサポートセンター田町オフィス4階で開催された「認定講師講習会&ケーススタディ」にまちぴあスタッフ2名とまちぴあ運営団体であるNPO法人宇都宮まちづくり市民工房理事1名、計3名が参加してきました。
NPO法人岡山NPOセンターはNPOの基盤強化には事務力向上が必須と、全国に先駆けてNPO事務支援センターを設立。経理、登記、労務、所轄庁手続きと多岐にわたるNPO 法人に必要な事務手続きについて、その理解度を問う「NPO事務力検定」を開発し、全国に普及させてきました。NPO法人宇都宮まちづくり市民工房も2014年に北関東圏内で初めてNPO事務力セミナーとNPO事務力検定<初級>を招致開催。今年度、5年振りに県内でのセミナー&検定実施を計画しています。
この「NPO事務力検定」全国普及をきっかけにNPO事務支援カンファレンスが設立されました。NPO法人の運営実務の支援を行っているNPO支援組織等によって構成し、NPO法人の事務能力向上に向けた取り組みを進めています。
NPO事務力セミナーを栃木県内で開催するにあたり、NPO事務力検定初級合格者の3名が、認定講師となるための講習会に参加しました。
今回、講習会の講師を務めたのは、認定講師で全国NPO事務支援カンファレンス代表世話役の志場久起氏(NPO法人わかやまNPOセンター理事)。
NPO事務力セミナーで使用されるテキスト内容について一通り復習しながら、法改正等で以前と変更になった点や、NPO法人の事務手続きで見逃しやすい、いわゆる「NPOあるある」についてユーモアを交えて一つ一つポイントとなる部分について解説がありました。NPOの事務に関わってまだ日が浅い方に向けてどのような説明をすれば理解しやすいか、例え方などがとても参考になりました。
雇用や収益のあるNPOなどでは、税法や労働基準法などNPO法以外の法改正についても注目する必要があります。”有給休暇の義務化”など、ホットな話題にも触れられました。
「通勤手当に特急料金を含んでよいのか」「協会けんぽの健康保険料額は都道府県により異なる」など、ちょっとした疑問解決や豆知識のような話もあり、テキストに掲載が無い部分についても伝える、セミナーの良さを感じました。
午後は、「事務支援におけるケーススタディin東京」が開催され、10都道府県の中間支援組織より17名が参加しました。午前に引き続き、講師を務めていた志場氏が司会進行役となり、各地で行っている事務支援のメニューの共有や多く寄せられる相談の内容とその対応などについて情報交換を行いました。
各地からの話題を元に、議題を@事務支援事業等の有料化(NPOの自立事業強化)についてANPO事務できる人材の不足についてBNPOの世代交代(法人の終活含む)の3点に絞り、深く話し合うこととなりました。
まずは@支援事業の有料化について。支援を行うにも交通費や人件費など、どうしてもコスト(経費)がかかってきます。有料支援メニューの構築は中間支援組織にとっても支援対象の組織にとっても基盤強化となります。しかし、県や市町などの公的な支援センターの運営団体となっている中間支援組織も多く、センターと中間支援組織は別機関ながら運営者は同一であることから「同じ人に対応してもらっているのに、無料と有料の違いが何故出てくるの?」といった声が生じてくることも。基本無償のセンター事業から、有償の法人事業へとどう移行すればよいのか、既に事務支援プログラムを運用している中間支援組織から様々な事例が挙がりました。
次にA事務ができる人材不足をどうするか。組織を存続していくためには事務スキルのある人材は不可欠ですが、NPOは元々事業を行いたいと集った仲間で形成・設立されることが多く、中間支援組織側も含め事務に長けた存在が欠けていることも往々にしてあります。さらに非営利活動を行う法人格としてNPO法人以外にも非営利型一般社団法人やLLP(有限責任事業組合)と選択肢が増え、相談対応側に幅広い知識が求められている現状もあります。
NPO認証の権限委譲が進み、市町が所轄担当となった県も多くあります。担当件数が細分した上に行政の担当は定期的に替わるため、NPO法人の法定事務について経験が浅い担当も多く、そのためNPO法人事務担当もレベルが上がらないという見方の意見も出ました。中間支援組織が所轄庁(行政)とも協力体制を取り、法定事務に明るい人材を育成することが急務と一致しました。
最後にBNPOの世代交代(法人の終活含む)について。NPO法制定から20年が経ち、初期に設立したNPO法人の運営者が軒並み70代〜80代となっています。3年間、活動報告書に活動実績の記載の無い「休眠法人」の存在も問題視されるようになりました。休眠NPO法人増加の要因の一つに、この会員高齢化があります。高齢化により活動を維持できなくなったが、解散に至る諸手続きの手間・大変さから踏み切れない団体も多いのです。
この問題の解決策の一つにNPO同士の合併がありますが、合併は合意形成を取るのが難しく解散より困難と、多くの中間支援組織が感じていました。
地域にとってセーフティーネットといえるような事業の担い手が居ない場合、一時的に中間支援組織が引き受ける必要もあるのでは、といった意見もありました。複数の団体が一つの総務を共有し雇用を担保する新しいモデルの構築アイデアも飛び出しました。
なかなか解決が難しい問題ですが、委託事業のみ別法人に移譲継承し解散した法人や、解散準備として各事業を地縁組織の事業へ組み込む取り組みなど、各地での先進事例を共有しました。
途中、関西ジョークを挟みながら、終始和やかに進行しました。
既に事務支援サービスを提供している中間支援組織からは、NPOの事務支援はただの事務代行ではなく、コンサルタントやアドバイザーの要素があるとの声が多く出ました。事務支援として第3者の立場から法人を見ることで、相談対応やセミナー開催とは違った形で、より深い支援も行うことが出来るのではないかと感じました。
センターのまちぴあ・運営団体の市民工房、それぞれでどのような事務支援が出来るか、全国の事例を元にこれから検討していきたいと思います。
(記事投稿:鈴木)
【参考URL】
・まちぴあブログ:「NPO法人事務力セミナーin栃木」開催のお知らせ(2014年)
・まちぴあブログ:「NPO法人事務力セミナーinとちぎ」参加報告(2014年)