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全国キャラバン in 青森 [2007年10月29日(Mon)]

報告者:南部(NPO法人ライフリンク)


 秋晴れに恵まれた10月6日、「自死遺族支援全国キャラバンinあおもり」が開催されました。会場には、250人の方が来場されました。

 シンポジウムは、2部構成でした。

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 まずはじめに、主催者挨拶として、難波吉雄健康福祉部長よりご挨拶がありました。



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 第一部のシンポジウムでは、テーマ「心の健康づくり・自殺対策の実態と今後の展望」〜地域、職場、学校での心の健康づくり・自殺対策はどこまで進んでいるのか、そして今後は〜ということで、シンポジストの方々がおひとりずつ壇上でそれぞれの議題についてお話なさいました。



 座長に渡邉直樹さん(青森県精神保健福祉センター所長)、シンポジストには、高堂祥子さん(秋田県健康福祉部健康推進課副主幹)、高森正義さん(南部町健康増進課課長補佐)、妻鹿義明さん(三菱マテリアル株式会社青森工場総務課)、高橋範隆さん(深浦町立修道小学校校長)、三上善博さん(青森県生活サポート生協設立準備会事務局)が参加なさいました。

 まず、渡邉直樹さんが自殺対策全般についてお話され、その後高堂祥子さんが「秋田県における自殺予防の取り組みと今後の課題」ということで、秋田県の現状と取り組みについてお話されました。高森正義さんからは、「南部町における自殺予防の取り組み」のお話があり、南部町では自死遺族ケアとして四十九日過ぎに遺族訪問を行っているということがお話されました。妻鹿義明さんは、「当工場のメンタルヘルスへの取り組みについて」ということでお話をされ、企業の取り組みについてお話してくださいました。高橋範隆さんは、「小学校における『こころ』の取り組み」についてお話され、ご自身が働かれている小学校での取り組みについてお話をされました。「自分の気持ち」と「相手の心」を大切することを生徒に伝え、先生を囲んで生徒が地面に座り話しあうというスタイルも印象的でした。「家に帰って、誰かをほめよう」ということを先生は伝えておられるそうで、生徒のご家族の反応も良いそうです。最後に、三上善博さんが「青森県生活者サポート生協設立準備会の取り組みから」という題でお話をされ、無料相談会を行っていることと、現在設立賛同署名を集められていることをお話されました。

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 休憩時間には、ひばのくに・こだまハーモニーによるオカリナの演奏がありました。



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 第二部では、パネルディスカッションが行われました。テーマは「自死遺族支援の総合対策と私たちに出来ること」〜新しいつながりが、新しい解決力を生む〜で、まずビデオ上映がありました。
 その後、コーディネーターとして、清水康之さん(NPO法人ライフリンク代表)、パネラーとして山口和浩さん(NPO法人ライフリンク)、南部節子(NPO法人ライフリンク)、小山真貴子さん(青森県つがる市健康推進課)、佐藤裕幸さん(青森県障害福祉課)が参加し、意見交換がされました。



 佐藤裕幸さんは、青森県の取り組みについてお話され、「青森も真剣に取組んでいかなければならない」とお話されていました。また、小山真貴子さんからは、つがる市では遺族会を立ち上げられているということのお話があり、遺族会を運営していくときの大変さについてもお話がありました。小山さんは、勉強しながらこれからも遺族のつどいを続けていきたいとお話されました。山口さんは、「Re」の取り組みについてのお話をし、地域として偏見をなくすことが必要であるということを伝えました。私、南部からは、自死遺族である自身の体験談をお話した上で、自分自身は気づけなかったけれど、自殺の兆候のサインは必ずあるから早く察することが出来たら良いというお話と、遺族が回復できるのはやはり家族を含めて周り・地域の支えがあったことなどをお話しました。私からは、「語っても良いんだよ、話しても良いんだよ」ということを遺族の方に伝えたいとお話をしました。最後に、清水さんからは、地域を大事に皆さんと一緒に考えながらやっていきましょうというお話がありました。

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 青森県でのキャラバンキーワードは、「わかりあえる人がいる」となりました。

 会場からは、「(自殺は)語れることの出来る死だというお話を聞けてよかった」「語ることによって遺族も少しは心が軽くなる」といった感想が出てきていました。

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 シンポジウム中には自死遺族の「心の悩み相談」、終了後には自死遺族のつどいが開催され、何人かの方々が参加されていました。
全国キャラバン in 滋賀 [2007年10月24日(Wed)]

報告者:事務局長 藤澤(ライフリンク)


 10月8日(月・祝)、3連休の最終日に、滋賀県の「全国キャラバン」シンポジウムが長浜文化芸術会館大ホールにて開催されました。

 小雨降る中、「いのちの尊さを考えるシンポジウム 〜地域ぐるみで自殺を予防するために〜 」と題したシンポジウムに、約250名の方が詰め掛けました。

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 開会に先立ち、北沢繁和氏(滋賀県湖北地域振興局長)が挨拶をされました。



 多くの自殺が個人の自由意志ではなく追い詰められた末の死であるということ、社会の適切な介入によって多くの自殺は防ぐことができるということを押さえた上で、行政として県民のみなさんと一緒に自殺対策に取り組んでいきたいとの意思表明をされました。

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 第一部は清水新二氏(奈良女子大教授)による「自殺の社会的要因をさぐる」と題した基調講演でした。



 自殺問題は他人事ではないということを、データを使って分かりやすく示してくださいました。

 自殺問題に関する基本的な見方として、「決して個人的問題ではなく社会の問題である」「自殺は決して単一の理由で発生するのではない」「最後まで生と死の境を揺れ動いている」と教えてくださいました。

 また、自死遺族の置かれた状況を分かりやすく図示して下さり、「語りたいが語れない」苦しみや怒りのやり場のないことを指摘されました。これまで、自殺者の親族等の苦しみや怒りについて、個人的に問題解決をするようにと社会が放置してきたことのつけが明らかだと。

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 第二部は「地域ぐるみでいのちの大切さを考える」と題したパネルディスカッション。コーディネーターは基調講演をされた清水新二氏、そこに4名のシンポジストが加わりました。



 まず、シンポジスト4名がそれぞれの立場から発表をされました。

 西原由記子氏(国際ビフレンダーズ東京自殺防止センター・創設者)からは、自殺念慮者に対する電話相談を中心とした活動の紹介がありました。必要に応じて面談、場合によっては危機介入まで行っており、そこまでして初めて自殺念慮者に対する支援になるとのことでした。
また、かつて子どもの自殺が群発したとき、遺された親たちから相談を受け、安心してその辛い思いを語れる「場」が必要と感じ、「エバーグリーンの集い」という遺族の分かち合い活動を始めたそうです。最近では、ご遺族の中から、ボランティア志望をする方が出てきて、それが宝物、励まされていると語ってくれました。

 続いて、尾角光美さんが自死遺族としての体験を語ってくれました。
その冒頭、来場者に対して『どうして死なないで生きているんだろう』ということを念頭に置いて私の話を聞いてもらいたい、との投げかけがありました。
お母様が4年前に自殺で亡くなったそうです。いろいろな理由があって、尾角さんが子どものころからお母様は死にたいと口に出して言っていたそうです。お母さんの生きる理由になっていない自分に無力感を覚え、もう危ういとわかっていても防げなかったと自分を責めたそうです。死にたいと言い続ける家族と一緒に暮らすことの辛さを語ってくれました。一時期、お母さんと同じ亡くなり方をしたいという思いに駆られたこともあったそうですが、なんとか乗り越えられたと今は思っているそうです。よく人から、どうやったら乗り越えられるのと聞かれるけど、そんな単純なことではないと断言されました。強いて言えば、誰か、分かってくれる人と、絶えず繋がってこれたことだ、とのことです。

 3番目に、多重債務による自死をなくす会・代表理事の弘中照美氏がお話をしてくれました。
ご自身のこと、自殺で亡くなったお母様のこともお話しくださいました。
お母様を助けられなかったという思いもあって悲しみは消えないけれど、幸い周りには支援者がいて、「多重債務による自死をなくす会」を立ち上げることになったと教えてくださいました。
ホットライン相談の活動で、中高年男性が「家族にも会社にも言えない」といって電話口で号泣された経験など、辛い気持ちを言うことのできる「場」を提供できていると実感しているそうです。

 辻本 哲士氏(滋賀県立精神保健福祉センター次長)は、「あくまでも教科書的な病気の面からの説明」と前置きをした上で、データを使って、うつ病の実態を説明くださいました。

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 シンポジウムの締めくくりとして、地元滋賀県において、自死遺族の分かち合いのつどい「凪(なぎ)の会」が発足することが紹介されました。



 この日を迎えるまでの数ヶ月の準備期間をサポートしてきた「こころのカフェきょうと」代表の石倉紘子さんが、凪の会のスタッフのみなさんに、エールを送る意味で花束を贈られました

 こうやって、助け合い、支えあう関係が広がっていくことが、「生き心地の良い社会」に繋がっていくと思います。

 凪の会のみなさんの今後のご活躍を願っております。

 なお、滋賀でのキャラバンメッセージは、
知ること、伝えること、つながり続けること〜できることから連携を〜
となりました。
全国キャラバン in 岩手 [2007年10月20日(Sat)]

報告者:藤原(ライフリンク)


 9月30日(日) 岩手県教育会館大ホールに於いて、全国キャラバンinいわて 自殺総合対策県民シンポジウム「こころといのちを支えるいわて〜今、私たちにできること〜」が開催されました。



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 まず、オープニングで、達増拓也岩手県知事によるご挨拶があり、さらに岩手県自殺予防対策推進協議会会長酒井明夫氏よりご挨拶がありました。



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 第一部では、地元劇団「空想工房」による「うつ・自殺予防」についてのオリジナル演劇、「星のしずく」が上演されました。

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 第二部では、「自殺遺族支援〜今、私たちにできること〜」をテーマに、「自死遺族からのメッセージ」及び「自死遺族支援の課題と方向」と題しパネルディスカッションが行われました。

 自死遺族からのメッセージでは、私、藤原が登壇させていただきました。



 「母の死から10年。今、自殺者が年間連続3万人を超える時代に、遺族として何ができるのか。それは、自殺という死に直面した当事者にしか感じることのできない気持ちを伝えることなのかも知れません。」というメッセージをはじめとし、下記の項目に沿って話させていただきました。

■私の家庭背景と母との死別
 幼少期、両親の離婚。12年間の母と祖母との生活。突然の母の死。何を感じ、何に苦労したのか。
■自殺という死に方
 自殺する人間が感じること。声無き声とは何なのか。なぜ母が自殺したかはわからない。自殺の要因。
■メンタルケア(重要課題)
 EX1:奨学金制度と教育現場の支え
 EX2:分かち合いの場
■今、私たちにできること
 今日、帰宅してからできることとは・・・「身近な人を気にかけること」


  
 次のパネルディスカッションでは、「自死遺族支援の課題と方向」という題で意見交換が行われ、パネリストとして
・岩手県精神保健福祉センター
  自殺予防支援コーディネーター 小館恭子 氏
・岩手県保健福祉部障害保健福祉課
  主幹兼療育精神担当課長  朽木正彦 氏
・ライフリンク  
  清水代表 
  藤原
コーディネーターとして、
・岩手医科大学神経精神科学講座 
  助教 智田文徳 氏
以上5名が登壇しディスカッションが行われました。



各先生方から下記の内容で現状報告と課題についてお話をいただきました。
@岩手医科大学神経精神科学講座 智田助教
医療従事者からの視点及び県委託モデル事業の取り組みや支援経過についての報告
A県精神保健福祉センター 小館自殺予防支援コーディネーター
遺族のメンタルケア事業・交流会詳細についての報告、遺族への交流会参加呼びかけ
B県保健福祉部障害福祉課 朽木主幹兼療育担当課長
岩手県に置ける自殺の現状と県自殺対策プロジェクトについての報告
総合的自殺対策推進=県自殺対策推進協議会などの設置運営等
普及啓発事業=対策アクションプラン・かかりつけ医研修・リーフレット配布等
早期発見・対応=自殺関連総合相談窓口全保健所設置等
地域介入モデル事業・遺族ケア=岩手医大委託遺族支援モデル事業・専門相談・遺族会等
Cライフリンク 清水代表
自殺実態1000人調査中間報告
 最後に、上記の内容を踏まえて、遺族の現状(遺児との関わり、教育系大学卒業の知識を含む)と意見を述べさせていただきました。

 関係機関が取り組みを進めている「自死遺族支援モデル事業」=自殺遺族への支援体制の構築を目的とした心理学的剖検に関する調査研究事業の中には、下記のような内容があります。
「自殺が死体検案によって証明されたときの検案医等を通じ支援リーフレットを配布」
私見ではありますが、自殺発覚後、遺族が一番困ることは各種手続きやその衝撃による悩み・困り迷いなどといった心理的問題だと考えています。また、遺族を取り巻く物的・人的環境の変化への不適応が二次被害を誘発させているとも考えます。時間が経過してからの相談方法の開拓は難しいものがあり、遺族の生活について早急に対応するならば、この取り組みは大きな成果をあげるであろうと思います。

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 第三部では、「自殺のない地域づくり〜今、私たちにできること〜」をテーマに、「いわて自殺防止月間の取組み」についての報告と、「つながり(結い)で自殺のない地域をつくる〜私たちの活動報告〜」と題し、ボランティア団体や精神保健の分野の皆さんでパネルディスカッションが行われました。

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 岩手県に於けるシンポジウムでは、各立場からの報告、意見交換を図ることができ、各立場で今できることとは何なのかを考えるヒントを得られたと感じています。
 今以上に教育・医療・福祉・産業・司法・矯正など各専門領域の連携を図り、情報を共有することにより、自殺志願者も自死遺族も生き心地のよい社会つくりをできていけたらよいと感じさせられました。
 ライフリンクはその架け橋です。「新しいつながりが、新しい解決力を生む。」全国キャラバンを通じ、より人間らしく、より生き心地のよい社会になるための手立てが確立されることを願います。

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 岩手県のキャラバン・キーワードは、「新しいつながり(結い)」となりました。

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 私、藤原が参加できませんでした一部及び三部の時間に受けた取材については、ライフリンクHPにアップされている「TBS イブニング5」の記事をご覧ください。
 
全国キャラバン in 広島市 [2007年10月15日(Mon)]

報告者:ロアン・コーマン(ライフリンク)


2007年10月7日(日)、中国新聞ホールにて
「自殺対策シンポジウムひろしま2007」が開催され、約500人が参加しました。



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 まず、秋葉市長から広島市における自殺の実態および自殺対策基本法の理念に則り、
広島市の自殺対策取組についてご挨拶がありました。

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 その後、東京大学大学院教育研究科倉光教授が、「心のSOSにどう対応するか」をテーマに基調講演されました。倉光教授は、母性原理から父性原理へと変化している日本の競争社会および格差問題に加え、長年のカウンセラー経験に基づき、行動の選択と結果の連鎖、人間の内界など、様々な視点から解かりやすく自殺について説明されました。講演の最後でおっしゃった「生きているだけで業績です」という言葉はとても印象的で、成果を重視するようになってきた日本の社会で今後大切にすべき言葉だと感じました。

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 続いて、「今、私たちにできること」をテーマにシンポジウムが行われました。コーディネーターの広島大学病院精神科山脇教授は、自殺に関する統計を紹介した後、下記の5名はそれぞれの分野から自殺の現状および対策について報告されました。



@ 広島大学病院精神科岡本講師:うつの正しい理解
A 倉光教授:東京大学の取組
B 広島産業保健推進センター坪田所長:職場におけるメンタルヘルス対策
C 秋田弁護士:多重債務による自殺および生活保護の問題
D ライフリンク西田副代表:自死遺児および自死遺族の心ケア

 自殺には様々な要因および視点があり、様々な能力を持つ方々が今後如何に連携を図っていくことが自殺対策の鍵となることを考えさせてくれました。
シンポジウムの後、以下の4つの分科会にわかれ、それぞれのテーマを中心により詳細な報告および質疑応答が行われました。



第1分科会:うつ病の正しい理解
第2分科会:多重債務による自殺の防止
第3分科会:職場における自殺防止
第4分科会:自死遺族の痛みと課題

 第4分科会は、ライフリンクの西田副代表が担当し、ビデオ等により自死遺族の心ケアについて説明されました。広島は原爆を経験しており、被ばく者にはその体験を話せるようになるまで何10年もかかることがあったので、自死遺族の心ケアも一人一人のペースでゆっくりと進むことが大切であるとフロアからのコメントがありました。 

 また、「広島には自死遺族分ち合いの会はありますか」とフロアからの質問がありましたが、現在、広島では公開でライフリンクと連携している自死遺族分ち合いの会がないため、今回のシンポジウムを通じて、広島市における遺族の分かち合いの会につながることを心より願います。

 広島市のキャラバン・キーワードは、「今、ここから始めよう」となりました。
全国キャラバン in 福島 [2007年10月09日(Tue)]

報告者:大谷(ライフリンク)


 9月29日(土)、福島駅前にある「こむこむ館」わいわいホールにおいて、「自死遺児支援を考えるシンポジウム 遺された子どものこころの声から〜いま、私たちにできること〜」が開催されました。秋を感じさせる涼しい日でした。
 約300名入るホールは、ほぼ満員になりました。



 はじめにれんげの会会長の金子久美子さん、
続いて内堀雅雄福島県副知事によるあいさつがありました。

 会は2部構成で、第1部が講演、第2部がシンポジウムでした。

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 第1部の講演では、「自死遺族との出会い」というテーマでライフリンクの清水康之代表が登壇しました。



 清水代表が話したのは、NHKのディレクター時代にあしなが育英会から発行された『自殺って言えない』という小冊子を読み自死遺児と出会うまでのこと。彼らとの信頼関係を築いて取材に至るまでのこと。番組づくりにあたって自死遺児が顔も名前も出して出演するに至るまでのこと。そして数年の年月を経てNHKを退職、ライフリンクを設立し今日至るまでのこと。約1時間にわたる講演に聴衆は引き込まれて耳を傾けていました。

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 第2部のシンポジウムのテーマは「今、遺された子どもたちを支えるために」。

 はじめに、お母様を自死で亡くされた尾角光美さんが自らの体験を話されました。一番つらい時に支えになったのは、何か特別なことというわけではなく、ただ一緒にごはんを食べてくれる人がいてくれたこと。そういう人との継続的なつながりが明日を生きる力になるというメッセージが尾角さんの飾らない語り口を通して聴衆に届けられました。自死遺族はその経験について、乗り越えるとか立ち直るということではなく、それと共に生きていくもの、という言葉も心に残りました。

 続いて、郡山メンタルサポート代表でありスクールカウンセラーでもある成井香苗さんが臨床心理士の立場から遺児の心のケアについて話されました。はじめに成井さんが、ご遺族の実体験のお話の後で心理学的な理論の話はしづらいのですが、臨床心理士の立場からお話させていただきます、という前置きをされた心遣いが心に残りました。自死遺児が死を受け入れ悲嘆を収めるまでのプロセスについての説明の後、自死遺児に対して私たちができることは、よい聞き役になって寄り添うことです、という話をされました。

 次に、ライフリンクの副代表でもある、あしなが育英会の西田正弘さんが自死遺児支援に携わってこられた経験から話をされました。自死は社会的に追い詰められた末の死であり、今の日本は3万人の自死者を出さないと新しい年を明けることができない、という問題提起がありました。また、あしながレインボーハウスの取組みのDVDも放映され、実際の遺児のケア活動が紹介されました。

 以上、3名のパネリストの話を受けて、コメンテーターの熊倉徹雄さんが精神科医の臨床現場で時折見られる遺族の怒りのコントロールの難しさやそれゆえに家族同士でもなかなか分かり合えない状況のお話と自殺対策大綱や福島県の行動計画案の紹介をされました。

 コーディネータの玄永牧子さんからは、「身近にいる人とのつながりを確認してみませんか。」という呼びかけがありました。
 「よく見渡してみると私たちには寄り添う人がいること、そして、私自身も寄り添う人になりうることに気づくかもしれません。その気づきこそが誰もが生きやすい、居心地の良い社会なのではないでしょうか。」との締めの言葉が、今回のシンポジウムの大きなメッセージとなりました。

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 コーディネーターの玄永牧子さんがまとめにも使われた「寄り添うこころ」と言う言葉が、福島でのキャラバンキーワードとなりました。
全国キャラバン in 和歌山 [2007年10月04日(Thu)]

報告者:尾角

 
 去る9月24日(月)、和歌山県立医科大学にて、「わかやま自殺対策シンポジウム」が開催されました。



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 シンポジウムは三部構成で、基調講演、当事者の体験発表、パネルディスカッションという内容でした。

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 第一部では、内閣府自殺対策推進室の森信二氏により、「自殺総合対策大綱から自死遺族支援を考える」をテーマに日本の自殺の現状説明、大綱の説明、自死遺族支援について講演されました。

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 第二部は、当事者の声に耳を傾けるということで、南部さんのお話をVTRで見たあと、自死遺児の立場から自分(尾角)と亡くなった母の物語を紡ぎました。自殺は複雑な要因、背景があって起こるということをまず話しました。夫の会社の倒産、借金、介護疲れ、母子家庭での子育て、生活苦。その末、長年うつ病を患っていた不安定な母との葛藤、最後の最後には母と共に死を選ばざるを得なかったことを伝えました。母の死後、自分自身もなくなりたいとまで想うこともありましたが、継続的な「つながり」の中で回復していきました。「つながりを絶やさない」。それが何よりも必要な自殺対策であると強調しました。



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 第三部は、パネルディスカッション。
シンポジストには、
山田和子さん(和歌山県立医科大学保険看護学部教授)、
森川勝さん(和歌山いのちの電話協会事務局長)、
山口和浩さん(自死遺族支援ネットワークRe代表)、
西田正弘さん(ライフリンク副代表)、
北端祐司さん(和歌山県精神保健福祉センター所長)、
そして、コーディネーターに
篠崎和弘さん(和歌山県立医科大学精神神経科教授)
が参加されました。



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 まず、大学で保健士の養成を行っている山田先生から、和歌山県の自殺に関する状況(近畿圏で自殺率トップ、老人の自殺が多いなど)と独自に行った調査について報告されました。
 調査を通して、日本の自殺者が3万人を越えることや、法律ができたことを知っている人は10%未満だったが、一方で9割以上の人が「自殺は防げる」と考えているということがわかったそうです。また7〜8割の人が「相談されたら親身にのる」とも答えていたようです。

 そして、いのちの電話の事務局長の森川さんからは近年のデータ、活動状況の報告がありました。現場で向き合っているメンバーの苦労、尊さを語られました。

 山口さんは、ご自身の体験、自死遺族支援の必要性について、Reの活動内容を話されて、参加された方の声を届けました。また「何のために相談機関があるのか、当事者本位への転換が必要」と訴え、「聴く」→「動く」へということを強調されていました。

 西田さんは、あしながの自死遺児たちと最初に向き合ったときのことを話されました。「私自身もわからなかった」。とにかく当事者、自死遺児たちの声を聴くことから始めて今まで歩んでこられたのがよく伝わるお話でした。「自殺は防げる死」というけれど、言い換えれば、「防げなかった死」が毎年3万人あったということ。3万人が亡くならないと1年が終わらない世の中になっている。この一言が一同の心に響いたのではないでしょうか。

 北端所長からは、連絡協議会を近く発足するということと、来月から「自死遺族の相談窓口」を第4月曜日の午後に設けることの報告がありました。

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 そしてパネルディスカッションの後、最後に「NPO法人 白浜レスキューネットワーク」の藤藪庸一さんが活動のお話をされました。白浜三段壁では自殺者があとを絶たず。25年以上前から「いのちの電話」の活動が始まり、電話だけではなく、実際に会って、相談を受けはじめました。保護件数は、年間20件を超え、町有アパートを行政から提供してもらい、自立支援活動も必要に応じて行っているそうです。

 以上が、シンポジウムの内容になります。

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 その後のアンケートには「これを機に自分に何ができるのかを考えたい」というようなコメントが多数あり、まずは知ることからスタートして一歩を踏み出した人がたくさんいることを実感できた実りあるシンポジウムだったとは言えるのではないでしょうか。あくまでも、シンポジウムはゴールでなく、「きっかけ」。

 和歌山県のキャラバンキーワードは、「つながりを絶やさない」となりました。

 北端所長の意向にもありましたが、来月以降の遺族相談窓口が発展して、遺族の分かち合いの会につながることを心より願います。