会場の外いっぱいに晴れやかな空が広がった、去る7月15日(日)。
場所は秋田県正庁にて、いよいよ全国キャラバン第一回目となる「自死遺族支援全国キャラバンin秋田」が開催されました。
テーマは、「自死遺族支援 私たちにもできること」。
自殺予防「こころのネットワーク」・秋田グリーフケア研究会・秋田県が共催し、そして内閣府と秋田大学、NPOライフリンクが後援。三連休の中日にも関わらず、約200名の参加者がありました。
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オープニングでは、秋田県から、西村哲男秋田県副知事によるご挨拶、そして内閣府からは、柴田雅人政策統括官のご挨拶がありました。
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続いては、ご遺族による体験発表。
体験発表では、約30年前に夫を自死で亡くされた方と、約7年前に父親を自死で亡くされた方がご自身の体験談を話されました。「親族に囲まれて“あなたが追い詰めて殺したのでは”と責められた」「まさか自分がこういう経験をするとは思っていなかった」など、遺されたご家族の切実な胸の内を語ってくださいました。
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続いて、「自死遺族支援の総合対策を考える」というテーマで、パネルディスカッション@が行われました。
パネラーは、民間の立場から、秋田県内で遺族支援を行っている涌井真弓さん(秋田グリーフケア研究会代表)、清水康之(NPO法人ライフリンク代表)、そして行政の立場から、佐藤唯直さん(秋田県健康福祉部健康推進課課長)、伏見雅人さん(秋田県精神保健福祉センター所長)。そしてコーディネーターとして、西田正弘(NPO法人ライフリンク副代表)が参加しました。
「自死遺族支援の総合対策を考える」がテーマということで、行政・民間側からの活発な意見交換がなされ、民間側からは、「遺族が孤立してしまっている」「警察で遺体と対面した際、遺体が裸でブルーシートにくるまれており、周りにも人がいて素直に悲しむことができなかったなど、泣くことさえ出来ない遺族がいる」など、分かち合いの会が唯一の安らぎの場となっているご遺族の現状が打ち明けられました。
そういったことから、ご遺族にとっては、たとえ実際に行くことが出来なくても「そこに行けば泣ける」と思える“場所”があることが大切であり、「分かち合いの会は、毎週第一日曜日の13時〜15時などといった具合に、同じ時間帯に同じ場所で開催することが重要」であるといったことが話されました。
また、行政側からは、秋田県精神保健福祉センター内に開設される予定の相談機関『あきたいのちのケアセンター』のことなど、秋田県の今後の取り組みが話されました。
それに対し、民間側からは、「そういった相談窓口が出来たとしても、遺族への情報提供が進めば進むほど今度は受け入れ先がパンクする恐れもあるが、どのような対応をお考えか」といった声が上がり、「どんな相談がどのくらい来るのか想像はつかないが、最初から準備するのは難しい。今後、協力できていければ」など、後に想定されることに対して連携をどう立てていくか、意見交換がなされました。
「お互いに定期的に会う遺族支援の連絡会を作ったらどうか」といった提案もなされ、遺族の声が対策に反映されるような仕組みづくりを目指していくために、今後、官民の連携をどうしていくべきか、率直な意見交換がなされました。
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休憩では、ハーモニカ日本グランプリである藤田貴子さんの演奏が行われました。
さわやかで心に響く美しい音色に、時を忘れ、心地良い時を皆過ごされていました。
会場の外でも、コーヒーサロン「よってたもれ」を主催している心といのちを考える会が、コーヒーサロンの出張所を開いてくださり、おいしいコーヒーが提供されました。
コーヒーサロン「よってたもれ」出張所
パネルディスカッションの間に、秋田県内の自殺対策関係者
の紹介がありました
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続いて、「自殺対策における民間団体の役割と今後の展開」と題したパネルディスカッションが、民間団体の関係者をパネリストにして展開されました。
パネラーは、悩みを抱えた人たちが気軽に立ち寄ることができるコーヒーサロン「よってたもれ」を主催する袴田俊英さん(心といのちを考える会代表)、精神障害を持つ方の支援を行われている菅原恵代子さん(グループあおさぎ代表)、保健師と連携して地域の人たちに紙芝居上演などを行っている三浦令子さん(ほっとはーと由利代表)。
コーディネーターは、経営者の自殺予防活動を行っている佐藤久男さん(NPO法人蜘蛛の代表)、そして清水康之(NPO法人ライフリンク代表)でした。
このパネルディスカッションの中では、現代の日本社会について「一度ドロップアウトした人は這い上がれない社会になってしまっている」「今は、“自己責任”という言葉が強すぎるのではないか」といった社会全体に対する意見や、「家族の責任と言われるが、家族だけでは守りきれない時がある」といった、悩みを抱える方々の立場に立った意見が出されました。
「電話相談窓口があっても、電話をすることができない人もいる」といった苦しみの中にある遺族の現状も話され、「一般・地域の人の感覚は大切で、地域の人では触れにくい部分を、民間の団体が受け皿になるという点もある」という話も出されました。
「自殺対策を行う関係者の中にも、自殺は社会の問題と頭ではわかっていても感情では個人と受けとめてしまっている人たちがまだまだ多いのではないか」と問題点も指摘されたうえで、その中で、「秋田は、ほっとけない、なんとかしようという意思がもっとも共有できている地域」といった意見が出され、今後の秋田の民間団体の連携、そして活性化が話し合われました。
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クロージングでは、自死遺族支援全国キャラバン実行委員会事務局に対し、詩の朗読と、子どもたちからの花束贈呈がありました。
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最後に、秋田県から、全国キャラバン次の開催地へ託されたキーワードは、「
こんな自分でも役にたつ」。
自死遺族支援全国キャラバンin秋田のテーマは、「自死遺族支援 私たちにもできること」で、この言葉からもわかるように、ひとりひとりの「自分」が出来ることがあるのだということを、皆感じたシンポジウムとなりました。
事務局員 森山
関係HP
NPO法人蜘蛛の糸関連報道
秋田魁新報社 「全国キャラバン始動」朝日新聞(秋田県版) 「秋田で自殺者の遺族支援考えるシンポ」(NHKや読売新聞でも大きく取り上げられました)