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全国キャラバン in 福井 [2008年04月11日(Fri)]
報告:西川


 3月25日(火)、福井市市内の福井県国際交流会館において、「自死遺族支援全国キャラバンシンポジウム in 福井」が開催されました。



 福井県は、自治体主催ではなく、「自死遺族支援全国キャラバン実行委員会」による自主開催になりました。

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全国キャラバン趣旨説明

 はじめに、藤澤克己さん(NPO法人ライフリンク事務局長)から、シンポジウムの流れの説明があり、ライフリンクの自殺問題に対する考え方、これまでの経緯説明がありました。



 先日行われた「東京マラソン」の、通りを埋めつくす途切れることのない走者の列を撮影したDVDが流され、毎年この走者の数とほぼ同じ人数の人間が自殺によって無くなっているとの説明があり、自殺で亡くなられた方も、自分が自殺に追い込まれることなど10年前には想いもよらなかったであろうとのお話がありました。

 このランナーの一人一人に人生があり、家族があり、思い出があるということを説明していただきました。

 自殺が、いつ自分の身に降りかかってくるか分からない身近な問題であると感じる場面でありました。



 さらに、サイレントグリーフ(自死遺族が感じる悲しみや自責の念、心の痛み)を、語れる場所が今まで社会の中に無かったことを説明され、自死遺族が安心して自分の気持ちを語れる場所を作る土壌を全国に作っていくことが今回の全国キャラバンの趣旨の一つだと説明されました。



 次に、今までの経緯の紹介として、自殺総合対策が、自死遺族の子供達が勇気を持って自らの体験を語り始めたことに始まったことが紹介されました。
 そして、時間が経過し、今度は遺児達の声を受け大人達が動き始めたことが紹介されました。

◇◇


パネルディスカッション 

 第2部パネルディスカッションでは、福井県精神保健福祉センターの持田忠司さん、「NPO法人心に響く文集・編集局」代表で、東尋坊でパトロール活動を続けていらっしゃる茂幸雄さん、自死遺族サポートチーム「こころのカフェ きょうと」代表 石倉紘子さんよりそれぞれの立場から、ご発言いただきました。



持田 忠司さん(福井県精神保健福祉センター)



 持田さんからは、福井県における自殺者の推移・現状のご説明を頂き、現在の福井県の取り組みをご紹介いただきました。



茂 幸雄さん(NPO法人心に響く文集・編集局)



 茂さんからは、東尋坊でのパトロールの活動についてご紹介いただきました。

 一人の希死念慮者が、茂さんに声をかけられて助かった一例も挙げてくださったのですが、その方が言うには、「観光客が、大勢楽しそうにしていたが、しょんぼりしている自分に声をかけてくれる人は誰一人いなかった。そこで茂さんに声をかけていただいた。」とのことでした。

 茂さん曰く、そこに「人間らしく生きる」のヒントが有るのではないかと問題提起をいただきました。

 希死念慮をもたれる方も、心の中で生きたい、生きたいと願っているのに、今の時代には、「お節介焼き」が居なくなったのかもしれません。(この「お節介」の言葉は、後の茂さんのご発言の中で出てきます。)

 また、「この問題は行政の仕事で、本来は民間の人間がやることではない」と、行政の対応を問う強い意見もいただきました。

 活動の中で、多大な債務を負った人に出会われることも有るそうです。

 債務を整理するためには、自己破産等の手続きの手段が有るのですが、そのためには弁護士費用等が必要となります。

 当然ながら当人にはその費用を捻出することも無理です。

 弁護士費用の「法的補助制度」というものが有るそうですが、役所に行っても、そういう制度が有ることも教えてもらえないそうです。

 茂さんは、役所に当人と一緒に行って法的補助の要請をするところまでの「お節介」をしていると、お話ししていただきました。



石倉 紘子さん(こころのカフェきょうと)



 石倉さんからは、遺族としてのご主人を亡くされた体験談と、遺族支援を行っていく上での壁についてお話しいただきました。

 遺族としての、感情を外に表現することの出来ない20数年のこと、語り合う場を得ることで今まで放置されてきた遺族に、今やっと光が見えてきたことを語っていただきました。

 また、京都で自死遺族支援の活動を立ち上げ運営されてきた経験を語っていただきました。

 手弁当の民間だけでは限界があり、府、市の支援(財政・場所・広報)が是非ともに必要であったこと。

 それを得るためには、府、市、社会福祉協議会、それぞれに出向いて、一回一回活動の意味を説明しなければならなかったこと。

 その説明を行う場面の中で、4名で始めたメンバーのうち2名が苦しさを感じて「うつ」に、陥ってしまい、活動から外れざるを得なかったことを、紹介していただきました。



 パネラーの一通りの発言が終わった後、財政出動の費用対効果が強く問われるようになって、なかなか苦しい面もあるとおっしゃっていた持田さんと、行政の対応を問われる茂さんの間で、熱い討論の場面もありました。真剣な討論でありました。

 行政の立場で一番前で活躍される持田さんと、民間のボランティアとして第一線で活動されている茂さんの間で、それぞれ、感じていることや限界、本音を交換する、今後につながるいい機会であったのではないかと、私は聞いていて率直に感じました。



 また、東尋坊で亡くなる方の多くが県外者であるというお話も出ました。そこで、「そこに県財政から支出するのはどうなのか」という話も出ました。

 石倉さんは、それに対し、こう述べられました。

 「京都で活動していても、遠方からわざわざ来られる方もいらっしゃる(地元にはなかなか足を運びにくいということもあるのでしょう)。そこは、お互い様。この福井県にも、遺族サポートの会が出来れば、隣県から来られる方もいらっしゃるでしょうし、また、ここ福井から隣県へ出かけられる方もいるでしょう。」と。



 最後に、福井県でのキャラバンメッセージとして、『助けを求める人を孤立させない社会づくり』を発信して、シンポジウム終了となりました。