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全国キャラバン in 静岡 [2008年04月02日(Wed)]
報告:弘中隆之(多重債務による自死をなくす会)


 2008年3月23日(日)、「自死遺族支援全国キャラバンシンポジウムin静岡」が、「静岡県男女参画センターあざれあ」にて開催されました。
 
 静岡県は、自治体主催ではなく、「自死遺族支援全国キャラバン実行委員会」による自主開催です。

◇◇


○「全国キャラバン」趣旨説明 

 まずはじめに、藤澤克己さん(NPO法人ライフリンク事務局長)からキャラバンの趣旨説明がありました。


 
藤澤克己さん(NPO法人ライフリンク事務局長)

 「自死遺族支援全国キャラバン」とは、自死遺族支援のテーマにしたシンポジウムを47都道府県で開催するプロジェクトです。

 自殺総合対策の理念を全国に根付かせること、47都道府県に「自死遺族のつどい」設立のきっかけを作ることなどが目的です。



 その後、自死遺児の子供たちや、自死遺族の方々が声を上げた経緯についての映像が流されました。

◇◇


 後半は、パネルディスカッションで、パネラーの方々のお話とともに、会場にいらした静岡県庁の方へもお話が振られました。



○パネルディスカッション 「自死遺族支援〜いま、私たちにできること〜」

平田 豊明さん(静岡県立こころの医療センター院長)
木下 貴志さん(自死遺族の為の自助グループ準備中)
山口 和浩さん(NPO法人自死遺族支援ネットワークRe代表)
藤澤 克己さん(NPO法人ライフリンク事務局長)



平田豊明さん(静岡県立こころの医療センター院長)



 私は、30年間精神科救急医療に従事してきました。

 学生時代、祖父を自殺で亡くしています。そのことが、精神科の医師になるきっかけとなりました。

 自殺未遂者の3/4は精神疾患があります。その中で、医療機関を受診される方は1/4にしか過ぎず、医療の無力さを感じています。

 統合失調症の方の中で死亡率の1位は自殺であり、増加しています。病院を退院して自殺する方も増えています。
 
 また、うつ病の中高年層が増加しており、原因として、@経済要因、A職場要因、B家族要因、C医療要因、D文化要因があげられます。

 医療要因としては、診療密度の低下があげられます。また、うつ病の治療には、半年から1年かかります。そのため、治療よりも予防が重要です。



金指ゆり子さん(静岡県厚生部精神保健福祉室室長)

 静岡県では自死遺族支援はこれからです。

 現在は、富士市でモデル事業(睡眠をテーマ)を展開中です。平成19年には、自殺対策連絡協議会を設置しました。

 24時間態勢で電話相談対応もしております。(いのちの電話に委託)
 
 また、一般かかりつけ医から精神科医への早いリレーが重要であると考えています。



木下貴志さん(自死遺族支援の自助グループ準備中)



 浜松在住です。うつから実母を10年前に自殺で亡くしています。

 母は、自殺する半年前に未遂をしており、家族に笑顔がない生活を送っていました。
 
 その際、「こんなことをされたら迷惑だ」と母に言ったことが、未だに自責の念として残り、苦しんでいます。

 亡くなった時、「まさか、どうして」と、理由を探しました。

 本人しか分らないこともあり、これで家の中が静かになると、正直思うこともありました。母への怒りもありました。地域社会への怒りもあります。

 まわりから何か言われるのではないかと思っていました。死ぬことへの倫理観も当時ありませんでした。

 その後、自身のことからHPを立ち上げ、1年間続けましたが、とても耐えられなくなりました。
 
 そこで個人で活動することの限界を感じました。

 未だに子供には、母が自殺したとは伝えていません。
 
 自分自身に罪悪感があります。そのような思いを共有できる場が必要と思い、静岡県内に自死遺族の分かち合いをつくっていきたいと思います。

 いまは浜松市の精神保健福祉センターが助けてくれています。共に支えあって分かち合いの場をつくっていきたいと思います。



山口和浩さん(NPO法人自死遺族支援センターRe代表)


 
 ご遺族に対し、勝手な自死遺族像をつくらないことが大事です。ご遺族ひとりひとり、それぞれの感情があります。
 
 長崎県では、自死遺族の分かち合いの会運営にあたり、会場などのハード面は行政、当日運営などのソフト面は民間…等と、行政とReとの役割分担を決めています。

 今後は、離島に分かち合いの場をつくっていきたいと思っています。

 ご遺族は、分かち合いに参加する前と後では、表情が変わってきます。語れなかった苦しみを共有できることが大事だと考えます。
 
 支援者も「分らない。でも分りたい。」という意識をもってほしいと思います。



○質疑応答

会場発言

 精神科に本人がどうしても受診しない場合、家族だけでも話を聞いてもらえるように出来ないでしょうか。また、精神科を受診するにも、たらい回しにされる場合もあります。

平田さん(静岡県立こころの医療センター院長)

 当医療センターでは、家族の相談を受ける窓口も設置しているので、利用してほしいと思います。

 たらい回しをする精神科の医院は、本来あってはならないことです。そのようなことはないと思いますが、もしあるのであれば精神科医の責任は大きいと思います。



 最後に、金指さん(静岡県厚生部精神保健福祉室室長)が、「木下さんが浜松市内で分かち合いをつくられることに県としても連携していきたい。」とお話になられました。 



 なお、静岡県でのキャラバン・メッセージは、『つながることで、点を線にしていこう』となりました。


「遺族語る」のパネル展示の様子