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全国キャラバン in 群馬 [2008年04月14日(Mon)]
報告者:大野絵美


 平成20年3月20日(木・祝日)、群馬県主催の「自死遺族支援全国キャラバンinぐんま〜みんなで考える ひとりの命 大切ないのち〜」が群馬県社会福祉総合センター大ホールで開催されました。



 雨天の中でしたが、140名の方が参加されました。

◇◇


 はじめに、群馬県健康福祉部長の小出省司さんからご挨拶がありました。

 全国的な自殺の現状、群馬県でも500人を超える自殺の現状があり、個人の問題ではなく社会的な解決が必要であることを話されました。

◇◇


 キャラバンは2部構成で進められました。

◇◇


<1部>遺族の体験談発表

 まず、私(大野)からご挨拶をさせていただき、DVD「リメンバー福岡 分かち合う声」を上映しました。

 DVDで配偶者やお子さんを亡くされた方からのお話を聞きながら、分かちあいの場を理解していただきました。



 その後、私の体験談をお話しました。

 10年前に父がうつ病から自殺したこと。

 その3年後、今度は母が自殺未遂したこと。

 自殺に対する偏見が本当にある体験をしたこと…

 その中で、親戚や友人がただそばで一緒に泣いてくれたことがとても救いであったり、一人じゃないと思えた体験が自分にとっての生きる勇気になったこと。

 そして、仲間と出会い分かちあいの会を立ち上げるまでについて。

 自死遺族は“特別な人”ではないですし、ただ悲しいお話をしにきたのではない。

 自殺をしなくてもいい、そして自殺を隠さなくてもいい優しい社会にするために、私は私にできることを、貴方は貴方ができることを考えてほしいとお話しました。

◇◇


<2部>パネルディスカッション



○コーディネーター  
 三國雅彦さん(群馬大学大学院脳神経精神行動学教授)

○パネリスト
 杉本脩子さん(全国自死遺族総合支援センター代表幹事)
 金子久美子さん(福島自死遺族ケアを考える会 れんげの会代表)
 赤田卓志朗さん(群馬県こころの健康センター所長)



三國雅彦さん

 遺族が分かちあうことには大きな意味があること、自死遺族が語ることが自殺対策の予防にもつながっていくこと、そうしていかなければならないことについて話されました。

 そして、どう支援していくのか、群馬県としてどうやっていくのかを考えていくために、まずは自死について知ってほしいということをお話され、「自死」「うつ病」について話されました。

 働きすぎて自死する人は、万葉の時代にもいたという紹介もまじえ、「うつ病」について、遺族が語ったサインを自殺予防に役立てることができることや、「生きてさえいりゃ、何とかなる」というメッセージをいただきました。

 さらに、「安心安全のためには、きめ細かいことをやらなくてはいけない。健診等の場でも、心理的なことを抱えているかもしれないことを家族などに伝える。企業ごとに取り組むのも難しいがやっていかなくてはいけない。ネットワーク作りが大切。」とお話になられました。



杉本脩子さん

 まず、東京マラソンの映像を流され、年間自殺でなくなられる3万人の「人」を会場全体で感じました。

 その後、全国自死遺族総合支援センターの設立の経過と活動内容、事業計画について発表されました。

 沈黙の悲しみ、苦しみが、感情だけでなく身体や行動、生活面にも影響することや、負債やいわれのない保証を迫られることもあり、相談できずに追い込まれていく遺族もいることを話されました。

 また、「人は人によって癒されていく」という体験からのお話があり、「人は新しいつながり、強いつながりで生きている。そして、相手からもらい自分も発信していく生きごこちのいい社会にしたいと思う。」とお話されました。



金子久美子さん

 福島の、れんげの会の活動についてお話されました。

 分かちあいの会は、誰も来なくてもニーズがないのではなく、いつか来ようと思っている人もおり、遺族にとってはいざと言うときの場として力強さがあることをお話されました。

 れんげの会では、分かちあいのほかに、手紙やメールで気持ちを吐き出すための綴り箱も設けており、あて先があることが役に立っていると感じると話されました。

 「大切な方を亡くされて10年、20年が経過している遺族もおり、いったい何人苦しんでいる人がいるのか計り知れない。」

 また、「行政には、自死以外の相談先も掲載されているような情報の提供の仕方も必要ではないか」という提案をされました。

 また、さりげない買い物や子供の送り迎え等の生活支援も救いになるということを教えてくださいました。



赤田卓志朗さん

 群馬県の自殺者数は503人で、特に山間部において人口比で高くなっていること、やや年齢層も高くなっていることについて話されました。

 県での取り組みとして、平成19年度に自殺対策連絡協議会を設置したことや、実態調査としてうつスクリーニングを健診と同時におこなったこと、民生委員を中心に意識調査をしたこと、医師会ではかかりつけ医の認識を高めるための講演会を実施したことを説明されました。

 さらに、平成20年1月から自死遺族相談を月1回こころの健康センターで開始し、3月からは遺族の集いも開催するようになったという取組みについてお話されました。



(会場からの感想・質問)

○県内の依存症関係の病院でソーシャルワーカーをしている方から。
 「1年半前から病院で家族のグループを担当しているが、家族の中では言えない話をできる場を提供していき、自助グループとして根付いていけるといいと思う」ということ、また、「支援者のケアやサポートも必要だと感じる」という感想をいただきました。


 こちらの感想に対し、

三國さん

 会を運営していく中で、語りづらいことや、医療的なことが必要な時にどう対応するか、支援者のケアをどうするか、経験を教えてほしい。

杉本さん

 支援者同士も分かちあうことや、遺族の違いに目を向けるときりがないので、「人間としての共通点」に目を向けることが大切。

金子さん

  医療が必要な人は今まではなかったが、分かちあう中で、思い切って病院にいった人はいる。

 また、支援者のケアは大事。福島ではファシリテーターとスタッフで振り返り、心のケアをしている。

 各団体の主の人たちには、悩みや苦しみがあるので、以前、ライフリンクで主催者を集めた情報交換や交流の場をもうけてくれたことはとても有効だった。連携が大切。

赤田さん

 群馬では、はじめたばかりだが、医師がでて相談できる体制もとっている。

との発言がありました。


 
○自殺の統計で女性の低年齢化があるが、携帯電話のメールでつながっていることや女性の性の問題等、ひとりで悩んで自殺になることが多いと考える。学校教育でも必要なのでは?

赤田さん

 学校の養護教諭を集めて、自傷行為のメンタルの話はしている。携帯電話や性についての直接的なことはやっていない。

三國さん

 学校医だけでなく、精神科や婦人科、整形外科など専門医からも正しい情報を伝えることが大切だと考える。

◇◇


(登壇された方からの一言)

杉本さん
 自殺問題は社会の問題の象徴。他人事ではなく、今すぐできることが必ず誰にでもある。

金子さん
 分かちあいは、苦しい時に来られるような「隠れ家」になるといい。

赤田さん
 正しい認識や普及が乏しいため、風評被害で遺族が苦しむ。なんとかしていきたい。

三國さん
 生きていればなんとかなることを、群馬でやっていきたい。



 「遺族語る」のパネル展示も、多くの方がご覧になっていました。


「遺族語る」パネル展示の様子


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 群馬県のキャラバンメッセージは、『語れる場を 生きてさえいれば なんとかなるさ』に決まりました。