全国キャラバン in 山口 [2008年04月21日(Mon)]
報告者:井上久美子(リメンバー福岡自死遺族の集い) 山口県自殺対策シンポジウム「一人ひとりができること 〜気づきと絆〜」 日時 平成20年3月17日(月) 13:30〜16:30 場所 山口県教育会館 多目的ホール この日の山口は、桜が一気に開花しそうなほどの好天に恵まれました。 ◇◇ 主催者あいさつ 山口県健康福祉部健康増進課 課長 高城 亮さん 今日、勇気を持って集まってくださった皆様方と、山口県の自殺対策をここから初めて行きたいと語られました。 ◇◇ 遺族会からのメッセージ リメンバー福岡自死遺族の集い 代表 井上久美子 リメンバー福岡の活動を通し、この4年間で心に深く刻み込まれた遺族の声を伝えるため、リメンバー福岡のわかち合いの様子を収めたDVDを上映し、4名の遺族の苦渋に満ちた声を届けました。 年間自殺者3万人、その人数を感じ取ってもらうためにライフリンクが制作した「東京マラソン」のDVDを映し出し、その3万人には多くの遺族が残されその遺された遺族が、自責と偏見の中で暮らしていることをご理解いただき、最後に娘を亡くした母親が、天国に行った娘に宛てた手紙の朗読のテープをお聞きいただきました。 「生きてくれてるだけでよかった。こんなに大切でかけがえなかったのに失って初めてそのことに気がついた。失ってからしかわからなかった。・・・・元気なうちに『生きているだけでいいよ』と言えばよかった。『お母さんのために生きててよ』と言えばよかった。お母さんは一緒に暮らしていても何の力にもなってやれなかった・・・ごめんね・・・」 ◇◇ パネルデスカッション「一人ひとりができること 〜気づきと絆〜 」 コーディネーター 高城 亮 (山口県健康福祉部健康増進課 課長) シンポジスト 名越 究 (厚生労働省社会援護局障害保健福祉部精神・障害保健課 課長補佐) 藤澤 克己(NPO法人自殺対策支援センターライフリンク 事務局長) 井上 久美子(リメンバー福岡自死遺族の集い 代表) 河野 通英(山口県精神保健福祉センター 所長) ◇ 名越 究さん(厚生労働省社会援護局障害保健福祉部精神・障害保健課 課長補佐) 山口県における自殺対策に関する最近の経緯の説明がありました。 山口県では、自殺問題は「こころの健康」としてのとらえ方であること。 自殺対策の取り組みは、自殺防止だけではなく、自死遺族支援も含む総合的な自殺対策の取りまとめに方向性を変えて行ったこと。 自分は厚生労働省から内閣府に移ったが、厚生労働省の動きも多く、内閣府と厚生労働省との二人三脚により仕事を進めていること。 「わかち合い」のDVDを観ての感想: 現場で何が起こっているのかを知ることが大切。行政の人間は自分の仕事で埋没せずに、横のつながりを考えて、得意不得意の中で総合的な自殺対策に邁進して行く必要がある、と語られました。 ◇ 藤澤 克己さん(NPO法人自殺対策支援センターライフリンク) キャラバンに意味について説明されました。 大綱を全国に根付かせ、立ち遅れている自死遺族支援を進めるためのものであること。 自殺対策基本法は自殺者を減らすためだけのものではなく、生きやすい世の中をどう作るかというもの。 “遺書”に含まれる「ごめんね」という言葉から、自分勝手な死ではないことを組みとって欲しい。 本当は生きていたいのに追い詰められて死んで行っていることを組みとって欲しい。 自殺は「避けられる死」であること。自殺対策とは「生きる支援」「いのちへの支援」であること。 生きる道を閉ざされた人が再び歩み始めるための対策であることを、語られました。 「新しいつながりが新しい解決力を生む」。 自分一人で賄うことはできない、とお話になられました。 ◇ 井上 久美子(リメンバー福岡自死遺族の集い 代表) 井上からは、「わかち合い」の必要性、役割として、人は自然治癒力を持っているのでその回復の手助けの場所であり、追い込まれる前に語る場を提供することの必要性があることをお伝えしました。 また、行政や支援者が遺族会に関わる時、遺族から主導権を奪うのではなく、寄り添うことをお願しました。 そして遺族のそばにいる人たちへ、興味本位に死因を詮索しないでください。話せる時が来るのを待ってください。私たちを遠巻きにしないでください。「頑張りなさい」「気を落とさないで」「しっかりしなさい」「お可哀そうに…」そんな言葉を掛けるのではなく、「困った事があったら何でも言ってね」そう声をかけてください。今まで通りに話しかけてください、それが遺族の願いです、と伝えました。 ◇ 河野 通英さん(山口県精神保健福祉センター 所長) 山口県の重点施策としても3つの柱、@正しい知識の普及 A人材養成 Bアフターケアによる予防(自死遺族支援)を挙げられました。 自殺は亡くなる直前には精神医療(うつ)の問題となること。 また、山口県CRT(クライシス・レスポンスチーム)委員長の立場から、子どもの自殺の場合の背景の難しさについて語られ、第三者が入って調査することが必要であると述べられました。 ◇ 山口県の遺族会立ち上げに当たり、行政と民間とつながりとして、藤澤さんから、「行政は民間に会場提供や広報を担当することが出来る」とお話がありました。 井上からは、行政がマスコミを動かして、自死遺族への理解や遺族会の必要性を県民に告知していくことが大切なことをお伝えしました。 ◇◇ 会場からの質疑応答 (問)会場から 自殺の根本原因である、教育、医療、老人、労働問題について厚生労働省はこれからどう考えているのか。 対処療法でお茶を濁さずにどうしようとしているのか。 (答)藤澤さん 本当にその4つが原因なのかどうかを知るためにライフリンクでは自死遺族への1000人調査を行っていること、1000人分のアンケーが集まることで根本的な原因が見えてくるのではないか、それを国に提言して自殺対策を取り組んで行くことを伝えられました。 ◇ 山口県のキャラバン・メッセージは、『背伸びはしないで、できることから一歩ずつ』となりました。 緑豊かな美しい景色の山口県でした。 |