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全国キャラバン in 香川 [2008年05月20日(Tue)]
報告:藤澤 克己(ライフリンク事務局長)


 3月16日(日)13:30-16:30、香川県社会福祉総合センターにて、
かがわ自殺予防シンポジウム「いのちと心を支える〜今、私たちにできること〜」
が開催されました。



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開会挨拶
 開会に先立ち、香川県健康福祉部長の細松英正さんから挨拶がありました。香川県での自殺対策をこれから推進していきたいと述べられました。



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基調講演 「自殺総合対策の実現に向けて」

 まず、全国自死遺族総合支援センター代表幹事の杉本脩子さんから「自殺総合対策の実現に向けて」と題した基調講演がありました。

 長年にわたり遺族の悲しみに向き合ってきた体験に裏付けられた、分かりやすい内容のお話でした。

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●自殺総合対策としての自死遺族支援

 遺族の悲しみは、個人の問題として対処するというのが以前からの社会通念だったので、自殺対策基本法で、自死遺族支援が総合対策の柱の1つ(社会で取り組むべき)として明記されたことは画期的。

●自死遺族の抱える「痛み」について

 大切な人を亡くすと、感情、身体、行動、生活面に影響が現れます。痛み・悲しみを抱えながらも生き続けるので、普通に考えられているよりも長く続き、対処には大きなエネルギーが必要。

●自死遺族の悲嘆の特徴

疑問:「なぜ、死を選んだの?」という疑問にいつまで経っても答えは得られないため自死遺族の心を長い間苦しめる。

自責の念:「ああしておけば・・・」「そんなに苦しんでいたとは気づけなかった」と自分を激しく責め、想像を絶する苦しみとなる。

怯え:自殺に対する社会の偏見は残念ながら根強く、公表できない。

孤立:生活上の困難も多々あるが相談できる場所が少ない。

●どのように対処するか

 さまざまなネガティブな感情の反応は人間として自然であり当然。その人らしい方法で感情を表現することが大切。感情を外に出すことで、変化できる。

 どれだけの困難でも、人の持つ「生き続けるエネルギー」を信じ、暗いトンネルの向こうに明かりが見えると確信する。

 ただし、気持のままに悲しみむことを許さない社会、充分に涙を流す場のない社会が現状であり、独りでは難しい。

 そこで、認め合い支えあう「分かち合い」が必要となる。

 ・既存の人間関係による分かち合い(家族・親族・友人・職場等)
 ・専門職による分かち合い(医学・心理学・福祉など)
 ・相互支援と言われる当事者同士の分かち合い

●「分かち合う」ことで得られること

 ・ひとりぼっちではないと実感する
 ・異なった視点が得られる、ものの見方が変わる
 ・役に立つ情報が得られる、先輩の姿に学べる

●周囲の人たち、特に援助者に求められる姿勢

 ・そのままを受け容れる(泣いていい、怒っていい、安心して泣ける)
 ・評価しない、説得しない、教えない
 ・遺族にとって完全な解決法はないと知る。(死者は戻らないのだから)
 ・援助者・被援助者の関係ではない、真の人間としてのつながりが必要

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自死遺族からのメッセージ

 つづいて、自死遺族の竹村彰太郎さん(大学生)が体験談を語ってくれました。

 竹村さんは、中学3年生の時にお父さんを自死で亡くされました。第一発見者となったことや、その後のトラウマ、経済難、自死遺族として経験してきた、辛い胸のうちを語ってくれました。

 そして、あしなが育英会を通して同じような境遇にある仲間たちと出会えたこと、自身の体験を初めて語ったときに何も言わずに頷きながら聞いてもらえて気持ちが楽になった経験など、当時のことを思い出しながらゆっくりと話してくれました。

 体験談を語ることについて、一人でも多くの人が自殺の問題に関心をもってもらいたい、話を黙って聞いてくれるだけで救われることを知ってもらいたい、といった気持ちから、勇気を振り絞って登壇してくれたと胸のうちを明かしてくれました。

 話を聞かせてもらって、体験談に込められた竹村さんのメッセージをしっかりと伝えていきたいと思いました。

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パネルディスカッション「いのちと心を支える〜今、私たちにできること〜」



 香川県における自殺対策、自死遺族支援の在り方を、関係者が討議しました。

パネリスト
 藤岡 邦子さん(香川県精神保健福祉センター所長)
 杉山 洋子さん(グリーフワーク・かがわ代表)
 西原 由記子さん(NPO法人東京自殺防止センター創設者)
 杉本 脩子さん(全国自死遺族総合支援センター代表幹事)

コーディネーター
 西原 修造さん(香川県健康福祉部医療主幹)



藤岡 邦子さん(香川県精神保健福祉センター所長)

 香川県において、精神保健福祉センターが実務的な窓口として自殺対策に取り組んでいると説明がありました。
 その活動の1つである精神保健福祉相談の中で、「自殺」に関わる相談が全体の約1割を占めており、自殺の問題が決して特別なことではなく、日常的な悩みから連続したその先に起きていると捉えていると話されました。
 自殺に対する誤解や偏見を取り除くことが大切と纏められました。



杉山 洋子さん(グリーフワーク・かがわ代表)

 大切な人を失くした後の悲嘆を感じ、理解し、支えることを目的とした「グリーフワーク・かがわ」の活動について、紹介して下さいました。
 大切な人やものを失ったときに訪れる悲しみや痛みを、抱え込んでしまってはいくら時間がたっても回復することが難しいだけでなく、ますます苦しんでしまうのです。そこで、その苦しい気持ちを自分にあった方法で表現することで、悲しみを消化していくという作業を支援するため活動しているそうです。



西原 由記子さん(NPO法人東京自殺防止センター創設者)

 自殺防止活動を約30年間続けてくる中で、約10年前に子供を自殺で亡くした母親からの相談を立て続けに受けたことがきっかけで、当事者同士のグループ対話を思いついたそうです。相談の電話を受けたときに、他の誰にも話をすることができず孤立していると知ったからだそうです。
 現在、東京自殺防止センターでは毎月1回「エバーグリーンの集い」という分かち合いのつどいを開催しているそうです。



杉本 脩子さん(全国自死遺族総合支援センター代表幹事)

 基調講演をしてくれた杉本さんは、全国自死遺族総合支援センターについて紹介してくれました。これまで自死遺族を支援する活動は、それぞれの地域で当事者が中心となって展開してきましたが、相互に連携することで、支援者が孤立しないように、また、他の支援者
の事例から学びあえるようにという狙いを教えてもらいました。



 パネリストが発表を一通り終えたところで、会場の方からの発言を求めたところ、すぐに数名の方の手があがり、活発な意見・質問が出されました。

 パネリストが丁寧に受け答えをすることで、来場者も一緒になって「いま私たちにできること」を考えることができたと思います。

 今回のシンポジウムをきっかけにして、香川県における自殺対策が今後着実に進んでいくのではないかという実感を持ちました。

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 各会場をリレーしてきた「遺族語る」のパネル展示の前には、多くの来場者が立ち止まり、メッセージを熱心に受け止めていました。