報告者:渡邊
愛媛県松山市。
2008年3月15日、「自死遺族支援全国キャラバンin愛媛」が開催されました。
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今回は、自治体主催ではなく、「自死遺族支援全国キャラバン実行委員会」主催による、「自主開催」キャラバン開催地です。
会場は、愛媛県民文化会館。
松山空港から道後温泉駅行きのリムジンバスで30分ほどのところで、道後温泉の1つ手前の停留所で下車しました。当日は、沢山のイベントが開催されており、多くの方で賑わっていました。
まずはじめに、藤澤克己さん(NPO法人ライフリンク事務局長)より、全国キャラバンの趣旨説明と、日本の自殺者の現状についてお話がありました。
1.全国キャバンの趣旨説明 2006年に成立した自殺対策基本法の理念を各地に根付かせていき、各地域で自死遺族の分かち合いのつどい設立のきっかけとしていくこと等が、キャラバンの目的です。
他都道府県では、行政が主催していますが、”愛媛”では自主開催となりました。今後は、官民が一体となって取組んでいくようにしていきたいと思います。
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2.自殺者の年間3万人とは 日本で一年に自殺で亡くなる人数は、東京マラソンで3万人という人数と同じであり、誰一人として同じではない大切ないのちであることを、東京マラソンで3万人の方々が走る映像を観ながら、藤澤さんが説明されました。
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亡くなった方々も、昔、自分が自殺すると思っている人はいたでしょうか。
”まさか”自殺するなんて思ってもいなかったのではないでしょうか。
10年前に、自分の大切な人が自殺すると思っていた人はいたでしょうか。
ご遺族は、”まさか自殺するとは思っていなかった”と言います。
私たちも、10年後は、もしかしたら、他人事ではないのではないでしょうか?
そういう思いで感じてほしいと思います。
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3.分ち合いの場「「自死遺族のつどい」について 次に、「リメンバー福岡」の自死遺族の集いの様子がDVDでながれ、自死遺族の声を聞きました。
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普通の死と、自殺が、こんなにも違うということ…。
他の死とは、周りの目が違い、自殺というだけで特別な死となること…。
このDVDを通し、ご遺族のこころの苦しみや哀しみを、会場の皆さんも感じたのではないでしょうか。
このように、同じ悲しみや同じ体験をする人を増やしたくないという思いから、勇気をだし辛い体験を語るご遺族の声が”原動力”になり、自殺対策基本法ができました。
ご遺族の思いを、どのように共有していったらよいのでしょうか。
ただ、「哀しいな」と思うだけでなく、遺族をどう支えていくのか、地域でどう支えていくのかを、”愛媛”で話し合いたいと思います。
そのように、藤澤さんはお伝えになりました。
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3.パネルディスカッション 「自死遺族支援〜いま、私たちにできること〜」杉本 脩子さん(全国自死遺族総合支援センター代表幹事)
橘 史朗さん(愛媛県心と体の健康センター)
清水 康之さん(NPO法人ライフリンク代表)
藤澤 克己さん(NPO法人ライフリンク事務局長)
杉本 脩子さん(全国自死遺族総合支援センター代表幹事) 大切な人を喪ったとき、人は、嘆き、苦しみ、悲しみ、怒りや他者と自分との葛藤などのやりきれない思いなどでたくさん精神的にダメージを受け、さらに、気持ちだけでなく行動にも変化がおきます。
忙しく過ごしてみたり、何もしなかったりすることもある。
身体に反応がでて、日常生活が困難になることや、思い出の場に行ってみたり、逆に、思い出の場所に行けなくなったり、生活面も大きく変わります。
次々と起こりえる事柄に、どこに助けを求めてよいか分からず、哀しいのに涙も出なくなる人もいらっしゃいます。
感覚が麻痺してしまう場合もある。このようなことを経験し、2〜3週間で亡くなったということを実感します。過ぎ去った日々が戻ってこないと実感します。
それぞれの人は、『生きる力』をもっています。
苦しみながらも、大切な人がいない生活を組みなおしていくようになっていく。哀しみを消すと効果がありません。湧き上がってくる感情を外に出していくことが大切です。
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杉本さんは、これらの経験から、遺族支援のポイントとして
@辛い等で涙を流す=ネガティブな感情は人間として当たり前の感情です。
感情の渦は、感情を外に出さないことには変わっていきません。自分の気持ちに正直になることが大切です。
Aそばで見守ってくれる人がいることが大切です。
と、おっしゃいました。
そして最後に、杉本さんは、「遺族の会に参加することで、一人でいるのとは違った視点で苦しい道のりを学ぶことができるのではないでしょうか」とお話になられました。
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続いて、橘さんが、愛媛県としての活動状況を報告してくださいました。
橘 史朗さん(愛媛県心と体の健康センター) 医師の立場からも、自殺の背景にはうつがあることが多く、その場合には、治療することで防ぐことができると言えます。
そのため、家族や遺族の支援により、自殺は未然に防ぐことができる場合もあるのではないでしょうか。
日々寄せられる相談については、「何がこの人を苦しめているのだろうか」と考え、こころの問題についても、その人の抱えているしんどさについて理解しようとしています。
いやがおうでも背負わざるをえない荷物を、どう治療し、かかわれば良いのか、抱えている荷物が軽くなる方法はないのか、考えています。
その対応方法の1つには、遺族の会があるのではないでしょうか。
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最後に、橘さんは、こうお話になられました。
ご遺族は、大切な人を亡くしたという重さを背負い、自殺したのは自分のせいだと自責感との二重の重さを持っています。
「この自責感にまで、免責してあげることのができるのだろうか」と、自分に問いかけながら、自分に何ができるだろうかと考えていくことで、行政とのセッションも、何らかの方法は見えると思います。
なお、来年度から、地区限定でありますが、過疎の町をモデル地区として、グリーフケア形式の計画があります。
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清水 康之(NPO法人ライフリンク代表) 橘さんの、「地域の方々に何が起きているのかという意識をもっている」というお話には、私も同じ想いです。
自殺の問題は“こころの痛み”=喪失体験ですが、その痛みを、日本の社会は、個人の責任としています。
例えば、14歳以下の死因は不慮の事故。親はご自身を責めます。
高齢者が徘徊中に亡くなる場合にも、ご家族は自分達が悪かったのではないかと責めます。
自殺についても同じで、ご遺族は、ご自身を責めます。
確かに、大切な人を亡くした事実をどう受け止めていくのかということは、個々人が背負わなければならない課題です。しかし、個々人がそうした事実と安心して向き合うことのできる場を用意するということは、社会が担うべき部分だろうと思います。
人の悲しみや感情に関わることだからといって、すべてを個々人の負担にしてしまうのではなく、なにを個人が引き受け、なにを社会が引き受けるべきかといった冷静な議論が求められているのです。
私たちは、いのちを捨てるほどに“生きづらい・息苦しい”というよどんだ空気は何かと、自殺の問題から取組んでいます。
橘さんのお話を伺って、医者とNPOと、向いている方向が同じであると嬉しくなりました。
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愛媛の会場では、参加された方からのご意見や質問が多数ありました。
実際に自殺対策の現場で活動されている方も多数いらっしゃり、これから何かしようという想いの方も多数いらっしゃいました。
個々の活動では、限界があります。
けれど、それぞれの人や専門分野と連携することで活動の幅が広がり協力しあうことで解決し、良い支援が生まれてくるのではないでしょうか。
今後の愛媛県に、希望と期待ができるシンポジウムでした。
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愛媛のキャラバン・キーワードは、『
ネットワークとは、顔の見えるつながりのこと』となりました。