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自死遺族の思いを歌に 「青のフレーム」 [2008年09月15日(Mon)]
「青のフレーム」は、自死遺族の方の共作で生まれた歌です。


◇◇


この曲は、2008年、これまで別々の場所で
別々の人生を歩まれてきたご遺族同士が
自死遺族支援全国キャラバンをきっかけに出会い、生まれました。


「青のフレーム」は、自死遺族である藤本佳史さんが作曲、
前田惠子さんが作詞。


お二人は、今年3月に大阪で行われた自死遺族支援全国キャラバン
をきっかけに出会い、その後、交流を深める中で、曲が生まれました。


今まで全く違う人生を歩まれて来られたお二人。


これまで一人では表現しきれなかった思いを、
ふたりで共有し、曲として作り上げていく中で、
一人では生まれない、新たな曲が生まれました。


「青のフレーム」は、ご遺族の思いが、胸に響いてくる歌です。


◇◇




少しでも多くの方に聞いてもらいたいという、
お二人の強い思いがあります。


『青のフレーム』


↑パソコンで聞くことができますので、ダウンロードしてお聞きください。


◇◇


青のフレーム

作詞 前田惠子  作曲 藤本佳史  編曲ISSY

夢の中の君は 色が無い瞳で 僕を見ている
君の姿も 囁く声も 想い出せなくなっている
時計の針を 戻したい 君の笑顔をまた見たい

ミモザ揺れる おぼろの春
君と歩いた 川沿いの並木道
緑の中 ナンバー見つけ 飛び上がってた
治らない頬の傷 気付いていたよ
君はいつも僕の傍 居てくれたね
仕合せな言葉 繰り返す 小鳥のように

ひまわり光る 金色の夏
白いレエスの夏服 輝いて 細い肩の小さなひと
そっと抱きしめたかった
雑踏の中 僕のシャツの袖 掴んでた
君のやせた小さな指と 指きりしたね
震えてる臆病な みけ猫のように

高い空の 晴れた秋
赤いバケツのタイプライター
エルトン・ジョンの 『ユア・ソング』
君が叩き続けた 英文 僕に手渡して
ピアノに似た その音符を
青のフレームに 閉じ込めてたね
落ち葉の囁き かき集めるように
あの時 君は 何を 心に決めたの?

かくれんぼの 銀の冬
公園のベンチの片隅で 知らんふりした君に
ふざけて 手袋のまま 目隠しをした

グレーのマフラー ふたりで巻いて
下手なジョークに笑ってくれた
気がつけば スピード連れて
ひとりで先を 走っていたね
遠ざかる スケート靴の少年のように

さよならも言えず 風に吹かれて
君は消えてた
雪が埋めた足跡を 僕は今でも探してる
君の声 聴きたくて
答え 追いかけてる

日曜日
君の席に 青のフレームを置いてみた
古ぼけたモノクロームの大きな箱と
パステルカラーの想い出が
僕の席に 溢れてる
今の僕なら 君の涙 拭けるだろうか
時計の針は 戻らない
でも きっと また会えるよね

さよならも言えず 風に吹かれて
君は消えてた
青のフレーム 置く場所を 僕は今でも 探してる
幻のドレスで君は
すこし 振り向いて 微笑んでくれたよ

きっと また会えるね
きっと また会えるね
その日まで
僕は 生きる意味を 探し続ける


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※お問い合わせ

藤本佳史さん
yoshifumi_muon■yahoo.co.jp
(■を@に変えて送信してください。)


NPO法人ライフリンク
(メールを使用されない方)
 電話:03-3261-4934
 FAX:03-3261-4930

全国キャラバン in 山梨 [2008年06月05日(Thu)]
 3月22日(土)13:30-16:00まで、「自死遺族支援全国キャラバンシンポジウムin山梨」が開催されました。



 今回は、「自死遺族支援全国キャラバン実行委員会」による、自主開催によるキャラバンシンポジウムになりました。

 会場近くからは、富士山を見ることが出来ました。

◇◇


主催者挨拶



 はじめに、藤澤克己さん(NPO法人ライフリンク事務局長)より、「自死遺族支援全国キャラバン」についての説明がありました。

 まず、DVDで流されたのは、東京マラソンの映像。

 3万人の方が走った「東京マラソン」の映像を目の当たりにすることで、3万人の「数」を、みなさん体感されていらっしゃいました。

◇◇


パネルディスカッション
 いま、私たちにできること

パネリスト
 藤澤克己さん(NPO法人ライフリンク事務局長)
 福山なおみさん(共立女子短期大学看護学科精神看護学)
 西原由記子さん(NPO法人東京自殺防止センター創設者)
 森山花鈴さん(NPO法人ライフリンク)



藤澤克己さん(NPO法人ライフリンク事務局長)

 藤澤さんからは、これまでのキャラバン開催におけるお話がありました。

 「全国キャラバン」は、「自殺対策大綱」を全国に根付かせて、立ち遅れている自死遺族支援を進めるためのものであること。

 そして、自殺対策基本法は自殺者を減らすためだけのものではなく、生きやすい世の中をどう作るかというものだということをお話されました。

 また、これまで、各地でおこなってきた「全国キャラバン」は、基本的に各都道府県庁が主催で行ってきましたが、今回山梨県は残念ながらそれがならず、自死遺族支援全国キャラバン実行委員会が主催になったとお話されました。 
 
 そして、山梨県でも、行政と民間とで力を合わせていってほしいとお話になられました。



福山なおみさん(共立女子短期大学看護学科精神看護学)
 
 はじめに、福山さんは、看護師時代、多重債務を抱えた元管理者がうつ病の回復期に自死された体験をお話されました。

 その中で、うつの治療に併せて、病院と地域医療の連携、多重債務に関する専門的な介入窓口の紹介の必要性、経済問題が家族関係に及ぼす影響への見守り・調整の必要性を課題に挙げられました。

 そして、「<体験時の思いや感情を十分に語ること>で抑圧感情が解放されること。

 また、<患者さんのケアを語り合うこと>によって、患者さんが死に追いつめられたプロセスを知り、ケアについての新たな気づきを与えてもらうことができる」とお話されました。

 次に、【わかち合い】の重要性、ファシリテーターの役割・資質についてお話しされました。
 
 遺族が大切な人を思い、「安心して悲しみ、泣くことができる場」、「安心・安全に語ることができる場」の提供と時間の保障をすることが大切であること。

 また、その人が求める「社会的・人的資源」の選択肢を提供し、適時活用できることが必要であるとお伝えされました。

 さらに、遺族一人ひとりのもつ回復力を信じ、自尊感情が支えられ、ペースを守りながら気持ちの整理ができ、新たな生き方を見出すきっかけがつかめるような場作りが重要であるとお話されました。

 そして、つながりを大事にしながら「【つどい】(「わかちあい」)を卒業する」ことが、遺族の目標であることを理解したうえで見守り、支えることが大切です」と結ばれました。



西原由記子さん(NPO法人東京自殺防止センター創設者)

 東京自殺防止センターの創設者である西原さんは、ご自身の30年以上にわたる自殺防止活動の経験を踏まえたお話をしてくださいました。

 もともと関西のご出身で、今から約30年ほど前に大阪自殺防止センターを立ち上げたこと。

 「自殺」という文字を団体の名称に入れた先駆けで、当時から目的をはっきりとさせて活動に取り組んできたこと。
 
 大阪センターの創立20年を節目として、東京にも自殺防止センターを作らなければとご夫婦で東京へ移住。たまたま空き部屋を貸してくれるキリスト教の教会が見つかり、即決で事を進めたことをお話してくださいました。

 当時は中央線への飛び込み自殺が多発し、年間自殺者数が一気に3万人を超えた年でした。(1998年)

 電話相談を中心にした活動ですが、電話の向こうでご自身のお子さんを自殺で亡くしたと泣き崩れるお母さんの声を相次いで聞くことになり、一度お逢いしましょうと直接会うようにしたとお話しになられました。

 そうして、娘や息子を自殺で亡くした母親たちに一人ひとり会っているうちに、自殺で身近な人を亡くした遺族同士で直接話をしてもらった方が、気持ちをより分かりあえるのではないかと感じたそうです。
 
 1999年2月、初めての分かち合い「エバーグリーンの集い」を開催し、翌2000年からは、毎月に開催されてきたとのこと。

 経験に裏付けされた話は、どれも説得力のあるものでした。



森山花鈴さん(NPO法人ライフリンク)

 森山さんは、事務局にいて感じてこられた、自殺対策に対する実際の各地域での温度差や現状についてお話になられました。

 秋田県や長崎県での取り組みについて例にあげられ、民間と行政との連携がうまくいっている県では、自殺対策が進んでいるとお話になられました。
 
 また、ご自身が多くのご遺族と接し、経験されてきたことから、日常においてもご遺族が、ささいなことでも苦しめられる場面があるということを伝えられました。

 私たちが普段気付かなくても、子供向けの遊園地にさえ、「自死」を連想させるアトラクションがあること。

 親を亡くした子供の場合、楽しいはずの遠足でも、そのひとつによってとても苦しいものになってしまう可能性があるということ・・・。

 もしかしたら、そのアトラクションに乗り、ショックを受けても、それを誰にも言えずに苦しんでいる子供たちも、いるかもしれないということ・・・。

 大切な方が電車に飛び込んで亡くなられた場合、その後電車に乗ることがお辛いご遺族もいらっしゃるそうです。

 声をあげられないでいるご遺族が、まだまだたくさんいらっしゃることを、お伝えになられました。

 最後に、「大切なのは、これまでよりも、これからです。“私たちひとりひとりは微力ではありますが、無力ではない”ので、山梨県もこれから自殺対策を皆で進めていけると思います」、とお話になられました。

◇◇


 それぞれのパネリストの発言後、会場からは、「福山さんからうつの人の自殺の話があったが、精神障害のある人にとり、ライフリンクの「自死遺族支援」だけでは、自殺対策にならないのではないか。」という発言がありました。

 藤澤さんは、「これまでの自殺対策においては、うつ対策が中心でした。そのため、今回、これまで取り組まれてこなかった<自死遺族支援>を全国的に展開しております。おっしゃるとおり、必要なのは、自殺“総合”対策で、遺族支援も必要ですし、もちろんそれだけでは足りないと思っております。」とお応えになられました。

 福山さんは、頂いた貴重なご意見に敬意を払われながら、「精神障害と自殺の問題、自殺企図者の再度の自殺防止は、現在進められている自殺総合対策における制度の検討の中に活かし、対策につなげていきたい」とお答えされました。


「遺族語る」パネル展示の様子
 

 山梨県でのキャラバン・メッセージは、 『私たち自身の生き方が問われている、いまできることから』となりました。

 青空がすがすがしい、山梨県のキャラバンシンポジウムでした。
全国キャラバン in 香川 [2008年05月20日(Tue)]
報告:藤澤 克己(ライフリンク事務局長)


 3月16日(日)13:30-16:30、香川県社会福祉総合センターにて、
かがわ自殺予防シンポジウム「いのちと心を支える〜今、私たちにできること〜」
が開催されました。



◇◇


開会挨拶
 開会に先立ち、香川県健康福祉部長の細松英正さんから挨拶がありました。香川県での自殺対策をこれから推進していきたいと述べられました。



◇◇


基調講演 「自殺総合対策の実現に向けて」

 まず、全国自死遺族総合支援センター代表幹事の杉本脩子さんから「自殺総合対策の実現に向けて」と題した基調講演がありました。

 長年にわたり遺族の悲しみに向き合ってきた体験に裏付けられた、分かりやすい内容のお話でした。

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●自殺総合対策としての自死遺族支援

 遺族の悲しみは、個人の問題として対処するというのが以前からの社会通念だったので、自殺対策基本法で、自死遺族支援が総合対策の柱の1つ(社会で取り組むべき)として明記されたことは画期的。

●自死遺族の抱える「痛み」について

 大切な人を亡くすと、感情、身体、行動、生活面に影響が現れます。痛み・悲しみを抱えながらも生き続けるので、普通に考えられているよりも長く続き、対処には大きなエネルギーが必要。

●自死遺族の悲嘆の特徴

疑問:「なぜ、死を選んだの?」という疑問にいつまで経っても答えは得られないため自死遺族の心を長い間苦しめる。

自責の念:「ああしておけば・・・」「そんなに苦しんでいたとは気づけなかった」と自分を激しく責め、想像を絶する苦しみとなる。

怯え:自殺に対する社会の偏見は残念ながら根強く、公表できない。

孤立:生活上の困難も多々あるが相談できる場所が少ない。

●どのように対処するか

 さまざまなネガティブな感情の反応は人間として自然であり当然。その人らしい方法で感情を表現することが大切。感情を外に出すことで、変化できる。

 どれだけの困難でも、人の持つ「生き続けるエネルギー」を信じ、暗いトンネルの向こうに明かりが見えると確信する。

 ただし、気持のままに悲しみむことを許さない社会、充分に涙を流す場のない社会が現状であり、独りでは難しい。

 そこで、認め合い支えあう「分かち合い」が必要となる。

 ・既存の人間関係による分かち合い(家族・親族・友人・職場等)
 ・専門職による分かち合い(医学・心理学・福祉など)
 ・相互支援と言われる当事者同士の分かち合い

●「分かち合う」ことで得られること

 ・ひとりぼっちではないと実感する
 ・異なった視点が得られる、ものの見方が変わる
 ・役に立つ情報が得られる、先輩の姿に学べる

●周囲の人たち、特に援助者に求められる姿勢

 ・そのままを受け容れる(泣いていい、怒っていい、安心して泣ける)
 ・評価しない、説得しない、教えない
 ・遺族にとって完全な解決法はないと知る。(死者は戻らないのだから)
 ・援助者・被援助者の関係ではない、真の人間としてのつながりが必要

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◇◇


自死遺族からのメッセージ

 つづいて、自死遺族の竹村彰太郎さん(大学生)が体験談を語ってくれました。

 竹村さんは、中学3年生の時にお父さんを自死で亡くされました。第一発見者となったことや、その後のトラウマ、経済難、自死遺族として経験してきた、辛い胸のうちを語ってくれました。

 そして、あしなが育英会を通して同じような境遇にある仲間たちと出会えたこと、自身の体験を初めて語ったときに何も言わずに頷きながら聞いてもらえて気持ちが楽になった経験など、当時のことを思い出しながらゆっくりと話してくれました。

 体験談を語ることについて、一人でも多くの人が自殺の問題に関心をもってもらいたい、話を黙って聞いてくれるだけで救われることを知ってもらいたい、といった気持ちから、勇気を振り絞って登壇してくれたと胸のうちを明かしてくれました。

 話を聞かせてもらって、体験談に込められた竹村さんのメッセージをしっかりと伝えていきたいと思いました。

◇◇


パネルディスカッション「いのちと心を支える〜今、私たちにできること〜」



 香川県における自殺対策、自死遺族支援の在り方を、関係者が討議しました。

パネリスト
 藤岡 邦子さん(香川県精神保健福祉センター所長)
 杉山 洋子さん(グリーフワーク・かがわ代表)
 西原 由記子さん(NPO法人東京自殺防止センター創設者)
 杉本 脩子さん(全国自死遺族総合支援センター代表幹事)

コーディネーター
 西原 修造さん(香川県健康福祉部医療主幹)



藤岡 邦子さん(香川県精神保健福祉センター所長)

 香川県において、精神保健福祉センターが実務的な窓口として自殺対策に取り組んでいると説明がありました。
 その活動の1つである精神保健福祉相談の中で、「自殺」に関わる相談が全体の約1割を占めており、自殺の問題が決して特別なことではなく、日常的な悩みから連続したその先に起きていると捉えていると話されました。
 自殺に対する誤解や偏見を取り除くことが大切と纏められました。



杉山 洋子さん(グリーフワーク・かがわ代表)

 大切な人を失くした後の悲嘆を感じ、理解し、支えることを目的とした「グリーフワーク・かがわ」の活動について、紹介して下さいました。
 大切な人やものを失ったときに訪れる悲しみや痛みを、抱え込んでしまってはいくら時間がたっても回復することが難しいだけでなく、ますます苦しんでしまうのです。そこで、その苦しい気持ちを自分にあった方法で表現することで、悲しみを消化していくという作業を支援するため活動しているそうです。



西原 由記子さん(NPO法人東京自殺防止センター創設者)

 自殺防止活動を約30年間続けてくる中で、約10年前に子供を自殺で亡くした母親からの相談を立て続けに受けたことがきっかけで、当事者同士のグループ対話を思いついたそうです。相談の電話を受けたときに、他の誰にも話をすることができず孤立していると知ったからだそうです。
 現在、東京自殺防止センターでは毎月1回「エバーグリーンの集い」という分かち合いのつどいを開催しているそうです。



杉本 脩子さん(全国自死遺族総合支援センター代表幹事)

 基調講演をしてくれた杉本さんは、全国自死遺族総合支援センターについて紹介してくれました。これまで自死遺族を支援する活動は、それぞれの地域で当事者が中心となって展開してきましたが、相互に連携することで、支援者が孤立しないように、また、他の支援者
の事例から学びあえるようにという狙いを教えてもらいました。



 パネリストが発表を一通り終えたところで、会場の方からの発言を求めたところ、すぐに数名の方の手があがり、活発な意見・質問が出されました。

 パネリストが丁寧に受け答えをすることで、来場者も一緒になって「いま私たちにできること」を考えることができたと思います。

 今回のシンポジウムをきっかけにして、香川県における自殺対策が今後着実に進んでいくのではないかという実感を持ちました。

◇◇




 各会場をリレーしてきた「遺族語る」のパネル展示の前には、多くの来場者が立ち止まり、メッセージを熱心に受け止めていました。
全国キャラバン in 山口 [2008年04月21日(Mon)]
報告者:井上久美子(リメンバー福岡自死遺族の集い)


山口県自殺対策シンポジウム「一人ひとりができること 〜気づきと絆〜」

日時 平成20年3月17日(月) 13:30〜16:30
場所 山口県教育会館 多目的ホール




 この日の山口は、桜が一気に開花しそうなほどの好天に恵まれました。

◇◇


主催者あいさつ

山口県健康福祉部健康増進課 課長 高城 亮さん

 今日、勇気を持って集まってくださった皆様方と、山口県の自殺対策をここから初めて行きたいと語られました。

◇◇


遺族会からのメッセージ

リメンバー福岡自死遺族の集い 代表 井上久美子



 リメンバー福岡の活動を通し、この4年間で心に深く刻み込まれた遺族の声を伝えるため、リメンバー福岡のわかち合いの様子を収めたDVDを上映し、4名の遺族の苦渋に満ちた声を届けました。

 年間自殺者3万人、その人数を感じ取ってもらうためにライフリンクが制作した「東京マラソン」のDVDを映し出し、その3万人には多くの遺族が残されその遺された遺族が、自責と偏見の中で暮らしていることをご理解いただき、最後に娘を亡くした母親が、天国に行った娘に宛てた手紙の朗読のテープをお聞きいただきました。

 「生きてくれてるだけでよかった。こんなに大切でかけがえなかったのに失って初めてそのことに気がついた。失ってからしかわからなかった。・・・・元気なうちに『生きているだけでいいよ』と言えばよかった。『お母さんのために生きててよ』と言えばよかった。お母さんは一緒に暮らしていても何の力にもなってやれなかった・・・ごめんね・・・」

◇◇


パネルデスカッション「一人ひとりができること 〜気づきと絆〜 」



コーディネーター 
  高城 亮 (山口県健康福祉部健康増進課 課長)

シンポジスト
  名越 究 (厚生労働省社会援護局障害保健福祉部精神・障害保健課 課長補佐)
  藤澤 克己(NPO法人自殺対策支援センターライフリンク 事務局長)
  井上 久美子(リメンバー福岡自死遺族の集い 代表)
  河野 通英(山口県精神保健福祉センター 所長)


 
名越 究さん(厚生労働省社会援護局障害保健福祉部精神・障害保健課 課長補佐)
  山口県における自殺対策に関する最近の経緯の説明がありました。

 山口県では、自殺問題は「こころの健康」としてのとらえ方であること。

 自殺対策の取り組みは、自殺防止だけではなく、自死遺族支援も含む総合的な自殺対策の取りまとめに方向性を変えて行ったこと。
 
 自分は厚生労働省から内閣府に移ったが、厚生労働省の動きも多く、内閣府と厚生労働省との二人三脚により仕事を進めていること。

  「わかち合い」のDVDを観ての感想:

 現場で何が起こっているのかを知ることが大切。行政の人間は自分の仕事で埋没せずに、横のつながりを考えて、得意不得意の中で総合的な自殺対策に邁進して行く必要がある、と語られました。



藤澤 克己さん(NPO法人自殺対策支援センターライフリンク)

 キャラバンに意味について説明されました。

 大綱を全国に根付かせ、立ち遅れている自死遺族支援を進めるためのものであること。

 自殺対策基本法は自殺者を減らすためだけのものではなく、生きやすい世の中をどう作るかというもの。

  “遺書”に含まれる「ごめんね」という言葉から、自分勝手な死ではないことを組みとって欲しい。

 本当は生きていたいのに追い詰められて死んで行っていることを組みとって欲しい。

 自殺は「避けられる死」であること。自殺対策とは「生きる支援」「いのちへの支援」であること。

 生きる道を閉ざされた人が再び歩み始めるための対策であることを、語られました。

 「新しいつながりが新しい解決力を生む」。

 自分一人で賄うことはできない、とお話になられました。



井上 久美子(リメンバー福岡自死遺族の集い 代表)

 井上からは、「わかち合い」の必要性、役割として、人は自然治癒力を持っているのでその回復の手助けの場所であり、追い込まれる前に語る場を提供することの必要性があることをお伝えしました。

 また、行政や支援者が遺族会に関わる時、遺族から主導権を奪うのではなく、寄り添うことをお願しました。

 そして遺族のそばにいる人たちへ、興味本位に死因を詮索しないでください。話せる時が来るのを待ってください。私たちを遠巻きにしないでください。「頑張りなさい」「気を落とさないで」「しっかりしなさい」「お可哀そうに…」そんな言葉を掛けるのではなく、「困った事があったら何でも言ってね」そう声をかけてください。今まで通りに話しかけてください、それが遺族の願いです、と伝えました。



河野 通英さん(山口県精神保健福祉センター 所長)

 山口県の重点施策としても3つの柱、@正しい知識の普及 A人材養成 Bアフターケアによる予防(自死遺族支援)を挙げられました。

 自殺は亡くなる直前には精神医療(うつ)の問題となること。

 また、山口県CRT(クライシス・レスポンスチーム)委員長の立場から、子どもの自殺の場合の背景の難しさについて語られ、第三者が入って調査することが必要であると述べられました。



 山口県の遺族会立ち上げに当たり、行政と民間とつながりとして、藤澤さんから、「行政は民間に会場提供や広報を担当することが出来る」とお話がありました。

 井上からは、行政がマスコミを動かして、自死遺族への理解や遺族会の必要性を県民に告知していくことが大切なことをお伝えしました。

◇◇


会場からの質疑応答

(問)会場から 

 自殺の根本原因である、教育、医療、老人、労働問題について厚生労働省はこれからどう考えているのか。

 対処療法でお茶を濁さずにどうしようとしているのか。
 
(答)藤澤さん 

 本当にその4つが原因なのかどうかを知るためにライフリンクでは自死遺族への1000人調査を行っていること、1000人分のアンケーが集まることで根本的な原因が見えてくるのではないか、それを国に提言して自殺対策を取り組んで行くことを伝えられました。


 
 山口県のキャラバン・メッセージは、『背伸びはしないで、できることから一歩ずつ』となりました。

 緑豊かな美しい景色の山口県でした。
全国キャラバン in 群馬 [2008年04月14日(Mon)]
報告者:大野絵美


 平成20年3月20日(木・祝日)、群馬県主催の「自死遺族支援全国キャラバンinぐんま〜みんなで考える ひとりの命 大切ないのち〜」が群馬県社会福祉総合センター大ホールで開催されました。



 雨天の中でしたが、140名の方が参加されました。

◇◇


 はじめに、群馬県健康福祉部長の小出省司さんからご挨拶がありました。

 全国的な自殺の現状、群馬県でも500人を超える自殺の現状があり、個人の問題ではなく社会的な解決が必要であることを話されました。

◇◇


 キャラバンは2部構成で進められました。

◇◇


<1部>遺族の体験談発表

 まず、私(大野)からご挨拶をさせていただき、DVD「リメンバー福岡 分かち合う声」を上映しました。

 DVDで配偶者やお子さんを亡くされた方からのお話を聞きながら、分かちあいの場を理解していただきました。



 その後、私の体験談をお話しました。

 10年前に父がうつ病から自殺したこと。

 その3年後、今度は母が自殺未遂したこと。

 自殺に対する偏見が本当にある体験をしたこと…

 その中で、親戚や友人がただそばで一緒に泣いてくれたことがとても救いであったり、一人じゃないと思えた体験が自分にとっての生きる勇気になったこと。

 そして、仲間と出会い分かちあいの会を立ち上げるまでについて。

 自死遺族は“特別な人”ではないですし、ただ悲しいお話をしにきたのではない。

 自殺をしなくてもいい、そして自殺を隠さなくてもいい優しい社会にするために、私は私にできることを、貴方は貴方ができることを考えてほしいとお話しました。

◇◇


<2部>パネルディスカッション



○コーディネーター  
 三國雅彦さん(群馬大学大学院脳神経精神行動学教授)

○パネリスト
 杉本脩子さん(全国自死遺族総合支援センター代表幹事)
 金子久美子さん(福島自死遺族ケアを考える会 れんげの会代表)
 赤田卓志朗さん(群馬県こころの健康センター所長)



三國雅彦さん

 遺族が分かちあうことには大きな意味があること、自死遺族が語ることが自殺対策の予防にもつながっていくこと、そうしていかなければならないことについて話されました。

 そして、どう支援していくのか、群馬県としてどうやっていくのかを考えていくために、まずは自死について知ってほしいということをお話され、「自死」「うつ病」について話されました。

 働きすぎて自死する人は、万葉の時代にもいたという紹介もまじえ、「うつ病」について、遺族が語ったサインを自殺予防に役立てることができることや、「生きてさえいりゃ、何とかなる」というメッセージをいただきました。

 さらに、「安心安全のためには、きめ細かいことをやらなくてはいけない。健診等の場でも、心理的なことを抱えているかもしれないことを家族などに伝える。企業ごとに取り組むのも難しいがやっていかなくてはいけない。ネットワーク作りが大切。」とお話になられました。



杉本脩子さん

 まず、東京マラソンの映像を流され、年間自殺でなくなられる3万人の「人」を会場全体で感じました。

 その後、全国自死遺族総合支援センターの設立の経過と活動内容、事業計画について発表されました。

 沈黙の悲しみ、苦しみが、感情だけでなく身体や行動、生活面にも影響することや、負債やいわれのない保証を迫られることもあり、相談できずに追い込まれていく遺族もいることを話されました。

 また、「人は人によって癒されていく」という体験からのお話があり、「人は新しいつながり、強いつながりで生きている。そして、相手からもらい自分も発信していく生きごこちのいい社会にしたいと思う。」とお話されました。



金子久美子さん

 福島の、れんげの会の活動についてお話されました。

 分かちあいの会は、誰も来なくてもニーズがないのではなく、いつか来ようと思っている人もおり、遺族にとってはいざと言うときの場として力強さがあることをお話されました。

 れんげの会では、分かちあいのほかに、手紙やメールで気持ちを吐き出すための綴り箱も設けており、あて先があることが役に立っていると感じると話されました。

 「大切な方を亡くされて10年、20年が経過している遺族もおり、いったい何人苦しんでいる人がいるのか計り知れない。」

 また、「行政には、自死以外の相談先も掲載されているような情報の提供の仕方も必要ではないか」という提案をされました。

 また、さりげない買い物や子供の送り迎え等の生活支援も救いになるということを教えてくださいました。



赤田卓志朗さん

 群馬県の自殺者数は503人で、特に山間部において人口比で高くなっていること、やや年齢層も高くなっていることについて話されました。

 県での取り組みとして、平成19年度に自殺対策連絡協議会を設置したことや、実態調査としてうつスクリーニングを健診と同時におこなったこと、民生委員を中心に意識調査をしたこと、医師会ではかかりつけ医の認識を高めるための講演会を実施したことを説明されました。

 さらに、平成20年1月から自死遺族相談を月1回こころの健康センターで開始し、3月からは遺族の集いも開催するようになったという取組みについてお話されました。



(会場からの感想・質問)

○県内の依存症関係の病院でソーシャルワーカーをしている方から。
 「1年半前から病院で家族のグループを担当しているが、家族の中では言えない話をできる場を提供していき、自助グループとして根付いていけるといいと思う」ということ、また、「支援者のケアやサポートも必要だと感じる」という感想をいただきました。


 こちらの感想に対し、

三國さん

 会を運営していく中で、語りづらいことや、医療的なことが必要な時にどう対応するか、支援者のケアをどうするか、経験を教えてほしい。

杉本さん

 支援者同士も分かちあうことや、遺族の違いに目を向けるときりがないので、「人間としての共通点」に目を向けることが大切。

金子さん

  医療が必要な人は今まではなかったが、分かちあう中で、思い切って病院にいった人はいる。

 また、支援者のケアは大事。福島ではファシリテーターとスタッフで振り返り、心のケアをしている。

 各団体の主の人たちには、悩みや苦しみがあるので、以前、ライフリンクで主催者を集めた情報交換や交流の場をもうけてくれたことはとても有効だった。連携が大切。

赤田さん

 群馬では、はじめたばかりだが、医師がでて相談できる体制もとっている。

との発言がありました。


 
○自殺の統計で女性の低年齢化があるが、携帯電話のメールでつながっていることや女性の性の問題等、ひとりで悩んで自殺になることが多いと考える。学校教育でも必要なのでは?

赤田さん

 学校の養護教諭を集めて、自傷行為のメンタルの話はしている。携帯電話や性についての直接的なことはやっていない。

三國さん

 学校医だけでなく、精神科や婦人科、整形外科など専門医からも正しい情報を伝えることが大切だと考える。

◇◇


(登壇された方からの一言)

杉本さん
 自殺問題は社会の問題の象徴。他人事ではなく、今すぐできることが必ず誰にでもある。

金子さん
 分かちあいは、苦しい時に来られるような「隠れ家」になるといい。

赤田さん
 正しい認識や普及が乏しいため、風評被害で遺族が苦しむ。なんとかしていきたい。

三國さん
 生きていればなんとかなることを、群馬でやっていきたい。



 「遺族語る」のパネル展示も、多くの方がご覧になっていました。


「遺族語る」パネル展示の様子


◇◇


 群馬県のキャラバンメッセージは、『語れる場を 生きてさえいれば なんとかなるさ』に決まりました。
全国キャラバン in 福井 [2008年04月11日(Fri)]
報告:西川


 3月25日(火)、福井市市内の福井県国際交流会館において、「自死遺族支援全国キャラバンシンポジウム in 福井」が開催されました。



 福井県は、自治体主催ではなく、「自死遺族支援全国キャラバン実行委員会」による自主開催になりました。

◇◇


全国キャラバン趣旨説明

 はじめに、藤澤克己さん(NPO法人ライフリンク事務局長)から、シンポジウムの流れの説明があり、ライフリンクの自殺問題に対する考え方、これまでの経緯説明がありました。



 先日行われた「東京マラソン」の、通りを埋めつくす途切れることのない走者の列を撮影したDVDが流され、毎年この走者の数とほぼ同じ人数の人間が自殺によって無くなっているとの説明があり、自殺で亡くなられた方も、自分が自殺に追い込まれることなど10年前には想いもよらなかったであろうとのお話がありました。

 このランナーの一人一人に人生があり、家族があり、思い出があるということを説明していただきました。

 自殺が、いつ自分の身に降りかかってくるか分からない身近な問題であると感じる場面でありました。



 さらに、サイレントグリーフ(自死遺族が感じる悲しみや自責の念、心の痛み)を、語れる場所が今まで社会の中に無かったことを説明され、自死遺族が安心して自分の気持ちを語れる場所を作る土壌を全国に作っていくことが今回の全国キャラバンの趣旨の一つだと説明されました。



 次に、今までの経緯の紹介として、自殺総合対策が、自死遺族の子供達が勇気を持って自らの体験を語り始めたことに始まったことが紹介されました。
 そして、時間が経過し、今度は遺児達の声を受け大人達が動き始めたことが紹介されました。

◇◇


パネルディスカッション 

 第2部パネルディスカッションでは、福井県精神保健福祉センターの持田忠司さん、「NPO法人心に響く文集・編集局」代表で、東尋坊でパトロール活動を続けていらっしゃる茂幸雄さん、自死遺族サポートチーム「こころのカフェ きょうと」代表 石倉紘子さんよりそれぞれの立場から、ご発言いただきました。



持田 忠司さん(福井県精神保健福祉センター)



 持田さんからは、福井県における自殺者の推移・現状のご説明を頂き、現在の福井県の取り組みをご紹介いただきました。



茂 幸雄さん(NPO法人心に響く文集・編集局)



 茂さんからは、東尋坊でのパトロールの活動についてご紹介いただきました。

 一人の希死念慮者が、茂さんに声をかけられて助かった一例も挙げてくださったのですが、その方が言うには、「観光客が、大勢楽しそうにしていたが、しょんぼりしている自分に声をかけてくれる人は誰一人いなかった。そこで茂さんに声をかけていただいた。」とのことでした。

 茂さん曰く、そこに「人間らしく生きる」のヒントが有るのではないかと問題提起をいただきました。

 希死念慮をもたれる方も、心の中で生きたい、生きたいと願っているのに、今の時代には、「お節介焼き」が居なくなったのかもしれません。(この「お節介」の言葉は、後の茂さんのご発言の中で出てきます。)

 また、「この問題は行政の仕事で、本来は民間の人間がやることではない」と、行政の対応を問う強い意見もいただきました。

 活動の中で、多大な債務を負った人に出会われることも有るそうです。

 債務を整理するためには、自己破産等の手続きの手段が有るのですが、そのためには弁護士費用等が必要となります。

 当然ながら当人にはその費用を捻出することも無理です。

 弁護士費用の「法的補助制度」というものが有るそうですが、役所に行っても、そういう制度が有ることも教えてもらえないそうです。

 茂さんは、役所に当人と一緒に行って法的補助の要請をするところまでの「お節介」をしていると、お話ししていただきました。



石倉 紘子さん(こころのカフェきょうと)



 石倉さんからは、遺族としてのご主人を亡くされた体験談と、遺族支援を行っていく上での壁についてお話しいただきました。

 遺族としての、感情を外に表現することの出来ない20数年のこと、語り合う場を得ることで今まで放置されてきた遺族に、今やっと光が見えてきたことを語っていただきました。

 また、京都で自死遺族支援の活動を立ち上げ運営されてきた経験を語っていただきました。

 手弁当の民間だけでは限界があり、府、市の支援(財政・場所・広報)が是非ともに必要であったこと。

 それを得るためには、府、市、社会福祉協議会、それぞれに出向いて、一回一回活動の意味を説明しなければならなかったこと。

 その説明を行う場面の中で、4名で始めたメンバーのうち2名が苦しさを感じて「うつ」に、陥ってしまい、活動から外れざるを得なかったことを、紹介していただきました。



 パネラーの一通りの発言が終わった後、財政出動の費用対効果が強く問われるようになって、なかなか苦しい面もあるとおっしゃっていた持田さんと、行政の対応を問われる茂さんの間で、熱い討論の場面もありました。真剣な討論でありました。

 行政の立場で一番前で活躍される持田さんと、民間のボランティアとして第一線で活動されている茂さんの間で、それぞれ、感じていることや限界、本音を交換する、今後につながるいい機会であったのではないかと、私は聞いていて率直に感じました。



 また、東尋坊で亡くなる方の多くが県外者であるというお話も出ました。そこで、「そこに県財政から支出するのはどうなのか」という話も出ました。

 石倉さんは、それに対し、こう述べられました。

 「京都で活動していても、遠方からわざわざ来られる方もいらっしゃる(地元にはなかなか足を運びにくいということもあるのでしょう)。そこは、お互い様。この福井県にも、遺族サポートの会が出来れば、隣県から来られる方もいらっしゃるでしょうし、また、ここ福井から隣県へ出かけられる方もいるでしょう。」と。



 最後に、福井県でのキャラバンメッセージとして、『助けを求める人を孤立させない社会づくり』を発信して、シンポジウム終了となりました。
全国キャラバン in 奈良 [2008年04月09日(Wed)]
報告者:藤澤克己(ライフリンク事務局長)


 2月15日(金)、奈良県医師会館・講堂(近鉄・大和八木駅から)にて、「自殺対策シンポジウムin奈良 〜自死遺族支援 私たちにもできること」が開催され、約100名の方が集まりました。



 まず、奈良県健康安全局長の竹村潔氏が挨拶に立ちました。


 
 奈良県では自殺率としては全国レベルより低いものの、平成10年以降年間300名を超える方が自殺で亡くなっており、交通事故死者数より数倍も多いことが伝えられ、自死遺族支援のためにこのシンポジウムが「きっかけ」になってもらいたいと開会を宣言されました。

◇◇


 次に、ライフリンク代表であり、全国自死遺族支援全国キャラバン実行委員会の委員長である清水康之氏より、「全国キャラバン」の趣旨説明がありました。

 昨年7月に秋田県で開催したのを皮切りに、これまで全国の都府県で開催し、奈良県が32番目の開催県、今年度末の3月30日に大阪でフィナーレを予定しているプロジェクトであることが説明されました。

◇◇


 続いて、内閣府自殺対策推進室の 森 信二 参事官補佐による基調講演があり、「自殺総合対策大綱について」の説明がありました。

◇◇


 自死遺族の体験発表は、南部節子さん。



 南部さんは、ご主人を4年前に自殺でなくされました。

 今現在は茨城県にお住まいですが、結婚してしばらく大和郡山住んでいたことがあり、奈良県は所縁の地だとのことです。

 ご主人が亡くなられたのは、そのJR大和込山駅の近くでした。

 ご主人が亡くなるまでの経過を、涙をこらえながらゆっくりと語ってくださいました。

 責任感の強いご主人は、たくさんの仕事を抱え込み、うつ病を発症して、最後には追い詰められて自殺したそうです。

 ご主人が自殺で亡くなってしまってから、悲嘆にくれていたこと、分かち合いの集いに参加して、泣きながら語るのを聞いてもらえて助けられたこと、などを教えてくださいました。

 「元気出してよ」「がんばってね」と声をかけられるのは、悪意がないとわかっていても辛かったとのこと。

 周囲の人は「辛かったよね、よかったら聞かせてね」と声をかけるのがよく、気持ちを受け止めてほしいと訴えられました。

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 休憩を挟み、「自死遺族支援 私たちにもできること」をテーマにしたパネルディスカッションがありました。(写真左から:敬称略)

<コーディネーター>
  清水 康之 (NPO法人自殺対策支援センター ライフリンク 代表)
<パネラー>
  植村 圭子 (奈良いのちの電話協会 理事長)
  神澤 創  (帝塚山大学教授・奈良県自殺対策連絡協議会 座長)
  杉本 脩子 (全国自死遺族総合支援センター 代表幹事)
  高橋 良斉 (奈良県精神保健福祉センター 所長)
  中村 聡  (奈良県福祉部健康安全局健康増進課 課長補佐)



 まず、コーディネーターを務める清水氏から、「何故、ご遺族が体験を語ってくれるのかを確認しておきたい」として始まりました。

 自分と同じ思いの人を一人でも少なくしたいという願いから、本当だったら誰にも言いたくないことを語ってくれたという、その意を汲み取って議論を進めていかなければならないという指摘がありました。

◇◇

 パネラーがひとりずつ、活動状況を発表しました。

中村 聡  (奈良県福祉部健康安全局健康増進課 課長補佐)

 まず、行政の立場から、中村課長補佐が奈良県の現状と対策状況を説明しました。

 一般的な自殺予防はやってきたが、十分ではないという認識があると率直に発言されました。

 精神保健福祉の担当課だけでなやりきれないので、庁内連絡会議を設置し、次に、自殺対策連絡協議会で関係団体の参加を呼びかけ、できところからやっていこうとしているそうです。

 昨年10月の協議会で提言を受けて、ワーキンググループも準備中とのことでした。

 現場を知らない人が自殺対策連絡協議会のメンバーにとなっていることも多いので、ワーキンググループとセットで進める体制で進んでいることを心強く思いました。



高橋 良斉 (奈良県精神保健福祉センター 所長)

 続くパネラーは高橋さんで、「行政」+「臨床医師」という立場から発表してくださいました。

 自死遺族支援に必要な態度として、強いものが弱いものを助けるといった尊大な態度では駄目で、同じ立場で助け合うことが重要と示されました。

 共感の限界を分かった上で関わることが必要で、専門家の分かった「つもり」は二次被害を生むと教えてくれました。



植村 圭子 (奈良いのちの電話協会 理事長)

 3番手は、植村さん。

 奈良いのちの電話として昨年12月から、よりそいの会 "あかり" をはじめられたそうです。

 自死遺族支援の一環として、自助グループ作りを手伝います。

 電話相談の中で、家族や身近な人の自殺が忘れられないという声が聞えてきて、ポツンポツンと孤立している自死遺族の多いことを知ったのが、自死遺族支援に乗り出そうとしたきっかけだったそうです。



神澤 創  (帝塚山大学教授・奈良県自殺対策連絡協議会 座長)

 神澤さんは、自殺対策連絡協議会の座長としても、臨床心理士としても発言をされました。

 グリーフとは喪失による反応と過程であり、各人がその人なりのグリーフワークをして、自分なりの意味を組み立てることが重要と説明されました。



杉本 脩子 (全国自死遺族総合支援センター 代表幹事)

 パネラー最後の発言は、杉本さん。ご自身の体験にも触れながら、「遺族にとって根本的な解決策は無い」というのが出発点であり、従来の援助者・被援助者という考え方が不適切であることを指摘されました。

 また、「悲しみを消す魔法はない」「人は人によって癒される」ということを教えてくださいました。

 亡くなった人が大切であれば大切であるほど感情の揺れは大きく、ネガティブな感情を含め自然に気持ちが出せればいいが、今の世の中は、それが許されない風潮があると指摘されました。

◇◇


 パネラーの発言が一通り済み、会場との意見交換もありました。

 パネラーが本音で語って展開したパネルディスカッションを通して、奈良県における自死遺族支援のスタート地点が確認できたと言っていたのが印象的でした。


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 ロビーでは、「遺族語る」のメッセージパネルが展示され、多くの来場者が足を止め、見入っていました。

 奈良キャラバンにおけるキーワードは、『人は人によって癒される』に決まりました。
全国キャラバン in 愛媛 [2008年04月07日(Mon)]
報告者:渡邊


 愛媛県松山市。



 2008年3月15日、「自死遺族支援全国キャラバンin愛媛」が開催されました。



 今回は、自治体主催ではなく、「自死遺族支援全国キャラバン実行委員会」主催による、「自主開催」キャラバン開催地です。

 会場は、愛媛県民文化会館。

 松山空港から道後温泉駅行きのリムジンバスで30分ほどのところで、道後温泉の1つ手前の停留所で下車しました。当日は、沢山のイベントが開催されており、多くの方で賑わっていました。



 まずはじめに、藤澤克己さん(NPO法人ライフリンク事務局長)より、全国キャラバンの趣旨説明と、日本の自殺者の現状についてお話がありました。

1.全国キャバンの趣旨説明

 2006年に成立した自殺対策基本法の理念を各地に根付かせていき、各地域で自死遺族の分かち合いのつどい設立のきっかけとしていくこと等が、キャラバンの目的です。

 他都道府県では、行政が主催していますが、”愛媛”では自主開催となりました。今後は、官民が一体となって取組んでいくようにしていきたいと思います。



2.自殺者の年間3万人とは

 日本で一年に自殺で亡くなる人数は、東京マラソンで3万人という人数と同じであり、誰一人として同じではない大切ないのちであることを、東京マラソンで3万人の方々が走る映像を観ながら、藤澤さんが説明されました。



 亡くなった方々も、昔、自分が自殺すると思っている人はいたでしょうか。

 ”まさか”自殺するなんて思ってもいなかったのではないでしょうか。

 10年前に、自分の大切な人が自殺すると思っていた人はいたでしょうか。

 ご遺族は、”まさか自殺するとは思っていなかった”と言います。

 私たちも、10年後は、もしかしたら、他人事ではないのではないでしょうか?

 そういう思いで感じてほしいと思います。



3.分ち合いの場「「自死遺族のつどい」について

 次に、「リメンバー福岡」の自死遺族の集いの様子がDVDでながれ、自死遺族の声を聞きました。



 普通の死と、自殺が、こんなにも違うということ…。

 他の死とは、周りの目が違い、自殺というだけで特別な死となること…。

 このDVDを通し、ご遺族のこころの苦しみや哀しみを、会場の皆さんも感じたのではないでしょうか。

 このように、同じ悲しみや同じ体験をする人を増やしたくないという思いから、勇気をだし辛い体験を語るご遺族の声が”原動力”になり、自殺対策基本法ができました。

 ご遺族の思いを、どのように共有していったらよいのでしょうか。

 ただ、「哀しいな」と思うだけでなく、遺族をどう支えていくのか、地域でどう支えていくのかを、”愛媛”で話し合いたいと思います。

 そのように、藤澤さんはお伝えになりました。

◇◇


3.パネルディスカッション 「自死遺族支援〜いま、私たちにできること〜」

杉本 脩子さん(全国自死遺族総合支援センター代表幹事)
橘 史朗さん(愛媛県心と体の健康センター)
清水 康之さん(NPO法人ライフリンク代表)
藤澤 克己さん(NPO法人ライフリンク事務局長)





杉本 脩子さん(全国自死遺族総合支援センター代表幹事)

 大切な人を喪ったとき、人は、嘆き、苦しみ、悲しみ、怒りや他者と自分との葛藤などのやりきれない思いなどでたくさん精神的にダメージを受け、さらに、気持ちだけでなく行動にも変化がおきます。

 忙しく過ごしてみたり、何もしなかったりすることもある。

 身体に反応がでて、日常生活が困難になることや、思い出の場に行ってみたり、逆に、思い出の場所に行けなくなったり、生活面も大きく変わります。

 次々と起こりえる事柄に、どこに助けを求めてよいか分からず、哀しいのに涙も出なくなる人もいらっしゃいます。

 感覚が麻痺してしまう場合もある。このようなことを経験し、2〜3週間で亡くなったということを実感します。過ぎ去った日々が戻ってこないと実感します。

 それぞれの人は、『生きる力』をもっています。

 苦しみながらも、大切な人がいない生活を組みなおしていくようになっていく。哀しみを消すと効果がありません。湧き上がってくる感情を外に出していくことが大切です。



 杉本さんは、これらの経験から、遺族支援のポイントとして
@辛い等で涙を流す=ネガティブな感情は人間として当たり前の感情です。
 感情の渦は、感情を外に出さないことには変わっていきません。自分の気持ちに正直になることが大切です。
Aそばで見守ってくれる人がいることが大切です。
と、おっしゃいました。

 そして最後に、杉本さんは、「遺族の会に参加することで、一人でいるのとは違った視点で苦しい道のりを学ぶことができるのではないでしょうか」とお話になられました。



 続いて、橘さんが、愛媛県としての活動状況を報告してくださいました。


橘 史朗さん(愛媛県心と体の健康センター)

 医師の立場からも、自殺の背景にはうつがあることが多く、その場合には、治療することで防ぐことができると言えます。

 そのため、家族や遺族の支援により、自殺は未然に防ぐことができる場合もあるのではないでしょうか。

 日々寄せられる相談については、「何がこの人を苦しめているのだろうか」と考え、こころの問題についても、その人の抱えているしんどさについて理解しようとしています。
 
 いやがおうでも背負わざるをえない荷物を、どう治療し、かかわれば良いのか、抱えている荷物が軽くなる方法はないのか、考えています。

 その対応方法の1つには、遺族の会があるのではないでしょうか。



 最後に、橘さんは、こうお話になられました。

 ご遺族は、大切な人を亡くしたという重さを背負い、自殺したのは自分のせいだと自責感との二重の重さを持っています。

 「この自責感にまで、免責してあげることのができるのだろうか」と、自分に問いかけながら、自分に何ができるだろうかと考えていくことで、行政とのセッションも、何らかの方法は見えると思います。

 なお、来年度から、地区限定でありますが、過疎の町をモデル地区として、グリーフケア形式の計画があります。



清水 康之(NPO法人ライフリンク代表)

 橘さんの、「地域の方々に何が起きているのかという意識をもっている」というお話には、私も同じ想いです。

 自殺の問題は“こころの痛み”=喪失体験ですが、その痛みを、日本の社会は、個人の責任としています。

 例えば、14歳以下の死因は不慮の事故。親はご自身を責めます。

 高齢者が徘徊中に亡くなる場合にも、ご家族は自分達が悪かったのではないかと責めます。

 自殺についても同じで、ご遺族は、ご自身を責めます。

 確かに、大切な人を亡くした事実をどう受け止めていくのかということは、個々人が背負わなければならない課題です。しかし、個々人がそうした事実と安心して向き合うことのできる場を用意するということは、社会が担うべき部分だろうと思います。

 人の悲しみや感情に関わることだからといって、すべてを個々人の負担にしてしまうのではなく、なにを個人が引き受け、なにを社会が引き受けるべきかといった冷静な議論が求められているのです。

 私たちは、いのちを捨てるほどに“生きづらい・息苦しい”というよどんだ空気は何かと、自殺の問題から取組んでいます。

 橘さんのお話を伺って、医者とNPOと、向いている方向が同じであると嬉しくなりました。

◇◇


 愛媛の会場では、参加された方からのご意見や質問が多数ありました。

 実際に自殺対策の現場で活動されている方も多数いらっしゃり、これから何かしようという想いの方も多数いらっしゃいました。

 個々の活動では、限界があります。

 けれど、それぞれの人や専門分野と連携することで活動の幅が広がり協力しあうことで解決し、良い支援が生まれてくるのではないでしょうか。

 今後の愛媛県に、希望と期待ができるシンポジウムでした。



 愛媛のキャラバン・キーワードは、『ネットワークとは、顔の見えるつながりのこと』となりました。



全国キャラバン in 北海道 [2008年04月04日(Fri)]
報告者:福山なおみ(NPO法人ライフリンク)


「ほっかいどう自殺予防と自死遺族支援のためのシンポジウム」

〜今、私たちにできること〜


 平成20年3月2日(日)、北の大地・北海道:札幌大通り公園近くにある【札幌WEST19(5階講堂)】で、「ほっかいどう自殺予防と自死遺族支援のためのシンポジウム」が開かれました。


時計台



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主催者挨拶

高橋教一さん(北海道保健福祉部長)



 はじめに、ライフリンクの呼びかけにより【官民連携事業】として開催することができたことを喜ばしく思うと話されました。

 北海道内の年間自殺者数は1,500余名。

 遺族支援は、自殺対策基本法・大綱において大きな柱であり、今日は、遺族支援の取り組みの紹介・遺族の方のメッセージなど、シンポジウムを通して「私たちにできること」を考えていただきたい、と話されました。

◇◇


キャラバン趣旨説明

清水康之さん(NPO法人ライフリンク代表)

 「全国キャラバン」は、自殺対策の理念を地域に根ざしていくこと、基本法の柱の一つで『遺族支援』を地域で進めていくことを目指しているとお話されました。

 「自殺対策は、【生きる支援】、【いのちへの支援】であり、対策の先に《人》がいることを感じられるかが『鍵』である」と話されました。


                    
自死遺族を支援するということ

 DVD「東京マラソン」2008

 まず、清水さんが撮影された「東京マラソン」のDVDが上映されました。

 「東京マラソン」に参加された人数は3万人以上。日本における年間自殺者3万人以上と同じ人数です。

 一人ひとりには、家族・友人・思い出がある。そのかけがえのない人が3万人亡くなっており、遺される人たちも増え続けているということ。

 同時代に生きる私たちは、この現実と向き合い、遺族の話に耳を傾け、その体験を一人でも知ってもらい、(自死は)特別なことではないことを感じてもらいたいと強調されました。


                  
自死遺族の思いとは 

DVD「わかち合う声」〜リメンバー福岡〜

 次に、「自死遺族のつどい」の様子がDVDで紹介されました。

 大切な家族を自死で失ったご遺族の自責の念、遺された家族・親族たちの様々な思い、安心して悲しめない現実があることなどが映像の中から伝えられました。

◇◇

                    
自死遺族からのメッセージ

藤本佳史さんの語り



 8年前に母親を自死で亡くされ、「母親を救えなかったこと」、「どうして死に急いだのか」、胸の内から湧き上がる感情に溢れる涙を拭いながら、一言ひとこと紐解くように語られました。
                  
《支えてくれる人・共感してくれる人は遺族だけとは限らない》

 「母の死後、僕の様子がおかしいと気づいた学友が校舎の裏の芝生に呼んでくれ、肩を抱いて一緒に泣いてくれました。その時、友人として全身で受け止めてくれたと実感することが出来ました」とお話されました。
                  
《いのちを救える精神科医を目指したい》

 母親を救えなかった思いから、医学部に入りなおし、医師国家資格を取得した藤本さんは、「研修医として働く姿を父に見せたい。それが母への答え(Answer)だと思っている」と話され、そこには新たな人生を歩みだそうとする強い意志が感じられました。
                  
《安心して語れる場》、《安心して泣いていい場が必要》

 「あしなが育英会のつどい」で様々な体験を持つ学生と出会い、自死体験を語りながら、ご自分の気持ちが良い方向に変化したと語られました。
                 
◇◇


シンポジウム 〜自死遺族支援、今、私たちにできること〜

<シンポジスト>
 吉野 淳一さん(癒しの会代表)
 縄井 詠子さん(十勝保健福祉事務所子ども・保健推進課長)
 築島 健さん(札幌こころのセンター所長)
 山口 和浩さん(NPO法人自死遺族支援ネットワークRe代表)
 清水 康之さん(NPO法人ライフリンク代表)
<コーディネーター>
 市川 淳二さん(北海道立精神保健福祉センター相談研究部長)



吉野 淳一さん(癒しの会代表)

  『癒しの会』設立の経緯や運営上の約束事、研究の一環としての考え方、取り組みについてお話されました。

 「会を通して<苦難の力を社会貢献に向けている>という印象を受けました。また、遺族の方の物語から教えてもらうことが突破口になります。手探りの取り組みではありましたが、10年過ぎた今、私はそこにいても何も出来ないが、当事者が語りを聞き、絆を強めながら何とかしたいというのが実感としてあります。」と結ばれました。


                  
縄井 詠子さん(十勝保健福祉事務所子ども・保健推進課長)

 会が果たしてきたことは、「話していい場所と時間が確保された」、「泣いてもいい、頑張らなくてもよいことが保証された」、「何を話しても聞いてもらえることこで安心感が生まれた」ことだとお話になられました。

 これらから、「自分の感情を広げる力、自分を認める力、自分の感情を変えていく力、新しい日常を受け止める力がでてきている。ただ、男性の参加や子どもの参加が少なく、会は新たな局面を迎え変化する必要があると考えられる。今、私たちにできることは、【見守ること】【グループメンバーと共に歩むこと】だと思います。」とお話されました。


                
築島 健さん(札幌こころのセンター所長)

 行政として取り組むことについて、まず自殺の実態を明らかにすること、そして、民間の活動を応援することが必要であると話されました。

 心の問題への対策(うつ対策)ばかりではなく、経済・金融・雇用・一般医療・交通対策その他多くの関係部門を総合的に巻き込み、推進するために必要な調整を行うことをお話されました。

 「自死遺族支援」については、北海道は広いので様々な施策がやりにくい。その点についても教えて欲しいと話されました。

◇◇


山口和浩さん(NPO法人自死遺族支援ネットワークRe代表)

 「『(自殺を)語れない』理由には、自殺への偏見、弱いから自殺するんだ、勝手だ、自殺するくらいならもっとできることがある・・・このような社会の圧倒的な圧力があり、<語れない雰囲気>を作り出しているということがあります。勝手な『自死遺族像』を押し付けないで、一人ひとりしっかり向き合って欲しい。『語りの相手は、遺族だけではない。体験のない人も受け入れてもらえたと感じたときに力になること』を分かってもらいたい」と強調されました。
                
 また、行政との連携については、築島さんが発言された、北海道が広いが故の施策の困難さに対して、「長崎は離島を多くもっていることが特徴ですが、出張自死遺族支援の対策も重要と考えています。遺族支援には、経済的支援、心理的支援がある。それらを相談機関につなぐ役割が必要です。」と結ばれました。
        
◇◇

        
清水康之さん(NPO法人ライフリンク代表)

 自死遺族が、安心して語れる、悲しめる場所を地域につくる必要があるということをお話しになられました。

 また、ご遺族から教えてもらうことによって、生き心地のよい社会に変えていくことができますし、そのためには行動に移すことが必要であるとお話されました。

 特に、行政でできることとできないこと、素人だから出来ること、行政と民間が連携して出来ることなどについて話される中で、想像力を働かせ「私にできること」を自分の立場で考え行動に移すことではないか、とお話になられました。
             
 また、「自殺の実態調査」の重要性についてお話しになられ、誤解や偏見を払拭するためには、プロセスを明確にすること、亡くなられた方がこの社会に存在したことから学び取り、記憶に留めること、このことが遺族支援につながると話されました。
  

           
築島 健さん(札幌こころのセンター所長)

 警察の「自殺統計」や厚労省の「心理的剖検」は研究的視点が重視され、社会的対策がない。「1000人調査」に注目していると述べられました。

 このお話を受け、清水さんは、「今、多くの自死遺族の方々が全国から実態調査に参加したいと声を上げてくださっています。一緒に取り組むことで、回復力につながっていくことがあります。」と実態調査を通して実感していることをお話になりました。


                
市川 淳二さん(北海道立精神保健福祉センター相談研究部長)

 (山口さんに)北海道の取り組みに対して、長崎で取り組んでおられる実務的なアドバイスをお願いしたいと話されました。



山口 和浩さん(NPO法人自死遺族支援ネットワークRe代表)

 「長崎には、島が数十個あり、離島は都市部より偏見がある。また、近隣であるために参加しづらいこともある。行政はハード対応(広報案内、当日の準備)、Reはソフト対応(分かち合いでのファシリテータ養成、保健師研修)をしています。ノウハウがあれば連携していくと思うので、遺族が相談できる選択肢があることが重要ではないでしょうか。」と体験を踏まえた具体的対策をお話なさいました。

◇◇

 次に、マイクがフロアに向けられ、有益な意見交換が展開された後、最後にシンポジストの一人一人から発言がありました。

吉野さん

 何も出来ない自分がそこにいる、無力を認めたい。

縄井さん

 広い地域を管轄する保健所の保健予防を強化し、他の保健所へも活動を伝えていきたい。

築島さん

 子どものいじめ自殺は、教育委員会を巻き込んでいくことが必要である。

山口さん

 教育の問題は、大人たちが生きる姿を見せていくことが重要である。

清水さん

 自分の限界を見極め、できないことは他者へ支援をもらう。一方、無力ではない。微力を持ち寄り、皆と一緒に新しい解決力を培っていきたい。

◇◇
               

 広大な北海道において、「自殺のない生き心地のよい社会作り」を目指すには、その一つに地域特性や地域格差の問題等を明らかにする必要があります。

 そして、故人が自殺に追い詰められていった自殺の実態を解明することも必要になります。

 「(ご遺族が)求めている支援はどのようなことか」を、ご遺族から教えてもらい、自殺総合対策につなげる必要がある、と実感した北海道キャラバンでした。



 雪深い北海道札幌のシンポジウム会場には、関心を示される方々が大勢参加され、入口に展示された『遺族語る』のパネルの「声なき声」にも熱心に耳を傾けて下さっていました。



 北海道のキャラバン・キーワードは、『どんなときにも大切にしたい、分かち合う心』となりました。


全国キャラバン in 静岡 [2008年04月02日(Wed)]
報告:弘中隆之(多重債務による自死をなくす会)


 2008年3月23日(日)、「自死遺族支援全国キャラバンシンポジウムin静岡」が、「静岡県男女参画センターあざれあ」にて開催されました。
 
 静岡県は、自治体主催ではなく、「自死遺族支援全国キャラバン実行委員会」による自主開催です。

◇◇


○「全国キャラバン」趣旨説明 

 まずはじめに、藤澤克己さん(NPO法人ライフリンク事務局長)からキャラバンの趣旨説明がありました。


 
藤澤克己さん(NPO法人ライフリンク事務局長)

 「自死遺族支援全国キャラバン」とは、自死遺族支援のテーマにしたシンポジウムを47都道府県で開催するプロジェクトです。

 自殺総合対策の理念を全国に根付かせること、47都道府県に「自死遺族のつどい」設立のきっかけを作ることなどが目的です。



 その後、自死遺児の子供たちや、自死遺族の方々が声を上げた経緯についての映像が流されました。

◇◇


 後半は、パネルディスカッションで、パネラーの方々のお話とともに、会場にいらした静岡県庁の方へもお話が振られました。



○パネルディスカッション 「自死遺族支援〜いま、私たちにできること〜」

平田 豊明さん(静岡県立こころの医療センター院長)
木下 貴志さん(自死遺族の為の自助グループ準備中)
山口 和浩さん(NPO法人自死遺族支援ネットワークRe代表)
藤澤 克己さん(NPO法人ライフリンク事務局長)



平田豊明さん(静岡県立こころの医療センター院長)



 私は、30年間精神科救急医療に従事してきました。

 学生時代、祖父を自殺で亡くしています。そのことが、精神科の医師になるきっかけとなりました。

 自殺未遂者の3/4は精神疾患があります。その中で、医療機関を受診される方は1/4にしか過ぎず、医療の無力さを感じています。

 統合失調症の方の中で死亡率の1位は自殺であり、増加しています。病院を退院して自殺する方も増えています。
 
 また、うつ病の中高年層が増加しており、原因として、@経済要因、A職場要因、B家族要因、C医療要因、D文化要因があげられます。

 医療要因としては、診療密度の低下があげられます。また、うつ病の治療には、半年から1年かかります。そのため、治療よりも予防が重要です。



金指ゆり子さん(静岡県厚生部精神保健福祉室室長)

 静岡県では自死遺族支援はこれからです。

 現在は、富士市でモデル事業(睡眠をテーマ)を展開中です。平成19年には、自殺対策連絡協議会を設置しました。

 24時間態勢で電話相談対応もしております。(いのちの電話に委託)
 
 また、一般かかりつけ医から精神科医への早いリレーが重要であると考えています。



木下貴志さん(自死遺族支援の自助グループ準備中)



 浜松在住です。うつから実母を10年前に自殺で亡くしています。

 母は、自殺する半年前に未遂をしており、家族に笑顔がない生活を送っていました。
 
 その際、「こんなことをされたら迷惑だ」と母に言ったことが、未だに自責の念として残り、苦しんでいます。

 亡くなった時、「まさか、どうして」と、理由を探しました。

 本人しか分らないこともあり、これで家の中が静かになると、正直思うこともありました。母への怒りもありました。地域社会への怒りもあります。

 まわりから何か言われるのではないかと思っていました。死ぬことへの倫理観も当時ありませんでした。

 その後、自身のことからHPを立ち上げ、1年間続けましたが、とても耐えられなくなりました。
 
 そこで個人で活動することの限界を感じました。

 未だに子供には、母が自殺したとは伝えていません。
 
 自分自身に罪悪感があります。そのような思いを共有できる場が必要と思い、静岡県内に自死遺族の分かち合いをつくっていきたいと思います。

 いまは浜松市の精神保健福祉センターが助けてくれています。共に支えあって分かち合いの場をつくっていきたいと思います。



山口和浩さん(NPO法人自死遺族支援センターRe代表)


 
 ご遺族に対し、勝手な自死遺族像をつくらないことが大事です。ご遺族ひとりひとり、それぞれの感情があります。
 
 長崎県では、自死遺族の分かち合いの会運営にあたり、会場などのハード面は行政、当日運営などのソフト面は民間…等と、行政とReとの役割分担を決めています。

 今後は、離島に分かち合いの場をつくっていきたいと思っています。

 ご遺族は、分かち合いに参加する前と後では、表情が変わってきます。語れなかった苦しみを共有できることが大事だと考えます。
 
 支援者も「分らない。でも分りたい。」という意識をもってほしいと思います。



○質疑応答

会場発言

 精神科に本人がどうしても受診しない場合、家族だけでも話を聞いてもらえるように出来ないでしょうか。また、精神科を受診するにも、たらい回しにされる場合もあります。

平田さん(静岡県立こころの医療センター院長)

 当医療センターでは、家族の相談を受ける窓口も設置しているので、利用してほしいと思います。

 たらい回しをする精神科の医院は、本来あってはならないことです。そのようなことはないと思いますが、もしあるのであれば精神科医の責任は大きいと思います。



 最後に、金指さん(静岡県厚生部精神保健福祉室室長)が、「木下さんが浜松市内で分かち合いをつくられることに県としても連携していきたい。」とお話になられました。 



 なお、静岡県でのキャラバン・メッセージは、『つながることで、点を線にしていこう』となりました。


「遺族語る」のパネル展示の様子
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