一石を投じる
[2020年11月26日(Thu)]
今年7月、日本ダウン症協会さんが
全正会員を対象に
アンケート調査を 実施されました。
『 ダウン症のある方たちの生活実態と、
ともに生きる親の主観的幸福度に関する調査 』
と、いうものでした。
ダウン症のあるひとの 生育歴や生活状況、
健康状態、保護者の精神状態について
把握しようとするもので、
対象は 4,471人、そして
回答は 1,581通( 回収率 35.4% )と
ダウン症に限定して得られた調査としては
これまでに なかったそうです。
今月18日(水)、
単純集計段階の結果としてですが
この中間報告が 行われました。
「 世帯収入が低い家庭にダウン症の子は少ない」。
回答者の世帯年収分布において
「 300万円未満 」が 14.4%で、これは
国民生活基礎調査の
「 300万円未満 」30.6%(2018年)と比較すると
いわゆる 低所得世帯の率が 明らかに低い、と。
「 8人に1人が、雇用のレベルに到達していた」。
ダウン症のある本人の就労状況を調べたところ、
8人に 1人(12.6%)が
一般就労(一般企業の障がい者雇用も含む)や
就労継続支援A型など
最低賃金法が適用される「 雇用 」のかたちで
働いていることがわかり、
ここまで高い率とは予想していなかった、と。
「 保護者の幸福度が高い 」。
調査には、保護者の精神状況を聞く項目もあり、
そこから 幸福度が高いという結果が見えた、と。
そして、日本ダウン症協会さんの話として、
インターネットでは
幼いダウン症児の情報は 豊富にあっても
成人してからの情報は ほとんどなく、
正確でない情報もあり、これらの調査結果を
遺伝カウンセリングの場や
ピアサポートの場で活用していただきたい、と。
実は、わたしにも
このアンケート調査が 送られてきました。
ひと言で言うと、
アンケート冊子のページをめくり
読み進めるだけで 疲れました。
アンケート冒頭の説明だけでは
これらのアンケート項目が導く結果が
何に活用されるのかが 見えてこなかったので
すぐに記入しようという気には
なれませんでした。
このボリューミーなアンケートに対して
約1ヵ月弱というアンケート期間も
短いと感じました。
そして、かなり個人的な情報の記入が
求められる設問が 長く続くことに
抵抗のあるひともいた と思います。
アンケートに答える時間や気力が、
経済的に難しいことから
回答を断念したひともいた と思います。
いわゆる低所得者層の保護者や
40歳代以上のダウン症のあるひとの保護者が
このアンケートに答えようとした時、
容易に回答できるアンケートだったでしょうか。
調査項目の内容と分量を前に、
さまざまな理由から
答えることを苦痛に思えたひとが
いたのではないか、と思ったり。
そして、アンケート回答期間が
コロナ禍という状況も あったと思います。
日々の仕事や介護など
想定外に起こることに対処するなかでの
アンケート回答が
難しかったのではないか、と。
コロナ禍の状況を鑑みて 回答期間の延長や
アンケート時期が 今でなかったなら、
わたしも頑張って回答できたかもしれない、と。
これからに向けて、思ったことがあります。
アンケート対象を、
ダウン症のある何歳のひとへのものなのか、
例えば
20歳未満、20〜30歳代、40歳代以上の
3つに分けたり、そして
ダウン症のあるひとの年齢により
回答するであろう保護者の年代に合わせた
設問に変えて、
アンケートを依頼した一人ひとりが
答えやすいように配慮されたものであれば、
アンケートの回答数も増え、
より 有効な結果が
得られるのではないでしょうか。
日本ダウン症協会さんのコメントにあった
「 成人期のダウン症の方は、こだわりの問題など、
生活に難しいところもある。
正直、ネガティブなデータも出る。それも実態です。
そこに対して 発信することが我々の仕事。
隠さず出していきたい 」。
深く同感するとともに、
そこを知りたい
当該世代の保護者や若い世代の保護者は
たくさんいると思います。
成人期のダウン症をとりまく、
その年代に特化したアンケート調査を
ぜひ、お願いします。
今回、日本ダウン症協会さんが投じた
「 石 」から生まれた波紋は、
意味と意義があることは 確かです。
足を止めることなく、
皆さんが必要としていることが見えてくる調査を
期待しています。
* 公益財団法人 日本ダウン症協会
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