ケアラートラック
[2022年06月17日(Fri)]
先日、初めて耳にしたことばがあります。
「 ケアラートラック 」。
介護や看病、療育、日常生活上の世話などの援助を
無償で提供するひとを「ケアラー」と呼ぶことは
知られてきましたが、
そのあとに付く「トラック」が何か、
すぐに わかりませんでした。
調べてみると、「トラック」とは
貨物自動車を意味する
“ Truck ”ではなく、
足跡、経路、進路、溝などを意味する
“ Track ”でした。
「 終わりのない介護 (育児) 」。
そう意訳できる
このことばが意味することは
何なのでしょうか。
皆さんは「 終わりのない育児 」を想像できますか。
育児と仕事が
両立できる支援制度は整ってきた、と
言われていますが
それらは 健常と呼ばれる子たちを想定したもの。
障がいのある子は
一定の年齢になったからといって
ケアが不要になるわけではない子が
たくさんいます。
「 “働く” ことをあきらめざるを得ない
親が、母親が、たくさんいることを知ってほしい」と
声を上げても、声を上げ続けても、
変わらない現実を
知ってもらうために生まれた
それが「 ケアラートラック 」だと。
障がいのある子をもつ母親も
自分の時間を持ち、
障がいのある子の母親以外の肩書きを持ちましょう
などと 耳にすることがありますが、
それは 容易にできることではないし、
容易にできる社会でないことは
周知の事実です。
「 障がいのある子をもつ母親が
そうしたくても、社会が そうはさせてくれない 」。
これは 大げさでも 逃げでもなく、
現実を知るひとには
大きくうなづけることであり、
え、何なの、と思ったひとには
ぜひ知ってほしい。
障がいのある子は
年齢を重ねても
一人で外出することや留守番ができない場合も多く、
学校卒業後の
18歳を過ぎてから利用できる支援制度には
フルタイム勤務を支援できるものはない、と
言って等しい状況です。
障がいのある子をもつ親に対して
「その子の親の役割を固定する」
強い社会的な役割があって当然の日本社会。
障がいのある子をもっても
母親が 何の躊躇もなく
仕事を続けられる社会になるには。
それには、
成人した障がいのあるひとが
家庭外で過ごす、過ごせる制度が拡充されること、
そして、
社会的な親の役割に対する強い固定観念を
払しょくすることが大切です。
「入所施設に入所すればいい」とひと言で済ますひとが
役所や福祉現場で 見受けられますが、
そのひとたちの 意識や知識を 変えることも急務です。
最後に、
福祉現場で働くひとたちと
福祉施策にたずさわるひとたちへ。
日中支援後や
施設休所日の支援について、
障がいのあるひとや家族が望むことが
可能になる制度は
どのようにすればできるか を真剣に考え、
可能にしてほしい。
それが、それこそが
障がいのある子をもつ母親が
今、望んでいることだと思えてなりません。