工賃
[2021年10月16日(Sat)]
「 最低賃金が 今月より過去最大に引き上げられます」
という見出しを 新聞で見ながら
ふと 思ったことがあります。
障がいのあるひとたちに支払われている
「 工賃 」は
ここでいう「 最低賃金 」とは関係ないけれど、
関係ないままでいいのだろうか、と。
「 最低賃金 」が 引きあげられても、
当然のように
「 工賃 」には 何の反映もありません。
でも、障がいのあるひとは
工賃で生計を立てる社会の仕組みになっています。
「 工賃 」の今の仕組みがこのまま続くことに
とても違和感をもちながら、
「 最低賃金 」のニュースに触れました。
ちなみに、今年10月に引き上げ後の時給を
都道府県別に見ると、
最も高いのは 東京で1041円、
次いで神奈川が1040円、大阪が992円で、
最も低いのは 高知と沖縄で820円、
次いで岩手、鳥取、愛媛、佐賀、長崎、熊本、宮崎、
鹿児島の8つの県で 821円で、
すべての都道府県で
時給は800円を超えることになりました。
「 工賃 」は と言うと、
都道府県別ではありませんし、
物価のちがいに 則したものでもありません。
一般的に「 工賃 」というと
物を製作加工した際の対価として
支払ったり受け取ったりする手間賃のことですが、
就労継続支援A型事業所や就労継続支援B型事業所で
作業を行った分に対して支払われる
賃金のことがそう呼ばれています。
そう、「 賃金 」です。
2018年3月における
就労系の障害者福祉サービス利用者は、
就労移行支援の利用者が 約3万3千人、
就労継続支援A型の利用者が 約6万9千人、
就労継続支援B型の利用者が 約24万人となっています
( 2018年3月 厚生労働省資料による )。
これだけの人数のひとたちが、
「 工賃という名の賃金 」を
「 最低賃金に関わりのない賃金 」を
社会から あてがわれているのです。
新型コロナウイルスの影響が続く中、
中小企業を対象にした自治体や国が払う助成金は
上限額を引き上げるなど 支援が強化されており、
今回の「 最低賃金 」の引き上げによる
中小企業への影響を減らすために
業務改善助成金の上限額を引き上げるなど
金銭的な支援が強化されています。
もちろん、福祉分野にも
数々の助成金があることは 知っています。
でも、それらの助成金は
福祉事業所を支えるだけに費やされて終わり が現状で、
障がいのあるひとの
「 工賃 」にまで 還元されていません。
新型コロナウイルスの影響で受ける助成金は、
企業などでは
最低賃金引き上げに 及んでいるのに、
福祉事業所では
工賃引き上げに 及んでいないのです。
では、どうすれば
障がいのあるひとが得る「 工賃 」は
上がるのでしょうか。
繰り返し
言われ続けている
福祉現場の努力、ですか。
現場の皆さんは
そこで働く障がいのあるひとは
努力しています、十分に。
では、どうすれば
「 工賃 」は 上がるのでしょうか。
社会状況と相反する「 工賃 」だから、
いつまでたっても
「 工賃 」は 上がらないのではないでしょうか。
そもそも「 工賃 」は
雇用契約を結ばない収入なので
税務上は 給与所得にはなりませんが、
区分としては「 雑所得 」という所得に含まれます。
税法上の、正しい理解から はじめましょう。
「 工賃 」ではなく
「 賃金 」として
社会の一員として「 賃金 」として受け取り、
源泉徴収をしましょう。
福祉事業所では
源泉徴収が行われないので
本来、障がいのあるひと一人ひとりが
各自、確定申告の対象になります。
ただ、法律上で、
年間の工賃額(賃金)が 65万円以下の場合は
確定申告は必要ないとされています
( きょうの福祉調べ ※ )。
「 工賃 」で得られる平均金額で考えると、
65万円以上になることは ほとんどないと
考えられているから 申告不要なだけで、
税理士の中には
社会の一員という自覚をもつためにも
支払う税金がなくても
確定申告をすべきだと意見するひとたちもいます。
「 福祉事業所からもらう 」=「 工賃 」ではなく、
「 福祉事業所でもらう 」=「 賃金 」となり、
「 福祉事業所でもらう賃金 」と、
法律上であるべき本来の形に変える。
そう、現状が 違反に近い仕組みなのです。
でも、なぜ、ずっと
変わらないままだったのでしょうか。
※所得税控除額から算定、障害等級により異なります。
扶養控除+障害者控除=65万円
扶養控除+特別障害者控除=78万円
扶養控除+同居特別障害者控除=113万円
タグ:働く
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