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2024年10月01日

「蒔絵屋だより」1  

こんにちは。くらしと協同の研究所で事務局をしております高木です。京都生協から研究所に来ております。
突然ですが「生協」ってなんでしょうか。例えば「京都生協」という具体的な名称も京都生協を抽象化した表現です。では「生協」の実態とは何でしょう。私は過去から現在に至るまでの生協に関わったすべての人の営みの総体だと思っています。あの時一緒に汗をかきながら展示試食会を手伝ってくれた組合員の行為や留守の方の商品を預かってくれた同じ班の組合員の行為のように。

そんな生協を構成する具体的な構成要素の一つを紹介します。
2004年、私が京都生協右京支部にいたときのこと。突然、鳥インフルエンザが京都府で発生しました。真っ白な防疫服に身を包み、マスクにゴーグルをつけて鶏の殺処分をする映像がテレビで大々的に流れ、発生個所から半径30km圏内の鶏卵は移動制限となり、右京支部に卵を届けてくれていた産直生産者もこの30km圏内の移動制限のため、卵を出荷できず廃棄処分しなければならない事態となりました。マスコミでのセンセーショナルで大々的な報道もあり、「京都産の卵は危険」といった風評被害も急速に拡大しました。

そんな中、京都生協では出荷制限され窮地にある生産者を励ますための集会を急遽開催。過去に同じく風評被害等に苦しめられた産直生産者が集まり、自身の経験を語り、鶏卵生産者を力強く励ます集会となりました。
私もその集会に参加し、まずは苦しみのただ中にいるこの生産者の声をみんなに聴いてもらおうと生産者に職場に来ていただき職員学習会を開催しました。学習会当日、私は行政区委員会のため参加できなかったのですが、商品普及プロジェクト(注1)の職員が学習会終了後、生産者に「組合員へのメッセージを一言書いてください!」とお願いし、その手書きのメッセージをそのまま印刷して生産者の想いを組合員に届けるとともに、組合員から生産者へ励ましのメッセージを募集しました。

翌週、組合員から生産者への励ましの声が驚くほど返ってきました。中には小さな子どもが一生懸命書いてくれたものもありました。プロジェクト職員はメッセージをまとめながら、たまらない気持ちになったと話してくれました。組合員から集まった生産者へのメッセージはすべて生産者に届け、またメッセージの中からいくつか選んで改めて組合員にニュースでお返ししました。
そんな生産者を励ますプロジェクト職員と組合員、そして生産者の間での声の循環を見た右京行政区委員会・京北行政区委員会(注2)の皆さんも「私たちも一緒に取り組みたい」と声を上げてくれて、学習会や生産者を応援する企画を1年間取り組んでくれました。

そんな20年前に右京支部であった出来事も間違いなく現在の京都生協を構成する大切な、たいせつな構成要素の一部なのだと思っています。そして時には抽象化された「生協」を具体的な「生協」に還元したいと思います。

高木英孝(くらしと協同の研究所事務局長)

(注1)商品普及プロジェクト:支部職員が課題ごとに作っているいくつかのプロジェクトの中で、商品の普及を進めるためのプロジェクト
(注2)行政区委員会:機関として位置付けられていた組合員の委員会

posted by くらしと協同の研究所 at 18:00| Comment(0) | TrackBack(0) | くらしと協同の研究所「蒔絵屋だより」

くらしと協同の研究所「蒔絵屋だより」の発信について

この度、くらしと協同の研究所では、研究者や実践家の方々の活動や思いなどを広く発信する取り組みとして、本研究所ブログにおいて「蒔絵屋(まきえや)だより」のコーナーを開設しました。当研究所の地名から名付けられた本コーナーでは、多彩な研究・実践活動の取り組みなどを随時発信していきますので、ぜひご覧ください。

posted by くらしと協同の研究所 at 17:00| Comment(0) | TrackBack(0) | くらしと協同の研究所「蒔絵屋だより」