山中鹿之助幸盛は、
戦国時代に武名を挙げた苦労人である。
あるとき、次々と戦に敗れ、
山野を彷徨し、たった一人で
洞窟まで追い詰められた。
普通なら『もはやここまで』と
自刃して果てるのだろうが、
鹿之助は、事ここに及んでも
死ぬことは卑怯だと考え、
死への誘惑を断ち切って
次の一首を詠んだという。
『憂き事の、
なほこの上に積まれかし、
限りある身の力試さん』
また、鹿之助が家督を継ぐとき
主家である「尼子家」を再興することを誓い、
山の端にかかる三日月を仰いで、
「どんな苦労でも乗り越えてみせる」
という情念を込め以下の句を詠んだ。
『願わくば、
我に七難八苦を与えたまえ』
『葉隠(はがくれ)』は
「武士道とは、
死ぬことを見付けたり・・・」
という冒頭が有名で、狂信的な武士の
倫理観を表していると思われているが
これは大きな間違いであるという。
実際は、
「己の信念にすべてを賭けて、
死ぬ覚悟を持ち、精進し続ける」
という意味なのだ。
真の武士道において、
窮地に陥ったときは
「死」を美化することは
「卑怯」なことであって、
誰になんと言われようとも、
どんなに見苦しく映ろうとも命ある限り、
懸命に生きるべきなのだろう。
現代においても生きてゆくのは
試練の連続であるが、
どのような環境におかれても
生き残り続けなくてはいけないのだ。