(公財)九州運輸振興センターでは、日本財団の支援と助成を受け、九州運輸局との共催により12月1日(金)「バリアフリー講習会in 別府国際観光港」を開催した。
別府港は、大分県の中央に位置する別府湾の西奥部にあり、背後に国際観光都市別府市を擁する国際観光港で、令和5年1月には、障害当事者の意見や最先端のバリアフリーを取り入れた「さんふらわあターミナル(別府)」が整備されるなど、共生社会の実現に向けた取組みが進められている。
今回の講習会は、新たに整備された「さんふらわあターミナル(別府)」及び令和5年4 月、大阪〜別府航路に新たに就航したLNG船「フェリーさんふらわあ むらさき」において、大分県内の旅客航路に従事する乗組員や職員等を対象としたもので、直接、高齢者や障害者等と接する機会が多い旅客船乗組員など30名が参加。大分県内での開催は、令和元年9月、大分港で開催して以来、4年ぶり。
講習は、座学と実技で実施され、座学ではエコモ財団高橋徹氏から、「旅客船事業者に求められること」と題して、バリアフリー法に基づき、旅客船事業者やその職員が取り組むべきことについて説明があった後、2024年4月に施行される「改正障害者差別解消法」について説明があり、障害者への「合理的配慮」が、行政だけでなく事業者にも義務化されるようになること、また、ここでいう「障がいのある人」は、障害者手帳の有無にかかわらず、社会的障壁によって日常生活や社会生活に相当な制限を受けている人全てが対象となるため、留意が必要との解説があった。
その他、人間には男女差、年齢差、個人差があることから、「多様性」や「障害」を理解することが重要であり、こうした研修を通じて、正しい知識や技術を身に着け、必要なサポートを提供することが大切であると強調された。
さらに、「接遇」と「介助」の違いや心構えなどについても触れられ、直接、障害当事者と関わり、自分自身で体験することが最適な接遇・介助につながることから、本人とコミュニケーションをとることの重要性について述べられた。
また、NPO法人自立支援センターおおいたの後藤秀和理事長からは、「障害当事者を知ろう!」とのテーマで、エコモ財団高橋徹氏と直接やりとりする形で、ご本人の障害の特性や日常生活の状況、公共交通機関を利用する際に困っていること、注意していることについて紹介があり、これらの体験から当事者目線で接することが大事であり、交通事業者ほか関係者には、「お客様の困難に気づき、何かお手伝いできることがありますか」など積極的に声掛けをして欲しいとのワンポイントアドバイスがあった。
実技では、一般社団法人大分県介護福祉士会の指導のもと、参加者が二人一組になって、手足の動きや視界を制限する(or 高齢者を疑似体験する)装具をつけたままの状態でターミナル内や駐車場からターミナルへの移動などを体験したほか、車いすにのって、フェリーターミナルからエレベーターやタラップを経由して船内に移動するなど高齢者や障害者の方が旅客船を利用される場合、「何に困って、どのような助けを求めているのか」を疑似体験するとともに、「目配り」「気配り」「心配り」の重要性について、学習した。参加者からは「車椅子利用者等が船内を移動する場合、いかに困難かわかった」「この体験を今後の仕事に活かしていきたい」「相手を思いやる気持ち、気づきが大切だ」といった感想が寄せられ、「心のバリアフリー」の取り組みの重要性をあらためて認識する貴重な機会となった。