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九州経済圏における交通及び観光の振興と近代化を図るための事業を行い、もって地域経済の均衡ある発展に寄与し、あわせて民生の安定に資することを目的として、調査研究事業、施設整備事業、その他広報啓発等事業を柱に活動しています。

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第26回海事振興セミナー(九州クルーズセミナー)開催報告[2024年09月05日(Thu)]
               第26回海事振興セミナー開催報告

 令和6年7月31日(水)、福岡市において第26回海事振興セミナーを開催しましたので、その概要を報告致します。なお、今回の海事振興セミナーは、九州クルーズ振興協議会との共催で、同協議会総会の後に「九州クルーズセミナー」として開催致しました。

   〇 日  時 令和6年7月31日(水) 14:20 〜 16:00
   〇 会  場 オリエンタルホテル福岡 博多ステーション3階「YAMAKASA」
   〇 主  催 公益財団法人 九州運輸振興センター 九州クルーズ振興協議会
   〇 後  援 JR九州
   〇 プログラム
      講演1 講 師:国土交通省海事局外航課 課長補佐 楠山 賀英 氏
            テーマ:我が国のクルーズ振興における課題と方向性
      講演2  講 師:日本国際クルーズ協議会 副会長 糸川 雄介 氏
            テーマ:アジアにおける日本のクルーズの展望
      講演3  講 師:一般社団法人クルーズイズム 代表理事 久野 健吾 氏
            テーマ:クルーズの魅力と発信の重要性
   〇 参 加 者 73名

   〇 講演概要

 国土交通省海事局外航課課長補佐の楠山賀英氏から「我が国のクルーズ振興における課題と方向性」をテーマに、日本の出入国者数や訪日外国人クルーズ旅客、日本人クルーズ人口、さらに旅行の中のクルーズの位置づけについて紹介があった。訪日旅客の直近の動向や訪日クルーズ旅客の推移では、2024年6月までの訪日外国人旅客数が313万人と2019年の288万人を上回り、その中でも中国からの旅行者は66万人で2019年比75%となっている。
 2019年の中国人クルーズ旅客は全訪日クルーズ旅客の80.8%となっており、今後の訪日クルーズのカギは中国人旅行者の回復にあるとの指摘がありました。
 我が国のクルーズ振興の拡大に向けては、@クルーズ船のスムーズな寄港を促進させるインフラ整備、A観光資源・素材・コンテンツ開発、Bマーケティング・プロモーションの実施、C裾野の拡大、D日本船の供給量増加といった課題の他、オーバーツーリズム、や人財育成、二次交通、制度面での課題や寄港地の受入意識等の課題が存在する。
 これら課題の解決に向けて、国では、公共交通利用環境の革新等事業によるインフラ整備のほか様々な支援メニューを用意しているが、限定的な支援が多く、船社の意向や作業面の優先度から有効な対策(補助)となりきれていないとの見解が示されました。
 まとめとして、「クルーズ振興の課題は多岐に亘るが、官民連携の流れを重視し、物理的な裾野の拡大に向けて集中的に注力する。クルーズ市場は拡大基調にあることから、中長期的視野で乗船促進のコンテンツ、集客促進につながる販促のあり方などを業界団体と連携して講じたい」と述べられ講演を締めくくられました。
楠山講師2.png

 日本国際クルーズ協議会副会長の糸川雄介氏は「アジアにおける日本のクルーズの展望」〜邦船、外国船の取り巻く状況から、日本市場の展望を考察する〜と題して講演されました。
 最近ラグジュアリークラスのクルーズ船の寄港が増えてきていることから、2023年日本発着のシルバーシーの例をもとに、日本全体での評価について解説がありました。 
 寄稿地での市民交流、桜など日本らしい風景は評価されるが、英語ガイドのレベルや地方港でのコンテンツ不足は評価を下げる要因となっており、多言語対応(ガイド育成)が課題となっている。近年日本発着で、韓国3港へ寄港する商品も出てきており、日本国内で寄港地を競っていたが、海外寄港地との競合へと変化しているという指摘がありました。
 邦船を取り巻く環境として、現状2社2隻だが、各々新船の就航を控えており、また、新規参入も現れ始めている。日本人クルーズ市場の拡大が命題ではあるが、既存2社においては、海外インバウンドマーケットが全体の20%となっており、その集客も課題と言える。   
 一方、欧米船社はコロナ禍の影響で未だ負債を抱えているが、その一方で、2023年の世界のクルーズ人口は3,170万と2019年から200万人増加し、各社過去最大の予約数となっている。米系船社はアメリカを中心に配船しており、ラグジュアリー、エクスペディションの新規参入や新造船が増加。さらに独立系MSCクルーズやバイキングクルーズが躍進するなどの状況となっている反面、中国市場の回復は遅れている。
 このため、中国市場を中心にアジアへの配船減少などが課題となっている。インバウンド中心の状況下、その客層に飽きられてしまうと、配船が大幅減となる可能性もある。
 コロナ再開後の船社はニーズに応じた配船を強化しており、人気エリアへの配船となっている。この先、外国船を日本に配船させるためには何をターゲットとするのか、国籍(市場)別に考察し、今後の方向性を考え、より一層インバウンドのニーズに応じた配船が求められる。
欧米市場向け(プレミアムクラス・ラグジュアリークラス)には、寄港地観光の高質化、新たな魅力の開発が重要となってくる。アジア市場向け(カジュアルクラス)には、中国無くして寄港回数の増加は見込めないことから、オーバーツーリズムの課題へどう取り組むかがポイントとなる。日本市場向け(プリンセスやMSC)については、市場が拡大することで、通年型での配船が見込めることから、日本市場の拡大(アウトバウンド)が重要であり、そのことが外国船を日本に止めおくことにも繋がる。「今後、イン・アウトの双方向に向いた施策を講じて、継続・安定の配船を目指す」ことが重要と述べられました。
糸川講師2.png

 一般社団法人クルーズイズム代表理事の久野健吾氏から「クルーズの魅力と発信の重要性」と題して講演があり、クルーズの魅力について、@圧倒的な非日常、A高いコストパフォーマンス、B食事、Cエンターテイメント、D身軽さ、E交流、F絶景、G効率的な移動、H家族旅行、I教育、Jエクスカーション、K安心・安全といったキーワードを挙げられ、自身の乗船経験なども交えながら説明されました。
 (一社)クルーズイズムにおける活動概要等の紹介後、我が国におけるクルーズ旅客及び人口の年齢構成比をもとにしたターゲット設定や、情報発信の手段としてのSNSの効果的な活用方法等について、同協会での取り組み事例や実績をもとに説明があった。最後にクルーズ旅を広める活動を通して、日本のクルーズ業界を応援していきたいと述べられ、講演を締め括られました。
久野講師2.png

 令和5年3月より本格的に国際クルーズの運航が再開され、多くのクルーズ船が全国の港湾に寄港しています。クルーズ船の寄港は地方誘客・消費拡大という面で大きなポテンシャルを有していることから、今後も九州クルーズ振興協議会等とも連携して、情報発信に努めて参ります。

Posted by 九州運輸振興センター at 10:41 | 海事振興セミナー | この記事のURL

第26回海事振興セミナー(九州クルーズセミナー)開催のご案内[2024年07月09日(Tue)]
        第26回海事振興セミナー(九州クルーズセミナー)開催のご案内

 この度、九州クルーズ振興協議会と(公財)九州運輸振興センターは日本財団の支援と助成を受け、第26回海事振興セミナー(九州クルーズセミナー)を下記のとおり開催することと致しました。
 2023年のクルーズ船で入国した訪日外国人クルーズ旅客数は35.6万人と、2017年のコロナ禍前ピーク時の14%まで回復しました。また、2023年のクルーズ船(日本船、外国船)の寄港回数は、1,854回(2022年は日本船社 のみしかなく722回)で、2018年のコロナ禍前ピーク時の約63%まで回復しています。
 そうした中、コロナ5類移行後は、コロナ禍前(2016年〜2019年)と比較して、ラグジュアリー・エクスペディション船の寄港回数が増加傾向にあり、2023年に外国クルーズ船が寄港した港湾等のうち、29の港湾等で外国クルーズ船が初寄港となるなど、我が国のクルーズを取り巻く状況も変化してきています。
 クルーズ船の寄港は、地域経済や観光産業の回復に大きく貢献することが期待され、大都市圏のみならず地方部での経済効果も大きくなっています。本セミナーでは専門の講師をお招きし、我が国のクルーズ振興における課題のほかこれからのクルーズマーケット展望やクルーズの魅力等についてご講演頂きます。
 クルーズ船の寄港促進や新たな寄港地観光に取り組まれる方々はもとより、これを生かした地域活性化に取り組まれる方々にとって、今後の活動等のお役に立つ内容となっておりますので、皆様のご参加をお待ちしております。
 
                      記
     〇日  時 : 令和6年7月31日(水)14:20 〜 16:00
     〇会  場 : オリエンタルホテル福岡 博多ステーション3階「YAMAKASA」
                福岡市博多区博多駅中央街4−23 TEL 092−461−2091
     〇プログラム
          講演1 講 師:国土交通省海事局外航課 課長補佐 楠山 賀英 氏
                テ−マ:我が国のクルーズ振興における課題
          講演2 講 師:日本国際クルーズ協議会 副会長 糸川 雄介 氏
                テーマ:アジアにおける日本のクルーズの展望
          講演3 講 師:一般社団法人クルーズイズム 代表理事 久野 健吾 氏
                テーマ:クルーズの魅力と発信の重要性
     〇申  込  お電話をいただくか、または当センターホームページのお問合せフォーム
           にて、通信欄に「セミナー参加希望」と明記して、会社名・住所・電話番
           号・参加される方の役職名及びお名前を記入の上、令和6年7月24日         
          (水)までに、お申し込みください。(参加無料、セミナー参加人員50名)

★お問合せ先
  公益財団法人 九州運輸振興センター
  TEL 092-451-0469  FAX 092-451-0474

Posted by 九州運輸振興センター at 14:22 | 海事振興セミナー | この記事のURL

第25回海事振興セミナー開催報告[2023年12月27日(Wed)]
                第25回海事振興セミナー開催報告

 令和5年11月10日(金)、福岡市において第25回海事振興セミナーを開催しましたので、その概要を報告致します。

   〇 日  時 令和5年11月10日(金) 13:30 〜 15:30
   〇 会  場 リファレンス駅東ビル2階T会場
   〇 主  催 公益財団法人 九州運輸振興センター
   〇 後  援 JR九州

   〇講演
   テーマ:内航海運業界のミライを考える」
   講 師:一般社団法人内航ミライ研究会
       代表理事 浦山 秀大 氏
       専務理事 曾我部 公太 氏
   テーマ:「一般社団法人海洋共育センターの活動について」
   講 師:一般社団法人海洋共育センター
       副理事長 村中 克範 氏

   〇 参 加 者 69名

≪概要≫
 内航海運は、国内貨物輸送の約4割、また、鉄鋼、石油製品、セメント等の産業基礎物資輸送の約8割を担い、我が国の国民生活や経済活動を支える基幹的輸送インフラとして重要な役割を果たしています。また、24年問題などトラック運転手不足等の中でモーダルシフトの受け皿としての役割も期待されている一方で、内航海運自体の地球環境問題への対応やDX活用等による運航の効率化・安全の追求も必要とされています。

 本セミナーでは、まず、一般社団法人内航ミライ研究会から「内航海運業界のミライを考える」と題して、内航海運業界特有の課題解決に向け船舶業界ほか異業種・異分野の方々と一体となって研究・取り組みを進めているSIM事業(省エネ・CO2削減と労働負荷低減を両立する次世代型貨物船の開発等)などについて、紹介がありました。

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 続いて、一般社団法人海洋共育センターからは、「一般社団法人海洋共育センターの活動について」と題し、船員不足問題の解消に向け、民間完結型6級海技士短期養成課程の周知、それに連動した社船実習船の拡充など、共に学び育つことを目指し、多くの船社が連携して取り組みを進めているとの報告がありました。

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 昨今、海事産業分野においても労働環境の改善、簡素化、合理化、安全性の向上、環境負荷の低減などへの対応が求められている。電動化、自動化、遠隔化といったデジタル技術の活用により船舶での労働環境が今後どの様に変わっていくのか。また、将来にわたって海事産業分野を支えていく船員の確保、育成のためには、何をなすべきなのかなど、具体的な事例を交えながら説明いただきました。

 今回ご講演いただいた内容は、内航海運の将来に向けた重要な取り組みであり、内航海運及び関連業界におけるまさに連携・協働の輪を如何に広げていくかがキーになると想定されます。内航船主や出身船員も多く、造船業の盛んな船どころの九州にとって大変貴重な内容であり、参加された皆様方にとっても、船員の働き方改革実現のほか地球環境問題への対応等、海事産業分野が抱える課題の解決に向けた取り組みの参考になったのではないかと考えています。

Posted by 九州運輸振興センター at 13:25 | 海事振興セミナー | この記事のURL

第25回 海事振興セミナー開催のご案内[2023年10月18日(Wed)]
             第25回 海事振興セミナー開催のご案内

 拝啓 時下益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。
 平素より、当センターの業務に関しまして格別のご高配を賜り厚くお礼申し上げます。
 このたび当センターにおきましては、日本財団の助成と支援を受け、第25回海事振興セミナーを下記のとおり開催することとなりました。
内航海運は、国内貨物輸送の約4割、また、鉄鋼、石油製品、セメント等の産業基礎物資輸送の約8割を担い、我が国の国民生活や経済活動を支える基幹的輸送インフラとして重要な役割である一方で、船員不足、若手船員の確保、IT化、環境問題への対応など課題は多岐に亘っています。
 本セミナーでは、船主・オペレーター・荷主等が課題解決に向けて協力し、実際に建造したコンセプトシップで技術開発の基礎研究を行っている(一社)内航ミライ研究会と、船員の仕事の質の向上とやりがいを創造するために船員の育成を行っている(一社)海洋共育センターから講師を招きご講演を頂きます。
 つきましては、海事関係者はもとより多数の関係の皆様のご参加を賜りますようご案内申し上げます。また、本セミナーにご関心をお持ちの方々に広くご周知頂ければ幸いでございます。
 なお、会場の都合等がございますので、参加をご希望の方はお電話をいただくか、または当センターホームページのお問合せフォームにて、通信欄に「海事振興セミナー参加希望」と明記して、会社名・住所・電話番号・参加される方の役職名及びお名前を記入の上、11月6日(月)までにお申込み下さい。

                         記

       〇日 時   令和5年11月10日(金)13時30分〜15時30分
       〇会 場   リファレンス駅東ビル2階T会場
              福岡市博多区博多駅東1−16−14
       〇講 演  テーマ:「内航海運業界のミライを考える」
              講 師:一般社団法人内航ミライ研究会 
                  代表理事 浦山 秀大 氏
                  専務理事 曽我部 公太 氏
              テーマ:「一般社団法人海洋共育センターの活動について」
              講 師:一般社団法人海洋共育センター
                  副理事長 村中 克範 氏

Posted by 九州運輸振興センター at 17:03 | 海事振興セミナー | この記事のURL

第24回海事振興セミナー(九州クルーズセミナー)開催報告[2023年08月03日(Thu)]
               第24回海事振興セミナー開催報告

 令和5年7月25日(火)、福岡市において第24回海事振興セミナーを開催しましたので、その概要を報告致します。なお、今回の海事振興セミナーは、九州クルーズ振興協議会との共催として、同協議会総会の後に「九州クルーズセミナー」として開催致しました。

     〇 日  時 令和5年7月25日(火) 14:20 〜 16:00
     〇 会  場 福岡合同庁舎 新館7階 九州運輸局 海技試験場
     〇 主  催 公益財団法人九州運輸振興センター 九州クルーズ振興協議会
     〇 後  援 JR九州
     〇 プログラム
       @基調講演
        テーマ:新気候体制下のクルーズ観光と観光戦略−量から質への転換−    
        講 師:中村学園大学流通科学部流通科学科 准教授 前嶋了二氏
       Aパネルディスカッション
        テーマ:持続可能で地域活性化につながるクルーズ船の受け入れとは
        コーディネイター 大阪大学国際公共政策研究科長・教授 赤井伸郎 氏
        パネリスト
         中村学園大学流通科学部流通科学科 准教授 前嶋了二氏
         福岡市観光コンベンション部クルーズ課長 冨永誠治氏
         長崎県クルーズ振興協議会 事務局長 太田勝也氏
         鹿児島県観光・文化スポーツ部PR観光課 参事 長友洋子氏
     〇 参 加 者 61名
     〇 資  料 @新気候体制下のクルーズ観光と観光戦略−量から質への転換−
            A九州クルーズセミナーパネルディスカッション

全体.jpg

〇 講演概要
【国際クルーズ市場の動向】
 主要国のクルーズ利用者数の回復状況について見ると、2019年は29.7万人であったが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、2020年5.8万人、2021年は4.8万人と大きく減少していたが、クルーズ船の運航再開により、2023年には31.5万人とコロナ前を上回る見込み。
 2019年から2022年にかけての主要国のクルーズ利用者数の回復状況は、世界的な旅行需要の高まりを受けて復調している。こうした中、中国の国際クルーズが順次再開され、ロイヤルカリビアン社も来年春には中国へ配船する計画。   
クルーズ船の建造も活発になってきており、2023年から2028年までの6年間で67隻が発注されており、2023年19隻、2024年31隻が就航予定。中でも高級小型旅客船、エクスペディション船の市場が好調であるとの紹介がありました。

【新気候体制と高級クルーズ市場】
 現在、地球温暖化等により全地球規模で環境破壊危機にさらされている。第6大絶滅期突入との研究結果もあるなど、人類の活動が地質や生態系にも明確な影響をもたらしている。世界気象機関(WHO)の報告では、気温上昇は66%の確率で2027年までに1.5度を超えるといった指摘もあり、最近の気候変動が地球環境に与える影響は思ったよりも悪いとの懸念が示されました。
 また、そうした中で観光産業が与える様々な影響についても触れ、最近では、クルーズ関連の水質汚染や大気汚染、オーバーツーリズム(観光公害)に対する懸念も高まっており、クルーズ観光を含む観光産業にも厳しい目が注がれている。こうした環境問題への対策のありようによっては、今後のクルーズ産業の存続にも影響するのではないかとの指摘がありました。

【長期的観光政策におけるクルーズ観光の役割 −量から質へ− 】
 2023年から2028年にかけて5万トン未満の小型高級船及びエクスペディション船が24隻建造される予定となっており、全新造船の35.8%を占める。また、環境対策面から33隻(全建造船の49%)に代替エネルギーでの運航機能が装備される見込みである。我が国へのラグジュアリー客船の寄港回数も増えてきており、コロナ前のデータではあるが、2018年の72隻から2019年の177隻と約2.5倍に増加。地方港や小規模港への寄港も増え、初寄港地も前年比318%となるなど大幅に増加しているとの報告がありました。
小型高級客船及びエクスペディション船の乗客は、欧米中心の富裕層・知識層の方が多く、彼らの知的好奇心、本物志向により、このような船舶が市場に投入される要因の一つとなっている。自然や歴史、文化、体験など高付加価値素材への指向性が高いという特徴があり、最近ではこうしたニーズに応えるため、大型客船が入れない海域や港湾をあえて狙った旅行商品やチャーター運航なども増加しているとの紹介がありました。
 このような船舶の観光地へのメリットとして、高学歴、知的好奇心旺盛な富裕層が訪れることで、知名度・観光地としての価値が向上し、地域文化・自然・歴史の適切な商品化が期待でき、観光資源のブラッシュアップにも繋がる。また、リピーターも多く、船内での充実した事前学習とガイドを提供することで、持続可能な観光に向けた社会的ベクトル(サスティナブルツーリズムの導入、プラスチックの不使用、再生エネルギー利用等)にも応えられるといった点などが挙げられました。

前嶋講師.jpg

【高質のクルーズ客受入と地域に期待される変化】
 クルーズ船の寄港地関係者から「富裕層のはずなのに経済効果が小さい」といった悩みを聞くが、それは、乗客が「ほしい」と思う商品がない。或いは「買い物」事態がクルーズ観光の動機ではないということに留意する必要がある。高教育・高収入の乗客は、価値あるものにしか金を使わない。高付加価値の商品はあるが、価値が理解できるまで情報提供できていない。価値を理解するまでの時間が提供できていないといったようなことが挙げられるのではないか。
 それではどうすればよいのかということになるが、高級クルーズ客は、本物志向であり、また、志向も多様化してきていることから、地域の価値を理解してもらえるよう、日常のプロモーション活動を強化すること。船内で歴史的価値や文化的価値について事前にじっくりと時間をかけて情報提供すること。伝統工芸品などの高付加価値商品に関する体験をツアーに組み込んで理解を図ること。乗客のニーズについて、正しい理解が得られるよう調査を行うことの重要性について説明があり、これらに加え、市場の拡大を見据え、他船社の寄港や他の観光商品への波及など長期的な効果や社会的及び教育的効果、新しい観光価値の創造についても配慮のうえ、「自分たちの地域に合った地域経営と観光戦略の中で正しいクルーズを選択していただきたい」との言葉で締めくくられました。

パネルティスカッション.jpg

 今回の海事振興セミナーは、九州クルーズ振興協議会メンバーの一部の方々に会場参加いただき、クルーズ振興等の関係者61名が参加されました。

Posted by 九州運輸振興センター at 16:58 | 海事振興セミナー | この記事のURL

第23回海事振興セミナー(九州クルーズセミナー)開催報告[2022年08月29日(Mon)]
          第23回海事振興セミナー(九州クルーズセミナー)開催報告

 令和4年7月28日(木)、福岡市において第23回海事振興セミナーを開催しましたので、その概要を報告致します。
 なお、今回の海事振興セミナーは、九州クルーズ振興協議会との共催として、同協議会総会の後に「九州クルーズセミナー」として開催致しました。

 ○ 日  時 令和4年7月28日(木) 14:20 〜 16:00
 ○ 会  場 TKPガーデンシティ博多新幹線口4−A
 ○ 主  催 公益財団法人 九州運輸振興センター、九州クルーズ振興協議会
 ○ 後  援 JR九州

 ○ 講  演
      テーマ@ Withコロナ時代のクルーズ振興
      講 師 大阪大学大学院 国際公共政策研究科長・教授  赤井 伸郎 氏
      テーマA 日本船クルーズの現状及び今後について
      講 師 商船三井客船 営業グループ グループリーダー 松本 士郎 氏
      テーマB 外国船運航再開に向けた取組について
      講 師 日本国際クルーズ協議会 副会長 糸川 雄介 氏
       
 ○ 参 加 者 96名
 ○ 資  料 @Withコロナ時代のクルーズ振興
        A日本船クルーズの現状及び今後について
        B外国船運航再開に向けた取組について

 ○ 講演概要
【Withコロナ時代のクルーズ振興】
 カジュアルクルーズは、規模拡大による一人当たりのコスト減、船の閉塞空間による安全性の確保などの魅力で世界的にヒットしてきた。しかし、コロナによる行動制限が逆効果となり苦しい状況となっている。環境問題・SDGsなどこれまでと違ったコスト増の中でもクルーズを牽引するアメリカを中心に一時回復しつつあったが、ウクライナ・ロシアの問題などの国際情勢や燃料高でのコストアップなどクルーズ業界では逆境が続いている。しかし今後、ICT化など革新的なアイデアによる飛躍的なイノベーションが進めばこの逆境は乗り越えられると考える。新しいことを求め挑戦していくことが重要だが、この先も感染症対策ガイドラインのアップデートなどは不可欠となる。クルーズでは寄港地それぞれの魅力、船ならではの効率的な島めぐり、限られた安全空間などポテンシャルは無限大であり、新しいITイノベーションに挑戦しやすい環境でもある、とクルーズ業界の直面する状況と今後の取組への期待が説明されました。

 赤井講師写真.png

約2年間クルーズの受け入れができてない上、関係者の異動等で受け入れの知識・経験の引継ぎがなされていない。港・寄港地観光先での受け入れにおいて意思疎通ができない、関係者の役割分担が決まっていない、コスト負担が決まっていないなどの課題が山積。関係者間で情報共有し協議できる仕組みをつくることが重要となる、そのための事例として約7年前からクルーズ客船誘致による地域活性化に向けた情報共有の取組みの紹介がありました。

 最後に、国際クルーズは敷居が高いので、まずは手軽なクルーズ体験の機会を創出する。フェリーでの洋上体験やフェリーチャーターなど市民クルーズで地域住民にクルーズの魅力を知ってもらう。特に九州・沖縄地域は多くの航路が存在することからクルーズコースのポテンシャルは高く、クルーズで島々を回るコースを実際に構築・発信し、地域住民に楽しんでもらう。このような経験を重ね、将来国際クルーズにもチャレンジしてもらえればクルーズ振興につながるだろうと、まとめられました。

【日本船クルーズの現状及び今後について】
 日本船クルーズは、1989年「ふじ丸」により始まり、日本籍船3隻が運航、60〜70歳代の日本の富裕層が主要顧客層で、1泊5〜8万円のプレミアムからラグジュアリーが市場であったが、2020年2月に横浜港で新型コロナによる事案が発生し、運休となった。その後再開に向け、検温・スクリーニング、食事の提供方法、寄港地のバスツアーの定員対策やPCR検査の実施、濃厚接触者アプリ導入、全室に空気清浄機設置、抗菌フィルター導入などの設備投資、環境衛生管理者の取得などの対策を行い2020年10月にはクルーズが再開した。配船に関しても21年度までは国内のみだったが、今年度からは外航クルーズが開催の予定となっている。寄港地も大きな港から現在は離島などにも寄港、泊数も3泊4日から開始し徐々に増やし、今は最長で47泊。定員も4割の200名から開始し、隔離部屋10%を除き9割まで販売している、などの現況が報告されました。

 松本講師写真.png

 商品の企画販売では、泊数、寄港地、船内運営等のしばりがあり、寄港地においても祭りなどの開催できないなど厳しい状況だが、お客様に楽しんでもらうために花火を上げる、シェフが目の前で調理するなど創意工夫を心掛け、港湾関係者とも連携をしっかりとるようにした。これにより当初、WEB系代理店からの送客が多かったがリピーターの創出となり、現在では長い舶数も含め9月まで完売、それ以降も博多発着は好調な状況となっている、との報告がなされました。

 最後に、カイドラインの改訂に伴い、感染症対策の見直しや船内運営の見直しに努め、今後のチャータークルーズへの対策を行う。また、港湾とのパートナー関係を互いに認識しあい連携していく。さらに増加の予想されるインバウンドなどのニーズに応えるために、日本船らしいきめ細かなサービスなどの戦略に取組む。現在を乗り切ることから、ゼロコロナに向け前進するためには、関係者との協力が不可欠である、と締めくくられました、

【外国船運航再開に向けた取組について】
 国際クルーズ船の日本発着・寄港を活性化し日本におけるクルーズ振興や地方再生に寄与することを目的に、2021年4月に「日本国際クルーズ協議会」が設立された。日本に事務所を置くのは、外国クルーズ船社8社9ブランドの正会員、さらに準会員で構築される外国のクルーズ商品販売総代理店、旅行会社、船舶代理店、ランドオペレーター29社となっている。2022年に日本発着国際クルーズを再開、2024年までにクルーズ人口を2019年同等比(35万人)まで復活することを目標としている。現在、クルーズ再開に向け政府と港湾管理者が連携し運航再開に向けた共通手順の整備、港湾管理者との意見交換などを行い、実働は広報委員会、オペレーション部門など5部門の体制であるが、現状ではクルーズ再開ワーキンググループ活動が始まっていることが説明されました。

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 2020年3月全世界で運航中止になった国際クルーズは、2020年6月ノルウェーでの国内クルーズが開始され、8月にイタリア・ドイツ、10月に日本、12月にシンガポールと順次再開されたが、その地域住民のみを対象とした国内クルーズだった。2021年5月に最大の市場である北米がスタートしクルーズブーム再来となったが、感染対策の同じレベル地域での運航、乗客定員を削減しての運航となった。現在は、北米、南米、欧州、中東、オセアニアで国境を跨ぐクルーズが再開されているが、日本、シンガポールなどアジアでは国内クルーズに限られている(今月からシンガポール/マレーシア間が再開)。国際クルーズは国境を越えて移動することが大きな魅力であるが、現状アジアでは国境を跨ぐクルーズの再開は遅れている。このように外国船社の運航状況と再開に向けた動きの説明がありました。

 国際クルーズ関係者は日本での国際クルーズの1日も早い再開を願っているが、@新たな外航クルーズ感染予防対策ガイドラインの作成、Aカボタージュ規制、B現在の法制度では通常の検疫が適用される水際対策では、検疫法及び国内感染症法にも続く分類のルールが最大の課題となっている。感染対策は国により異なるため日本の対策との乖離が大きい。ここをどう乗り越えていくか厚生労働省等との協議を継続している。また、2020年10月での日本での国際クルーズ再開が期待されたが、日本を含むアジアは受け入れ基準が厳しいため遅れている。しかしアメリカ・ヨーロッパ市場が動き出したことで世界の動静が変わり、日本でも早急に再開しなければ、クルーズ市場に出遅れるとの危機感がある、など日本での国際クルーズ再開の見通しの説明がありました。

 最後に、運航に向けた感染対策は、基本的には日本船社の基準で外国船社にも行っている。船内に持ち込まないための「ワクチン接種や事前の検査」、もし持ち込んだ場合には「感染拡大をさせない」、「発生時の港の機関との緊急時対応」、「感染地域への寄港を避け、観光客の現地での管理」、「定期的検査、上陸時の管理など乗組員のリスク管理」の5つの柱で行っている。また、各国の感染対策が微妙に違う場合は合わせ実施することが重要となる。ワクチン接種も当初は義務付けだったが徐々に緩和され、スクリーニング、寄港地管理なども緩和となり、感染対策のハードルは高かったが少しずつ低くなっている。地域住民に感染対策をきちんと説明することにより、国際クルーズの再開に向けた機運を高めていきたいと締めくくりました。

 今回の海事振興セミナーは、九州クルーズ振興協議会メンバーの一部の方々に会場参加いただき、その他の方々はWEBでの講聴となり、クルーズ振興等の関係者96名が参加されました。

Posted by 九州運輸振興センター at 14:28 | 海事振興セミナー | この記事のURL

第23回海事振興セミナー(九州クルーズセミナー)開催のご案内[2022年07月22日(Fri)]
        第23回海事振興セミナー(九州クルーズセミナー)開催のご案内

 この度、九州クルーズ振興協議会と(公財)九州運輸振興センターは日本財団の支援と助成を受け、第23回海事振興セミナー(九州クルーズセミナー)を下記のとおり開催することに致しました。
 九州へのクルーズ船の寄港回数は2017年までは順調に増加し、その後、中国クルーズ市場の急拡大に対応した各船社の配船が急増した結果、採算性の悪化等により寄港回数が減少傾向にありました。さらに2020年に入り新型コロナウイルスの影響により急激に減少し、一時は各船社ともクルーズ船を休止する状況となっていました。
 しかし、2020年秋からは「新しい生活様式」での経済活動に対応し、「外航クルーズ船事業者の新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」が策定され、それを踏まえた国内クルーズから徐々に運航が再開されています。
 このような状況下、九州におけるクルーズ客船誘致活動の取組みに寄与できるよう、専門の講師をお招きし、クルーズの再開に向けた情勢等を講演頂くことに致しました。
 本セミナーは、クルーズ船寄港誘致に取組まれる方々を始め関係者の皆様にとって、今後の活動等のお役に立つものと確信しております。
 なお、会場の都合で講演はオンライン配信のみとさせていただきます。業務ご多忙の折ではございますが、多くの方に聴講頂きますようご案内申し上げます。

                      記
        〇日  時 :令和4年7月28日(木)14:20 〜 16:00
        〇プログラム:テーマ@Withコロナ時代のクルーズ振興(仮)
                講師:大阪大学 国際公共政策研究科長・教授 赤井伸郎氏
                テーマA日本船クルーズの現状及び今後について
                講師:商船三井客船株式会社 営業グループ
                             グループリーダー 松本士郎氏
                テーマB外国船運航再開に向けた取組について
                講師:日本国際クルーズ協議会 副会長 糸川雄介氏
        〇参加申込 :下記のURLまたはQRコードより7月27日(水)までに
                お申し込み下さい。
                 URL:https://forms.gle/pyyPvqGP5EXAjifYA

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Posted by 九州運輸振興センター at 15:01 | 海事振興セミナー | この記事のURL

海上ブロードバンドサービスの最新動向に関する特別セミナー開催報告[2021年12月21日(Tue)]
 「海上ブロードバンドサービスの最新動向に関する特別セミナー」を開催しました

 令和3年12月9日(木)、福岡市において「海上ブロードバンドサービスの最新動向に関する特別セミナー」を九州運輸局、九州旅客船協会連合会、九州地方海運組合連合会との共催により開催しましたので、その概要を報告致します。
(参加人数:会場55名、オンライン視聴68名)

@「ソフトバンクのNTN構想」
講師:ソフトバンク株式会社 サービス企画技術本部 部長 押田祥宏氏

 通信は無くては困る社会インフラであるが、世界の人口の半数がインターネットを利用できない環境にある。ソフトバンクでは、新しい通信技術を使って情報格差の解消と産業の再定義を図るため、非地上型通信として空(宇宙)を使う「ソフトバンクNTN構想」を進めている。
現在、携帯基地局が国内の通信の99%をカバーしているが、都市部から郊外さらには僻地、空、海の地球全体の通信をカバーしようとするもので、これまで使われていなかった高度20kmの成層圏に一度飛ばすと半年程度ソーラーパワーで飛び続ける無人航空機を浮かべる「HAPS MOBILE」、高度1,200kmの低軌道に約600機の小型衛星を配置し高速ブロードバンド対応の「One Web」、高度36,000kmの通常の静止衛星を使ったナローバンドでIOTに特化し手頃で非常に使いやすい「skylo」で構成し、これらの回線を提供することによって各産業のDX化につなげていく。
特に船内における通信環境の改善に大きな影響のある低軌道衛星システム「One Web」の進捗状況では、2022年夏頃には予備機も含めた648機の打ち上げが完了し、2021年末頃から高緯度地域での商用サービスを順次開始予定で、日本でも2022年夏頃からサービスが始められる予定。
海事産業への活用では、現在は沿岸10kmを超えると通信が難しくなるが、船の上からでも快適なコミュニケーションが可能となるなど船員の働きやすい環境の実現、AIやIot、データ活用により業務の効率化の実現につなげることにより、陸上と変わらない環境を目指すとしており、また、自動運航やAIの活用などビジネス向けには高品質な衛星回線と福利厚生などコスト面を考えた割安な衛星回線を利用目的に応じてバランス良く提供して行きたいなど詳細な説明がありました。
最後に、これまで成層圏、宇宙空間活用の可能性が言われ実際に取り組まれてきたが上手くいった事例がなかったこと、打ち上げ費用が高く小型の衛星が作れなかったなど課題であったものの、現在ではそうした課題も改善されてきており宇宙空間などを使った通信技術が進んできたことで、これからは格段に利用しやすい通信網になってくる。海運事業においても、こうした先端技術を活用いただくことで、船員の福利厚生やビジネスの高度化に寄与できるよう協力していきたいとまとめられました。


A「カーボンニュートラル推進に向けた気象海象データの活用について
 〜POLARISによる航海支援と事後評価〜
講師:株式会社フォーキャスト・オーシャン・プラス 海洋情報部 部長 山形宏介氏
    一般財団法人日本気象協会 社会・防災事業部 営業課 グループリーダー 佐藤淑子氏

 世界の海の海流・水温・塩分濃度について、海表面から水深6500mの海中を準全球海洋予測モデルの出力の一例が紹介され、日本近海の海水面は過去30年の平均値と比較し大幅に上昇しており、水産資源確保に大きな異変が生じている。僅か1°Cの水温変化であっても、水産業に大打撃となりつつあることから、日本政府は2021年「気候変動の影響(温暖化)を考慮に入れた」水産政策の推進への転換を行っている。海洋の蓄熱量は大気の1000倍に及び、僅かな海水温の変化でも全地球規模の異常気象の発生に対して大きな影響を与えており、近年、九州で頻発する線状降水帯発生の一因にもなっている。温暖化の影響で漁業者の海に対する従来の「常識」が通用しなくなっており、そうした中で、気象海象データの活用が気候変動に対する「適応策」として注目されており、今後各地で進むと見込まれる。さらに併せて「緩和策」としてのカーボンニュートラルの推進の必要性についてもわかりやすく説明されました。

 次に、船舶に対して気象、海象予測に基づいた「最適航路」を提供し、航海の安全や経済運航をサポートする「ウェザールーティング」についての説明がありました。高精度・高解像度で気象海象予測や船舶推進性能の推定などの要素を使って、航海中に遭遇する気象や海象を予測し、安全性や快適性、燃料消費量、最短時間など指標に基づいた「最適航路」を提供するものとなっている。近年は地球温暖化の影響で、温室効果ガス排出規制対策としてハード対策とソフト対策が必要だが、「ウェザールーティング」はソフト対策となる。特に内航海運では省エネ格付け制度の運用が始まったことから、これまで以上に対応が求められる重要なサポートシステムになると考える。
内航船への対策としては、10年程前からNEDOの助成事業で「内航船の環境調和型運航計画支援システム」を協同で開発した。当初はシステム導入の準備に要する時間や費用、削減効果の把握が困難といった課題があったが、評価手法等を確立したことにより2012年からは「ECoRO」として実用化システムを確立し、高解像度、高精度な気象海象予測(海上風、波浪、海潮流)を利用した船舶の燃費削減航海支援など精度の高いサービスの提供を行っている。なお、システムの搭載にあたっては、租税特別措置や運航効率化実証事業補助金制度もある。
さらにサービス内容を改善し、「気象海象予測データ」、「航海計画支援サービス」を提供する「POLARIS」も昨年度より提供しており、「気象海象予測データ」は地球全球では最大30日先まで、日本近海は1日8回更新の4日先まで提供している。FOPの海流データとで上手く使えば省エネ効果が大きいなど説明があり、最後に実際の導入した船舶での事例紹介がありました。

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 今回のセミナーでは、技術進歩がめざましい海上通信の分野に触れ、船内サービスの向上や運航の効率化のみならず、船員の労働環境の改善や定着率の向上においても、大変有効なツールになるものと感じました。今後、海運業界のさらなる振興・発展に資することが期待されます。

Posted by 九州運輸振興センター at 11:58 | 海事振興セミナー | この記事のURL

第21回海事振興セミナー 開催報告[2021年04月30日(Fri)]
−第21回海事振興セミナーを開催しました−


(公財)九州運輸振興センターでは、日本財団の支援と助成による「第21回海事振興セミナー」を、九州運輸局、九州地方海運組合連合会との共催により、令和3年4月21日(水)に福岡市において開催いたしました。

 講演ではまず、国土交通省海事局の秋田未樹内航課長から「令和の時代の内航海運に向けて」をテーマに、内航海運の現状や内航海運暫定措置事業が令和3年8月に事業終了することなどの説明に続き、2020年9月に公表された「令和の時代の内航海運に向けて(中間とりまとめ)」を全体像として、荷主のニーズに応え、内航海運の安定的輸送を確保するため、「労働時間管理の適正化、多様な働き方の実現」、「船員の労働時間を考慮した運航スケジュール設定などオペレーターの関与」、「遠隔監視を前提に船舶の定期検査を簡素化」などを総合的に実施することを取りまとめたと説明されました。
 この取りまとめを踏まえて、造船法、海上運送法、船員法などの法律は改正中で、事業基盤強化計画認定制度では生産性向上や事業再編等の支援、特定船舶導入計画認定制度では安全・低環境負荷で船員の省力化に資する高品質な船舶の導入に支援が受けられ、内航海運業法改正では、荷主・オペレーターに船員の労務監理に係る配慮を求める仕組みを設け契約内容を「見える化」することで適正な運賃・用船料の収受につなげる。など説明され、各法律の施行時期は、公布後3月以内から2年以内となる見込みであることが説明されました。

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 次に、ITec Marin株式会社の石川和弥社長から「ITを活用した船員採用と人材育成の取組み事例」として、船員採用と人材育成の課題を整理するため、半年間に渡り船員や海運業者からヒアリングを行い現状把握した結果等を含め紹介があった。海運業界は社会的役割の大きさに比べて認知度が低く知られていない。特に船乗りや海運会社に就職を考える、中・高・大学生に対し、ITを活用し、業界の認知度向上に取り組んでいる。テーマは「わかりやすく」、「見やすく」、「面白くて」、「手軽」で、スマホで見られる動画に注目して発信していることなどが説明されました。

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 最後に、日本無線株式会社情報ビジネスグループの池山智道氏から「海運情報化時代のJRCの取り組み」として、船舶の安全・高効率化運航に向けて、船陸間通信、船内IoTサーバー、クラウドサービスなどデジタル化の基盤となるインフラの技術開発、「船の見える化」の取り組みとして、VDR、船内IoTサーバー、クラウドプラットフォームを活用した船内情報の収集、船舶情報の陸上への伝達と陸上での管理、陸の気象情報の船舶への提供、収集した船舶の機器情報をJRCで監視、蓄積データの解析を行い、通信でシステムアップデートを可能とするなどが説明されました。

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 今回のセミナーには、内航事業者、旅客船事業者をはじめ海事関係事業者55名及びオンライン視聴者77名に参加いただきました。
 参加者からは、内航海運の今後に動きが良く理解できた、船員の採用にあたって今後の方向性にヒントになった、長期的な視野では船の自動運行につながる話だ、など、参加された皆様には今後の取り組みなどに大変参考になる有意義なものとなりました。

Posted by 九州運輸振興センター at 19:02 | 海事振興セミナー | この記事のURL

第21回海事振興セミナー 開催のご案内[2021年03月31日(Wed)]
第21回海事振興セミナー 開催のご案内

 (公財)九州運輸振興センターでは、九州運輸局、九州地方海運組合連合会との共催により、第21回海事振興セミナーを下記のとおり開催することに致しました。

 我が国の国内物流の中で大きな社会的役割を担っている内航海運業界は、船員の高齢化と船員不足への懸念、脆弱な事業基盤や船舶の老朽化などの課題を抱えているといわれています。
 こうした状況を踏まえ、国土交通省では今後の内航海運のあり方について総合的に検討を行い、昨年9月に「令和の時代の内航海運に向けて」(中間とりまとめ)を公表しました。
 本セミナーでは、この中間とりまとめに盛込まれた具体的施策について、解説していただくとともに、取組事例として、「ITを活用した船員採用・人材育成」及び「海運情報化時代へのJRCの取り組み」についてご紹介いただきます。
 内航海運業界など海事産業の今後の活動等に役立つものと確信しております。是非とも多くの皆様にご参加いただきたく存じます。


○日  時 : 令和3年4月21日(水)13:30 〜 15:30

○会  場 : オリエンタルホテル福岡 博多ステーション 3階
        福岡市博多区博多駅中央街4−23  TEL 092−461−2091
○講  演
   テーマ@  令和の時代の内航海運に向けて
           講師:国土交通省海事局 内航課長 秋 田 未 樹 氏
   
   テーマA  ITを活用した船員採用・人材育成の取組事例
           講師:ITecMarin株式会社 代表取締役社長兼CEO 石 川 和 弥 氏
   
   テーマB  海運情報化時代へのJRCの取り組み
           〜更なる安全・高効率運航の実現に向けて〜
           講師:日本無線株式会社 マリンシステム営業部
                情報ビジネスグループ 池 山 智 道 氏

○定  員 : 50名(参加無料) ★オンライン配信も併用します。

○参加申込 : 会場参加またはオンラインでの視聴希望の方は、令和3年4月16日(金)までに、
       下記のURLまたはQRコードよりお申込み下さい。    
       なお、オンライン視聴をご希望の方へは4月20日(火)午後以降に視聴用URLを
       メールにてご連絡します。

         https://forms.gle/Sp3zSgN7Lcgx3kT98

海事セミナー参加申込用QRコード_一般 (002).png

★お問合せ先
  公益財団法人 九州運輸振興センター
  TEL 092-451-0469  FAX 092-451-0474  

Posted by 九州運輸振興センター at 17:19 | 海事振興セミナー | この記事のURL

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