第64回九州運輸コロキアム「離島航路の現状と課題」開催報告[2022年12月13日(Tue)]
第64回九州運輸コロキアム「離島航路の現状と課題」開催報告
−離島航路の改善は離島住民との合意形成が不可欠−
令和4年10月24日(月)、福岡市において第64回九州運輸コロキアムを開催しましたので、その概要を報告致します。
〇 日 時 令和4年10月24日(月) 13:30 〜 15:00
〇 会 場 オリエンタルホテル福岡 博多ステーション 3階
〇 講 師 九州産業大学 地域共創学部 地域づくり学科 講師 行 平 真 也 氏
〇 テ−マ 離島航路の現状と課題
〇 参加者 92名(会場参加者41名、オンライン参加者51名)
〇 開催概要
大黒伊勢夫氏「九州運輸コロキアム等実行委員長」の主催者挨拶及び鈴木史朗氏「九州運輸局長」の来賓挨拶の後、行平真也氏「九州産業大学講師」による講演が行われました。
『講演』
離島航路は、本州・九州などの本土に附属する島である離島及び、離島と離島を結ぶ手段として全国に291の航路があり、離島住民の移動手段や物資の輸送を支えている。
陸上の多様な交通システムに比べて、離島への移動手段は航空路を除けば「船のみ」で、離島にとって船より大切な交通手段はなく、特に物資の輸送は航空路があっても船によるところが大きく、航路は島の生活に必要不可欠である。
このため国では「海上運送法」「離島航路整備法」「(旧)国内旅客船公団法」の制定により、離島航路の維持改善に努めてきた歴史がある。特に島民の生活のため航路確保維持は重要となってくる。そのため赤字航路である126航路の離島航路に対し運営費補助として、欠損見込額全体の1/2を補助し、住民の大切な移動手段として国等が支えていることが説明されました。

次に離島航路の現状として、離島の人口は年々減少傾向にあり、昭和50年は120万人であったが現在は半減しており、2019年4月では全国離島住民が約61万人となり、今は60万人を下回る状況にある。九州でも平成27年に31万人であったが現在30万人を下回っている。
離島航路は全国で291航路あり、全国の約30%の85航路が九州の航路となっている。またその内、国庫補助航路となっているのは全国126航路、九州では約40%の50航路が国庫補助航路となる中、島民生活を支えている。全国の国庫補助航路推移は横ばいが続くが、九州では最近4航路が補助航路として新たに指定されている。
補助航路の乗客数の推移は減少傾向であり、津久見市保戸島航路を事例として、島の人口減少は離島航路の乗客減に直結することが紹介されました。離島航路の現状は、深刻な少子高齢化、進学・就学に伴う人口減少による輸送人員の減少によるもので、航路運営事業者や地方公共団体にとって厳しい経営環境であり、航路の維持が困難となっている。しかし代替えの交通手段がなく、航路なしでは島民の生活が出来なくなることから廃止は絶対にできない。また、コロナ前は離島人口の減少分を観光客で補おうと観光振興に力を入れる島も多かったが、コロナ禍においては渡航自粛を呼びかける島も多く、利用者数の減少が著しく、事業者の経営はますます厳しくなっている状況が説明されました。
個別航路の事例では、北九州市の小倉〜藍島、馬島航路の新型コロナ感染症拡大初期の離島航路の状況として、地域の特徴を生かし観光客の利用が多い航路であったが、観光客への来島の自粛や親族などの帰省の自粛により利用者が4割まで減少した事例が紹介されました。
また、直近話題となったのは2022年10月に津久見市の保戸島航路が、民営から市営に転換を図った事例である。
マグロで有名な保戸島だったが、人口減少と相まって高齢化が進み、輸送実績も減少傾向であった。そうした中、2021年5月に経営者の高齢化と船員不足により、航路事業者が撤退を表明したため、2021年7月15日に津久見市は同航路の運航に係る新規事業者の公募を実施したが、応募する事業者がなく津久見市が市営(運航は以前からの会社に委託(2024年9月末まで))として運営することとなった。
航路運営に際しては、サービス基準の変更を行い、運航回数を「6往復/日」から「3往復/日」に減便、始発地を保戸島港から津久見港に変更した。しかし、2024年10月1日以降の運航体制は未定であることから、存続するために如何していくかが今後の課題であることが説明されました。
最後に、今後の航路維持のための方策として、観光などによる交流人口の増加への取組み、部分的なデマンド運航の導入、燃料費や修繕費など船舶にかかるコスト削減や船員不足など対応ができる可能性がある小型船舶の導入などが考えられる。しかし、航路によって状況が異なっていることから、これら航路維持のための方策が、どの航路にも適用できるわけではない。例えば、海域や定員によっては既存の船舶を小型船舶に置き換えることが困難な場合もある。さらに船員確保の問題も大きくなっており、多くの離島航路の始発地が離島側にあるため、離島に住まなければいけないという問題もある。
人口減少・少子高齢化において離島航路は厳しい状況に置かれているが、離島住民にとって欠かすことの出来ない交通手段であり、その維持・確保は最優先事項となっている。今後の航路改善に際しては、離島航路の最大の受益者である離島住民に対する丁寧な説明と合意形成が必要である。と締めくくられました。

−離島航路の改善は離島住民との合意形成が不可欠−
令和4年10月24日(月)、福岡市において第64回九州運輸コロキアムを開催しましたので、その概要を報告致します。
〇 日 時 令和4年10月24日(月) 13:30 〜 15:00
〇 会 場 オリエンタルホテル福岡 博多ステーション 3階
〇 講 師 九州産業大学 地域共創学部 地域づくり学科 講師 行 平 真 也 氏
〇 テ−マ 離島航路の現状と課題
〇 参加者 92名(会場参加者41名、オンライン参加者51名)
〇 開催概要
大黒伊勢夫氏「九州運輸コロキアム等実行委員長」の主催者挨拶及び鈴木史朗氏「九州運輸局長」の来賓挨拶の後、行平真也氏「九州産業大学講師」による講演が行われました。
『講演』
離島航路は、本州・九州などの本土に附属する島である離島及び、離島と離島を結ぶ手段として全国に291の航路があり、離島住民の移動手段や物資の輸送を支えている。
陸上の多様な交通システムに比べて、離島への移動手段は航空路を除けば「船のみ」で、離島にとって船より大切な交通手段はなく、特に物資の輸送は航空路があっても船によるところが大きく、航路は島の生活に必要不可欠である。
このため国では「海上運送法」「離島航路整備法」「(旧)国内旅客船公団法」の制定により、離島航路の維持改善に努めてきた歴史がある。特に島民の生活のため航路確保維持は重要となってくる。そのため赤字航路である126航路の離島航路に対し運営費補助として、欠損見込額全体の1/2を補助し、住民の大切な移動手段として国等が支えていることが説明されました。

次に離島航路の現状として、離島の人口は年々減少傾向にあり、昭和50年は120万人であったが現在は半減しており、2019年4月では全国離島住民が約61万人となり、今は60万人を下回る状況にある。九州でも平成27年に31万人であったが現在30万人を下回っている。
離島航路は全国で291航路あり、全国の約30%の85航路が九州の航路となっている。またその内、国庫補助航路となっているのは全国126航路、九州では約40%の50航路が国庫補助航路となる中、島民生活を支えている。全国の国庫補助航路推移は横ばいが続くが、九州では最近4航路が補助航路として新たに指定されている。
補助航路の乗客数の推移は減少傾向であり、津久見市保戸島航路を事例として、島の人口減少は離島航路の乗客減に直結することが紹介されました。離島航路の現状は、深刻な少子高齢化、進学・就学に伴う人口減少による輸送人員の減少によるもので、航路運営事業者や地方公共団体にとって厳しい経営環境であり、航路の維持が困難となっている。しかし代替えの交通手段がなく、航路なしでは島民の生活が出来なくなることから廃止は絶対にできない。また、コロナ前は離島人口の減少分を観光客で補おうと観光振興に力を入れる島も多かったが、コロナ禍においては渡航自粛を呼びかける島も多く、利用者数の減少が著しく、事業者の経営はますます厳しくなっている状況が説明されました。
個別航路の事例では、北九州市の小倉〜藍島、馬島航路の新型コロナ感染症拡大初期の離島航路の状況として、地域の特徴を生かし観光客の利用が多い航路であったが、観光客への来島の自粛や親族などの帰省の自粛により利用者が4割まで減少した事例が紹介されました。
また、直近話題となったのは2022年10月に津久見市の保戸島航路が、民営から市営に転換を図った事例である。
マグロで有名な保戸島だったが、人口減少と相まって高齢化が進み、輸送実績も減少傾向であった。そうした中、2021年5月に経営者の高齢化と船員不足により、航路事業者が撤退を表明したため、2021年7月15日に津久見市は同航路の運航に係る新規事業者の公募を実施したが、応募する事業者がなく津久見市が市営(運航は以前からの会社に委託(2024年9月末まで))として運営することとなった。
航路運営に際しては、サービス基準の変更を行い、運航回数を「6往復/日」から「3往復/日」に減便、始発地を保戸島港から津久見港に変更した。しかし、2024年10月1日以降の運航体制は未定であることから、存続するために如何していくかが今後の課題であることが説明されました。
最後に、今後の航路維持のための方策として、観光などによる交流人口の増加への取組み、部分的なデマンド運航の導入、燃料費や修繕費など船舶にかかるコスト削減や船員不足など対応ができる可能性がある小型船舶の導入などが考えられる。しかし、航路によって状況が異なっていることから、これら航路維持のための方策が、どの航路にも適用できるわけではない。例えば、海域や定員によっては既存の船舶を小型船舶に置き換えることが困難な場合もある。さらに船員確保の問題も大きくなっており、多くの離島航路の始発地が離島側にあるため、離島に住まなければいけないという問題もある。
人口減少・少子高齢化において離島航路は厳しい状況に置かれているが、離島住民にとって欠かすことの出来ない交通手段であり、その維持・確保は最優先事項となっている。今後の航路改善に際しては、離島航路の最大の受益者である離島住民に対する丁寧な説明と合意形成が必要である。と締めくくられました。
