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九州経済圏における交通及び観光の振興と近代化を図るための事業を行い、もって地域経済の均衡ある発展に寄与し、あわせて民生の安定に資することを目的として、調査研究事業、施設整備事業、その他広報啓発等事業を柱に活動しています。

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第23回海事振興セミナー(九州クルーズセミナー)開催報告[2022年08月29日(Mon)]
          第23回海事振興セミナー(九州クルーズセミナー)開催報告

 令和4年7月28日(木)、福岡市において第23回海事振興セミナーを開催しましたので、その概要を報告致します。
 なお、今回の海事振興セミナーは、九州クルーズ振興協議会との共催として、同協議会総会の後に「九州クルーズセミナー」として開催致しました。

 ○ 日  時 令和4年7月28日(木) 14:20 〜 16:00
 ○ 会  場 TKPガーデンシティ博多新幹線口4−A
 ○ 主  催 公益財団法人 九州運輸振興センター、九州クルーズ振興協議会
 ○ 後  援 JR九州

 ○ 講  演
      テーマ@ Withコロナ時代のクルーズ振興
      講 師 大阪大学大学院 国際公共政策研究科長・教授  赤井 伸郎 氏
      テーマA 日本船クルーズの現状及び今後について
      講 師 商船三井客船 営業グループ グループリーダー 松本 士郎 氏
      テーマB 外国船運航再開に向けた取組について
      講 師 日本国際クルーズ協議会 副会長 糸川 雄介 氏
       
 ○ 参 加 者 96名
 ○ 資  料 @Withコロナ時代のクルーズ振興
        A日本船クルーズの現状及び今後について
        B外国船運航再開に向けた取組について

 ○ 講演概要
【Withコロナ時代のクルーズ振興】
 カジュアルクルーズは、規模拡大による一人当たりのコスト減、船の閉塞空間による安全性の確保などの魅力で世界的にヒットしてきた。しかし、コロナによる行動制限が逆効果となり苦しい状況となっている。環境問題・SDGsなどこれまでと違ったコスト増の中でもクルーズを牽引するアメリカを中心に一時回復しつつあったが、ウクライナ・ロシアの問題などの国際情勢や燃料高でのコストアップなどクルーズ業界では逆境が続いている。しかし今後、ICT化など革新的なアイデアによる飛躍的なイノベーションが進めばこの逆境は乗り越えられると考える。新しいことを求め挑戦していくことが重要だが、この先も感染症対策ガイドラインのアップデートなどは不可欠となる。クルーズでは寄港地それぞれの魅力、船ならではの効率的な島めぐり、限られた安全空間などポテンシャルは無限大であり、新しいITイノベーションに挑戦しやすい環境でもある、とクルーズ業界の直面する状況と今後の取組への期待が説明されました。

 赤井講師写真.png

約2年間クルーズの受け入れができてない上、関係者の異動等で受け入れの知識・経験の引継ぎがなされていない。港・寄港地観光先での受け入れにおいて意思疎通ができない、関係者の役割分担が決まっていない、コスト負担が決まっていないなどの課題が山積。関係者間で情報共有し協議できる仕組みをつくることが重要となる、そのための事例として約7年前からクルーズ客船誘致による地域活性化に向けた情報共有の取組みの紹介がありました。

 最後に、国際クルーズは敷居が高いので、まずは手軽なクルーズ体験の機会を創出する。フェリーでの洋上体験やフェリーチャーターなど市民クルーズで地域住民にクルーズの魅力を知ってもらう。特に九州・沖縄地域は多くの航路が存在することからクルーズコースのポテンシャルは高く、クルーズで島々を回るコースを実際に構築・発信し、地域住民に楽しんでもらう。このような経験を重ね、将来国際クルーズにもチャレンジしてもらえればクルーズ振興につながるだろうと、まとめられました。

【日本船クルーズの現状及び今後について】
 日本船クルーズは、1989年「ふじ丸」により始まり、日本籍船3隻が運航、60〜70歳代の日本の富裕層が主要顧客層で、1泊5〜8万円のプレミアムからラグジュアリーが市場であったが、2020年2月に横浜港で新型コロナによる事案が発生し、運休となった。その後再開に向け、検温・スクリーニング、食事の提供方法、寄港地のバスツアーの定員対策やPCR検査の実施、濃厚接触者アプリ導入、全室に空気清浄機設置、抗菌フィルター導入などの設備投資、環境衛生管理者の取得などの対策を行い2020年10月にはクルーズが再開した。配船に関しても21年度までは国内のみだったが、今年度からは外航クルーズが開催の予定となっている。寄港地も大きな港から現在は離島などにも寄港、泊数も3泊4日から開始し徐々に増やし、今は最長で47泊。定員も4割の200名から開始し、隔離部屋10%を除き9割まで販売している、などの現況が報告されました。

 松本講師写真.png

 商品の企画販売では、泊数、寄港地、船内運営等のしばりがあり、寄港地においても祭りなどの開催できないなど厳しい状況だが、お客様に楽しんでもらうために花火を上げる、シェフが目の前で調理するなど創意工夫を心掛け、港湾関係者とも連携をしっかりとるようにした。これにより当初、WEB系代理店からの送客が多かったがリピーターの創出となり、現在では長い舶数も含め9月まで完売、それ以降も博多発着は好調な状況となっている、との報告がなされました。

 最後に、カイドラインの改訂に伴い、感染症対策の見直しや船内運営の見直しに努め、今後のチャータークルーズへの対策を行う。また、港湾とのパートナー関係を互いに認識しあい連携していく。さらに増加の予想されるインバウンドなどのニーズに応えるために、日本船らしいきめ細かなサービスなどの戦略に取組む。現在を乗り切ることから、ゼロコロナに向け前進するためには、関係者との協力が不可欠である、と締めくくられました、

【外国船運航再開に向けた取組について】
 国際クルーズ船の日本発着・寄港を活性化し日本におけるクルーズ振興や地方再生に寄与することを目的に、2021年4月に「日本国際クルーズ協議会」が設立された。日本に事務所を置くのは、外国クルーズ船社8社9ブランドの正会員、さらに準会員で構築される外国のクルーズ商品販売総代理店、旅行会社、船舶代理店、ランドオペレーター29社となっている。2022年に日本発着国際クルーズを再開、2024年までにクルーズ人口を2019年同等比(35万人)まで復活することを目標としている。現在、クルーズ再開に向け政府と港湾管理者が連携し運航再開に向けた共通手順の整備、港湾管理者との意見交換などを行い、実働は広報委員会、オペレーション部門など5部門の体制であるが、現状ではクルーズ再開ワーキンググループ活動が始まっていることが説明されました。

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 2020年3月全世界で運航中止になった国際クルーズは、2020年6月ノルウェーでの国内クルーズが開始され、8月にイタリア・ドイツ、10月に日本、12月にシンガポールと順次再開されたが、その地域住民のみを対象とした国内クルーズだった。2021年5月に最大の市場である北米がスタートしクルーズブーム再来となったが、感染対策の同じレベル地域での運航、乗客定員を削減しての運航となった。現在は、北米、南米、欧州、中東、オセアニアで国境を跨ぐクルーズが再開されているが、日本、シンガポールなどアジアでは国内クルーズに限られている(今月からシンガポール/マレーシア間が再開)。国際クルーズは国境を越えて移動することが大きな魅力であるが、現状アジアでは国境を跨ぐクルーズの再開は遅れている。このように外国船社の運航状況と再開に向けた動きの説明がありました。

 国際クルーズ関係者は日本での国際クルーズの1日も早い再開を願っているが、@新たな外航クルーズ感染予防対策ガイドラインの作成、Aカボタージュ規制、B現在の法制度では通常の検疫が適用される水際対策では、検疫法及び国内感染症法にも続く分類のルールが最大の課題となっている。感染対策は国により異なるため日本の対策との乖離が大きい。ここをどう乗り越えていくか厚生労働省等との協議を継続している。また、2020年10月での日本での国際クルーズ再開が期待されたが、日本を含むアジアは受け入れ基準が厳しいため遅れている。しかしアメリカ・ヨーロッパ市場が動き出したことで世界の動静が変わり、日本でも早急に再開しなければ、クルーズ市場に出遅れるとの危機感がある、など日本での国際クルーズ再開の見通しの説明がありました。

 最後に、運航に向けた感染対策は、基本的には日本船社の基準で外国船社にも行っている。船内に持ち込まないための「ワクチン接種や事前の検査」、もし持ち込んだ場合には「感染拡大をさせない」、「発生時の港の機関との緊急時対応」、「感染地域への寄港を避け、観光客の現地での管理」、「定期的検査、上陸時の管理など乗組員のリスク管理」の5つの柱で行っている。また、各国の感染対策が微妙に違う場合は合わせ実施することが重要となる。ワクチン接種も当初は義務付けだったが徐々に緩和され、スクリーニング、寄港地管理なども緩和となり、感染対策のハードルは高かったが少しずつ低くなっている。地域住民に感染対策をきちんと説明することにより、国際クルーズの再開に向けた機運を高めていきたいと締めくくりました。

 今回の海事振興セミナーは、九州クルーズ振興協議会メンバーの一部の方々に会場参加いただき、その他の方々はWEBでの講聴となり、クルーズ振興等の関係者96名が参加されました。

Posted by 九州運輸振興センター at 14:28 | 海事振興セミナー | この記事のURL

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