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九州経済圏における交通及び観光の振興と近代化を図るための事業を行い、もって地域経済の均衡ある発展に寄与し、あわせて民生の安定に資することを目的として、調査研究事業、施設整備事業、その他広報啓発等事業を柱に活動しています。

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海上ブロードバンドサービスの最新動向に関する特別セミナー開催報告[2021年12月21日(Tue)]
 「海上ブロードバンドサービスの最新動向に関する特別セミナー」を開催しました

 令和3年12月9日(木)、福岡市において「海上ブロードバンドサービスの最新動向に関する特別セミナー」を九州運輸局、九州旅客船協会連合会、九州地方海運組合連合会との共催により開催しましたので、その概要を報告致します。
(参加人数:会場55名、オンライン視聴68名)

@「ソフトバンクのNTN構想」
講師:ソフトバンク株式会社 サービス企画技術本部 部長 押田祥宏氏

 通信は無くては困る社会インフラであるが、世界の人口の半数がインターネットを利用できない環境にある。ソフトバンクでは、新しい通信技術を使って情報格差の解消と産業の再定義を図るため、非地上型通信として空(宇宙)を使う「ソフトバンクNTN構想」を進めている。
現在、携帯基地局が国内の通信の99%をカバーしているが、都市部から郊外さらには僻地、空、海の地球全体の通信をカバーしようとするもので、これまで使われていなかった高度20kmの成層圏に一度飛ばすと半年程度ソーラーパワーで飛び続ける無人航空機を浮かべる「HAPS MOBILE」、高度1,200kmの低軌道に約600機の小型衛星を配置し高速ブロードバンド対応の「One Web」、高度36,000kmの通常の静止衛星を使ったナローバンドでIOTに特化し手頃で非常に使いやすい「skylo」で構成し、これらの回線を提供することによって各産業のDX化につなげていく。
特に船内における通信環境の改善に大きな影響のある低軌道衛星システム「One Web」の進捗状況では、2022年夏頃には予備機も含めた648機の打ち上げが完了し、2021年末頃から高緯度地域での商用サービスを順次開始予定で、日本でも2022年夏頃からサービスが始められる予定。
海事産業への活用では、現在は沿岸10kmを超えると通信が難しくなるが、船の上からでも快適なコミュニケーションが可能となるなど船員の働きやすい環境の実現、AIやIot、データ活用により業務の効率化の実現につなげることにより、陸上と変わらない環境を目指すとしており、また、自動運航やAIの活用などビジネス向けには高品質な衛星回線と福利厚生などコスト面を考えた割安な衛星回線を利用目的に応じてバランス良く提供して行きたいなど詳細な説明がありました。
最後に、これまで成層圏、宇宙空間活用の可能性が言われ実際に取り組まれてきたが上手くいった事例がなかったこと、打ち上げ費用が高く小型の衛星が作れなかったなど課題であったものの、現在ではそうした課題も改善されてきており宇宙空間などを使った通信技術が進んできたことで、これからは格段に利用しやすい通信網になってくる。海運事業においても、こうした先端技術を活用いただくことで、船員の福利厚生やビジネスの高度化に寄与できるよう協力していきたいとまとめられました。


A「カーボンニュートラル推進に向けた気象海象データの活用について
 〜POLARISによる航海支援と事後評価〜
講師:株式会社フォーキャスト・オーシャン・プラス 海洋情報部 部長 山形宏介氏
    一般財団法人日本気象協会 社会・防災事業部 営業課 グループリーダー 佐藤淑子氏

 世界の海の海流・水温・塩分濃度について、海表面から水深6500mの海中を準全球海洋予測モデルの出力の一例が紹介され、日本近海の海水面は過去30年の平均値と比較し大幅に上昇しており、水産資源確保に大きな異変が生じている。僅か1°Cの水温変化であっても、水産業に大打撃となりつつあることから、日本政府は2021年「気候変動の影響(温暖化)を考慮に入れた」水産政策の推進への転換を行っている。海洋の蓄熱量は大気の1000倍に及び、僅かな海水温の変化でも全地球規模の異常気象の発生に対して大きな影響を与えており、近年、九州で頻発する線状降水帯発生の一因にもなっている。温暖化の影響で漁業者の海に対する従来の「常識」が通用しなくなっており、そうした中で、気象海象データの活用が気候変動に対する「適応策」として注目されており、今後各地で進むと見込まれる。さらに併せて「緩和策」としてのカーボンニュートラルの推進の必要性についてもわかりやすく説明されました。

 次に、船舶に対して気象、海象予測に基づいた「最適航路」を提供し、航海の安全や経済運航をサポートする「ウェザールーティング」についての説明がありました。高精度・高解像度で気象海象予測や船舶推進性能の推定などの要素を使って、航海中に遭遇する気象や海象を予測し、安全性や快適性、燃料消費量、最短時間など指標に基づいた「最適航路」を提供するものとなっている。近年は地球温暖化の影響で、温室効果ガス排出規制対策としてハード対策とソフト対策が必要だが、「ウェザールーティング」はソフト対策となる。特に内航海運では省エネ格付け制度の運用が始まったことから、これまで以上に対応が求められる重要なサポートシステムになると考える。
内航船への対策としては、10年程前からNEDOの助成事業で「内航船の環境調和型運航計画支援システム」を協同で開発した。当初はシステム導入の準備に要する時間や費用、削減効果の把握が困難といった課題があったが、評価手法等を確立したことにより2012年からは「ECoRO」として実用化システムを確立し、高解像度、高精度な気象海象予測(海上風、波浪、海潮流)を利用した船舶の燃費削減航海支援など精度の高いサービスの提供を行っている。なお、システムの搭載にあたっては、租税特別措置や運航効率化実証事業補助金制度もある。
さらにサービス内容を改善し、「気象海象予測データ」、「航海計画支援サービス」を提供する「POLARIS」も昨年度より提供しており、「気象海象予測データ」は地球全球では最大30日先まで、日本近海は1日8回更新の4日先まで提供している。FOPの海流データとで上手く使えば省エネ効果が大きいなど説明があり、最後に実際の導入した船舶での事例紹介がありました。

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 今回のセミナーでは、技術進歩がめざましい海上通信の分野に触れ、船内サービスの向上や運航の効率化のみならず、船員の労働環境の改善や定着率の向上においても、大変有効なツールになるものと感じました。今後、海運業界のさらなる振興・発展に資することが期待されます。

Posted by 九州運輸振興センター at 11:58 | 海事振興セミナー | この記事のURL

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