第19回 海事振興セミナー 報告[2018年06月15日(Fri)]
クルーズ船への対応のさらなる取組活動の推進に向けて
― 第19回海事振興セミナーを開催しました ―
(公財)九州運輸振興センターでは、日本財団の支援と助成による「第19回海事振興セミナー」を、大阪経済法科大学 客員教授 池田良穂氏を講師にお迎えし「クルーズ船への対応と今後の地域戦略」をテーマに、平成30年6月11日(月)、福岡市において九州クルーズ振興協議会との共催により開催いたしました。
クルーズ船の寄港は、地域経済へ大きな効果を与えることから日本全国でクルーズ船寄港誘致が積極的に行われています。特に九州は九州クルーズ振興協議会を始め、関係者の積極的な取組みやアジアに近いという地理的特性、豊富な観光資源を有すること等からクルーズ船の寄港は極めて多くなっています。今後、一層のクルーズ船寄港誘致のため、関係者によるハード面、ソフト面でのさらなる整備・充実が進められていることから、今回のセミナーは、今後のこのような取組みに貢献することを目的に企画・開催いたしました。
講演では、
〇世界のクルーズ人口は、順調に伸びており2,700万人を超え、産業規模も14兆円という巨大観光・海事産業に成長し、20兆円規模であるコンテナ産業を数年のうちに超える勢いである。1990年代から始まったクルーズビジネスは、旅行業者にとって売り易く、10〜17%の高い利益率や起点港にとって大きな、寄港港にとって少なからぬ経済波及効果があることから、世界各港によるクルーズ誘致合戦になっている。
〇特に中国では2010年から中国資本の参入により大幅な成長率となり、470万人を超えるまでに成長し、3万トン以上の中国発着のクルーズ本数は、2016年で830であり、内597は(72%)は日本寄港となっている。しかし、中国のクルーズマーケットは急成長期が終わり、安定成長期に移行している。今後の成長率は10〜15%(世界の2倍)になるとの多くのマーケット関係者の予測や2030年には1000万人に達すると見込まれている。新たな動きとして、チャータークルーズの質の低下によるマーケットの混乱、価格の暴落などから利益のとれる東南アジアや南部中国への拠点の移転、チャータークルーズから個人旅行への動き、海外旅行の飛行機とのシェア争い、クルーズ客船の自国建造、自国運航の義務化の予想などが考えられる。
〇最後に、こうした世界の状況がある中で、日本でのクルーズ人口は2020年の30万人から2030年には168万人と急速に成長するとの予測を見せているが、予測ではすべてが外国船籍での運航予想であることから、日本籍カジュアルクルーズ船の実現が必要であり、構想としてのクルーズ船の計画や損益分岐運賃の試算が説明されました。
今回の海事振興セミナーは九州クルーズ振興協議会メンバーを中心にクルーズ振興等に関係される121名が参加され大変盛況なものとなりました。