企業経営基盤強化等セミナー開催報告
令和6 年11 月20 日(水)、福岡市において企業経営基盤強化等セミナー(「物流効率化促進セミナー」)を開催しましたので、その概要を報告致します。
〇 日 時 令和6 年11 月20 日(水) 13:30 〜 16:00
〇 会 場 オリエンタル福岡 博多ステーションホテル3 階 YAMAKASA
〇 主 催 (公財)九州運輸振興センター、九州運輸局、九州トラック協会
〇 後 援 JR九州、九州地方倉庫業連合会、九州冷蔵倉庫協議会、九州冷凍事業協議会、
九州長距離フェリー協議会
〇 プログラム(講演のみ)
第1部:物流を取り巻く現状について(60 分)
・テーマ 2024 年を「物流革新元年」に
・講 師 国土交通省 物流・自動車局 物流政策課長 紺野博行氏
・テーマ 九州の物流の現状
・講 師 九州運輸局 自動車交通部 貨物課長 東祐樹氏
第2部:事例紹介(60 分)
・テーマ バース予約・受付システムの開発・導入による物流効率化
・講 師 福岡運輸 業務推進部 システム課長 生津瑠美氏
・テーマ 物流効率化の取組
・講 師 潟}キタ運輸 取締役 東良二氏
・テーマ 集荷&モーダルシフトの取組事例
・講 師 日本通運兜汢ェ海運支店 博多港支店 内田紘史氏
〇 参 加 者 約150 名
〇 概 要
【第1部:物流を取り巻く現状について】
<2024 年を「物流革新元年」に>
物流業界の現状として、事業規模を令和3 年度の統計でみると、主要な業種の営業収入の合計は約29 兆円、従業員数は約223 万人で、全産業比に占める物流の割合は、それぞれ2%、3%。トラック運送業を含め物流企業の多くは中小企業率が高い。トラックドライバーの働き方をめぐる現状として、年間労働時間は、全産業として比較して約2割長く、年間所得額は約1 割低いが有効求人率は約2 倍高い。ドライバーの人手不足が深刻であり、長時間労働が常態化している。トラックドライバーの長時間労働の主な要因としては、長時間の運転時間、荷待ち時間、荷役作業等が挙げられる。こうしたことから平成30 年改正の「働き方改革関連法」に基づき、時間外労働時間規制について、見直されることとなった。
労働時間規制等による物流への影響は大きく、何も対策を講じなければ物流の停滞が生じかねないという物流の「2024 年問題」に直面している。
この間の物流政策の動きとして、昨年6 月に、@物流の効率化、A商慣行の見直し、B荷主・消費者の行動変容を柱とする抜本的・総合的な対策を取りまとめた「物流革新に向けた政策パッケージ」が決定され、また2023 年10 月には、可能な施策の前倒しを図るべく「物流緊急パッケージ」が取りまとめられた。
さらに、本年2 月には、両パッケージに基づき、中長期的な対策として、物流の適正化・生産性向上をさらに進めるため「2030 年度に向けた政府の中長期計画」が策定・公表された。
物流の「2024 年問題」は、当該時点を乗り越えれば終わる一過性の課題ではなく、年々深刻化する構造的な課題でもある。2030 年には輸送力が34%減少すると予測されるため継続的に対応していく必要がある。また、中長期計画については毎年度フォローアップを行い、次期の総合物流施策大綱を閣議決定するタイミングと合わせて見直すこととしている。
このため、令和7 年度予算の概算要求において、2030 年に向けた関係予算を計上するとともに、改正物効法・トラック法の円滑な施行に向け準備を進めている。2024 年は、物流事業者、荷主企業、一般消費者が協力し、物流革新の実現に向けて始動する重要な1年である。
<九州の物流の現状>
物流業界においては、本年4 月から時間外労働の上限規制が適用となり、物流の停滞が懸念される物流の「2024 年問題」への対応が喫緊の課題となっている。九州管内の物流の影響を把握するため、物流事業者(トラック事業、海運業、倉庫業、鉄道事業)を対象に、令和6 年10 月10 日から11 月1 日にかけてWEB 方式でアンケート調査を実施。2024 年以降の物流の影響、荷主との運賃等の交渉の有無、各社の取り組み状況等について、調査票送付事業者数6,893 社中、1,176 件の回答があった。
「2024 年問題」による物流への影響については、70%以上が感じていると回答。2024年問題により影響が出ている事項としては、「営業収入の減少」「荷主との交渉の発生」と回答した数が何れも550 件を超え、約半数の事業者に発生。労働者の離職が増加したとの回答も367 件となった。また、「2024 年問題」により、労働力不足を感じるかとの設問では、70%以上が感じていると回答。さらに、荷主との運賃交渉等の有無については、80%以上の事業者が荷主との交渉を実施し、その内容については、運賃・料金、附帯作業、保管料金等の値上げに関するものが殆ど。運賃値上げ等に対する荷主の理解度について、理解いただいているとの回答は50%弱、理解いただいていないとの回答が18%弱という結果を見ると、物流事業者への理解はある程度進んでいると考えられる。
また、令和2 年4 月に告示された標準的運賃の浸透、活用状況等の実態を把握することを目的に全日本トラック協会の会員事業者約2000 社を対象に令和6 年1 月22 日から3 月10 日にかけて実施した実態調査結果についても紹介があった。標準的運賃を提示又は考慮した自社運賃の提示、具体的な値上げ額や値上げ率を提示して運賃交渉を実施した事業者が71%。その内「希望額を収受できた」との回答と「一部収受できた」との回答を合わせ75%となったが、今後も引き続きトラック・物流G メン等の制度を通じて、荷主に対し、理解を促していくことが必要。
【第2部:事例紹介】
<バース予約・受付システムの開発・導入による物流効率化>
運送業においては、人手不足、長時間労働、高い離職率、労働生産性の低さといった従来からの課題に加え、働き方改革や環境問題への対応が求められている。
経営ビジョンとして「物流×テクノロジーでデジタル時代の新たなイノベーションを創出する」を掲げ、これまで属人化していた業務を、プロセスの標準化や省人化、自動化を図り、発生する情報を可視化や共有化することで、業務を変革できるような仕組作り・場の創出に取り組んでいる。
そうした取り組みの一つとして、令和元年よりバース予約・受付システムの稼働を開始した。当社バースの特徴として、1つのバースを時間帯毎にTC(Transfer Center:在庫を補完しないタイプの物流センター)・DC(Distribution Center:商品の在庫を保管管理した上で、各納品場所へ出荷するタイプの物流センター)で共用していることが挙げられる。
システム導入前までは、アナログツール・人を介した情報のやり取り・状況確認・バース
運営を行っていた。そのため、構内外での車両混雑、待機時間の長期化、倉庫内での作業率低下といったような稼働上の問題と共に、運用においても受付やバース稼働状況の把握が煩雑、人への依存度が高く業務付加が大きいなど様々な問題点があった。
これらの課題を解決するためドライバーや作業員、配車担当者にヒアリングを行い、TC/DC に対応可能な自社独自のシステム「バース予約・受付システム」を開発・導入した。
これにより、問い合わせや呼び出し作業の削減効果は年間で8,000 時間となった。バース状況の可視化・共有化、オペレーションの省力化、バース運営の効率化・最適化が図られ、データの分析や活用環境の整備にも役立っている。
開発におけるポイントでは、問題を細分化して取り組む、システムを素早く作る、日々の業務をする中で改修・改善を行いブラッシュアップする。さらには、業務の効率化、全体最適化につながること、つなげることを前提に開発を進め、AI なども活用して、業務や時代、環境の変化にも柔軟に対応することが挙げられる。
今後も業務のデジタル化を進め、関係するシステム間でのデータ連携や利活用を図り、ボトルネックの解消や物流全体の最適化を進めていきたい。
<物流効率化の取組>
長距離輸送が多いことから、宮崎、神奈川、大阪、福岡、鹿児島に物流拠点の整備を進め、ドライバーの宿泊休憩所を設置し、休息できる場所を確保。2024 年問題への対応としての拠点整備は終了。
温度管理が必要となる商品について、関東・関西エリアの消費地へはカーフェリー・RORO 船を積極的に利用。これによりドライバーの休息時間を確保し、改善基準にも対応できている。宮崎発の関西エリア以東は全てフェリーを利用することで、環境負荷の低減、ドライバーの長距離運行の抑制を実現。しかし、南九州発の荷物は生鮮食品(農畜産物・乳製品)など、賞味期限が短く、輸送で欠車出来ない商品が多いので、ドック入りや台風等による欠航に備え陸送体制も構築している。
当社の運行は混載便が大半を占め、貸切便が殆どない。そのため、2 次配送拠点を活用し、小口化している荷物の中継輸送を行っている。
生産性向上に向けた取り組みの1 つ目、各拠点のパレット交換機を使用し、工場専用パレット・マキタ専用パレットからレンタルパレットや配送先指定のパレットに交換したことで、積作業時間を80%削減することができた。
2つ目、運送業界を取り巻く環境は、人員の減少、高齢化傾向にあることから、約86tの商品を輸送するケースにおいて、2 段枠を使用し、10t車からトレーラー車へ変更したことで、1 日あたりの必要人員を66.7%削減できた。
3つ目、トラックへの積載にあたり、2 段枠を使用することで1 パレット分の面積で2パレット分の積載が可能となり、ブロイラーの運搬のケースでは、1車あたり36 パレット積み込むことが可能となり、車両削減率約50%を達成できた。また、高積みによる潰れやドリップ漏れなどが減少し、商品の品質を落とさず、効率的な輸送が可能になった。
<集荷&モーダルシフトの取組事例>
当社の内航船輸送は、「九州〜東京航路」に2 隻、「東京〜北海道航路」に3 隻の合計5隻で運航。特徴としては、車輌が直接船倉に入るRO/RO方式であり、貨物積み下ろしスピードが早い、車輌直積であるため振動が少ない、特殊車両の輸送にも対応できるといったことが挙げられる。
輸送機材としては、1.1×1.1 パレットが22PL 積載可能な13mウイングトレーラーほか、当社独自の中ロットの海上輸送に適した12Fコンテナ(1.1×1.1 パレットが6PL 積載可能)、Sea&Rail サービス(海上輸送と鉄道輸送の複合一貫輸送)に適した12FのRSVコンテ、冷蔵・冷凍対応の20Fリーファコンテナがある。
自社で運航する以外にも利用運送という形で九州エリアや沖縄エリアを発着する他社航路を活用しての輸送にも関与している。
海上輸送へモーダルシフトすることで、ドライバー不足への対応のほか、環境配慮型物流の実現に貢献でき、物流の効率化、長距離輸送コストの削減にも寄与できる。
このようなことで、トラック輸送から海上輸送へ切り替えた、CO2 の削減に貢献する海上輸送を企業のイメージアップのために利用してもらえた、輸送コスト低減の観点から利用してもらえたなどの事例がみられる。2024年問題への対応も含め、今後もモーダルシフトの取り組みを進めていきたい。
トラックドライバーに労働時間の上限規制が適用された2024 年4 月から8 か月が経過しようとしている中、荷待ち・荷役の削減、積載率向上、モーダルシフト等の取り組みが進められています。本日のセミナーが、2024 年問題をはじめとする物流の課題解決のヒントになれば幸いです。