中国長春で「日本研究論文コンクール2025」決勝戦開催
[2025年11月08日(Sat)]
11月2日、中国長春の吉林大学で「笹川杯日本研究論文コンクール2025」決勝戦が開催されました。
このコンクールは、本会、中国国際貿易学会日語と国際商務専業教学研究委員会、吉林大学が中国全国の大学の日本語学部の学部生を対象に2018年から開催している中国初の本格的な日本研究論文コンクールで、参加者は、「文化」「文学」「言語学」の3分野から研究テーマを設定し、日本語で論文を執筆・研究発表するというものです。
応募論文については、1テーマにつき最多3人までの共同執筆が可能となっています。
開会式に際して、吉林大学外国語文化学院の潘海英院長は、このコンクールについて、中国の日本語専攻の学生の思考力と日本研究能力を検証すると同時に中国の大学生の日本社会に対する総合的な理解を深め、日中両国の若者間の相互理解と友好交流を促進するものであると評価した上で、日中両国の大学生間の積極的な交流のための格好のプラットフォームになっているとして本イベントの意義を強調しました。
本会の橋会長は、一次審査を経て決勝戦に進出した選手たちに祝意を示した上で、日本の言語、文学、文化において研究課題を見つけ研究を進める彼らの視点には自分たち日本人には気づかない視点が感じられ、大変勉強になり、刺激を受けるとの感想を述べました。さらに、論文執筆者から直接発表を聞けることを楽しみにしているとした後、日頃の研究成果をのびのびと発表して欲しい旨の期待を示しました。
中国国際貿易学会日語と国際商務専業教学研究委員会の陳多友主任委員は、全国の日本語学習者が自らの才知を発揮し思想を交わす最高の舞台であり、中国の日本語学界において最も高い権威と大きな影響力のある学術活動の1つとして学生たちに学問の道筋を示しているとしてこのコンクールの意義を評価しました。さらに選手たちに対しては、この貴重な機会に自分の力を十分に発揮し、新時代の日本語学習者としての卓越した姿を披露して欲しい旨の期待を示しました。
決勝戦となるこの日は、一次審査を通過した3分野(合計27編)の各論文執筆者(合計36名)が、各分野に分かれて研究成果の発表と審査員による口頭試問に臨み、審査員審査を経て、言語学部門では大連理工大学の曲浛莹さん、文学部門では共同執筆した北京外国語大学の唐家浩さんと徐子牧さん、そして、文化部門では共同執筆した吉林大学の唐可欣さんと左文杰さんが、それぞれ特等賞に輝きました。
なお、入賞者のうち特等賞を受賞した3編の各論文執筆者3名については、副賞として2026年2月中旬頃に8日間の日本招聘プログラムに参加していただく予定となっています。
受賞の感動の中、3部門の各特等賞受賞者には、コンクールに参加して“良かったこと”や“苦労したこと”等について、コメントをいただくことができました。
言語学部門では、大連理工大学の曲浛莹さんが、「生成AIを活用したL2日本語ライティング支援と評価の可能性−ChatGPTとDeepSeekを対象とした実証的検討−」という題目で研究成果を発表しました。
曲さんのコメントは、次のようなものでした。
*良かったこと*
自分は大学1年生から大学で学んだ統計知識やR言語のプログラミング知識を活かして自分が大きな関心を持っているAIに関する興味深い問題を研究することができたことです。
*苦労したこと*
自分の研究テーマはAIに関することなので、自分の論文が完成した直後に新しいChatGPTのモデルが公開されました。やはり、自分の研究は一番最新のものにしたかったので、もう一度同じデータを分析して論文を最新化させたことです。今後は日本人が開発したモデルを自分の研究対象に含めて研究を続けていきたいと思っています。
文学部門では、北京外国語大学の唐家浩さんと徐子牧さんが、「浅草と変格探偵小説におけるグロテスクの生成に関する研究―浅草を中心に―」という題目で共同研究を行い、特等賞を受賞しました。
二人のコメントは、それぞれ次のようなものでした。
◆徐子牧さん
*良かったこと*
コンクールに参加し、日本語能力もいろいろな面で上達している先輩方に出会えたこと、さらに日語教育研究会では著名な先生方と一緒に勉強し、いろいろ自分の為になったことがあったことです。
*苦労したこと*
今回、論文を書くのは人生で初めてでしたので、論文を書く時は日本語の文献や難しい理論を理解することが難しかったことです。
◆唐家浩さん
*良かったこと*
今回のコンクールの雰囲気が想像していたより親切なものであったことです。また、審査員の先生方からの質疑応答の時も、自分たち学生が研究を進めていく中で苦労したこと、未だ不足しているところ等について質問してアドバイスして下さったので、このコンクールで語学力も向上し、学術に対する熱情も高まったことです。
*苦労したこと*
論文を提出した後、自分たちは論文の構造や書き方など色々な点を改善しました。その時は構造を見直し、その過程は苦しいものでしたが、今は良かったと思っています。
文化部門では、吉林大学の唐可欣さんと左文杰さんが、「日本古典文化における蓬莱イメージの受容と変容」というテーマで共同研究を行い、特等賞を受賞しました。
唐さんのコメントは、次のようなものでした。
*受賞の感想*
論文を共同執筆した仲間、指導してくれた先生や友人に感謝したい。これからも今日の経験を生かして研究を頑張っていきたいと思っています。
*苦労したこと*
日本書紀のような古典文学を読んでいる時、知らない点が沢山あって、私と仲間は日本の本やインターネットを使って真剣に勉強しなければならなかったことです。しかし、この過程でしっかりとした論文を書くことができただけでなく、多くの知識を習得することができました。これは最も難しかった点でありますが、感謝したい点でもあります。
審査結果は、次のとおりです。(敬称略)
【言語学部門】
◆特等賞
受賞者:大連理工大学 曲浛莹
題目:生成AIを活用したL2日本語ライティング支援と評価の可能性−ChatGPTとDeepSeekを対象とした実証的検討−
◆一等賞
受賞者:吉林大学 高宇涵
題目:「うるさい」の意味構造と使用特徴
◆二等賞
受賞者:天津外国语大学 祖仁司g
題目:日本語音韻制約との相互作用に見る広東語借用語の音韻的変容:最適性理論に基づく分析
受賞者:中国人民大学 劉逸菲
題目:J-POP歌詞における二重表記の分類と機能―音・意味・視覚の視点から―
受賞者:広東外語外貿大学 董盛卉
題目:言語の反映構造:福島核問題における中日翻訳の政治と文化的認知のギャップ
◆三等賞
受賞者:福建師範大学 陳昊葳
題目:中国人日本語学習者の作文に見られる文章意識に関する通時的な特徴
受賞者:北京外国语大学 王鲁蓁
題目:《红高粱》井口訳の方言語彙における意味の損失
受賞者:広東外語外貿大学 伍芷晴、吕佩璇
題目:コーパスに基づく類義語に関する対照研究―「養う」「育てる」「育む」「培う」を中心に―
受賞者:東北師範大学 曾馨瑶
題目:職場における「〜てください」の使用状況―テレビドラマ『半沢直樹』を例に研究する―
【文学部門】
◆特等賞
受賞者:北京外国語大学の唐家浩、徐子牧
題目:「浅草と変格探偵小説におけるグロテスクの生成に関する研究―浅草を中心に―」
◆一等賞
受賞者:中国海洋大学 劉汀瑜
題目:京極夏彦小説における女性の「妖怪化」―『絡新婦の理』を中心に―
◆二等賞
受賞者:福建師範大学 邱群惠
題目:『水滴』におけるトラウマの表象―「水」のイメジェリーを中心に―
受賞者:黒龍江大学 曹嘉玉
題目:『にごりえ』における断片的物語叙事
受賞者:華東師範大学 俞璐悦
題目:江戸川乱歩「陰獣」における<視線>の機能
◆三等賞
受賞者:北京外国語大学 胡新悦
題目:破壊装置としての「共生虫」―村上龍『共生虫』論―
受賞者:湖南大学 于雷
題目:戦時下における川端康成の文化的立場の研究―『高原』を例に―
受賞者:西南民族大学 何向荣
題目:仮面と真実の二項対立―三島由紀夫『仮面の告白』における「ピアノの音色」の象徴的な意味―
受賞者:上海外国語大学 張月
題目:谷崎潤一郎の第二回中国旅行後の中国認識―「対話」の始まりと理解の限界―
受賞者:福建師範大学 協和学院 谢淑媛
題目:『サロメ』と『愛の渇き』における身体ナラトロジーの比較研究
【文化部門】
◆特等賞
受賞者:吉林大学 唐可欣、左文杰
題目:「日本古典文化における蓬莱イメージの受容と変容」
◆一等賞
受賞者:北京外国語大学 汪皓楠、张淑正
題目:「雪と士」:中日文化における自然と人間の交差―文学発生学から読み解く―
◆二等賞
受賞者:南開大学 付石
題目:遺産としての歴史主体論争
受賞者:上海外国語大学 汪欣然
題目:モバイルゲーム『陰陽師』における八岐大蛇のイメージ改変戦略分析
受賞者: 北京外国語大学 陈思宇、陈润泽、方正儿
題目:中日SNSにおけるZ世代の情動空間についての一考察―「emo」と「エモい」を例に―
◆三等賞
受賞者:吉林大学 趙晏輝
題目:認知的不協和理論から見る親族視点の葬儀業認識変化
受賞者:広州商学院 王嘉偉
題目:内藤湖南の中国史観のデコンストラクションとその現代における多元的価値の検討
受賞者:南開大学 劉浩渊、張梅敬、譚茜月
題目:中日の災害意識と復興モデルの比較研究―大震災を中心にして―
三等賞受賞者等



