12月13日 10:15〜12:15
「子育てに活かす作業療法視点」
灘裕介先生 (有)あーと・ねっと
作業療法士

子ども支援にかかわている現場では、
最近の赤ちゃんの体が硬すぎたり、
逆にふにゃふにゃしてたりといったとまどいを
感じている方が多かったせいでしょうか?
京都府以外からの参加もあり、25名近くの方に
お集まりいただきました。

作業療法とは、生活の中で、
うまくできないといった子どもの行動には
必ず理由がありその理由を見つけ、
訓練・練習ではなく遊びという作業を
通して解決をすすめること。
赤ちゃんにとって一番はじめのおもちゃは自分の体
だとかで、赤ちゃんの体の発達を見ていくと、
首が座るまでの2か月の赤ちゃんは
2か月革命と言われるくらい、
皮膚、筋肉、関節といった体性感覚系を通して、
自分の体に気付いて、(身体図式の確立)
見ようとすることで、首の安定性が高まるといった
大切な時期なんだそう。
10か月くらいは、四つ這い・高這いの時期 ですが、
最近では、四つ這いせずに立つとか、
四つ這いでも左右差のある動き方や、
ひざを片足ついてたりする傾向がある赤ちゃんが多いとか。
四つ這いは、左右交互にリズミカルに動けることに
意味があって、それがスムーズな歩行につながっていく。
四つ這いせずに立つ子どもの中には、
背中をそらして立つために、
両手の動作がしづらい場合もあり、そうなると
手先の機能の発達にも影響がでて
字を書くのが苦手といったことにつながることもあるそう。
指の運動だけでなく、手の感覚、触覚を育てることも
大切で、
手づかみ食べは、手の動作を覚える土台。
手でさわると、食べ物の食性の、
固いもの、 やわらかいもの、ぐちゃぐちゃとかの
見通しもたてやすくなり
偏食の強いお子さんの指導に、
この手づかみ食べをとりいれることもあるとか。
子どもが言葉を覚えていくさいにも、
たとえば「コロコロコロ」と声かけて
ボール遊びするように、
動きと音がセットになることで単語としてとらえ、
発達していく。
言葉の獲得のさいにも、わかるように
身体は、
運動や器用さ、言葉、
他者理解、コミュニケーション能力
概念、抽象的事象理解、記憶、 空間関係理解
さまざまなことの土台になっている。
この身体を育てるために必要なことは
栄養と休息、
活動=よく遊ぶこと
身体を作る3大感覚とは、
触覚(ふれる)
前庭覚(揺れる)
固有受容覚(筋肉を動かす)
この3つをしっかり感じ取り、 統合されることで、
身体図式(頭の中の身体の地図)を確立させる。
前庭覚(揺れる)を感じる遊びは
ゆさぶり遊び、ロッキングチェア
ブランコ、滑り台、ジャンプ、飛び降り、
自転車、鉄棒、後ろ歩き、寝返りゴロゴロ
といった動きなど
今は小学校でも椅子に座っての姿勢の保持が
しづらい子がいて、 筋肉のはりを整える役割のある
揺れ遊びをすることで、姿勢保持がしやすくなるとか。
固有受容覚(筋肉を動かす)を感じる遊び
アスレチック、ジャングルジム、木登り
お相撲、綱引き、台車押し、
バランスボール、手足ブルブル、
目隠し運動、口を使った遊び(笛、シャボン玉)
料理、物を運ぶ、配る役割などなど。
最近は、こういった遊びの機会が減少している。
育児のための便利グッズも、誰のための便利なものか?
子どもの身体の発達する機会や学ぶ経験を
少なくしている場合もあるので、
メリット、デメリットの両方を考えて
取り入れていく必要があるのでは。
ランチの後は質問コーナー

現場でのこういう赤ちゃんにはどうしたらいい?
といった具体的な質問に対してのアドバイスなども
ありました。
ただ、ケースバイケースで、
実際にそのお子さんをつぶさに観察して、
どういう対応をしたらよいかを考える必要があるそうです。
赤ちゃんが寝がえりするさいには
ねじりの動きをしてるわけですが、
このねじりの動きは、脳の右脳と左脳とを
うまく連絡して、スムーズな処理ができるように
つなげる動きとかで、 ねじりの動きがぎこちないと
学習に影響したりもあるようです。
右脳、左脳の両方を育てていくために
幼児の間は、両手をバランスよく使えるように、
抱き癖や寝る向きなどが偏らないように
工夫していくことが大切ということが 印象に残りました。
わかりやすいお話ぶりで、みなさん まだまだ
お聞きしたいことが たくさんあったことと思います。
赤ちゃんも対象にされている作業療法士の方は
まだ少ないようで、こういった学びの機会が
増えるといいですね。