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「子育て支援のこれからを考える」講師:松田妙子さん [2016年10月25日(Tue)]
「子育て支援のこれからを考える」
講師:松田妙子さん(NPO法人せたがや子育てネット代表)

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10月15日(土)に行われた15のまなびでは、東京からNPO法人せたがや子育てネット代表をされている松田妙子先生をお呼びしました。今回のテーマは「子育て支援のこれからを考える」です。府をまたぎ男女共に、行政関係、助産師、子育てひろばなど幅広い分野の方が20名参加されました。最初は参加者の自己紹介と共に、自分が気になっていること、松田先生に聞きたいことを出し合いました。皆さん、現場も異なれば気になることも異なっており、それだけで交流の場になっているようでした。

松田先生はよくお話の場でワークショップをされるそうです。その一つとして「話を聴いてもらう」というワークショップ「耳カウンセリング」を紹介して下さいました。これは、15分間支援者同士で話を聴き合います。これの意図は、支援者も「聴いてもらう」という体験をする事です。時に支援者は「○○した方が良い」「○○じゃないといけない」という固定概念を持っている時があります。子育て支援の現場において、親子の思いを聴かずに支援者の考えや解決方法を伝えてしまうことがあります。それにより問題は解決したとしても、相談者の思いは未消化になり拒絶する危険もあります。「聴く」という行為は難しいですが、ワークショップを通して実際に「聴いてもらう」という体験をすると利用者側の立場を経験できます。どういう対応や応答が「聴いてもらえた」「わかってもらえた」という感情に近づくのかわかりやすくなります。
また、「共感」という言葉があります。子育てを経験した子育て支援者が子育て相談にのると、「うちもそうだったのよ。」と答える時があります。しかしそれは相談者にとっては支援者の“過ぎたこと”であり、ランクが違うのだと教えて下さいました。つまり、同じような体験でも、そのしんどさ、悩みを言えるのは当事者だけです。
後半には「支援者が素晴らしすぎてもダメ」というお話もありました。例えば、産前産後の訪問で、家も自分も綺麗にし、迎えてくれますが、そうすることで逆に疲れてしまうお母さんもいるとのこと。それでは訪問の意味が無くなってしまいます。「気を遣わないで」と言っても伝わらない場合があるため「着替えてもパジャマで」と言うそうです。パジャマであれば、疲れたら横になっても良い、化粧もしなくて良い、と自然に感じられるからです。そこへ訪問者(支援者)が綺麗な格好で訪問するとせっかくパジャマで気を抜いた母が打ちのめされてしまいます。だからこそ支援者が素晴らしすぎてもダメ、その時々のトーンを合わせる必要性があります。
相談の場面で、例えば「一時預かりをしたいんです」という相談があった場合、「○○という制度がありますよ」と答えるのは『回答』であり、「どうしたの?」と訊くのは『応答』だそうです。必ずしも支援者の出した回答が相談者に合うとは限りません。応答のように一緒に探すのが利用者支援だとお話されました。時には相談者のニーズや欲求がずれていることもありますが、まずは相談者の困っている気持ちに寄り添い「どうしたの?一緒に考えよう」という姿勢を伝えることが大切です。本当に必要な支援か精査をするには利用者との対話が重要になるとお話し下さいました。

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次に、直接支援と間接支援のお話がありました。直接支援は今まで松田先生がされていた子育て支援であり、『私が居ないとダメ』という支援だそうです。これは、直接反応が返ってくるので支援者としては気持ち良く、やりがいにも繋がりやすいです。また、これは企業に上澄みを搾取され、商業化されやすいとのこと。本来であれば親が自分で気づくものを商品化し、お金と時間で簡単に不安を解消してしまいます。それでは親自身の気付きの力が失われてしまいます。
最近、松田先生は間接支援の方へ活動の場をシフトされました。間接支援とは「見守る大切さ」であると言葉にされました。今の子育て支援には、直接関わって(直接支援)、誰かに繋ぐ(間接支援)ような存在が居ないと仰いました。現場に居るだけではわからない事、一歩引いて見守ることでわかる裏方のような存在が必要だそうです。

続いて地域支援のお話です。現代は昔よりも地域の繋がりが希薄と言われます。近所付き合いや、いざという時に繋がれる支援を考えた時、松田先生は世田谷という地域でその難しさを感じられたそうです。そのため、地域が繋がるにはどんな支援があると良いかを聴くことから始められたそうです。それにより町の人と繋がれたり、地域住民同士が繋がろうと思えたりし、社会の基盤になるそうです。
現在の松田先生の活動の基盤は、「個を支援できる地域」を作るための地域支援を行う事です。その目標として『“助けてと言える地域”を支援する』を掲げると、活動の途中でも今自分は何をしているのか、と振り返る事が出来るそうです。また、今までやってきたことを捨てるのではなく、それを伝えること、他の世代に引き継ぐ、という意識の切り替えも出来たそうです。

今回は社会福祉学の視点だけでなく、子育てをする一人の親として、地域に住む住民、そして様々な子育て支援の現場を経験された支援者として、多様な角度からお話し下さいました。人が居てこその支援者であり、親と子が居てこその子育て支援です。目の前の親と子の声を聴くこと、本当のニーズは何か見極める目を養う事は容易ではありません。だからこそたくさんの現場から声を拾い、親と子と共に子育て支援を考えていけたらと思う15のまなびでした。

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