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2011年03月29日

震災後(その4)

 震災後、19日になりました。仙台市内は、都市ガスの復旧作業が本格化し、先週から徐々に供給再開が進んでいます。水道も今日でほぼ復旧が完了する予定です。仙台市バスも休日ダイヤながら再開、在来線も少しずつ運行しはじめ、東北新幹線も4月中には全線再開予定。日曜日、スーパーでは久しぶりに長蛇の列に並ばなくても、買い物をすることができました。ただ、まだガソリン不足は解消されていません。

 ニュースでもしばしば耳にしますが、避難所の物資不足もさることながら、避難所ではなく、自宅で震災後の生活をおくっている方々の物資不足が問題化しています。自宅にいる方々は救援物資の対象外、自分で食料や生活品を調達しなければなりません。沿岸部の被害甚大な地域は、スーパーなども再開しておらず、また再開していてもスーパーまで車で行くにもガソリンがないという状態。高齢の方、乳幼児のいる方、介護をしている方、物資の確保がきわめて困難と推測されます。
 また妻がデイサービスやショートステイ、デイケアを利用している施設でも、食事の量が減っています(昨日はごはんとお味噌汁だけ)。震災後、食事の回数が3回から2回に減ったという話も聞きました。施設に食料が行き届いていないという状況です。避難所でも介護用品や生活用品の不足がわかってきました。
 県が今週中に必要な生活用品などを公表するとのことですが、大規模な行政の試みと併行して、小規模でもきちんと必要なものが必要な地域に届けられるしくみをつくることが大切と思っています。現在、東京にあるNPO法人介護者サポートネットワークセンター・アラジン、また独自の支援活動をしているキャンナスの仙台支部の方々と連絡を取りつつ、避難所で不足している物資のみならず、震災後、自宅で生活している方、介護、育児、仕事などでなかなか買い物にいけず物資調達が困難な方々、また施設で不足しているものなど、必要なところに必要なものを届けられるように準備を進めています。近日中に詳細をこのブログでも掲載します。

  震災後、メディアで、被災地のボランティア、とくに被災者が被災者を支えていることが報道されています。たしかに、こうしたことは賞賛されることでしょう。しかし、よく考えてみれば、これは緊急時のいたしかたない事態なのであり、いつまでもそうした状態が続いていていいわけではありません。もちろん、被災した私たち自身が自分の足で立ち上がり、生活を立て直し、復興させていく必要があることは間違いありません。しかし、それは被災者が被災者を支えることにストレートにつながるわけではありません。

 被災者が被災者を支える―この構図は、要介護者を家族だけで支える、ということと同じように私には感じられます。ある日突然、家族の誰かが介護を必要とする状況になった―この状況は、介護が必要になった人だけが災難を被ったのではなく(災難と表現すべきではないとも思いますが)、その人を含む家族全体にふりかかった災難といえます。それゆえ、介護が必要になった人のみならず、その方を含む家族の方々がケアの対象になるはずです。しかし、現在、日本の介護の現状をみれば、いまでも介護する家族がケアされるということがきわめて少ないことは明らかでしょう(介護保険が要介護者のためのサービス提供であって、介護者をケアする直接的なサービスがないことを考えてみてください)。家族だけの介護が長期にわたると、行き詰まりが出てくるように(もちろんすべての家族介護者が行き詰まるというわけではありませんが)、被災者が被災者を支える状況も、その時期が長くなればなるほど、ひずみが生まれてくると思います。緊急の医療的ケアから生活支援、介護支援などへの転換が近づきつつあるいま、被災者が被災者を支えるという構図もいっしょに転換していく必要があるのではないでしょうか。

 この震災に見舞われて、災害時におこる諸問題は、現代日本の介護が抱える諸問題に通じ合うものであることに気づかされます。被災者が被災者を支える=家族が要介護者を支える、要介護者が安心できる緊急避難所がない=日常の中で何かあったときに安心して預けられるシステムがない、避難所以外の方に物資が行き渡らない=在宅で介護する方々の生活がきびしい、、、、、列挙すればきりがありません。

 少子高齢化がさらに加速していく日本において、まず見直されるべきは、日常の介護に関わる諸問題にあることを実感しています。そうした日常の小さなひとつひとつの問題が、実は今回のような未曾有の災害時に生じる問題を解決することになると考えています。
posted by M.Motomura at 07:36| Comment(1) | お知らせ
この記事へのコメント
うん、うんとひとりうなずきながら読んでました。
まさに介護の諸問題・・・。

震災を通して考えさせられることが盛りだくさんです。
いろいろな意味で、試されているのでしょうか。

介護、食(流通)、地域、エネルギーのことなど
次世代につなげていく為にも、
生かされている私たちの課題なのでしょうか。
Posted by rikagonn at 2011年03月29日 22:48
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