岡山教育カウンセラー協会の研修会で
「不登校の理解と対応」という内容で
津川秀夫先生(吉備国際大学心理学部)を講師として
お迎えしての勉強会がありました。
内容を以下にまとめてみました。
不登校の関係の研修会には何度となく出ていますが、
目新しい考え方もあり目から鱗でした。
例えば、不登校を個人の性格要因にしてしまわないことや
不登校になる前の欠席状況を確認し対応することで
予防になることなど、具体的な対応方法について知ることができ
とても納得感のあるものでした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
-thumbnail2.JPG)
不登校の定義として
年間30日以上欠席したもののうち、
病気や経済的理由によるものを除いたもの(文部科学省)
とあるが、統計上の操作がおこなわれている場合があるとのこと。
それは、「不登校」が疑われる場合でも
欠席理由の項目の中の「病気」や「その他の理由」に
含まれている可能性があるということだ。
単純に考えれば病気は数日で治るため
長期にわたっての欠席を要しないと考えられるが、
不登校の疑いのある「病欠」「その他の理由での欠席」が
増えている傾向がある(欠席が長期化している)
ことから統計上の操作があると思われる。
不登校の児童数は小学校で1,000人中約3人、
中学校で100人中3人弱で、進級とともに
不登校が増えるという傾向がある。
また中1ギャップといわれるように
中学校になって不登校になる割合が増えるということ。
不登校のきっかけとしては、
教師の評価では、本人の不安や情緒混乱、
無気力、友人関係と続き、当事者の評価としては、
友人関係、学業不振、教師との関係となっている。
対人関係の困難が不登校の「直接的」影響といえるが、
そのストレッサーがなくなった後も
不登校という症状だけが続き、
長引く傾向がある。
例えば、進級などでクラス替えがあり、
ストレッサーであった友人とクラスが
離れたにも関わらず不登校が続くということは
不登校が「生活習慣病化」しているといえるとのこと。
生活習慣病化させないための対応が大切である。
-thumbnail2.JPG)
不登校生徒の追跡調査が行われており、
不登校になってその後、学校や仕事について
いなければその後も学校に行ったり
仕事に就く割合が少なく、
不登校になっても学校や仕事に就いたものは
その後、学校や仕事に繋がっている割合が
高いという結果が出ている。
不登校は「現状依存的」で、「学校/仕事に所属」していると、
次の段階で8割が社会に繋がっているが、
「学校/仕事なし」であると、次の段階で
5〜6割が社会に繋がらない。
「今がよければ次もよい。今繋がっていないと次が厳しい」といえる。
不登校の対応について、
休み始めは欠席理由に注目する必要があるが
(嫌なことがあって休み始めた、そのきっかけに注目、
対人関係の困難から欠席が始まる)
「欠席行動」はすぐに習慣化する。
欠席が長引いた場合、欠席理由に注目してはいけない。
不登校の理由を本人の性格のせいにしないことが大事である。
不登校の3割が支援を受けていない状態であり、
不登校の放置は虐待(ネグレクト:育児怠慢・放棄)といえる。
「学校へ行かなくてよい」という保護者への対応は
担任や担当者でどうにかしようとするのではなく、
学校全体で取り組まなければならない問題である。
学校・保護者・本人が同じ方向を向いていなければ、支援が成立しない。
指導の結果、登校できるようになった者の割合は、
小学校32%、中学校30%。3割の復帰となっている。
不登校は治りにくいため未然防止(不登校になる前の対応)
が大切であるといえる。
不登校にいたる欠席パターンがあり
◆年19日以上の欠席⇒50%が次年度に不登校になっている
◆年10日以上の欠席⇒30%が次年度に不登校になっている
◆月3日以上の欠席が1回ある⇒その年度内に不登校に至る割合が高い
という結果になっている。欠席理由は問わない。
新年度をむかえる前に
@ 年10日以上欠席の生徒をチェックし、年度当初から適応状態を観察する。
A 不登校生徒も4月の欠席率は低い。4月からクラスでの適応状態を上げる。
※4月に来ているうちにつながりを作っておく。
その他、対応として月3日欠席したら個別面談を行う。
「クラスでの適応状態(対人関係)は?」「休みたくなる理由は?」
などの確認をする。保護者を交えての3者面談をおこなう。
校内では事例検討会を行うなどの対応を。
また、「連続2日欠席」の禁止として理由は問わず、
2日連続欠席を避けるようにする。
病気でも一日寝ていればよくなるものである。
最近は、「休み方」の指導も必要になってきた。
家に居てゲームをして過ごすは休んでいるとはいえない。
良くならなくて結果続けて休むことになってもそれは構わないが、
2日連続欠席禁止としておくことが大事で、
2日連続で休んだ場合放課後登校や家庭訪問などで担任と会うようにし、
生活習慣化させない、長引かせないようにする。
家庭の「学校に押し出す力」を養うことにもなる。
普通の子は休むのは年平均3日。
スクール・コネクテッドネス
◆児童生徒が何によって学校と結びついているかを示す概念で、
スクール・コネクテッドネスの高い領域を支えることで登校行動が維持される。
学校に行ける理由探しであり、学校とのつながりに注目し、
できるところを探す作業である。
登校を支える6要因としては
@ 学業−授業に積極的に参加できる
A 部活動−部活動を楽しんでいる
B 友人−友達との関係がよい
C 教師−先生との関係がよい
D 将来−自分の将来を大事だと考えている
E 規範−学校を大切だと考えている
がある。
割れ窓理論
建物の窓の破損を放置していると、
誰も注意を払わないというサインとなり、
ルール違反やモラル低下につながり犯罪の多発となる。
学校では提出物の遅れや遅刻・欠席の増加などが
学級ルールの違反につながる。
不登校の未然防止のためには、
整理整頓、テスト返却の迅速化、宿題提出の管理、
遅刻・欠席の管理などが必要。
ルール違反に対しては、罰を与えるのではなく、
生徒指導・教育相談のチャンス(関わるチャンス)と捉えること。
クラスで整列して並んでいる机の配置が当たり前の状態であったのが、
当たり前でなくなってきたとき(乱れてきたとき)に
初期対応が必要となってくる。
メタコミュニケーション
コミュニケーションに関するルール
集団内でこのルールがたくさんあるほど腐っているといえる。
このメタコミュニケーションが複雑化・タブー化が進行すると、
いじめ、不登校、学級崩壊が生じやすい。
回避するために、クラスの人間関係を固定化しない、
人間関係の暗黙のルールのことあげをする
メタコミュニケーション・・・例えて言うと、
特定の誰かが失敗したときそれを嘲笑してもよい、
というような雰囲気(ルール)があるといったこと。
「3月のライオン」という漫画の中でひなちゃんが
「何かクラスの中で見えない階級があって、
どのくらい大きな声で笑っていいか決められているみたいな」
という会話があるが、そのような感じ。
対応としては、月一回の席替えであったり、
クラスの誰かを嘲笑するようなことがあったときに、
放置せず「何かおかしいことがあったか?」などで
促すことが大事である。
メタコミュニケーションとは
「ゲームなんてしていないよ、というゲーム」でもある。
ヒエラルキーの上のリーダー(担任や関わる先生)などが
この見えないが抑圧的な関係性(見えない階級)を
かき回しておく必要がある。
席替えも「何か不都合があったら言って来い」
「大人の権限で落ち着きのない子、眼の悪い子は前にする」など
集団をフレッシュな状態に保てる状態にしておく。
不登校は3割の治癒率である。
つながりを維持することが改善に繋がる。
友達と仲良く遊べているか、かわりばんこのルールができているかなどで
同年代の友達とちゃんとやっていく能力が身につけられるよう支援する必要がある。
家庭内の空気がよどんでいる場合、
メンタルフレンドなどの活動で空気を換えることができる。
メンタルフレンドが関わるようになって、
お母さんがきれいになった、などの効果も。
複合的な問題を抱えていたとしても
複合的なところを相手にするのではなく
「不登校の支援」という視点で考える。
親が不幸な人生を送っていても
子どもを外に送り出す力があればよい。
・朝ごはんを用意する・何時に寝させるなど。
子どもが学校に行かなくていいという親であれば
「学校全体で」方針を考えることが大事。
不登校支援はどの時点でどの次元の不登校なのかを
見極めて支援することが必要。
「うまくいっているなら、なおそうとするな
うまくいったなら、もう一度くりかえせ
うまくいかないなら、何か違うことをせよ」
不登校に限らず、支援の原則である。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
講師の津川先生は、吉備国際大学の准教授で
日本ブリーフサイコセラピー学会の常任理事でもいらっしゃいます。
倉敷市内の中学校でスクールカウンセラーもされておられました。
津川先生のお話はわかりやすく、シンプルで、
複雑に考えたり個別化して考えたりしがちなケースを
一般化したところから考え、具体性があり、
見えないものの見える化ができる形での支援を促してくださいました。
あと、「不登校の子たちの文化」という話もされましたが、そういう子たちがよく読んでいる漫画を知っていますか?とか言われて「う〜知らないなぁ」と思ったりしました。
「夏目友人帳」とか「3月のライオン」など、その子たちの世界を理解する上で「その子たちの文化に触れ理解する」って大事なことだと思いました。
よくよく考えれば学校へ行っている子の方が多いんですよね。
行けなく理由として障がいや人間関係もあるけれど、
その理由がなくなっても続いているケースがある。
行けなくなった理由(きっかけ)からこじらせて
長引かせてしまうケースもありますが。
不登校になった理由が理由でなくなっても症状だけ続いている、
というのは生活習慣病と同じともいえます。
一旦不登校になると、治癒率は3割。
「エネルギーが溜まるまで待ちましょう」支援で
ますます悪化しているケースもある。
待ち方がある!社会とつなげておくことが必要!
未然防止もしくは、早期発見早期対応がキーとなる。
津川先生は岡山でも不登校率の割合が高い赤磐市で
スーパーバイザーをされているそうですが、
未然防止と早期対応で不登校率をどんどん下げていっているそうです。
社会とつなげること、スクールコネクテッドネスを
つかみ活用することなど、なにか、
どこかと接点を持っておくことが
その子の次に繋がるきっかけとなるようです。
不登校に至る欠席パターンなどの研究内容の
解説も興味深かったです。
スクールカーストという言葉が一時流行りましたが、
その抑圧感はなんとなくわかる気がします。
そこを子どもの力ではどうすることもできない。
そこは大人の出番のような気がします。
クラス内の空気感や違和感を感じ取れる担任や先生であって欲しいなと思いました。
支援者としては
「うまくいっているなら、なおそうとするな
うまくいったなら、もう一度くりかえせ
うまくいかないなら、何か違うことをせよ」
これ!ですね★★★
うまくいっていることは何か
うまくいかないことを重ねて行うような
エネルギーの無駄遣いにならないよう
違う手段を次々提示できるようになれたらなーと思いました。
ブリーフセラピーは、具体的でシンプルなので使える!と思っているのですが
身につけないと使えないため、もっと勉強していきたいと思いました。
研修会に参加してみると!
昔PTAで一緒に活動した現小学校の先生(音楽専科)、
中学校の支援員をしていた時にともに研鑽し合った仲間、
教育分野に福祉の視点で関わって支援をしているスクールソーシャルワーカーの友達などに会うことができました!まさかここで会えるとは〜!の方ばかりでうれしくなりました★
うれしい再会もあり元気が出ました!つながっているなぁ〜って思えて★
場所は違えど、同じ思い、同じ方向を向いている仲間の存在は大きくて。
少しずつの積み重ねでも何か形にしていけたらなぁ〜力量不足を感じながらも
こんなことできたら!とかそんなことも思った研修会でした★
津川先生のお話はまた聞きたいな〜★
こんなことやってみたらいいかなーなど支援者が自発的に新たな支援の動きをやってみたくなる、その気になる研修会でした!!