自殺した父親をしのんで長男が作った詩
自ら命を絶つ人が跡を絶たない。2007年まで10年連続で
自殺者は3万人を超える異常事態となっている。しかも07年の自殺者3万3093人のうち18%は
うつ病が原因であり、心のケアの必要性が叫ばれている。こうした中で、「
NPO働く者のメンタルヘルス相談室」(伊福達彦理事長)は、9月2日から4日まで、
日本財団の支援で東京・新宿中央公園内にある新宿エコギャラリーで「
過労・うつ病で自ら命を絶ったあなた」という展示会を開催、自殺者が激増する現代社会の在り方を告発した。(写真右:メンタルヘルス相談室の伊福理事長)
同相談室は、ことしになって京都市(2月)、尼崎市(4月)、大阪市(6月)でこの展示会を開いており、今回が4回目。今後自殺のハイリスク地といわれる愛知県豊田市、福岡県筑紫野市、大阪府枚方市でも年内に開催する予定。今回は自殺者の遺族の会である「
藍の会 仙台わかちあいの集い」(田中幸子代表)とも連携し、田中さんが仙台から駆け付け、会場で訪れた人たちに、
自死遺族の実情を訴えた。(写真左:展示された在りし日の写真や遺書)
展示会は、うつ病による自殺が大企業に目立つことから「大企業の自殺の実例」(トヨタ、東芝、日本通運、キャノン、富士通など)を取り上げ、さらに自殺した「50人のリスト」「その人たちの遺書や在りし日の写真」「マスコミでも取り上げられた特別のケース」(過労自殺した小児科医の長女が跡を継いで小児科医になった話など)の4つのコーナーに分けられた。過労自殺した和歌山県橋本市役所勤務の男性の長男(小1)が父親のために書いた「ぼくの夢」という詩も展示され、これに曲をつけCDにしたシンガーソングライター修行中の木下徹さんが会場でギターの弾き語りをし、父親を失った子どもの悲しみの深さを伝えていた。(写真右:藍の会の田中代表)
ぼくの夢
大きくなったらぼくは博士になりたい
そしてドラえもんに出てくるようなタイムマシンをつくる
ぼくはタイムマシンにのって
お父さんの死んでしまう前の日に行く
そして 「仕事に行ったらあかん」て いうんや
(写真左:ギターの弾き語りをする木下徹さん)
伊福さんは今回の展示会について「悲しみを見つめるだけでは自殺者は減らない。まず大企業がうつ病による自殺者を出さない対策を取るべきだ」と語り、さらに「働いてうつ病になったら労災認定が必要なのに、認定されるケースは1%にも満たない」と述べ、労災認定のあり方を批判した。(石井克則)
働く者のメンタルヘルス相談室は大阪市北区東天満2-2-5-605 電話06-6242-8596
*歌「ぼくの夢」のビデオクリップはこちらからご覧いただけます(1:48秒)