幅広い協働関係の構築を提案 アフリカ会議で笹川日本財団会長 [2008年05月30日(Fri)]
![]() TICAD本会議場でスピーチする笹川会長 横浜市で開催中の第4回アフリカ会議(TICAD4)は2日目の29日、各国首脳と日本側関係者のスピーチが行われ、20年以上にわたってアフリカで農業開発プロジェクトを進めてきた日本財団の笹川陽平会長が現状と問題点を中心に報告した。民間団体の代表が本会議で講演するのは初めて。この中で笹川会長は「プロジェクトの結果、農産物の収穫高が2−3倍に増えることは実証されたが、マーケットや輸送手段が不十分で、農民の生活向上にまでは結びついてない」と指摘、支援国を含めた幅広い協働関係構築の必要性を訴えた。 ![]() ![]() 今回のTICADはこれまでに比べ、農業・食料問題が大きな比重を占めているのが特徴。最終日の30日には、収穫の多いアジア米と乾燥に強いアフリカ米を掛け合わせて作った「ネリカ米」によるコメ生産倍増計画などを内容として「横浜行動計画」が採択される予定。 日本財団は、大規模な干ばつがエチオピアを襲った1984年の緊急支援をきっかけに、1986年、カーター元米大統領、アジアでの「緑の革命」でノーベル平和賞を受けたノーマン・ボーローグ博士の協力で「笹川グローバル2000」を開始。トウモロコシなどの品種改良や農業普及員の育成指導などを進めている。 *スピーチ映像はコチラ(5:08秒) ………………………………………………………………………………………… 笹川会長の講演の要旨は次の通り。 笹川グローバル2000は、少量の肥料と優良な種子を利用した計画的な農業を、現地の農業普及員を通じて農民に根付かせ、食糧の増産を目指すものだ。農民を取り巻く習慣や文化を理解し、十分な専門知識を持つ農業普及員の育成が重要と考え、アフリカ9カ国13大学に農業普及学科を開設した。既に1400人ほどが現場に戻って活躍している。日本財団は技術指導と人材育成の両面の支援を22年間にわたって行い、これまで14カ国に対して1億8千万ドル超を投入した。その結果、実施地域では農産物の収穫高が従来の2〜3倍以上に増えるということが実証された。 だが、収量が増えても、農作物を売るマーケットが整備されておらず、輸送手段も不十分なため、農民の生活の向上には結びついていない。インフラやマーケット整備をはじめとする農業政策全般について、包括的に取り組む協働関係の構築が不可欠だ。協働体制で取り組むことにより困難な問題が解決された例として、日本財団が長年取り組んできたハンセン病の制圧活動が挙げられる。WHO、各国政府、製薬会社、日本財団を含めたNGOが連携し、世界のハンセン病の制圧という目標に向かってそれぞれが邁進した結果、1985年には122カ国あったハンセン病未制圧国が、現在では残り2ヶ国という画期的成果を挙げた。 国益を越え、幅広い視点に立ってアフリカの貧困問題解決に向けての協働関係の構築実現に力を結集していただくことを期待する。近年、アフリカの農業発展に向け、緊急に取り組むべき課題もある。肥料の価格高騰はアフリカ農民の生活に決定的な打撃を与える恐れがある。今年のG8サミットで肥料問題が緊急なテーマとして取り上げられることを強く提案したい。 (詳しくはこちら http://www.nippon-foundation.or.jp/org/condition/080529.html) |
