「船の科学館」で開かれた造船技術フォーラム
アジアの造船技術者らが集まり、船舶に関わる国際的な技術規制への対応を話し合う「アジア造船技術フォーラム」が15、16日の2日間、東京品川区の「
船の科学館」で開かれた。参加したのは韓国、中国、インド、シンガポール、タイ、インドネシア、フィリピン、マレーシアからの40人と、日本の技術陣90人。「世界の新造船の90%を供給するアジアの声を世界に反映させよう」と、熱のこもった論議が交わされた。
世界の造船・海運業界は、新造船の構造基準に関する標準(GBS=Goal-based Standards)策定や、バラストタンク塗装基準の見直しなど、船舶の設計、建造工程に大きく影響を及ぼすテーマが相次いで検討されている。それらは
国際海事機関(IMO)の条約改正作業となって国際間の論争にもなっているが、アジア諸国には「圧倒的な建造シェアを持っているにもかかわらず、技術面の正確な意見が反映されていない」という強い不満がある。
こうした意向を受けて
財団法人・日本船舶技術研究協会は、中国と韓国の造船工業会に呼びかけ、アジアの造船技術者が共通の認識を持つ必要があるとして、その意見交換のための「アジア造船技術フォーラム」を立ち上げた。
日本財団の助成を受け、1回目のフォーラム開催となったもので、アジアの技術者ネットワークを強化して国際的な意見発信を強化していくため、議論を深めるとともに技術者同士の交流が図られた。
(写真:基調報告の専門研究者と活発な質疑)第1回のフォーラムは議題を「GBS」「シップ・リサイクル」「防食=塗装基準、耐食鋼など」の3テーマに分け、日韓の専門家がそれぞれ発表を行い、そのあと全員で討議した。世界の造船業界はこのところ活況が続いているものの、今回の議論を通じ、海運界と造船業界の国際標準に対する認識の差や、一方的なスタンダードの導入が造船産業に大幅なコスト高を招く懸念があるなどの問題が浮き彫りになった。
(写真:休憩タイムも共通テーマで意見交換する参加者たち)2日間の討議を経て、「アジア地域の造船技術者の理解を共有し、国際的に意見を発信することで海上の安全と環境保護を推進する」との「アジア造船技術フォーラム・フレームワーク」が採択された。今後、毎年1回、フォーラムを開催することも決まり、来年は韓国で開かれることになった。さらにこのフォーラムの活動を通じ、IMOでの協議資格を持つNGOなどの設立を検討していくことも、今後の課題として確認された。
英語版は
コチラ