白船来航の資料展始まる 横浜開港資料館 [2008年08月05日(Tue)]
白船展が始まった横浜開港資料館 いまから100年前の1908年(明治41年)10月、船体を白く塗った16隻の「白船」が横浜港に来航した。世界一周の途中の米国大西洋艦隊(スペリー提督)で、乗組員は横浜と東京で熱烈な歓迎を受けた。この「白船来航100年」を記念して横浜市中区日本大通の横浜開港資料館(横浜市ふるさと歴史財団が運営)は、日本財団の支援で7月30日から「米国大西洋艦隊にわく100年前の横浜・東京」と題した企画展を始めた。米国在住の歯科医で、白船関係の資料収集家が集めた貴重な資料を中心に展示している。(写真:企画展を見る入場者) この歯科医は現在ニュー・ジャージー州に住むスティーヴン・J・レヴィーンさん(69)で、1965年から2年間米国海軍横須賀基地に勤務し、道子夫人は横浜市出身だ。日本勤務時代に白船に興味を持ったレヴィーンさんは、その後15年余をかけ写真や絵葉書、文書、記念品など白船関係の多数の資料を集めた。来日時には資料館に姿を見せ、資料館関係者とも旧知の間柄だ。 今回展示された資料は約200点で、うち170点がレヴィーンコレクションの提供。いずれも初めての公開で、当時の日本側の歓迎ぶりがうかがわれる。主な展示資料は、逓信省発行の旗艦コネチカットの記念絵はがき、乗組員用に鉄道省が発行した特別乗車券(横浜−東京間など)、13000人余の乗組員へのお土産用の絹製うちわ、日露戦争の英雄といわれた東郷平八郎元帥の写真などのほか、横浜市の本町通りや東京・新橋駅の歓迎の人波といった写真もあり、100年前の街の様子や人々の姿が浮かび上がってくる。このほか、東大大学院明治新聞雑誌文庫や防衛省防衛研究所図書館史料室、横須賀市自然・人文博物館、横浜市中央図書館から提供された当時の新聞や地図などの資料も展示してある。 展示された絹製のうちわとコーヒーカップ 白船は10月18日に横浜港に来航、25日までの8日間日本に滞在した。資料館でこの企画展を担当した伊藤泉美主任調査研究員によると、日露戦争に勝った当時の日本は旧満州(中国東北部)での利権や太平洋での影響力をめぐって米国と対立、一方、米国内では西海岸での日本人移民の急増が排日気運を高め、欧米のメディアは両国関係の危機説を報じていた。白船は世界周航といいながら、日本に対しては米国の海軍力を誇示して、圧力をかけるのが目的といわれた。(写真:企画展を担当する伊藤さん) しかし、日本側の熱烈歓迎によって両国の緊張関係が薄まり、親善が図られたという。伊藤さんは今回の展示について「ペリーの黒船は知っていても、白船を知っている人はそう多くはない。当時の日米の歴史を理解する上で貴重な資料が多く、ぜひこの機会に見てほしい」と話している。横浜開港資料館は元英国総領事が使っていた建物を利用して1981年にオープン。横浜の歴史にかかわりのある出来事をテーマに年4回企画展を開催している。白船展は10月26日まで。(石井) |