水中の歴史遺産を活かそう 福岡で日・豪国際シンポ [2008年01月08日(Tue)]
福岡市で開催された国際シンポジウム 海底遺跡の保存と活用を考える国際シンポジウムが12月16日、福岡市早良区の福岡市博物館で開かれた。九州を拠点に活動しているNPO法人・アジア水中考古学研究所が、オーストラリアの研究者を招いて開催したシンポジウム『水中文化遺産と考古学』だ。各地の研究者ら80人が参加、海底遺跡ミュージアムの実現に向けて議論を深めた。 シンポジウムでは「日本の水中考古学」と「オーストラリアの海事考古学」の現況について、それぞれの研究者が報告した。また昨年夏、アジア水中考古学研究所が長崎県五島列島の小値賀島で実施した海底遺跡見学会の模様が紹介され、これらの報告をもとに水中遺跡の保存と活用のあり方や、日本における海底遺跡ミュージアム構想の課題などが議論された。(写真:長崎県小値賀島で実施された見学会が報告された) 報告では、日本は18世紀のころから水中遺物に対する研究が行われていたにもかかわらず、未だにこの分野に対する社会的関心が低いことが指摘された。一方、オーストラリアでは政府がいち早く水中遺産保全の法律を制定し、先住民の遺構、17世紀の交易船の痕跡、さらには近年の戦跡についても研究が進められていることが報告され、両国における取り組みの差が浮き彫りとなった。 また日本における「海底遺跡ミュージアム構想」の企画者である野上建紀・アジア水中考古学研究所副理事長が、構想のモデルケースとしているイタリアの「バイア水中公園」の視察報告を行い、遺跡保存のために取られている徹底した規制と、水中と陸上の遺構を有機的に結びつけた歴史遺産活用のあり方をレポートし、日本での課題を整理した。 こうしたシンポジュウム開催は今回が3回目で、アジア水中考古学研究所の林田憲三理事長は「参加者数は限られていたが、水中の歴史遺産を活用しようという熱気が強まっている手応えを感じる」と語っていた。また豪州から参加したニューサウスウエールズ州文化財務局のデヴィット・ナトリー氏と西オーストラリア海事博物館のロス・アンダーソン氏は「小値賀島での水中見学会の取り組みに感銘を受けた。今後の遺跡活用方法に興味がある」と関心を寄せていた。(写真:オーストラリアからは研究者2氏が参加) アジア水中考古学研究所は、来年度は九州地区の水中遺跡のデータベース化に取り組み、2009年には再び小値賀島で水中見学会を実施する計画だ。その際には小値賀町のNPOグループとも連携し、陸上遺跡を組み合わせた「小値賀島歴史ツアー」を実現したい考えだ。日本財団は今回のシンポジウムなど、水中文化遺産の保全活動を支援している。(写真:遠方からの参加者もいて、水中考古学への熱気が高まった) |