助成で障害者の賃金が50%増 パン製造の就労施設 [2010年01月25日(Mon)]
施設でつくられた焼き立てパン 日本財団はこのほど、パンを製造している全国の障害者就労施設を対象に助成事業の効果測定調査を初めて行い、その結果を1月15日に発表した。調査によると、障害者の賃金が助成前から比べ約1.5倍になるなど、賃金や意識の面で効果がみられた。 |
改修によって建てられたパン屋 日本財団は、全国の福祉団体を対象に、古くなった建物を改修して新たに福祉施設とする事業や障害者が働くために必要な機材を整備する支援をしており、調査はこの事業の効果を明らかにするために実施した。昨年夏、調査会社を通して2002年度から2008年度の間に日本財団から助成を受けたパン製造を行う全国の65団体にアンケートを郵送、50団体から有効回答を得た。 整備された機材を使ってパン作りに励む 調査の結果、有効回答があった施設の障害者の月額平均賃金が、助成前は1万4,875円だったのに対し、助成後の現在は2万2,429円と、平均7,554円、約50%増加していることが分かった。また、アンケートでは施設を利用している障害者が「役割として必要とされる喜びを感じていると思う」という項目に、68%が「かなりそう思う」、28%が「ややそう思う」と回答、「働く仲間やお客さんとの人間関係ができている」には44%が「かなりそう思う」、48%が「ややそう思う」と答え、障害者の意識の変化も垣間見られた。ほかにも、施設の評判が上がった、地域との関わりが強くなったなどの声が挙がっている。 商品のパッケージも工夫されている 調査はアンケートと並行し、事業が成功している団体にはヒアリングも実施。それによると、事業の成功要因として、1)計画的な事業拡大、設備拡充を行う、2)店舗外での販路を開拓する、3)職人を確保し、品質の維持と新商品開発を継続する、4)下請け的体質から脱却する―の4つが挙げられている。ゴルフ場の託児施設を改修してパン工房を始めた施設では、ゴルフ場のお土産としてラスクが人気で、月の売上が170万円に達している。 2006年の厚生労働省調べによると、福祉施設で働く障害者の月額賃金の全国平均は1万2,222円。近年も金融危機の影響で障害者の働く環境は厳しさを増しており、全体的には賃金も向上していない現状にある。日本財団の担当者は「今回の調査結果を今後の事業展開の参考にしてほしい。調査で明らかになった成功要因を踏まえ、販路拡大のための移動販売車の配備や人材育成のための研修制度など、売上増のための支援を引き続き展開していきたい」と語っている。 調査結果の詳細についは、日本財団ホームページから報告書をダウンロードして読むことができる。 |