「ウナギとマグロの未来は」 東大と日本財団の共同シンポで意見交換 [2009年12月21日(Mon)]
![]() 共同シンポジウム会場の様子 海からの恵みを受けて暮らす日本人が、30年後も現在のように海の魚を気軽に食べ続けることが可能かを探る東大海洋アライアンスと日本財団の共同シンポジウム「食卓に迫る危機」が12月11日、日本財団ビルで開かれた。共同シンポは09年6月に続き2回目で、日本人の食と縁の深い「ウナギ」と「マグロ」を中心に問題提起や意見交換が行われた。2010年3月12日に最終回を開催する予定だ。 |
![]() 大岡宗弘 日本養鰻漁業協同組合連合会会長 シンポはまず問題提起として大岡宗弘・日本養鰻漁業協同組合連合会会長が「ウナギ養殖の現状」を説明。続いて総合商社・双日の水産担当・林弘二氏がすしや刺身に使われる最高級のマグロといわれるクロマグロの国際取引や地中海のクロマグロ畜養の状況などを紹介。(地中海や大西洋でのクロマグロの規制で)「マグロは食卓からは消えないが、価格は上昇し、多少手が届きにくくなる可能性がある」と指摘した。 ![]() ![]() 左:水産総合研究センター 石塚吉生理事/右:東大大学院農学生命科学研究科 黒倉壽教授 続いて研究者の立場から3人が講演。石塚吉生・水産総合研究センター理事は「ウナギの完全養殖に挑戦しており、そう遠くない時期に達成できる」という見通しを明らかにした。金子与止男・岩手県立大学教授は、ワシントン条約(絶滅の恐れがある野生動植物の保護を図ることを目的に、国際取引を規制することを定めた国際条約)事務局に勤務した経験から、この条約の対象になる水産物が増えていると指摘。モナコが2010年3月にカタールで開かれるワシントン条約締約国会議で大西洋クロマグロを規制対象とする提案を予定していることも紹介した。ウナギについても今後供給量が減少するだろうと語った。さらに黒倉壽・東大大学院農学生命科学研究科教授は漁業の歴史を振り返り「食卓の危機は資源の枯渇と反漁業キャンペーンの2つがあるが、消費者は適度なバランスをとった食べ方が必要」と訴えた。 ![]() パネルディスカッション この5人に奥脇直也・東大大学院法学政治学研究科教授が加わったパネルディスカッションは会場からの質問に答える形で進行し「消費者はどんなことに気をつければいいのか」という問いに対しては「安ければいいというわけではない。安心・安全にはコストがかかる」(林氏)、「消費者は必要なコストは払う必要がある」(黒倉氏)など、安いものには注意すべきだという注意喚起があった。さらに若い世代へのメッセージとして「ウナギの食文化は将来性があり、資源がいま以上に減らないよう努力する」「水産業界の人材育成の仕組みを国がつくる必要がある」水産業を、海を生業とすることで生計が成り立つような産業構造にしないといけない」「若者よ、漁師になって」などの提言があった。 共同シンポが行われた12月11日には、中部太平洋まぐろ類委員会の年次会合で、2010年のクロマグロ漁の漁獲制限が合意された。大西洋と地中海のクロマグロについては既に2010年にこれまでより4割の削減が決まっており、ワシントン条約でさらに規制対象になれば日本人の食生活に影響する可能性がある。(石井克則) |
