広がる置き薬制度 ミャンマーでもスタート [2009年02月23日(Mon)]
引渡し式で村人の代表一人一人に薬箱を手渡す笹川会長 富山の置き薬制度を利用して2004年にモンゴルで始まった伝統医療・医薬品の普及事業がこのほどミャンマーでもスタート、2月7日、ヤンゴン管区のクンジャンゴンで、事業を支援する日本財団の笹川陽平会長らが出席して薬箱の引き渡し式が行われた。タイにも既に導入されているほか、カンボジアでも近く初の伝統医療専門学校が開校する予定で、置き薬事業は東南アジア地域に大きな広がりを見せている。 |
ミャンマーでの置き薬は、伝統薬や医療の講習を受けた村の責任者の家に、咳や下痢止めなど7種類の伝統医薬品と体温計やガーゼ、伝統医療に関する小冊子を入れた薬箱(全部で18ドル相当)を常備し、村人が必要に応じて買い求める方法。使用分を定期的に回収する本来の置き薬制度とはやや異なるが、医療施設のない3つの村で2年間、実験的に配備した結果、初期治療に大きな効果が認められ、今後、3年間でミャンマー全14州の各500村、計7000村に薬箱を配布することになった。(写真:参加した村の代表者たち)
ミャンマー政府は1989年、保健省に伝統医療局を設置、伝統医療・医薬品の普及に向け専門病院や大学、製薬工場、薬草園、研究所などの整備を進めており、社会主義体制下で伝統医療が禁止されたモンゴルなどと違い、伝統医薬品の歴史は長く種類も多い。西洋医薬品に比べ価格も5分の1程度と安く、2007年に政府が全国の3600世帯を対象に実施した調査では80%を超す人が伝統医薬品を使った経験があると回答したほか、90%を超す人が「伝統医療を信頼している」と答えている。(写真:薬箱) 昨年5月のサイクロンで大きな被害を受けた南西部沿岸地域から順次、配備する予定。クンジャンゴンの引き渡し式には各村の代表500人が出席、笹川会長や保健省の関係者らから一人一人、薬箱を受け取った。(写真:薬箱が配布された村で) 伝統医療に関してはWHO(世界保健機関)が1978年のアルマータ宣言で活用を提唱し、昨年11月、中国・北京に世界70カ国の代表が集まって開催された「伝統医療国際会議」でも近代医療との共存が打ち出された。多くの国が初期治療での活用を検討しているのに対し近代医療との融合・統合を目指しているのがミャンマーの特徴。原料となる薬草などの化学分析にも取り組み、外国の大手製薬メーカーからの接触もあるという。(宮崎正) *動画はコチラ(3:05秒) |